永遠の孤独、永遠の輝き
満たされない心と諦めの先にある絶景を目指せ
妄想女子Neat’sのポップでドリーミンな3rdアルバム
『MOA』インタビュー&動画コメント
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突然やってくるトキメキを、初めてのワクワクを、最後に感じたのはいつのことだろう? 人は歳をとり、経験を積み、知恵を得る。そのどうしようもない時間という過程は、時に人を成長させ、時に人を諦めさせる。ミューシャンであり、1人の女性であるNeat’sとて、それは例外ではない。リリースは自身のHPとライブ会場のみ、アートワークや作品の梱包から発送までをD.I.Y.で手がけ、己のクリエイターとしてのビジョンとルーツを具現化してきた新津由衣のソロプロジェクトNeat’sが、3rdアルバム『MOA』をリリースした。瑞々しいポップセンスを爆発させた2ndアルバム『MODERN TIMES』(‘13)、過去曲を再構築した音楽情報&配信サイトOTOTOYとのコラボ企画、2.5thアルバム『Bedroom Orchestra』(‘13)を経て、「“もう辞めたい!”みたいなところまでいっちゃった」とまで語ったNeat’sが迷い込んだ“大人”という名の樹海は、彼女に何を突き付け、何を目覚めさせたのか? 変わりたい自分、変われない自分、ドリーミーでファンタジックな持ち味はそのままに、より解放されていく心の変化を、時にパンに例えて語ってくれた(笑)、生身のインタビュー。創作しないと生きていけない絶滅危惧種Neat'sに問う。
すごくポップに開かれてました、心が
――前作『MODERN TIMES』(‘13)のインタビューでは、取材のための下調べでNeat’sがインタビュー中にめっちゃ泣いてるテキストを他サイトで見付けて、何かもう…俺もそのストーリーを背負って話する、みたいな(笑)。
「そうそう(笑)。結構ね、何か背負って喋ってましたよね、あのとき(笑)」
――今回のリリースも、Neat'sらしいやり方がちゃんとあって。
「やっぱりお店に卸すやり方じゃなくて、自分から発信、発送っていうスタイルで。プロモーションに関しても、知ってくれて“あ、いいな”って思ったそのときに、クリックしたら買える方がいいなって(リリース後に露出したり)」
――相変わらずその辺のことも、ですね。
「そこまで背負います(笑)。でも、今回の『MOA』で3枚目だから、割と流れは摑めてきてるところもあるから、任せるところは任せる、やりたいところはやるって、何となく役割分担がハッキリしてきた感じはあります」
――何でも自分でやりたいNeat’sが…。
「何でもやってましたね(笑)。それでつらくて泣いてたのかな?(笑)」
――アハハハハ!(笑) そういう意味では、今話してるこのムードというか…要は開かれている感じが、この作品にもすごく表れているというか。
「嬉しい! それを伝えたかったんですよ」
――最初に今作『MOA』を聴いた印象としては、やっぱり“密室感”が減ったというか。今までは“Bedroom Orchestra”と自称するだけあって、まさに自分の部屋の中から生まれてくる音楽だったものが、今回は部屋の扉の鍵が開いているというか、みんなに入って来てもらえる空気があって。
「嬉しいです。まさにそれを伝えたくて。マスタリングするときにも、“今回の全体的な印象を、音像をどうしたらいいですか?”っていう質問に対して、“開かれた感じにしたい”と言ったんです。そういう意味でのポップさ、華やかさを印象として出したくて。何か自分の気持ちとかモチベーションも、そこにあったんですよね。すごくポップに開かれてました、心が」
全部剥がされて裸になった状態でも、私が私でいられるアルバム
――前作のインタビュー時にもう次のアルバムを作りたいとは言っていましたが、そこからの流れは?
「絵本と連動した2.5thアルバム『Bedroom Orchestra』のプロジェクトを進めてはいたんですけど、それは既存の曲のアレンジを変える形で、自分の中ではまた別軸だったんです。ただ、新曲においては大スランプがやってきて、“もう辞めたい!”みたいなところまでいっちゃった時期があったんですよ。今となっては思い出せないんですけど(笑)。自分の作る曲が好きになれなかった時期があって、いろんなことが散漫でしたね。やりたいこと、自分に似合ってるものとか、すごい考え過ぎちゃって…。そんな中、サンレコ(=サウンド&レコーディング・マガジン)の企画★で、私のメロディが欲しいって言ってくださって。ただ、アレンジまでバキバキに凝ってそれを提出したら、肝心のメロディがグッとこないって1回ボツになったんですよ。そこで“ガガーン! 私は今これがやりたいのにー!”みたいになったんだけど(笑)、ふと立ち止まって、いろいろ欲とかを削ぎ落として…」
★…Neat’sの楽曲を元に、八王子P、CHOKKAKU、砂原良徳、NARASAKI(COALTAR OF THE DEEPERS、特撮)がそれぞれの特性を活かしアレンジに挑戦。
――うんうん。
「私…例えばパン屋さんに行くと、いっつも迷って迷って、結局クロワッサンとメロンパンしか買えないんです。どんなに新作パンがあっても(笑)。変わりたい願望はあるし、新しい機材を試したいとか、パン屋さんに行っても新しいパンに目移りするんだけど、結局、小心者でクロワッサンとメロンパンしか買えないんです」
――今日はクロワッサンと新しいパンを買って、また次に行ったときにメロンパンと新しいパンとかじゃダメなの?
「何かね、それだと気が進まない(笑)」
――アハハハハ!(爆笑)
「だってクロワッサンとメロンパンだったら間違いないから。何かそういう気持ちに戻ったというか、いっぱい悩んでいろいろ試してはみたけど、“私はやっぱりクロワッサンか”となったとき、自分の軸にある気持ちいいメロディ、ワクワクするメロディに正直に作ってみようって気持ちになったんです。“おもしろいことをしてやろう!”とかじゃなくて、心に問いかけるみたいな。だから、“今ワクワクしてる!”っていう瞬間だけを抽出した『よるのいろ』(M-5)のメロディを改めて提出したら、すごいお褒めの言葉をいただいて。そのメロディを元にいろんな方にアレンジしてもらう企画だったんですけど、改めてメロディがしっかりしていれば、アレンジがどんな方向に行ってもブレないんだなって思えたので。それがスイッチでしたね」
――逆に、メロディがしっかりしてないと、どんなにアレンジでいじくっても、あるラインを超えない。“出口はポップでならなければならない”と前回のインタビューでも言ってましたけど、まさにNeat’sと音楽というか、Neat’sと世間をつなぐものというか。
「うんうん。もちろん今もアレンジとかビジュアルとか映像にも、すごい力を入れてるんですけど、全部剥がされて裸になった状態でも、私が私でいられるアルバムなんですよね」
――だから強いんでしょうね、今回のアルバムは。
「やっぱりそうですよね? 出来たときに自分も充実感があったし、自信が湧きましたね」
――でも、そのサンレコの企画をやるまでは、どんよりやったんやね(笑)。
「どんより(笑)。“あ~カレーパンも試してみたい、チーズもいいけどぉ~”みたいに、すっごい迷ってました(笑)。で、ちょっと味見してみてはポイしちゃうみたいな」
――そういう意味では、いいトライアルでしたね。
「ホントに感謝してますね。アレンジャーの皆さんのメロディに対するメッセージも、すごく嬉しくて。メロディだけだと伝わらないかな?と思ってたんだけど、“ちょっと宇宙的なものを感じる”とか、“90年代の開かれた感じ”とか、人の反応で自分を知るというか。“ちゃんと伝わるんだなぁ…じゃあ自信を持ってやってみよう!”って」
感覚で行けるところを信じたい
――前作『MODERN TIMES』も素晴らしいポップソングがいっぱい入ってましたけど、今回はその全体的な質感がアップしてるというか。きっかけとなった『よるのいろ』みたいな曲があって、その後はどうやって?
「基本の軸はメロディで、まず鍵盤の電源を切りました(笑)。やっぱり鍵盤を弾いちゃうと自分の好きな音があるから、そこに連れて行かれちゃうなと思って。電源を切った鍵盤の前に座りながら、ずーっと映像を頭に描いていたんです。“こういう物語で、風が吹いてるなぁ”とか、“あ、砂嵐になったときにUFOが降りて来たのか。そうかそうか”みたいな感じで(笑)」
――それすげぇな(笑)。
「それで、イントロが“ジャカジャーン!”なのか“タラララ~♪”なのか“ダーン!”なのかがハッキリしたところで、鍵盤と歌をiPhoneに入れて、数日寝かせて。で、電車の中とかでいろんな人の曲と並べて聴いて、“あ、すごい泣けるこのメロディ”ってなったものはOKボックスに、グッとこなかったものはボツにして、っていう作業を何回もしたんです。今までは、“作った曲は全部大切!”っていう感じでしたけど、今回はボツ曲もいっぱいあって。自分の中でホントにグッときてるかどうか、検査してました(笑)」
――ここ最近のNeat’sの活動を見ていたら、クリエイター女子たちのハブみたいな感じでいろんな人をつなげたり、それこそ前述のサンレコの企画もそうですけど、通常の音楽活動とはちょっと異なっていて。だけど、いざ実際の自分の作品作りに関しては、今回はすごく原点で。
「うん。でも、それがあったからっていうのが実は大きくて。チームが拡大していくと人に任せられるんだけど、やっぱり最終的なジャッジをする上で、私がワクワクしていないとっていうところがあったので。自分の感性をちゃんと研ぎ澄ませておきたかったんです。“いーじゃんいーじゃん”って流せちゃう自分じゃいけないと思った。何が自分にとって大切で、Neat'sとは何なのか、もう反射神経みたいに“これワクワクする!”、“これはヤダ”とか分かる心でいたくて、原点のそこを磨いてたような気がします」
――アレンジやサウンドメイクをドンドン掘り下げていくかと思いきや、もっと内面的な方向に向いたんですね。
「やっぱり最初はあったんですよ、技術を磨こうとか。だけど、あんまり学んで音楽をやってきてないのがあって、それよりも感覚で行けるところを信じたいなって。例えば、単純に好きな映画を観たり、好きな色を見たりとかしたら、“いいわぁ~”とか、“あ、かわいい”ってなるじゃないですか。そこには深い理由はなくて。そういう感覚だけでアルバムを作りたかったんですよね」
――それってヘンな話、自信がないと出来ないというか。以前は“自分の直感を信じてOK”と言い切れたかどうか。
「前は理由もいっぱい探してました。“これは海外っぽい”とか、“海外のあのアーティストのドラムに似てる”とか」
――“これが今の時代の空気感に近い”とか、自分を納得させるための。
「そうそう! そういう理由がいっぱいあったけど、そういうものが今では取り払われたような気がします」
――すごいですね。逆に“そんなこと考えなくていいよ、そんなに難しい話じゃないから”ってこっちが言ってあげなきゃなって思うような人だったのに(笑)。そうなれたんですね。
「そうそう! いやぁ~前回はね、ホントに奥さん(=筆者)にカウンセリングしてもらったみたいな感じ(笑)。“30になったらいろいろ許せるよ!”とか言ってもらった記憶がありますもん」
――ホンマにそうだな(笑)。“直感で大丈夫だよ”ってね。
「いやぁ~直感って、大事ですね」
(2014年8月 8日更新)
Check
Movie Comment
か、かわゆす。新作解説&こぼれ話満載
Neat'sからのキュートな動画コメント
Release
覚悟と諦めが生んだファンタジー
原点&質感アップの3rdアルバム!
Album
『MOA』
発売中 3000円
dada-10
※デジパック仕様
※オフィシャルHPでのweb販売のみ。
<収録曲>
01. MOA
02. グレイの森
03. 夕暮れレコード
04. 黄昏れに雨
05. よるのいろ
06. 新世界
07. 海
08. 砂漠のスコルピオン
09. グレイテスト・エデン
10. wonderland
11. クライマーズ
bonus track
12. よるのいろ
~electro circus by 砂原良徳~
Profile
ニーツ…’85年8月17日生まれ、神奈川県出身。’03年にRYTHEMのピアノ&ボーカルとしてデビュー。’11年に解散。以降、新津由衣によるソロプロジェクトとしてNeat'sを始動。作詞作曲編曲の全てを自ら手がけ、web販売なども自らで行うD.I.Y.スタイルで活動中。ライブでは、ART-SCHOOL/Ropesの戸高賢史らを迎え、よりラウドなパフォーマンスを披露。単独ライブ『Bedroom Orchestra』も並行して行っており、ループマシーンやサンプラーを駆使した独自の独奏ライブのスタイルも精力的に展開している。’11年6月より毎日更新し続けたYouTube“Neat’s TV”も1000回に到達。また、’12年に1stアルバム『Wonders』、’13年に2ndアルバム『MODERN TIMES』とリリースを重ね、今年6月22日には3rdアルバム『MOA』を発表。音源はオフィシャルHPとライブ会場のみで販売されている。
Neat's オフィシャルサイト
http://www.neatsyui.com/
Live
東名阪仙4公演のバンドツアー
レコ発大阪公演が間もなく開催へ!
『Neat's Dream Band Tour「MOA」』
【仙台公演】
▼8月3日(日)18:00
PARK SQUARE
全席自由3000円
G・I・P■022(222)9999
【名古屋公演】
チケット発売中 Pコード232-820
▼8月9日(土)18:00
アポロベイス
前売3000円
ジェイルハウス■052(936)6041
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Pick Up!!
【大阪公演】
チケット発売中 Pコード232-847
▼8月10日(日)17:30
LIVE HOUSE Pangea
オールスタンディング3000円
清水音泉■06(6357)3666
※小学生以上は有料、
未就学児童は入場不可。
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【東京公演】
チケット発売中 Pコード233-658
▼8月30日(土)17:30
LIVE HOUSE FEVER
立見3000円
ホットスタッフ・プロモーション■03(5720)9999
チケットの購入はコチラ!
Column
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