“本格的なブルースロックを鳴らす女性5人組”。昨年、Drop'sがメジャーデビューした折、そのようなキャッチコピーを目にした読者も多いかもしれない。前作より約10ヵ月という早さで届いた2枚目のフルアルバム『HELLO』には、10代の多感な時期にブルースやロックンロール、ソウルやジャズをキャッチした中野ミホ(vo&g)をはじめとする5人の瑞々しい感性が無邪気に、ストレートに表出。“畳の部屋から 東へ西へ”と歌う『ハロー』には、かけがえのない自身の音楽を世界に放つ強い意志が刻まれ、“本当はさみしい歌が好きだから やさしくなりたいと思ってしまうよ”と綴る『行方』には、大きな瞳の奥にある翳りがうかがえるよう。現在行われている全国ツアーの大阪公演は、8月29日(金)福島2nd LINE。ライブではキュートなワンピースに革ジャンを羽織り、ハスキーな歌声を聴かせる中野ミホ・インタビュー。彼女が大好きだという60~70年代のロックンロールをリアルタイムで聴いていた、いわゆるツウな音楽ファンをも唸らせるDrop’sの飾らない魅力を感じとって欲しい。
――“昨日までとは何かが変わるよ”と歌う『ハロー』(M-1)がアルバムの入口に、弾むようなテンポで“捕まえられるもんなら 捕まえてごらんよ!”と笑って歌いかけるようなラストの『かもめのBaby』(M-13)が出口になっていて、アルバムが今のDrop’sの1つのストーリーを感じさせる作りになっているように思いました。それだけじゃなく、5人の好きなもの、カッコいいと思うロックンロールが詰まっている。反響はいかがでしたか?
「今までよりすごくポップになったので、“いいね”と言ってくれる人はたくさんいましたね。みんなで、“こういうものを作ろう”と話したわけじゃないけど、5月に出したシングル『コール・ミー』(M-2)を作るときに、プロデューサーのウエケン(=上田健司)さんから“メロディから曲を作ってみたら?”と提案があって。それまでは、曲作りではまず演奏とかコード進行があって、メロディは最後の最後にサラッと乗せる感じで作っていたんです。でも、『コール・ミー』をそうやってメロディから作ってみたら、すごくいい感じになって。アルバムの曲でも、メロディーラインを探してそこから曲を組み立てていくやり方にしてみました。それと同時に、“もっとたくさんの人に聴いてもらえるような、私たちなりのポップソングを作ろう”と意識して曲を作っていきましたね。そのやり方が自分たちにもしっくりきたし楽しかったから、このアルバムにもいいメロディや伝わりやすいものが入っていると思います」
――音もシンプルで、必要な音だけが鳴っているという感じですね。
「ライブで再現出来ることを考えて曲を作っていたし、5人で“せーの”で録る感じがいいかなって。アルバム制作は苦労もありましたけど楽しかったし、自分の中の“やってやるぜ感” がムクムクと湧いてきましたね(笑)」
――以前のDrop'sは、もっとコアな感じだった?
「バンドを始めた頃から、ロックンロールとかブルースをやりたいと思っていたんですけど、最初はただの自己満足というか(苦笑)。もちろん自分たちがやっていて楽しくて、カッコいいと思う音楽をやるのが一番なんですけど、自分の中のモヤモヤしたものを吐き出している感じが強かったんですね。けど、メジャーデビューして、たくさんの人に聴いてもらう機会も増えて、そういう“伝わりやすいもの”を作る責任があるのかなって思ったりもしましたね」
ストーンズを初めてアナログのレコード盤で聴いたときに
それまでとは全然感じが違って、“カッコいい!”と思った
――『マイ・ロックスター』(M-3)のリフや鍵盤は60年代のローリング・ストーンズの雰囲気を彷彿とさせます。
「はい。その曲はストーンズを意識しました(笑)」
――中野さんのロックンロールとの出会いは?
「最初に音楽を聴き始めたのは中学生ぐらいの頃だったんですけど、叔父がミッシェル・ガン・エレファントが好きで、父親はビートルズや(レッド・)ツェッペリンをよく聴いていて、そういう影響はあったと思います。The Birthdayを初めて聴いたときは、声とか歌詞とか、“こういう音楽が日本にもあるんだぁ”って衝撃的でした。そういうロックンロールやブルースがカッコいいと思ったし、自分たちでバンドをするならきちっとした日本語でそういう音楽をやりたいなって」
――『かもめのBaby』(M-13)はモータウン調ですが、そういうソウルフルなテイストもDrop’sの重要な要素としてあるように思います。ジャニス・ジョプリンもお好きですか?
「ジャニスも好きだしソウル、ジャズっぽいフィーリングにも惹かれますね。ただ、ブルースと言っても最初はよく分かっていなくて、私の好きなフィーリングがブルースなんだって分かったときに、じゃあマディ・ウォーターズを聴いてみようと。でも、そこで衝撃を受けたとかではなくて、ストーンズも最初はそんなにピンときてなかったんですね。でも、ストーンズを初めてアナログのレコード盤で聴いたときに、それまでとは全然感じが違って、“カッコいい!”と思ったんです。だから、その頃ピンときてなかった昔のブルースとかも、今聴いたら違うかもしれませんね」
――“日本語でやりたい”と言われましたが、そこにはこだわりがある?
「歌詞を書くことも中学から始めたんですけど、“身の回りの生活感”みたいなものがすごく大事だなと思っていて。歌詞は今も全部、自分の生活の範囲内で感じたことを書いているし、きれいな日本語で書きたいなと思っています」
――ちなみに地元の北海道では、Drop'sみたいにロックンロールをやるバンドは他にもたくさんいました?
「たくさん…ではないけど、ロックンロールをやってるバンドはいました。でも、最近はダンスっぽい音楽をやってる人が多いなと思いますね。特に東京に来るとそう思います(笑)。私自身は周りのシーンをあんまり意識したことはなくて。自分がすごく古い音楽が好きなのもあるし、好きなものをやりたいようにやっているという感じですね」
――その“古いもの”の何が中野さんの琴線に触れるんでしょう?
「何でしょう…日本のものでも外国のものでも、古い音楽が好きなんですよね。60年代、70年代の歌謡曲とかフォーク、ニューミュージックとかも好きで」
――『どしゃ降り』(M-7)はジャニス・ジョプリンと中島みゆきが融合したような曲ですね。
「嬉しいです。この1~2年でウエケンさんからキャロル・キングとかいろんな音楽を教えてもらって聴いたらすごく良くて。最近はキャット・スティーヴンスが好きでよく聴いてるんですけど、元々自分が好きだった映画『ハロルドとモード 少年は虹を渡る』(‘71)の音楽をキャットが手掛けていたんですね。これも古いですね…(笑)」
音も言葉も全部がリアルだし、ストレートだし
何も難しいことはしていなくて
――メンバーと自分たちの音楽性やバンドが目指す方向について話すことはありますか?
「あんまりないですね。全員が、カッコいいと思うものの基準は一緒なんだろうなっていう感覚があるので。それを曲を作りながら確かめている感じですね」
――では、Drop’sの目指すもの、中野さんが思うDrop’sのいいところは?
「ずっと長い間残っていく楽曲、長く愛されるバンド、誰かの生活の一部になれる存在感…そういう風になりたいと思います。いいところは…何だろう?(笑) 音も言葉も全部がリアルだし、ストレートだし、何も難しいことはしていなくて。これからも好きなことをやっていくので、それがみんなのどこかにひっかかったらいいなと思います」
――8月29日(金)大阪・福島2nd LINEでワンマンですね。関西のファンはいかがですか?
「2度目のワンマンなんですけど、初めてのワンマンもすごく良かったし、大阪は一度ライブに来てくれたら何回も来てくれるお客さんが多い気がします。ただ…これは大阪だけじゃないんですけど、Drop’sのライブに来てくれる方の年齢層が高いと思う(笑)。もっと、自分たちと同い歳ぐらいの人にもアルバムを聴いて欲しいし、ライブにも来て欲しいですね(笑)」
Text by 梶原有紀子