「自分で自分を一回リセットしようと思った」
シンガーソングライターとして、女性として、
変わりゆく自分を見つめた2年ぶりの2ndアルバム『ワタシプラス』
井手綾香インタビュー&動画コメント
この春、約2年ぶりの2ndアルバム『ワタシプラス』を届けてくれたシンガーソングライター、井手綾香。今作はソングライティングに加えアレンジも自ら手掛け、アコギやパーカッションも演奏、CDのアートワークに至るまで初めてセルフプロデュースに挑んだ意欲作だ。そこには、これまでCM曲などで耳にしてきた華やかな歌声だけでなく、失恋の悲しみを滲ませた繊細なバラードや家族のことを思うハートウォームなナンバーなど、陰影に富んだ素直な思いが綴られている。10代の瑞々しさが溢れ出した1stアルバム『atelier』(‘12)の頃から、20歳になってより生身の表現を求めた現在まで、彼女の中でどんな葛藤や心境の変化があったのか? ロングからショートヘアになってイメージも新たに、「自分をさらけ出せることが気持ちよくなってきた」と語る彼女が、東京・大阪でのリリースワンマンライブを前に、気さくな笑顔を振りまきながら等身大の想いを語ってくれた。
自分の本当にやりたいことをどんどん見付けていったアルバム
――この春リリースされた2ndアルバム『ワタシプラス』では、イメージを一新されていますね。
「デビューしてからずっとロングヘアに制服でやってきましたけど、高校を卒業してから、やりたいことはたくさんあるのに、どうしたらいいのか分からなくなった時期があって…自分で自分を一回リセットしようと思って。髪を切ることが1つのきっかけになったんです。髪が長かった頃の自分のイメージは、すごく前向きな歌詞で、憧れていた世界でこれから頑張らなくちゃいけないっていう勇気とか希望を曲にしていて。確かにそういう明るくてキラキラしたものを歌いたいのも自分なんですけど、だんだん“こうじゃなきゃならない”みたいに、自分で自分を縛っていたようなところがあったんだと思います。もっといろんな音楽に挑戦したいとも思っていたので、思い切って髪を切ったことで、新しいことには挑戦しやすくなりましたね。そこから新しくギターで曲を作ってみたり、もっとリアルな自分の体験…例えば失恋ソングみたいなものを書こうと思えるようになったし。そういう自分の中の葛藤とか変化しようとしている部分が全部入っていて、だいぶ開けたところまでこのアルバムで聴けるので。そういう意味では、今作を聴いてくれた人にどんどん成長していく自分の姿が伝わるんじゃないかなと思っています」
――髪を切って、自分をより解放出来るようになったんですね。
「この髪型が今の自分のやりたいことや本当の性格に、一番寄り添ってるのかなあって思ったりします。こんなに短いのは人生初ぐらいですね。自分の本当にやりたいことをどんどん見付けていったアルバムでもあるし。自分で編曲もやりたい、音ももっとこだわりたい、楽器に挑戦したい、デザインももっとやりたいって、やりたいこと全部言ったら、ホントに全部やることになって(笑)。ライブも髪が長い頃に比べるとすごく変わったんですよね。デビュー当時はしっとりピアノを弾きながら歌っていたんですけど、今はギターも弾くようになったのでもっと体が動くし、ちょっと表情も変えて歌えるようになったし。お客さんとの距離ももっと近くなりたいと思っていたので、お客さんに対してもだいぶ心を開けるようになりました」
――アコギはいつ始めたんですか?
「1年ぐらい前にピアノで曲が書けなくなった時期があって、作曲のために始めたんです。永積さん(=ハナレグミ)のアコギの弾き語りが大好きで、私もやりたいなってずっと思っていたんで、簡単なコードから覚えていって、そこから曲も作るようになっていったんです。初めてギターで作った曲が『消えてなくなれ、夕暮れ』(M-4)ですね。今までの自分からは出てこないような世界観だったので面白い!と思って。そこからは結構ギターで曲を作ってます。そうしたら、いつの間にかライブでもギターを弾くようになって…『髪を切りました』(M-15)はアコギ一発録りの弾き語りですし。『ストール』(M-5)『明日になれば』(M-13)の2曲はパーカッションもやってみて、すごく面白かったですね。ホントはドラムがやりたかったけどすごく難しかったので、もっと特訓してからにします(笑)。『ストール』『明日になれば』『最後のさよなら』(M-14)『髪を切りました』の4曲は、初めて全部自分で演奏しています。ちょっとつたない演奏だけど、それが味として聴こえたらいいなって」
ジャケットも含めて出来る限りのことを全部やらせてもらいました
大変でしたけど(笑)
――そもそも今作でセルフプロデュースしたいと思ったきっかけは?
「どこからがセルフプロデュースなのかもよく分からないんですけど、ただ純粋に、自分が作詞作曲した音楽を最後まで見守りたいっていう気持ちで作っただけで…。高校で芸術を勉強していたので絵も写真も大好きだし、デザインもこだわるタイプなので、今回はそこまで思い切ってやりたくて。ジャケットも含めて出来る限りのことを全部やらせてもらいました。大変でしたけど(笑)」
――それだけ達成感はありましたか?
「ありました! どうやってアルバムが出来上がっていくのかを知ることが出来たし、また次に繋がるかなって。こだわりは持ち続けていきたいので、自分の意見は伝えていこうと思うんですけど、次回作もセルフプロデュースするかどうかはまだ決めてなくて。どんどん自分の世界だけに入っていっちゃうとまた固まっていくかもしれないので。スポンジみたいにいろんなものを吸収して、常に新しいことに挑戦しながら作っていきたいですね」
――そうやって意欲的にいろんな楽器に触れていると、音色や曲調がもっと広がっていきそうですね。
「今度はエレキギターのリフから曲を作ってみたいですね。そういうのも新しいし面白いだろうなって。“井手綾香の歌を聴いていると眠くなる”とか(笑)、“そよ風みたい”って言う人は結構多いので。そういうイメージもあっていいんですけど、“ちょっと強い井手綾香”もやってみたくて。ロックの匂いのする音楽もやりたいし。そういう気持ちもあって、『消えてなくなれ、夕暮れ』のような曲もやっているんですけど」
――サビ辺りで強くなっていく曲調が印象的ですね。
「実は結構そういう曲も好きなので。それはどちらかと言うと私の影の部分なんですけど…。そこも前面に出していけたらいいなぁと思っています」
――明るく爽やかなイメージだけじゃなくて?
「だって、キラキラしているだけの人って面白くないじゃないですか?(笑)」
――光があれば影があるし、その方がより立体的な人間像が浮かび上がりますね。
「私は、そんなに明るい人っていう感じでもないので(笑)。キラキラしているイメージだけになっていた自分が、ちょっと苦しくなった時期もあって悩んでいたので。“実はこういう部分もあるんだよ”って吐き出せるようになりました。キレイな言葉だけじゃなくて、“そんなこと言っちゃうんだ!?”っていうところまで攻めようと、もっと人間臭いところを曲にしたいなと思っていたので。今作では作詞も新しい気持ちでトライしてみました」
自分のダメな部分を出すことにそんなに抵抗がなくなった
――『らしくないし、』(M-7)の最後の“そんな事言えないけど。”にはキュンときました。実際は言えないけど、歌には出来るからっていう想いが伝わってきて。
「これはホントに自分のことをそのまま書いているだけなんですけど…なかなか素直になれない人ってきっといっぱいいると思うし、私が実際そういう人だし、そのまんま曲にして(笑)。でも、そうやって思っちゃってるからこそ上手くいかなくて、結局、片思いのまま終わっていくことがよくあるので。そういうのって、きっと私だけじゃないと思うから。『消えてなくなれ、夕暮れ』で初めて失恋ソングを書いてさらけ出せるようになって、自分のダメな部分を出すことにそんなに抵抗がなくなって。前は恥ずかしいなとか、家族が見るしなとか(笑)、いろいろ思ってたけど、今はそういうのも全然関係なくなって。自分をさらけ出せることが気持ちよくなってきました」
――家族のお話しが出ましたが、『飾らない愛』(M-3)や『最後のさよなら』は家族に向けての歌なのかなと。
「まさにそうなんです。『飾らない愛』はドラマ(=NHKプレミアム『今夜は心だけ抱いて』)のお話をいただいて書き下ろした曲ですが、家族の愛情を深く感じたドラマだったので、家族のことについて書こうと思ったのがきっかけですね。ちょうど高校も卒業して頻繁に家族とも会えなくなっていたので、そのありがたみを感じるようになったし、自分を重ねて曲を書いてみようと思って。小さい頃、母親からもらったプレゼントが気に入らなくて投げ捨てて、母親を泣かせてしまったことがあったんです。そのときはちゃんとごめんって謝れなくて…でも、そんなことも気にせず、いつもすごく大きい愛情で自分たちを育ててきてくれた母親の偉大さを感じて。そのことを思い出しながら、そのまんまその気持ちを曲にしました。『最後のさよなら』は祖父母に書いた曲ですね。うちは祖父母もみんな一緒に住んでいるので、実家から東京に戻るとき、ふとこれが最後になるときがくるかもしれないと思ったら、すごく悲しくなって。後悔しないようにちゃんと気持ちを伝えておかなきゃいけないなって。今だからこそ書ける家族への気持ちなのかなと思います」
――そんないろいろな想いが詰まった今作を手に、ツアーが間もなく始まります。
「アルバムリリース後のワンマンライブってすごく特別なライブなので、みんなで一緒に楽しめるライブにしたいですね。1stワンマンライブのときは楽しかったんですけど、ホントにいっぱいいっぱいで。とにかく歌い切れたっていう部分が大きかったんですよ。だから今回は、お客さんに“ホントに来て良かった!”って思ってもらえるライブにしたくて。みんなと一緒に盛り上がれたらと思いながらアレンジした曲もあるので、しっとりした井手綾香だけじゃなくて、盛り上がれる楽しいライブをバンドでやりたいなと思っています」
――井手さんの新たな成長が感じられるようなライブになりそうですね。
「“変わったな”って思ってもらえたら嬉しいですね。常に進化し続けていきたいし、いい意味でお客さんを裏切っていけたらと思っているので。そのためには今後もいろいろと挑戦していかなきゃいけないなって、思っています」
Text by エイミー野中
(2014年6月 5日更新)
Check
Movie Comment
話す姿もステキです!
井手綾香からの動画コメントはコチラ
Release
タイアップ曲も多数収録!
挑戦が詰まった2年ぶりの2ndアルバム
Album
『ワタシプラス』
発売中 2900円(税別)
ビクターエンタテインメント/
Colourful Records
VICL-64144
<収録曲>
01. 235
02. 歩いてゆくよ
03. 飾らない愛
04. 消えてなくなれ、夕暮れ
05. ストール
06. つばさ
07. らしくないし、
08. 弱虫トラベラー
09. 君と一緒なら~album version~
10. 眩しく優しく強く
11. Growin'Up ~album version~
12. 青いバス
13. 明日になれば
14. 最後のさよなら
15. 髪を切りました
Profile
いで・あやか…’93年7月19日生まれ。野生の馬が100頭近く生息する自然豊かな地、宮崎県串間市で生まれ育つ。'11年3月16日、ミニアルバム『Portrait』でデビュー。収録曲の『雲の向こう』がエスエス製薬ハイチオールCプラスCMソングに413曲もの候補の中から抜擢。以降、多くのCM、ドラマのテーマ曲を手掛けるきっかけに。また、'11年を代表するアーティストの1人として『iTunes Rewind 2011』ブレークスルーアルバム賞を受賞。'12年2月、'11年からNHK宮崎と共に約半年にわたり口蹄疫や新燃岳噴火で被害のあった地元宮崎の農家・畜産家を訪ね、その声を楽曲にあらわにした『輝く海』を発表。この模様はドキュメンタリーとして全国放送、NHKワールド配信により世界に届けられた。また、この楽曲をNHK宮崎主催の復興イベントライブにて宮崎の高校生合唱部とともに初披露したのも話題に。同年4月にメジャー1stアルバム『atelier』をリリース。7月には『FUJI ROCK FESTIVAL’12』、8月には日本人アーティストとしてデビュー史上最速(デビューから528日)で『MTV Unplugged』への出演を果たす。'13年、デビュー3年目のスタートを迎えた3月16日に福島県いわき市にて震災復興イベント『0246プロジェクト』に出演。'14年2月には、地元宮崎にて凱旋ホールワンマンライブを開催。4月16日に2年ぶりとなる2ndアルバム『ワタシプラス』をリリース。
井手綾香 オフィシャルサイト
http://www.jvcmusic.co.jp/ideayaka/
Live
Pick Up!!
【大阪公演】
『井手綾香2nd Album Live 2014
「ワタシプラス」』
チケット発売中 Pコード225-081
▼6月7日(土)18:30
心斎橋JANUS
自由席3800円
GREENS■06(6882)1224
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【東京公演】
チケット発売中 Pコード225-329
▼6月13日(金)19:00
duo MUSIC EXCHANGE
全自由3800円
ホットスタッフ・プロモーション■03(5720)9999
※未就学児童は入場不可。
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