山崎まさよしのオープニングアクトとしても話題の“大型”新人
浜端ヨウヘイが東名阪マンスリーライブ開催中!
バンドを従えた6月の『BAND!BAND!BAND!』大阪編
心斎橋JANUS公演ライブレポート
身長192cmという大きな身体を響かせ歌う京都出身のシンガーソングライター、浜端ヨウヘイ。大学を卒業後、会社勤めをしながら音楽活動を行っていた彼は昨春、音楽に専念するため意を決し退職。自らブッキングし全国各地のライブハウスを廻り、日本中を歌いながら旅してきた彼は様々な出会いや縁を紡ぎ、『美ぎ島 ミュージックコンベンション in 宮古島』への2年連続出演、そして、昨年10月より行われている『山崎まさよしLIVE"SEED FOLKS"』のオープニングアクトに大抜擢! さらには、自身の全県ツアー『浜端ヨウヘイ弾き語りツアー Extra Large 2014』に、5~9月にかけて開催中の東名阪マンスリーライブと、縦横無尽に駆け巡っている。御年30歳、自身に関わる全ての事象に真っ向から向き合い続けた彼だからこそ、歌える歌がある──。決して短くはなかったであろう歳月を積み上げた、遅れてきた“大型”新人・浜端ヨウヘイの、“現在”が詰まったマンスリーライブをレポート!

心斎橋JANUSで行われた6月の大阪公演は、『BAND!BAND!BAND!』というタイトルから分かるように、リズム隊を従えたバンド編成での『ハロー』で始まりを告げる。“何もかもが回り始める”という歌詞通り、心地良いワルツのリズムを刻みながらゆっくりと穏やかに沁みわたるバンドサウンドと優しく力強い歌声に、早くも今日という最高の時間が約束されているよう。渾身の1曲目にフロアも歓声と拍手で応え、続く『ノラリクラリ』では自然と手拍子が巻き起こり、オーディエンスも思い思いに笑顔で口ずさむなど、一気に幸福な空気が会場を満たしていく。
バンドメンバーはヨウヘイのライブではお馴染みの東幸治(b)&立花朝人(ds)のコンビで、メンバー紹介時の客席からの好反応には、ヨウヘイも思わず「お前ちょっと人気者やないか!」と東にツッコミを入れる場面も(笑)。「いっぱい曲をやっていくんで、楽しんで帰ってください。お付き合いよろしく!」と、軽快なリズムに乗せた『ドライブミークレイジー』、ならではの苦悩を歌った『大男のブルース』と続き(笑)、「大先輩のスガシカオ先輩の名曲と、曲のタイトルが被ったので(笑)」、タイトルを変更したという裏話を聞かせてくれたバラード『たとえばそれは(it's all about love)』(ex.『愛について』)を披露。不器用で真っ直ぐな男が、愛を叫ぶ。その嘘偽りのない佇まいにグイグイと引き込まれる。ミドルテンポのラブソング『結い』では、ポップスの王道感を感じさせつつしっかりと言葉が届き、また違った愛の形を見せてくれる。
ここで、バンドメンバーが一旦退出し、弾き語りコーナーへ。「(前回のマンスリーライブから)全然家に帰れないまま1ヵ月が過ぎたんですけど、そんな家の窓から見えた空を思って作った歌です」と、アコースティックギター1本で奏でたのは『東京』。元々は弾き語りでのライブが中心だった彼が培ってきた表現力もさることながら、浜端ヨウヘイという1人の男の生活を切り取り曝け出したこの曲には、不思議な引力がある。演奏を終えてのMCでは、「まぁ、僕が今住んでるのは神奈川やけどね(笑)」と笑いを誘う。
「5月のマンスリーライブのとき、久しぶりに地元京都に帰って鴨川を歩いたときに作った曲です。『鴨川』…そのまんまやん!」と自分でツッコミつつ(笑)、どこか郷愁を感じさせるセンチメンタルなバラードを披露した後は、自身の音楽に対する気持ちを綴った『ラブソング』が、聴く者にじんわりと安らぎを与え、優しく包み込む。異なる表情を持つ3曲のバラードを聴かせ、再びバンドメンバーは定位置へ。ここで、ヨウヘイが鍵盤の前に座ろうとしたそのとき、足を滑らせ思いっ切り鍵盤を叩いてしまうハプニングに沸くシーンがあったものの(笑)、『限りなく、空』では、再び静かな熱を会場に取り戻していく。
ライブも中盤に差し掛かり、「そろそろ皆様がエコノミー症候群になるんじゃないかと思うんで(笑)、身体を動かそう」と披露したのは、上京してから毎日と言っていいほど通っているという焼鳥屋をテーマにした『BELONG-BELONG(ベロンベロン)』。待ってました!と言わんばかりの歓声と共に1人また1人とオーディエンスが立ち上がり、「『東京』もそうやけど、ちょっと自分の暮らしを曝け出し過ぎなんじゃないかな?(笑)」と語るのも納得の、お酒が好きなら思わず頷く“あるある”な歌で盛り上がる。カズーに鍵盤、ギターソロと、縦横無尽にステージで遊ぶヨウヘイ。『夜が明けるまで』のゴキゲンなサウンドが、総立ちとなった場内に響き渡る。
勢いもそのままに、そこからはノンストップで『むかしのはなし』、ライブ鉄板の『スーパーマン』では『学園天国』のコール&レスポンスも挟みつつ、力強くギターを掻き鳴らして始った『アンサーソング』、追い討ちをかける『now』と、圧巻のアッパーチューンの連続! そして、本編のラストソングは『神様』。“まだ帰りたくないよ/まだ帰したくないよ”、“僕らの時間をどうか止めてくれよ神様/頼むよ”と歌うヨウヘイ。オーディエンスもきっと同じ感情が込み上げてきていたことだろう。
そんな名残惜しさが包む会場で、アンコールが起こらないはずがない。
「やはり、漂うこのホーム感。何だろう、このホーム感(笑)。でも、いざ毎月東名阪ライブしに行くぞ!ってなったら、“え? そんなに来るの?”とか言われちゃったりして(笑)。でも、やると言ったからには、いつ来ても満足していただけるように」
盛大な拍手に迎えられ登場したヨウヘイが、そう言って披露したのは『Traveller』(名曲!)。去年、今年と『美ぎ島 ミュージックコンベンション in 宮古島』で訪れた沖縄で見た星空の素晴らしさを伝えたいという想いを歌に乗せ、弾き語りで会場に届ける。
「やっぱり待ち遠しかったです、大阪に来るのが。地元は京都やけど、ライブは大阪ばっかりやったし、街並とか匂いで思い出すことがあるんですよね。今日も会場までの道のりを歩いて来たんですけど、“あ、あそこで煙草買ったな”とか、“たこ焼き食べたなぁ”とか、いろいろ思い出して。そうやって何かを思い出すことが、一番起きるのが歌やと思うんです。僕にとっては一番辛くて、頑張らなと思っていた頃の歌を置いて帰ろうと思います」
そうして静かに歌い始めたのは、『無責任』。“死にたいって書いて生きたいと読んだ”という出だしには少しドキッとさせられるが、それはドン底から這い上がって来た彼自身が放つ、リアルで、とても説得力のある言葉だ。そして、どんなときも諦めずに歯を食いしばって突き進んで来たからこそ、最後に“大丈夫”と歌えるまでにたどり着けた景色でもある。
急激に変わり続ける環境の中で、浜端ヨウヘイの変わらない想いが詰まったライブ。演奏を終えてステージで1人、大きな身体を折り曲げ、客席に向かって深々とお辞儀をしていた彼の姿からは、その覚悟と、周囲への感謝が滲み出ていた。次回のマンスリーライブ大阪は、7月29日(火)南堀江knaveにて。『ハマバタ祭り』と題して、ゲスト=織姫にはシンガーソングライターの岩崎愛が参戦。是非、一夜限りのこの宴に参加して欲しい。彼の言葉を借りるなら、「わざわざ行こう! ライブハウスへ」。そこには最高の時間が待っている!
Text by 松川沙織
Photo by はやしまこ(maco-j)

(2014年7月25日更新)
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