SOIL&“PIMP”SESSIONSの新たなディケイドの幕開けたる
ケタ違いのニューアルバム『Brothers & Sisters』!
インストの原点に回帰し超えていく伊達男たちの現在に迫る
インタビュー&動画コメントが到着
ジャズのみならずロック系のファンをも圧倒する強靭なサウンドで、国内のみならず海外でも熱狂的な支持を集め続け、昨年には結成10周年イヤーを迎えて豪華な全曲コラボアルバムも発表したSOIL&“PIMP”SESSIONS。新たなディケイドの幕開けと位置付けられるニューアルバム『Brothers & Sisters』は、久々にゲストを迎えない6人のメンバーのみで録音され、バンドとしての“ケタ違い”ぶりを存分に示した会心作。“デス・ジャズ”な本領を発揮した凶暴なナンバーから、流麗かつダンサブルな高速バップや疾走ブラジリアンに、これまでにない新機軸まで。改めて初期からブレることなく進化を続ける境地を示した新作について、社長(アジテーター)に語ってもらった。
やっぱりインスト盤は作っていてスリリング
――全曲コラボアルバムとなった前作『CIRCLES』とは、いい意味で正反対な作品になりましたね。
「そうですね。前作を作っていたときから次はオリジナルでというのがあったし、その軸があってこそのコラボだったりカバーだったり外仕事だと思うので。やっぱりインスト盤は作っていてスリリングだし、コラボとは違ってライブをイメージして、自分たちがステージで演奏しているサマを想像出来るかどうかが、ものすごく大事になってくるんですよね。だから、その頭の切り替えもしつつ、でも、最近にいわゆる“歌モノ”をたくさん作った中で曲の構成だったり細かいところの構築について学べた経験も、フィードバック出来ていると思います」
――原点回帰的な音なんですが、着地しているところは初期とは違うなと。
「インスト盤を作るたびに、1枚目の『PIMPIN'!』(‘04)というアルバムを常に意識しているから、そこから全くブレていないとは思います」
――ただ、アンサンブルはかなり進化して、曲によっては相当スリリングかつアグレッシヴなことになっています。
「経験を積んできたからこそのアンサンブル感みたいなものは、出せているんじゃないかなと思います。ただ、ウチはメロディを取る楽器がトランペット、サックス、ピアノと3人いて、どの組み合わせで取るのかみたいなところもあって。必ずしもホーンが主メロを取ることも今はなくて、ピアノとサックスが取るとか、最初にメロディを取った楽器とは違う楽器が主メロを取るとか、いろんな色で見せるというか、同じ景色が繰り返されないようにする意識は強く持っていますね。最近は、その辺りにメンバー全員がすごく敏感になっているところもあります」
ビックリするくらい音もいいし演奏もキレてるしで
今の状態で録るしかないでしょという雰囲気でしたね
――曲自体のバリエーションも、今作は1枚の中でもかなり多彩ですね。
「いつもとちょっと違ったのは、バンドでの作曲期間をレコーディング前にガッツリと設けたことですね。今までは作って録って、また作って録って…みたいな感じだったんですけど、今回は一気に録りました。それは何でかと言うと、今年の頭くらいにバンドの調子がやたらといい時期がありまして。昨年から今年にかけての10周年ツアーもそうだったし、その後の春フェスなどでもビックリするくらい音もいいし演奏もキレてるしで、今の状態で録るしかないでしょという雰囲気でしたね」
――曲によっては恐ろしく複雑なことをやっているんですが、心地よく駆け抜けてしまうような感覚が全体的にありました。例えば、1曲目の『Love Immediately』も、旋律は言ってみればプログレッシヴ・ジャズ・フュージョンのような感じなのですが、そうは思わせない疾走感と痛快さがあって。
「プログレ感は本人たちは全く出すつもりはないんですけど、何か出ますよね?(笑) ただ、やっていることはすごく高度なんだけど、聴いている方には難しく聴かせないというのも、初期からのこのバンドが命題にしてきたことではありますね」
――アッパーな疾走系も、ジャズ・パンクにサンバ調もと、他にも好チューン揃いですが、音楽的に一番意表を突かれたのは、アルバムの中盤に収録されている妙なニュー・ウェイヴ+映画音楽みたいな…(笑)。
「妙なニュー・ウェイヴ(笑)。それは7曲目の『Shout!!』ですよね。でも、“映画音楽”というキーワードは、今回のアルバムを作っている間に“サントラっぽいよね”と丈青(p&key)とも話していたので、確かにありましたね。出来上がって曲を並べてみても、『Love Immediately』で始まって最後は『Spartacus Love Theme』(M-12)のカバーで終わるので、このアルバムで1つのドラマになるなとも思いました」
――最近は様々な音楽家が取り上げているユセフ・ラティーフの名演で知られる『スパルタカス~愛のテーマ』が、ソイル~ならではのバージョンとなっているのも印象的でした。
「この曲を今改めてやれたのも、いいタイミングだったと思います。最近だとNujabesやINO hidefumiさんが取り上げてきて、みんなが知っているこのメロディをウチらがどうやるか、というところで、アレンジは全て元晴(sax)がやったんですよ。ヒップホップのいいところとウチらが得意な3拍子な感じを巧みにミックスしつつ、ライブでの盛り上がりを意識したアレンジで。しかも、途中でユセフ・ラティーフのオーボエのソロを完コピしてトランペットとサックスのユニゾンで演奏することで、オマージュを表現しています」
技術とか曲に対する切磋琢磨のレベルが明らかに他と違う
――メンバー間では、今回のアルバムでサウンド面での新機軸というか、際立って出てきた今のモードみたいなものはあったのですか?
「ホーンにオクターバーなどのエフェクトをかまして、よく聴くと1オクターブ下の音が鳴っている、というギミックを今回は数曲で使っていますね。今は世界的にもそういう潮流があるらしくて、それも今回のアルバムでの1つの大きな特徴だと思います。ただ、エフェクトを使うにしても、絶対にライブで再現出来るものを、という前提がありました。ライブで再現可能でないと、僕らではないので」
――最近は、国内でも海外でもクラブジャズ以降な音を示すミュージシャンやバンドが増えてきましたけど、やはりソイル~はその中でも一歩上手であり続けているし、進化を続けていると、改めて今作を聴いて強く感じました。
「あまりヨソ様のやっていることを意識することはないですけど、“クラブジャズ”という括りだけでは済まないよねというか、本人たちはクラブジャズをやっているつもりではない、というのは最初からありましたけどね。ただ、クラブジャズやインストの若いバンドなどがたくさん出てきている中で、みんなで一緒に頑張っていきたい意識はありつつも、常にその中でケタ違いでいたい、という意識と自負はありますね。もちろん後ろから突かれながらも、もっと上がっていかなきゃいけないという努力も含めて」
――10年間ケタ違いであり続けるというか、一番尖っている存在であり続けることは、どんなジャンルでも並大抵のことではないですよね。
「もう自分たちも新人ではないですからね、新人のつもりでいましたけど(笑)。ただ、ウチは技術とか曲に対する切磋琢磨のレベルが明らかに他と違うと思うので。メンバーそれぞれに、今でもすごく練習もしてますからね」
――ソイル~はデビュー時から演奏スキルもオリジナリティも圧倒的でしたけど、そのままより高いところに来ている感じが、今作では全面発揮されていると思います。
「昨年は、国内では10周年もあって、ヨーロッパにも最近はあまり行けてないんですけど、改めて世界に届く音を作りたいと思っていました。面白いのは、フェスなどで一緒になった海外のジャズ系ミュージシャンが、“昔よく聴いていました!”と楽屋に来てくれるパターンが出てきたことで(笑)。この間はマウント・キンビーが『TAICOCLUB’14』で一緒になったときにそう言って来てくれたし、元晴とタブゾンビ(tp)が共演をオファーされた英国のザ・ヤング・パンクスも、“日本に行くなら彼らと一緒にやった方がいい”と言われて声をかけてきたみたいですね。ちょっと自慢話みたいになりますけど、そういうバンドで良かったと改めて思います」
――そして、リリースに伴うツアーもスタートしましたね。
「今回のアルバムの収録曲は、ひたすらスタジオでブラッシュアップして生まれた曲がほとんどなので。自分たちでも実際にライブで演奏しながら、またツアーの中で曲が育っていくのを楽しみにしています」
Text by 吉本秀純
(2014年10月31日更新)
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