『たそがれマイ・ラブ』『シルエット・ロマンス』etc
あの名曲がアップデートされた珠玉のライブレコーディング!
元祖“シティポップスの女王”大橋純子のデビュー40周年を祝う
セルフカバーベスト『LIVE LIFE』インタビュー&動画コメント
今年迎えたデビュー40周年。バラードの名曲『たそがれマイ・ラブ』(‘78)や『シルエット・ロマンス』(‘81)など、多くのヒット曲を持つシンガー大橋純子が、アニバーサリーアイテムとしてベストアルバム『LIVE LIFE』をリリースした。意外や意外、初のライブレコーディングで制作された本作は、前述したヒット曲など、“シティポップスの女王”と称される彼女の代表曲をセルフカバー。ライブで活動を共にするミュージシャンたちと、いわゆる一発録りで臨んだ意欲作だ。書き下ろしの新曲1曲を含む全14曲は、認知度の高い珠玉のバラードからグルーヴィーなファンクまで、そのキャリアを凝縮した構成となっている。デビュー当時とほぼ変わらないというキー(声域)に加え、圧倒的な表現力は健在。この新作を携えた7月30日(水)・31日(木)ビルボードライブ大阪でのライブに向けて、アルバムについて、当日への意気込みを聞いた。
やっぱりね、歌がすごく好き
――デビュー40周年、おめでとうございます! アニバーサリーイヤーを迎えられていかがですか? 30周年や35周年とはまた感じるものが違いますか?
「いえ、あんまり違いはないかも知れませんね。私自身、昔からそういう周年とかに、こだわりがなくて(笑)。ただ、キャリアも30年を越えてくると、本人は何も変わらないんだけど、周りも少しは存在を認め始めてくれたのかな、というのはちょっと感じました。今回は40周年なので、逆に言うと私自身もちょっと胸を張れるようになってきたかなって。やっと私自身の中でも自信が持てるようになったんですよ」
――これだけ音楽活動を続けてこられた理由はなんだと思いますか?
「やっぱりね、歌がすごく好きだっていうのがあるんですけれども、今までは言うのもおこがましい、恥ずかしい感じだったのに、最近になって、ひょっとして歌うことが生き甲斐かもしれないって、そんな言葉が心の片隅に出てきたんです」
――それ以前は、歌うことが天職という意識はなかったんですか?
「ただ好きだからやってます! みたいな感じでしかなかったんです。あんまり考えてなかったのかな(笑)」
――デビュー40周年を迎えて、セルフカバー・ベストアルバム『LIVE LIFE』がリリースされましたね。
「そして、私にとって人生初のライブ盤でもあるんですね。ライブ盤って普通はどこかのホールだったり会場を借りてやるんだけれども、今回はメンバーも一緒にライブを廻っている人たちで、コーラスから歌から全員せーの!で、まさにお客さんがいないだけのスタジオライブ・レコーディングをしたんですね。元々ライブが大事な場所という想いがあったのと、7人のメンバーとは、この塊になってかれこれ20年くらいになるんです。その集大成的なものを今こそ作れるといいのかなって。男のメンバーの5人中3人は美乃家セントラル・ステイション(※大橋純子バックバンドとして’76年に結成)の後期のメンバーなんで、20代の半ばからだからもう35年以上の付き合いになりまして。本当に勝手知ったる仲間たちですし、それ以外に加わってきたメンバーも、一番若いドラムでもすでに17~18年になっちゃったんだって(笑)。いい機会だから私にとって初のライブ盤に、このメンバーでずっとやってきたライブならではのアレンジと音を、今だからこそCDに記録して残そうと思い立ちました。今回は、ライブ感、緊張感、生々しさ、みんなの意気込みなりが、空気として伝わってくるような臨場感のある盤を出そうというのが狙いでした」
“大橋純子という歌手はこうです!”と
今自分の持てる力量を精一杯出そうと思いました
――選曲はどんなポイントで?
「自分で“シティポップスの女王”と言っておりましたので(笑)、新旧織り交ぜた中で私がシティポップスだと思うもの、自分が好きな曲、あとは皆さんに好まれているライブで欠かせない曲とか、その辺に主題を置いて選びました」
――レパートリーが多いだけに、選ぶのは大変だったんじゃないですか?
「美乃家セントラル・ステイションでやってきたファンキーなものから、『シルエット・ロマンス』以降のバラード、実はシティポップスにこだわったサウンド志向のもの…全部含めて私なので。今回は、今の私の歌手としての幅、バンドで一番出したい色合い、ライブで培ってきたものを順番に織り交ぜました。例えば、『たそがれマイ・ラブ』『シルエット・ロマンス』以降しか知らない人、その以前も知っている人とか、いろんな方がいらっしゃるけど、“大橋純子という歌手はこうです!”と、今自分の持てる力量を精一杯出そうと思いました」
――中には、約40年ぶりというデビュー曲『鍵はかえして!』(M-6)も収録されています。
「『鍵はかえして!』だけはね、3年ぐらい前に一度取り上げて歌ったことはあるんです。このアルバムを作るにあたって、デビュー曲はあった方がいいよねって話になって。ただ、当時はソフトソウルの時代ですからそういうアレンジにされていたので、レコーディングで今やれる形にアレンジし直して。あと、セルフカバーアルバムと言いつつ、1曲だけ『RAINBOW』(M-14)という新曲を入れました」
――『RAINBOW』は、7人のメンバーを想定して作ったそうですね。
「7人のメンバー=虹だねっていう話のきっかけから、じゃあ『RAINBOW』っていう曲を作ろうって(笑)。でも、なかなか歌詞が書き出せない内にイメージ通りのあたたかくて優しい曲が先に仕上がってきて…実を言うと歌詞のコンセプトの元になっているのは、ここ数年ライブでダブルアンコールなんかがあったときに、“すごくシンプルだけど、いい歌詞だから”って紹介して歌っていた、キャロル・キングの『You've Got a Friend』を頭の片隅に置いて。人間老いも若きも、生きてる限り夢は持ってたい、幾つになっても友達は必要だよねっていう想いで書きましたね」
お客さまには対しては“お気軽に”って言うけど
私たちは全然気軽じゃなくて真剣勝負(笑)
――実際に挑まれたライブレコーディングはいかがでしたか?
「実際にお客さんがいるときの緊張感とはちょっと違うというか、異質ですね。よくやり慣れてる曲でしょ? でも、“さあ、いざレコーディングしますよ”っていうとね、みんな“失敗は出来ないぞ”みたいな…(笑)。瞬間の空気って大事で、歌もコーラスも一緒。後あでやり直せばいいかなって軽く思っていたら、とんでもない(笑)。ああいう熱いオケは、クールに歌おうと思っても、逆に歌えないんです。後で歌だけかぶせようと思っても、気持ちがハマッていかないの。今回は5日間で全部録ったんですけれど、やっぱり歌が一番生モノじゃないですか? 聴いてお分かりのように、途中で鼻声になったり、でも直せないし、これも含めて今の私だしっていうところで、良くも悪くもライブの醍醐味ということで…(笑)」
――そうやって完成した初のライブ盤は、ご自身にとってどんな1枚になりましたか?
「曲自体はもう嫌って言うほどやってるんですよ。でもね、何より全部が“今の自分たち”でしょ。大変だったけれど楽しかったし、ものすごくいい仕上がりになった手応えがありますね。自分たちが作ったものとは言え、結構飽きないで聴けるんだなぁ(笑)」
――まさに自信作ということで、ライブも楽しみになりました。7月30日(水)・31日(木)のビルボードライブ大阪公演は、ライブハウスを回る“club circuit”の一環ですが、このライブシリーズは言わばライフワークですね。
「そうですそうです。でね、大阪が一番早くに始まっていて、'99年に初めてやって、1回空いて、'01年からまたやり始めてるんで、結構続いてるんですよ。ホールコンサートにもいいところがありますが、“club circuit”はお客さまも近いし、ここが大きく違いますね。ごまかしが効かない部分もありますし、それが勝負所というか、メンバーも力が入る。お客さまには対しては“お気軽に”って言うけど、私たちは全然気軽じゃなくて真剣勝負(笑)」
――もちろん、今回は『LIVE LIFE』をフィーチャーした構成ということになるのでしょうか。
「ええ、もう丸ごとでしょう(笑)。だから体力的にも大変ですよ。時間的にも(セットリストを)どうしようかとか、メドレーにしようかとか、いろいろ考えているんですけれども」
――大橋さんにとって、ライブの魅力とはなんでしょう?
「ライブはね、いつからか好きになりました。実を言うと、最初はそんなに好きじゃなかったんです(笑)。と言うのは私、MCがすごく苦手でね。若い頃ってステージは歌うのは好きなんだけど、お笑いの人みたいにおもしろい話も出来ないし。でも、いつからだろうな? 休養して戻ってきてからかなぁ…40代に入ったあたりから、来る仕事を1つ1つやりながら慣れていって、本当に10年くらいかかって、ステージに立って歌うことの楽しさや気持ちよさみたいなものが、やっと味わえるようになったとき、“こんなに歌うことが好きなのか”って再認識したし、愛おしさみたいなものまで感じたんです。そうすると、いろんなこともあったけど肩の荷が下りたところもあって、MCでも身の回りのことや今思うことを…ネタも何もいつも出たとこ勝負なんで、時々ドツボにはまることもあるんですけど(笑)。やっぱりライブはいいな、好きだなって思えるようになったんです。やっぱり聴いてくれる人がいる、人に望まれるって、こんな特別な場所はないなって改めて思えるようになったんですよ」
――そんな唯一無二とも言えるライブに向けて、関西の音楽ファンにメッセージをお願いします。
「あっという間に40年経ちましたけれども、私にとってはまだ途中で、1日でも長く、1ステージでも多く、好きな歌を歌っていきたいと思っています。とりあえず皆さんとは楽しい場所を共有したい、一緒に笑ったり泣いたりなんかしたいなと。そういう場が持てる自分が今幸せなので、一緒に楽しみましょうよ。ぜひライブに来てください!」
Text by 金本真一
(2014年7月24日更新)
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