“スマホ時代をリードするラブソングのカリスマ”
の裏側にあるタフでストイックな音楽人生
最新アルバム『Brand New Days』ワンマンツアー開幕前に贈る
KGインタビュー&動画コメント
配信によるデジタルセールスが累計400万ダウンロードを突破と、20代を中心に圧倒的な支持を獲得しているボーカリスト、KG。最新アルバム『Brand New Days』は先の配信曲を含みつつ、普遍的なラブソングから人間愛に満ちたハートウォーミングなナンバーまで、より幅広いリスナーに向けられた楽曲が収録されている。10代半ばからアメリカに留学し、ソウルミュージックをはじめとした洋楽からのエッセンスをベースに、J-POPのフィールドへと進出。心地よい倍音からなる“ビタースウィート・ヴォイス”と、多くの共感を呼ぶ“魔法の詞(コトバ)”を武器に、“スマホ時代をリードするラブソングのカリスマ”として大注目の存在となった現在まで。いよいよ始まるリリースツアーを前に、ストイックな姿勢で歌に生きるKGの本質に迫るインタビュー。
歌を歌っているときだけは存在していい時間だと思えました
――10代の頃アメリカに留学されていたそうですね。
「当初、目的は何もなくて…日本の学校がとにかく合わなかったんです、アメリカ育ちの母親に育てられたせいなのか(笑)。中学で方程式を勉強したとき、誰がどうやってその方程式を作ったのか知りたくて先生に聞いてみたら、“そんなこと知らなくていい”と言われて、一気につまらなくなりました。日本は覚える社会、テストのためにやり方を覚える勉強だから苦手でしたね。それで、日本人がいないアメリカの学校に行くことにしたんです。 日本は主張すると叩かれるけど、アメリカは主張をすることが当たり前の国。そんな社会が自分にはすごく合っていましたね」
――ボーカリストとしてプロになろうと思ったのは、アメリカに行ってからですか?
「元々歌うことは好きだったんですが、ある日アメリカの学校のダンスパーティーで『スキヤキ』(『上を向いて歩こう』)を歌ったとき、校長先生が涙を流してくれて…。日本にいた頃は親に迷惑をかけてばかりだったので、自分のことが大嫌いで存在意義が分からなかったけど、歌を歌っているときだけは存在していい時間だと思えました。これをやるために自分は生まれてきたんだと。そうやって自分の存在を許せたことで人にも優しくなれたし、人として成長出来たように思います。それが17歳ぐらいのときですね。ホントはアメリカでプロになろうと音楽が勉強出来る大学に入ったんですけど、周りに日本人が多くなったのでアメリカにいる意味がないなと思って、大学を1年で辞めて日本に帰りました。外国にいると自分が日本人だということをより意識するようになるんです。アメリカにいた5年間で自分のルーツをものすごく大事にするようになっていて、そろそろ自分の生まれた国に戻ってもいいかなと」
――そんなアメリカでの音楽体験がKGさんのボーカルスタイルにも活かされている?
「英語の歌しか歌ってなかったし、ジャンルで言えばソウルミュージックをやっていたので、自然とこの声になりました。日本には高くてピーンと張った性質の声の人が多いけど、自分は倍音で角のない丸い声なので、そこが他の人にはないところだと思います。これは自分の強みですね」
“ラブソングのカリスマ”というより、“魂の叫び”で歌っている男なので
――最新アルバムの『Brand New Days』には、80年代の洋楽とか“ブラコン”(ブラックコンテンポラリー)と呼ばれていた頃のサウンドに近い曲も入っていますね。
「自分が聴いてきた洋楽を自分なりにろ過して、そこに分かりやすい日本語をはめていく感じでやっている曲もあります。例えば、『You Make Me Feel Good』(M-4)のカッティングは昔っぽいけど、実は四つ打ちで今風なアレンジになっています。『It's Alright』(M-13)はディスコ調ですけど、今の若い人が聴いたら新鮮に聴こえるようですし。『Can You Heart My Voice』(M-12)は自分の中にあるロックで、日本のブラックミュージック好きな人ではあんまりやらない歪んだギターの音が入っています。こういったロックなバラードはいい意味で日本的じゃないかもしれない。このアルバムには、大人が聴いてもらうと喜ぶような曲も入っていると思います」
――KGさんの曲は、配信で大ヒットされていますね。
「たくさんの人に聴いてもらえるのは嬉しいんですけど、(ダウンロード世代の)若い子たちが聴いてくれていることに関しては、ちょっと戸惑いながらやっています。昔、ソウルバンドをやっていた頃は大人の前でしかやってなかったし、自分も大人なので、携帯でダウンロードして聴くような世代じゃない人たちにも広がっていければいいなと」
――“スマホ時代をリードするラブソングのカリスマ”と呼ばれることについては?
「ラブソングがきっかけで、より多くのリスナーに知ってもらっているというのも事実ですが、“カリスマ”というのはちょっと恥ずかしいですね(笑)。“ラブソングのカリスマ”というより、“魂の叫び”で歌っている男なので。とにかく自分が出来ることは歌うことだけだと思ってやっています」
――KGさんが歌われているラブソングは、聴き手に歌いかけるような優しい言葉で歌われていて、甘過ぎない、ちょっとビターテイストの声質とのバランスがとてもいいですね。
「ウェット過ぎるのが苦手なんです。切ない曲も最終的にはほっこり出来るような、前を向けるようなあたたかさをどこかに入れ込みたいと思っています。それに、元々自分は“モテたい”とか、“有名になりたい”というような願望が全くなくて。自分の存在意義の確認のためだけに歌い始めたので…」
――とてもストイックなんですね。
「はい。夜遊びも全然しないです(笑)。自分の才能は平凡で、ホントに心だけで歌ってる人間だから、そこまでストイックにならざるをえないんですよ。どれだけ不摂生していてもいい声で、素晴らしい歌を歌える人もたくさんいますけど、自分はそんなタイプではないので。甘えないように、気持ち的にストイックでいるようにしています。昔はJ-POPのキャッチーな感じが苦手で、メジャーデビューしてようやくJ-POPと呼ばれるものを歌うようになったので、まだヘタクソなんですよ。このアルバムの中では、前半の『You Make Me Feel Good』『To The Top』(M-5)、後半の『Can You Hear My Voice』から『You're not alone』(M-15)辺りが自分の芯となる部分なので、ナチュラルに歌えるんです。でも、『今もこれからも』(M-1)『いつまでも いつまでも』(M-3)『めぐり遭えた』(M-8)『白い冬~二人で過ごしたあの時間~』(M-9)なんかは、ちゃんと歌わないと歌えない。昔に比べるとJ-POPの良さも分かってきたので楽しめるようになってはきたけど、ノリでは出来ないですね」
――これまでの配信曲では10~20代のファンの方が多かったようですが、このアルバムをきっかけに30代以降のリスナー層が広がっていきそうですね。
「はい、ぜひ聴いていただきたいですね! そして、最終的に何らかのエネルギーにしてもらえれば嬉しいです。“大丈夫、頑張れ!”みたいな、どストレートな応援歌は歌えないけど、“ちょっとまた歩き出してみようかな”と思えるような曲で、自分のように音楽に救われる人がきっといるだろうから。常にそれを念頭において、ずっと長く歌い続けたいですね。実際、ワンマンライブをやると、20~50代ぐらいの方が来てくれるんですよ。9月にはこのアルバムに伴う初めてのワンマンツアーをやりますが、ファイナルの東京のみフルバンドで、他のエリアはキーボードとギターを生楽器でやります。ぜひアルバムを聴いて、ライブに来て欲しいですね」
(2014年9月10日更新)
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