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“人よりダメだからこそ出来ること”
最後に亀は勝つ!? シーン屈指のマイペース・オルタナ歌モノバンド
シュリスペイロフが15年目の上京と2年8ヵ月ぶりの新作
『turtle』を語る全員インタビュー&動画コメント

 北海道出身の3ピースロックバンド、シュリスペイロフ。不思議なバンド名を持つ彼らは’99年の結成以来、地元・札幌を中心にこれまでずっとマイペースに活動を続けてきた。しかし昨年、山中さわお(the pillows)が主宰するDELICIOUS LABELへ移籍。今年4月にリリースされたミニアルバム『turtle』を機に、住み慣れた札幌を離れ、活動の拠点を東京へと移したという。結成から15年を経ての東京進出には何か強い想いがあったのか聞いてみるも、インタビュー中の彼らは終始のんびり。上京への思い入れはそんなに強くない? 移籍後初の作品への想いは? タイトル通りの、何ともスローでマイペースなトークを繰り広げる。ロックバンド然としたイメージとは異なる、ゆる~い雰囲気を持つ3人特有の空気感。7月4日(金)には大阪・心斎橋Pangeaにてリリースツアーを控えているシュリスペイロフのこの空気感が、ステージでどう変化するのか? マイペースだからこそ、続けられてきた音楽がここにある。

 
 
もう少し音楽を楽しみながら制作する方が
もっとバンドっぽくなるのかなと
 
 
――今作はthe pillowsの山中さわおさんのレーベルからのリリースですが、さわおさんとの出会いはいつ頃?
 
宮本(vo&g)「大阪で自分たちのライブがあるタイミングで、某ラジオ局が主催する大きなイベントがあったので遊びに行ったんです。そこでさわおさんと出会って、ちょうど『もぐる』(‘09)っていうアルバムが出たところだったので、それを渡して…それが初めての出会いだったんです。その後は特に接点もなかったけど、風の噂でさわおさんが僕らのことを良いって言ってくれていると聞きつけて。交流のあったカミナリグモがさわおさんプロデュースで作品を出したことをきっかけに、また会う機会が出来たんですよ。そこで初めて電話番号を交換して、ライブも観に行くようになって。東京で僕らのライブがあったときにさわおさんが観に来てくれたんですけど、当時在籍していたレーベルから新しい作品が出せない状態だったんで、さわおさんが主宰するレーベルからリリースさせてもらえないかお願いしてみようと。“レーベルに入れてください!”ってお願いしたら、“いいよ~”って」
 
――思ったよりもラフな移籍決定だったんですね(笑)。レーベルを移籍するだけでなく、これまでずっと活動していた札幌から離れて、上京もしましたよね。
 
野口(b)「さわおさんから、“レーベルに入るなら東京に来ないか”って言われて。東京に来た方が活動の幅も広がるし、“そっか~”って(笑)」
 
――住み慣れた街を離れるのは決断力のいることだと思うんですが。
 
野口「そうですね。でも、実際に東京に来てみたら動きやすいですし(笑)」
 
――北海道が拠点だと、地方のライブに行く交通手段も飛行機がマストになりますもんね。
 
野口「1本の大切なライブのために上京するのはいろいろ大変で、まとめてライブしないといけなくなるし」
 
――制作において、これまでとやり方は変わりました?
 
宮本「違いましたね。今回はレコーディングを楽しむことを意識しましたね。これまでは根を詰めて、煮詰まりながら打開策を見付けていって、やっと出来た!っていうようなやり方だったんです。でも、前作の制作後から次は“バンドっぽい”ものを作りたいなって考えていて。これまではきっちりきっちり作っていくタイプだったんですけど、もう少し音楽を楽しみながら制作する方がもっとバンドっぽくなるのかなと。『檸檬』(M-4)は一発録りなんですよ。しかも、本番ではなくて、デモの音を採用していて。プレイ的には間違っている部分もあったんですけど、それを踏まえてもいい楽曲だなって思える。それがバンドっぽく感じるなって。…バンドっぽいエピソードですよね?(笑)」
 
 
急がなきゃな~とは思っています(笑)
 
 
――“バンド感”と言うと、シュリスペイロフは結成から5年間はライブをしていなかったんですよね? “ライブやるぞ!”と熱くたぎるような想いはなかったんですか?
 
宮本「ライブをやっていない5年間もたぎってはいましたよ」
 
野口「全然感じなかったよ(笑)」
 
――シュリスペイロフは全員のんびりしているというか、マイペースなんだろうなとは思っていたんですが。
 
野口「宮本は2~3か月平気で連絡を取ってこないんですよ(笑)。そろそろスタジオに入ろうよってこっちから連絡するくらいだから、全然たぎってなかったよ(笑)」
 
――宮本さんは空白の期間は何をしていたんですか? 曲作りに夢中になっていたとか?
 
宮本「いや~特になにもしてないですね(笑)」
 
ブチョー(ds)「たまに電話で曲を聴かされるくらいで」
 
宮本「ライブをしていない5年間は、いい感じに勘違いをしている年齢で」
 
野口「ライブを始めたのが24歳くらい? 夢見がちな考えが終わり出す年齢でライブを始めたからこそ、今のテンションに繋がっているのかなと思っていて」
 
――今もペースには変わりがないですか? 曲が出来たら集まろうか~とか?
 
宮本「急がなきゃな~とは思っています(笑)」
 
――制作において、さわおさんからアドバイスは何かあったんですか?
 
宮本「基本的には自由にやらせてもらって」
 
ブチョー「提案をもらうこともあったんですけど、レコーディング中も夕方を過ぎると“オレ、飲むから”ってお酒飲みながら立ち会うぐらいで(笑)。基本的には自分たちに任せてもらいましたね」
 
宮本「作品全体としては、バランスの取れたものにしようとは思っていて。タイトルの『turtle』は2年半ぶりのリリースだし、(制作スピードが)遅いな~っていうところで。曲作りなんかはいつもと変わらないけど、レコーディングそのものは今までと比べるとラフな感じで進行しましたね。それまではレコーディングに全員が集まって“さぁヤルぞ!”って勢いをつけていたけど、今回は肩肘張らずに自然な演奏が出来たなって思います」
 
――宮本さんからメンバーに注文をしたり、意見を言うことはあるんですか?
 
宮本「特に…言わないよね? あんまり伝えない」
 
――どうやって曲が完成していくのか不思議なんですが…。
 
野口「もう長年一緒にやってるからかな…何も考えてないですね(笑)」
 
宮本「最初の5年間は無駄じゃなかったよね?(笑) 曲の作り方も変わってきていて、前は試行錯誤して1曲を作るのに5曲は作れるんじゃないかっていうくらい苦労をしていて。しかも、最初に出来たものとは全く違う作品に仕上がることもあったりして。どうしたらみんなの期待に応えられるのか、アレンジや曲構成を考えたりしていたけど、今は自然に出てくるメロディや歌詞を大事にした方が結局お客さんに伝わるのかも。なるべく自然に、奇をてらっていない方がいいのかな」
 
――今作はレーベル移籍や上京というポイントだけでなく、バンドとしても基点となる作品になりそうですね。
 
宮本「曲の作り方もラフになったし、バンドそのものもレコーディングを楽しみながら出来ましたね。ライブも“自分たちで作っていこう”という想いが今は大きくなってきて。それまでは、お客さんにとっては分かりにくい曲でも、自分たちからすれば面白い曲だと思っていた。でも、やっぱり実際にステージで披露すると、みんなポカーンとしていることがあったんですよね。どうすればお客さんに伝えられるのかを考えることが全くなくて、自分たちがやりたいことをただ見せていくだけ。それでも好きな人は見てくれるんですよ。でも、今ではもう少し違う人たちにも見て欲しいなって思うようになったし、どうやったらお客さんに伝わるのかを、一生懸命考えるようになりましたね」
 
 
ダメなことを変えていこうとは思うんですけど
同時にそれも必要なことだと思う
 
 
 ――宮本さんの綴る歌詞は独特の世界観がありますよね。1人称の世界、自分の世界を深く突き詰めた歌詞だなと感じました。何気ない言葉だけど、すごく奥が深くて。
 
宮本「今回意識したのはまさに“何気ない言葉”で、みんなが普段使っている言葉をそのまま使うようにしていて。歌詞を書くときは、最初から何について歌うかは考えていなくて。書いていくとテーマが見えてくるんで、それを突き詰めていく。だから、いつも着地点が提示出来ない。正解がないような世界になりますね」
 
――宮本さんの描く身近な世界、言葉の選択に、20代特有のモヤモヤとした空気を感じる部分がありました。
 
宮本「自分はダメな部分がすごく多くて、ダメなことを変えていこうとは思うんですけど、同時にそれも必要なことだと思うんです。それを認める。ダメだって思うことも歌ってしまおうと」
 
――ダメな部分もあけっぴろげにしちゃおうと。
 
宮本「成長してもダメなところって、人には絶対あると思うんです。人よりダメなことも歌っていったらいいんじゃないかなって。自分は他の人よりダメなんで…」
 
――ちなみに、どこがダメなんでしょう?
 
野口「××××なとこじゃない?(笑)」
 
――掲載出来ない(笑)。
 
宮本「あんまり大きな声では言えないというか、勘違いと思われるかもしれないけど、“みんなダメじゃん”って昔から思っているんです。人のダメな部分ってかわいくもあって、ダメなことも認めてしまったら、すごく楽になれる。だから、周りがダメでも僕は許してしまうし、僕がダメでも、そんなに怒らなくていいのになって思う(笑)」
 
――野口さんとブチョーさんは、宮本さんの世界観を理解して、楽曲に肉付けしていくんですよね?
 
野口「曲を持ってきた時点で歌詞が完成していることはあまりないので、雰囲気を感じて肉付けしていくことが多いですね。まぁ15年も一緒にやっているので、改めて理解しようとしてやっていることはなくて。“次はこういうことがやりたいんだな”っていうことに対して、自分なりに答えを返していく感じですね」
 
ブチョー「演奏していて耳に入ってくるフレーズとか、全体のイメージ像から膨らませたりしながら、リズムを合わせていきますね。バンドを結成する前からの友達なんで、“宮本がこういうキャラクターだからここはこうしよう”っていうよりも、僕から自然と湧き上がるものを寄り添わせている感じですね=あんまり考えてないですね(笑)」
 
――“何も考えてない”というような言葉がよく出てきますが、メンバー同士の意思疎通や楽曲作りやライブについて、バンド会議なんかをすることはないんですか?
 
宮本「楽曲に関してはないかな。他のバンドのライブを観て、こんなバンドがいたよ~って話をすることはたまにありますけど、多分聞いてない(笑)」
 
野口&ブチョー「聞いてないですね~(笑)」
 
――上京すると、他のアーティストのライブを観に行ったり、刺激や交流が増えたりするんじゃないですか? 同時に見なくてもいいものまで見えてしまったり、聞きたくないことまで耳に入ったり、周りの情報にかき回されるバンドもいれば、その悔しさをパワーにするバンドもいる。シュリスペイロフはシーンきってのマイペースなバンドだと思うんですが、東京での刺激や変化はないですか?
 
宮本「いやぁ…ないですね。何かよく分からないけど…東京に出てきたよね?(笑)」
 
野口「札幌にいようが東京にいようが、影響はないです」
 
 
反省していたら次が出来ない
 
 
――今作で、これまでとは違うなと感じる曲はありました?
 
野口「『どうでもいい』(M-5)は、いつもならアルバムには入れないような曲ですね。これまではリハスタに長い期間入ってから、やっと収録しようかとなるんですけど、こういう風にラフに作った曲を短期間で仕上げて収録することはなかったんで。バンドにも変化があったのかもしれないですね」
 
ブチョー「『下着と日々』(M-1)は今までとは違う雰囲気でしたね。歌詞がまだ固まっていないときはハードな曲になるのかと思っていたんですけど、意外とポップに仕上がって。今までは曲に演奏が寄り添うイメージだったけど、この曲は演奏とのギャップがある。でも、それが合わさると自然と聴ける。そのギャップが面白かったですね」
 
――レコーディングでは言葉少なくとも意思疎通が出来ていますが、ライブ後に反省会をするようなことは?
 
野口「大々的に反省会をすることはないですね。何かの機会があれば話すくらいで。力が入り過ぎてたよねとか」
 
ブチョー「反省していたら次が出来ないんで」
 
――それが15年間バンドが続いている秘訣かもしれないですね。
 
野口「でも、ブチョーが大事なワンマンライブの1曲目で、ドラムのペダルをスーツのパンツの裾に巻き込んでしまっていきなりミスしたときは、ちょっと反省しましたね(笑)」
 
ブチョー「それ以降、ライブでスーツを着るのはやめました。そのときはもう、頭が真っ白でしたね(笑)」
 
――話していて、3人のテンションが常に一緒なんだなと感じました。波長が一緒だからこそ、マイペースに一緒にやってこれた。波が一緒だからこそ狂うことなく、常に同じ目線で動いてこれた。今回の作品も、そういう波長があるからこそ作れたんでしょうね。その辺りも、特に何も考えてない感じですかね?(笑)
 
宮本「よく“ユルい”って言われるんですけど…この2人はそうですけど、オレ自身ユルいとは思っていなくて」
 
――すいません…いい感じに3人ともユルいです(笑)。
 
全員「(笑)」
 
――リリースツアーもありますが、どんなステージになりそうですか?
 
宮本「僕らの人間性と、音楽、それをいい感じにみんなに伝えられたらいいなと」
 
ブチョー「とにかく楽しんでもらえるようにしたいですね。バンドとしても変わってきているので、楽しみです」
 
――今回の作品とライブで、またバンドとしても大きく変化がありそうですね。
 
宮本「昔はみんなに合わせて楽しませるようなスタイルだったけど、今回は自分たちが好きなことをやって、受け入れられてもらえるように。楽曲で楽しませられる自信はついているので、あとはどう楽しませるか。それが自分たちでも楽しみです!」
 
 
Text by 黒田奈保子



(2014年6月30日更新)


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Movie Comment

これを見れば空気感が分かる!?(笑)
シュリスペイロフからの動画コメント

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Release

日常に目を落としたオルタナティブ
歌モノ極まれり! 2年8ヵ月ぶりの新作

Mini Album
『turtle』
発売中 1500円
DELICIOUS LABEL
BUMP-040

<収録局>
01. 下着と日々 
02. 朝ごはん
03. 小説
04. 檸檬
05. どうでもいい

Profile

シュリスペイロフ…写真左より、野口寛喜(b)、宮本英一(vo&g)、ブチョー(ds)。’99年、札幌にて結成。バンド名の由来は宮本が敬愛する漫画家・しりあがり寿氏の著作『真夜中の弥次さん喜多さん』に、1コマだけ登場する登場人物の名前から引用。結成から5年間は「ライブハウスが怖い」という理由からライブ活動は行わず、スタジオでの曲作りのみの活動を続ける。’04年、満を持して初のライブを開催。ライブをする楽しさを知り、それ以降は札幌を中心に東名阪のイベントなどにも積極的に参加する。’05年10月にタワーレコード札幌ピヴォ店限定で3曲入りEP『ダイバー』をリリース。’07年には、同郷のサカナクションやMONOBRIGHTらが出演し、札幌と東京で開催されたイベント『NORTHERN EDGE』に参加。活動の幅を牛歩ながらもゆっくりと拡大しながら、これまでに3枚のアルバム『シュリスペイロフ』('08)『もぐる。』('09)『0.7』('11)、ライブアルバム『シュリスペイロフ LIVE十一』('11)をリリース。’13年より、山中さわお(the pillows)が主宰するDELICIOUS LABELへ移籍。東京に拠点し移して活動を始める。今年4月16日にはミニアルバム『turtle』をリリースし、さらなる活躍が期待される。

シュリスペイロフ オフィシャルサイト
http://syurispeiloff.jp/


Live

盟友を招いた名阪公演が間もなく
ファイナルの東京はワンマンで!

Pick Up!!

【大阪公演】

シュリスペイロフ“turtle”発売記念
『良い亀、悪い亀、普通の亀ツアー』
チケット発売中 Pコード227-656
▼7月4日(金)19:00
LIVE HOUSE Pangea
オールスタンディング2500円
[共演]LOVE LOVE LOVE/カミナリグモ
LIVE HOUSE Pangea■06(4708)0061

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【名古屋公演】
チケット発売中 Pコード227-603
▼7月5日(土)18:00
CLUB ROCK’N’ROLL
前売2500円
[共演]LOVE LOVE LOVE/カミナリグモ
ジェイルハウス■052(936)6041

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【東京公演】
チケット発売中 Pコード227-531
▼7月9日(水)19:00
下北沢 CLUB Que
スタンディング2800円
下北沢 CLUB Que■03(3412)9979

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