2人ぼっちの新学期
HOLIDAYS OF SEVENTEENがメンバーの脱退を越えたどり着いた
タフで輝ける再出発を語る。パワーポップ復興支援ミニアルバム
『new school』インタビュー&動画コメント
10代で衝動のままに楽器を手に取り、20代で見果てぬ夢を追い求めたミュージシャンが、岐路に立たされるターニングポイントがある。才能があろうがなかろうが、人気があろうがなかろうが、金があろうがなかろうが、それは残酷に、そして平等にやってくる。結成10周年のアニバーサリーイヤーを迎えた昨年末、メンバーの過半数が脱退するという強烈なボディブロウをくらったHOLIDAYS OF SEVENTEENも、例外ではない。“和製ウィーザー”と称賛され、福岡から希望とグッドメロディを手に上京した彼らも、今や30代へと突入。求められる人生の選択、追い詰められる自問自答、誰もがふと立ち止まるそのときに、彼らが生み出した新体制初音源となるミニアルバム『new school』の起死回生のフレッシュさたるや…! 90年代のパワーポップ黄金時代のエキスを濃縮還元&アップデートした今作は、初の日本語詞に、思わず頬が緩む“パワーポップあるある”なブレイクなどやりたい放題(笑)。山本幹宗(ex. The Cigavettes)、長島涼平(the telephones)、BOBO、GOI(ex. 99RadioService)、山本慎也(you you you all the same)、奥田一馬(Nina lovegood)ら盟友が集い、持ち味の歌声とメロディの魅力を素直に引き出し、溢れんばかりの音楽の力を宿した1枚となっている。そこで、メンバー脱退のドラマのような(!?)内幕、日本語詞に踏み切った意図から制作の裏エピソードまで、新生HOLIDAYS OF SEVENTEENの輝ける再出発を、三浦太郎(vo&g)と伊藤健二(ds)に語ってもらった。
何かカップルの1つの別れを見るような、ドラマみたいなシーンが(笑)
――今回の音源の云々の前にね、聞かなければならないことがあるという。まずは前身の“しっとりクッキー”から数えて結成10周年というゴールデンイヤーの昨年末に(笑)、メンバーが2人脱退するというバンドの存続を揺るがす大事件があって。
伊藤(ds)「まぁ元々5人だったのが、ギターが抜けて4人になって3年弱、バンド自体に浮き沈みがあって、その沈んだときに辞めようかみたいな予兆がちょいちょいあったんですけど、それが遂に来たっていう。今年で30というのもあって、このまま続けていていいのか考えたんじゃないかな?っていうか、多分そうなんですけど」
三浦(vo&g)「もう俺らぐらいのバンドマンが考えることって、そういうことなんですよね。これ以上頑張るには、ちょっとモチベーションがついていかないとか」
伊藤「あとはまぁ、ケンカとかいろいろ(笑)」
三浦「よくありました(笑)。ぶっちゃけ去年1年はずっとそれを抱えながら音源も作って、ツアーもしまくって。それも結局モチベーションを保つため、みたいな感じになっちゃって」
伊藤「ライブがなかったら、抜けるのはもっと早かったかもしれないですね。やっぱりライブはある種の高揚感が生まれるから、それで続けられたところはあったと思う。でも、結局“じゃあね、まぁ辞めるわ”みたいな感じで、バタン!とドアを閉めてリハスタを出て行って…何かもう、カップルみたいな感じなんですよ。追いかけた方がいいのかな?みたいな空気になって、そこで(三浦)太郎ちゃんが…」
三浦「“ちょっと待って!”ってこう、服の裾を摑んで(笑)」
(一同爆笑)
伊藤「何かカップルの1つの別れを見るような、ドラマみたいなシーンが(笑)」
三浦「そういうことがありつつ、まぁ年末までライブは一応やって」
――そこで区切りだと。それこそ解散も頭をよぎったものの、そうはならなかったわけですよね。まぁ元々5人いたのが2人になったら。
伊藤「もはや過半数いない(笑)。ましてやオリジナルメンバーはもうこの人(=三浦)だけ。でも、ぶっちゃけメンバーが辞めるって言ったときも、先のことを考えていて」
三浦「そういうイザコザも結構あったし(苦笑)、リフレッシュした気持ちでやれるんだったら、それが一番いいなって。2人になって、前に進めそうな感じしかしなかった。もう去年からサポートのギターはいたし、僕としては気楽というか不安はなかったし、考えてもこれしか出来ないというか…まぁもっと目立ちたいんで(笑)。まだまだもっとやれることがあるなって」
伊藤「僕は『HO17』(‘12)を出したときに交通事故にあって、半分ぐらいツアーに出られなかったんですよね。そのときにヘルニアになって辞めるか続けるかみたいなことを1回考えて、自分的にも乗り越えちゃってるんで(笑)。今さら辞める気にはなれないなって」
――ドラマー生命を揺るがしたそれに比べたら。
伊藤「もう全然、余裕っすよ(笑)」
僕は彼女に振られたり告白に失敗したりするとよく曲を書くタイプ(笑)
――新生HOLIDAYS OF SEVENTEENとしての新たなビジョンはあった?
三浦「ぶっちゃけやりたい音楽は最初からそんなに変わってなくて。ただ、動きやすいメンバーでやりたかった。スケジュールも“こことここで何日間出来る”ってLINEでやりとり出来たりするし(笑)。超身軽です。音もシンプルになってライブ感が出たし、余計な要素を考えなくてもよくなった」
――今作は、去年発表してきた会場限定のワンコインCD『HOLIDAY OF JULY』『HOLIDAY OF SEPTEMBER』『HOLIDAY OF NOVEMBER』から4曲+新曲2曲で構成されていて。新曲では日本語詞に挑戦したのもトピックで。
三浦「“日本語詞で書いてみたら?”とはよく言われてたんですけど、“書いたら?”って言われて書くのもイヤだったんで(笑)。今回はメンバーも抜けて2人になって、まぁいいタイミングというか、自分で書こうと思って自然に書けたんで。そもそも日本語の曲もあったんですけど、CDデビューしたアルバムが全曲英詞だったんで、そのままの流れで続けていったというか。突っ張っていた部分もあったんですけど、もう流石に(笑)」
――その頭2曲の日本語詞の新曲『Have A Goodbye』(M-1)『ネオンライト』か(M-2)がすごくいいですね。何の違和感もない。見事なぐらいに。
三浦「『Have A Goodbye』(M-1)に込めたメッセージは抜けたメンバーに対してもだし、それを聴く人にも理解してもらえたら、もっと深く僕らを知ってもらえるかなって。僕は彼女に振られたり告白に失敗したりするとよく曲を書くタイプなんで(笑)、まぁ自分の出来事で曲を書く。だから僕的には大きい曲なんですよ」
伊藤「あと、その歌詞の解説みたいなことを、何回も言ってくるんですよ。例えば、“踊り疲れたら眠る君の横顔で目をこすってさ”の部分は…」
三浦「これは、前のキーボードがライブが終わったらいつも助手席で寝ちゃって、結局運転は僕がしてるっていうシーンなんですけど…」
――なるほどね。何かいい話。
伊藤「っていうのを、3回くらい聞かされましたけど(笑)」
――そうか。そりゃ出て行くヤツのシャツの裾摑むわ。乙女か!
(一同爆笑)
――まぁバンドは夫婦とか恋人みたいともよく言うけど。
三浦「ホント、そんな感じですね(笑)」
真似するんじゃなくて“敢えてやる”
――今作って全体的にめちゃくちゃ瑞々しいパワーポップというか、原点回帰な意味合いも感じたんですけど。取材にあたって過去の曲も聴くわけじゃないですか。今作は曲のクオリティが圧倒的に高い。今までは洋楽好き、パワーポップ好き、アンテナを張っている人たちを満たす射程距離という感じがしたけど、今回はその人たちを当然納得させた上で、もっと強靭で、ポップで、ボーダレスというか。90年代当時にパワーポップを聴いたとき、身体が潤っていったあの感覚を、このアルバムからすごく感じましたよ。
三浦「ありがとうございます! 熟練したわけじゃないんですけどね。出来ることが限られてきた結果、洗練されてきたというか」
伊藤「あと、僕から太郎ちゃんを見たときの魅力って、やっぱり“歌”だから。これは長所だなって思う歌とメロディを、ギュッと見せられるようになったんじゃないかなと」
三浦「去年作った会場限定盤は、短いスパンで6~7曲作ってその中から2~3曲選んで入れていってたから、出来ないことがどんどん省かれていって、そこで結構学習したところはありますね。これが一番上手く出来そうだなっていう選択は、スピーディーに出来るようになった気はします」
――そう考えたら、去年からいろいろなことを試されている感じがしますね。
伊藤「試すつもりじゃなかったんですけどね。“試すことになった”みたいな(笑)」
(一同笑)
――それこそ『Have A Goodbye』の“パワーポップあるある”的なキメがめっちゃ気持ちいい(笑)。裏切っていくんじゃなくて、応えていく強さ。
三浦「あぁ~! まさにそういう解釈ですね。真似するんじゃなくて“敢えてやる”というか、分かってるからこそ、それに応えるっていうイメージ」
――2ndアルバム『LET THERE BE POP』(‘11)の頃は“パワーポップという殻を破ってみせた”という振れ込みもあったけど、そらね、パワーポップパワーポップ言われたら、そうじゃないこともやりたくなるっていう。
三浦「いやもう、あのときはホントにイヤになってて、“和製ウィーザー”って言葉が(笑)」
――あんなに好きだったはずのウィーザーが(笑)。でもやっぱり、好きなことを素直にやった方がいいんだなと。
三浦「そうですね。もう結構それが今回は出てますね」
――だから“パワーポップあるある”フレーズも入ってる(笑)。
伊藤「そうなんですよね。(THE STARBEMSの)日高さん(ex. BEAT CRUSADERS)に、“お前らはキメが古いんだよ”ってずっと言われてた(笑)」
――アハハハハ!(笑) でも、こんなにポップで、口ずさめる明確さがあって、こんなにもウキウキするのに、何でこんなにいい音楽を今聴かないんだろう?ってちょっと思った。
三浦「うん。僕もホントずっとそう思ってたんですよね」
もう助けられてばっかりだよな
――『ネオンライト』の歌詞も、何かを背負うというか、引き受ける感があるなぁと。
三浦「これはサポートギターもしてくれている山本幹宗(ex.The Cigavettes)くんと一緒に、“誰でも歌える”をテーマに作った曲で、最初はサビの“ナー、ナーナーナナー”の部分しかなくて。“これはもう絶対歌えるっしょ!”っていうフレーズをドンドン詰め込んでいって」
――そうか、だからC→A→C→A→B→Bみたいなヘンな展開なのか。あと、“この街は僕の終わりの始まり”というくだりの“この街”は東京? この街で生きて行くんだみたいな、覚悟とも取れるけど。
三浦「そうですね。上京して、東京のバンドマンになって、実家の長崎にも全然帰ってないんで、何か東京がホームみたいな空気感に最近ではなってきて。電車に乗ってても昔はあんなにイヤだったのに何か普通だし、もう俺は終わってるなって」
(一同爆笑)
――染まってるなと。染まりたくない自分もまだいるんや。
三浦「今改めて歌詞を見たら、相当染まりたくなかったみたいですね(笑)」
伊藤「全然染まってるやん(笑)。標準語もたまに繰り出すし」
三浦「染まりたくはないんだけど、でも自分は出したい(笑)」
――自分を出したい、目立ちたい(笑)。
三浦「でもね、何か華がないってよく言われる(笑)。他のボーカリストとかとセッションで並ぶと、自分でも思うんですよね。歌は俺の方が上手いはずなのに…(笑)」
――それこそ、今回のレコーディングには多くのプレイヤーたちが参加してくれていますが、the telephonesの長島涼平(b)とかはどういう繋がりで?
三浦「俺が去年の年末にDJしたとき、涼平がたまたまいて。もうその頃にはメンバーが抜けることが決まってたんで、“実はさぁ…”みたいに相談したら、“じゃあ俺に弾かせてよ”みたいな。“え? マジで? 弾く?”って(笑)。そうやって声をかけてくれる人が結構いて、ホントに周りの友達が助けてくれたというか」
伊藤「そういう人たちがいたからマジで作れた(笑)。もう助けられてばっかりだよな」
――既発の4曲は録り直してはない?
三浦「録り直してます。やっぱり全部新しいメンバーでやりたかったんで、ベースと鍵盤は全部差し替えて。あとはコーラスを足したりだとか」
伊藤「ミックスもまたやり直したりして」
――ベースと鍵盤に関しては全曲新しい人と。
三浦「はい。僕も弾いたりしてますけど(笑)」
伊藤「俺もちょっと弾いたり(笑)」
――もうパートの境もなくなってる(笑)。GOI(ex. 99RadioService)さんは何繋がり?
伊藤「マイメンみたいな感じですね(笑)」
三浦「鍵盤も貸してもらったり、いろいろフレーズも考えてもらったり、一緒にいる時間が多分一番多いですね」
――ドラマーのBOBOさんは?
三浦「久しぶりにスタジオで会って、“やってください!”、“いいよ!”みたいな(笑)。くるりのレコーディング終わりで来てくれるっていう(笑)」
――自分たちが長く活動してきた点が、ちゃんと線になってるというか。それこそホームが変わってくるぐらい続けてきたからこそ、こういう仲間たちもそばにいて、作品に参加してくれる。
三浦「いやもうホントっすね。福岡にいたら出会ってない先輩とかもいるし、福岡時代からツアーを廻ったような仲間もいてくれる。涼平とかがそうなんですけど、初めて福岡にthe telephonesが来たときは俺らの企画で、お客さん2人とかだったんで(笑)」
“転がっていく”というよりも、“転がしている”という感じ
――タイトルの『new school』はどこから?
伊藤「何かいろいろタイトル考えてはいたんですけど、オールドスクール、ミッドスクールみたいな、HOLIDAYS OF SEVENTEENの新しい文化というか。HOLIDAYS OF SEVENTEEN=17歳の休日だし、学生、新学期、そういうのを全部引っくるめて、『new school』みたいな」
三浦「新しい出会いを探して欲しいじゃないけど、僕らも探してるっていう意味も込めて」
――今作が完成したときって、何か感慨深いものはありましたか?
三浦「やっぱりマスタリングのときはすごく感動しました」
伊藤「マスターのCDをハイって渡されて、おぉ~!って。あとはまぁ、お客さんのところに届いて、ツアーも終わったら、泣くんじゃないかな?って思うぐらい(笑)」
――いや~しかしいいアルバムだと思いました。俺が好きだったパワーポップ2014年度版がここにありました(笑)。
(一同笑)
――英詞曲は英詞曲で、外タレのCDのブックレットに載ってそうな対訳のあの世界観がちゃんとあって(笑)。よくこういうパーティーの話とか出てくるわ~みたいな(笑)。
三浦「アハハハハ!(笑) 一番最初にグリーンデイの『ニムロッド』(‘97)とかの対訳を見て、“何だこの日本語は!”って思ったあの感覚(笑)」
伊藤「“誰が訳したんだ?”ってまず最初にクレジットを見る(笑)」
――でもまぁ、HOLIDAYS OF SEVENTEENの新学期が始まりますよってことで。
伊藤「そうですね。自分たちが実は一番楽しみにしてるっていう」
三浦「何か“転がっていく”というよりも、“転がしている”という感じが今はするので。それが楽しいですね」
――自然と、じゃなく、ちゃんと意志を持ってね。ツアーも楽しみにしています。本日はありがとうございました!
三浦&伊藤「ありがとうございました!」
Text by 奥“ボウイ”昌史
(2014年6月12日更新)
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