This is BLUE ENCOUNT!!
過去も未来も今の表現と共に鳴らし切った
ベストオブベストな1stアルバム『BAND OF DESTINATION』
ツアー開幕を告げる全員インタビュー&動画コメント
“スイッチを入れる”音楽がある。それは時に人を熱くさせ、それは時に人にきっかけを与え、それは時に人を解放する。BLUE ENCOUNTの初フルアルバム『BAND OF DESTINATION』が、まさにそれだ。徹頭徹尾メロディックでエモーショナルな今作は、ロックキッズに火が点かない理由が見当たらない精度と情熱で50分間フルドライブし続ける驚異のアルバムだ。昨年、『SUMMER SONIC 2013』をはじめとする各地の大型フェスに出演しメキメキとその頭角を現した彼らとて、早くして幸運を手にしたバンドではない。多くのバンドが打ちのめされる通過儀礼のような苦難を乗り越え、全ての言い訳を無効にするライブという戦いの中で真摯に生き抜いてきた時間が、彼らを現在の場所に連れてきたのだ。そんなブルエンのアンセムを惜しむことなく投入&現在のライブを投影したアレンジで再録、さらにはホットな新曲を加えた堂々の1stアルバムを引っ提げ、5月29日(木)千葉LOOKよりレコ発ツアー『DESTINATION IS “PLACE”』をいよいよスタートさせる4人に、現在の心境をざっくばらんに語ってもらった。
BLUE ENCOUNTの入門編を
“この1枚で当分は大丈夫”と言えるぐらいの
ライブに向けた1枚を作りたかった
――もうね、噂は各所で、いや、SUPER BEAVER他から聞いてましたけど(笑)。
田邊(vo&g)「あー、もう…」
辻村(b)「近いっすね(笑)」
江口(g)「そこからですか(笑)」
田邊「割とディープなところからきましたね(笑)」
――1stフルアルバム『BAND OF DESTINATION』が出てしばらく経ちますが、反響はどうでした。
江口「これまで以上に、お客さんからの反応がいいというか。これまで僕らのことを知らなかった人からも、リアクションが返ってきて」
田邊「最初は全員不安だったんです。これだけのボリューム(全15曲)というのがまず…やっぱり10曲ぐらいにしときゃよかったんじゃないかって(笑)。そういうところも賛否両論あるかと思ってたんですけど、1stフルアルバムで、しかもベスト盤的なという意味でも、待っててくれた人が多かったのかなって」
高村(ds)「主にTwitterがメインなんですけど、半年前に出したミニアルバム(『NOISY SLUGGER』(‘13))とはもう明らかに…下手したら3~4倍ぐらいの反応があって。注目してくれてるだけでもすごく嬉しかったです。去年1年間いろいろな活動をしてきて、ちゃんと芽が出始めたのかなって」
――自分たちが音楽活動をして、それに対してハッピーになる人が増えていくのは単純にいいですよね。
田邊「それがずっと願っていたことでもあったので。いくらやってもそうならない時期が僕らは長かったし」
辻村「あとは、ライブでお客さんが直にかけてくれる言葉…それは例えば“CD買ったよ!”だったり、前から知ってくれてるお客さんが旧譜と聴き比べて、“スゲェカッコよかった~”って言ってくれたり、そういう言葉を実際に聞けたのがすごく嬉しくて。あと、YouTubeに上がってる曲のイントロを弾いたら“ウワー!”っと盛り上がる感じは、以前にはなかった反応で、それはすごく嬉しいなと思いますね」
江口「再録曲に対しての…その反応はすごく気になってはいたんですけど、意外とTwitterとかのSNSを見てる感じだと、今回の方がライブ感が増していいっていう反応の方が多かったので、そこはまぁホッとしましたね」
――結構いろんなインタビューを見ていても、そこをちょっと気にしている感じでしたね。今回の1stフルアルバム『BAND OF DESTINATION』を作る際には、冒頭でも言っていたようにベスト盤的な、今までの歴史を凝縮したようなものにしようというのは最初からあったわけですよね。
田邊「BLUE ENCOUNTにとって去年は激動の1年だったというか、『the beginning of the beginning』('10)『HALO EFFECT』('12)が品切れになっていたのもあって、去年知ってくれたお客さんのほとんどがそれを持ってないっていう。“最後にやった曲が入っているCDはどれですか?”、“ごめんなさい、売り切れちゃってて…”みたいな」
――ライブでみんなめっちゃ盛り上がってるけど、CDが持ってない、みたいな。
田邊「去年のワンマンツアーでも、結果楽しんでくれてはいるんですけど、やっぱりCDがあったらもっと楽しめるんだろうなっていう節が結構あったので。だからこのタイミングで僕らを知ってくれたお客さん、これから知ってくれるお客さんに、BLUE ENCOUNTの入門編を、“この1枚で当分は大丈夫”と言えるぐらいの、ライブに向けた1枚を作りたかった。『BAND OF DESTINATION』には、ライブで絶対に欠かせない曲を入れようって。そういう意味でも、これから始まるワンマンツアーに向けての1枚にもなったかな、というのはすごくありますね」
お客さんが歌う自分たちの曲に助けられることがあるんですよね
――ライブでも散々やってきた曲たちだと思うんですけど、録り直していく中で改めて発見することだったり、思い起こすことはありました?
田邊「改めてやってみて思ったのは、俺らってライブですっごい手抜いてんだなと(笑)」
――アハハハハ!(笑)
田邊「やっぱりライブって、エモさが極まって勢いでブワーっとやっちゃったりするときもありますし、フレーズ的にもまぁ…はしょる部分というか(笑)」
――アハハハハ!(笑) ライブ用に“リアレンジする”、ということで(笑)。
田邊「そうですそうです(笑)。まぁエモくなってるとは思うんですけどね」
――キッチリ弾くためにジッとされるよりは、ブチ上がってくれる方が観てる方もね。
田邊「やっぱり体と頭が追い付かないことが結構ある(笑)。過去に曲を作ったときには、やりたいフレーズを限界ギリギリまで入れ込んでたんで、どうしてもそのままライブで再現出来ない部分もあったりして。再録するにあたって今回は、今のライブ感をとことん突き詰めようと。僕の歌い方もライブに忠実に、今のライブの歌い方にしてるんですね。となると、自ずとそれに当たらないようにフレーズも引き算することになるというか。あと、以前のフレーズをそのまま弾いたら、多分僕らの場合は初期衝動がなくなっちゃって、上手く弾いてしまおうとする自分たちがいるというか。だから今回の再録の中で一番難しかったのが、『HALO』(M-4)ですね」
――もう、みんなに聴いてもらってますもんね。YouTubeの再生数も98万回と。
田邊「PVがすごく回っちゃって、本当に欠かせない曲と言いますか…やっぱりお客さんが聴き込んでる。だから『HALO』に関しては忠実に再現してるんですけど…難しかったな~ホント。こんなに難しいことやってたんだ俺、みたいな。あのときは1回で終わったのに…(笑)」
辻村「やればやるほど真面目にやっちゃうんで、だんだん失速してくんですよ。それだとやっぱりダメで、衝動的に弾いた方がよかったりもするんで。今回は、そういう意味でもライブ感にこだわってるというか」
田邊「再録するにあたっての僕たちの目標が、あの頃の自分たちと向き合う。1回向き合った上で、今僕たちがやれること。以前はライブのことを全然意識してなかったので。逆に言うと今回はもう、汗だくでレコーディングしてましたね(笑)。一切座らず、立ちっぱで体を動かしながら弾くぐらいの感じ。エンジニアさんもよくライブに来ていただいてるんで、それも分かった上で、その荒さをいいように残してくれたり。それこそ『HALO』の入ってる『HALO EFFECT』っていうアルバムは、当時の流行りみたいな感じもあって、ドラムにバチバチな加工をしてたんですね。でも、そうなるとやっぱりライブ感がない。今回は、このCDを聴いたときに、頭の中でそのライブDVDが再生されるぐらいの臨場感がないとと事前に話し合っていたので。今のライブのスタイルがこのアルバムを作ったって言っても過言ではないとは思います」
――とは言え、同時に自分たちの成長も感じたんじゃないですか?
田邊「単純に僕らはこの曲たちのおかげでライブが出来ているし、例えばライブ中にお客さんが歌う自分たちの曲に助けられることがあるんですよね。そういう部分も踏まえた上で、このアルバムで引っ張っていこうとかではなく、このアルバムでやっとお客さんと一緒の立場になれたかなって。本当にいいアルバムになったと思います」
僕らが掲げていた夢を今ちゃんと実現出来ているか
自分たちの曲によって思い出せる
――歌詞にもいろんな時代が刻まれてると思いますが、聴いてくれる人の心を常に鼓舞しつつ、自分を変えてみるというか…聴いてくれる人だけに言うんじゃなくて、同時に自分にも同じことを問いかけている感じは、一貫しているなと思いましたね。
田邊「まぁ基本ネガティブな4人なので(笑)。だから曲に助けられるんですよね。自分たちにも言っていることなので、そういう曲が自ずと集まったんだと思います。いまだに自分たちの曲に助けられてる。卒業アルバム的な感じなんだと思うんですよ。アルバムの最後に友達が書いてくれたメッセージをたまに見て励まされる自分みたいな。僕らが掲げていた夢を今ちゃんと実現出来ているか、自分たちの曲によって思い出せる。スタジオで仕上がりを聴いてるとき、“こんなことあったよね~”って何故か辛かった時期を思い出して(笑)。でも、逆に辛かったことを笑いながら話せたというか。BLUE ENCOUNTがもっともっと走っていかないといけない2014年のスタートラインに、こういうアルバムを出せたのは自分たちの中でもすごくありがたかった」
――振り返れば、まぁバンドの危機がめちゃくちゃあったとは思うんですけど。
田邊「長いですよ、これを話せば(笑)」
江口「まぁでもやっぱり、一番の危機は…」
辻村「俺が“辞める”って言う前かな~」
――脱退を切り出したことがあると。
辻村「あの頃はメンバー間の信頼感も最悪だった。今までで一番よくないと思ったライブが終わった後も、みんな何がよくて何が悪いのかさえ分からなかった。だから反省しようがないんですよね。“次頑張ろう”ってその場で意識は高めるんですけど、結局寝たらまた同じのことの繰り返し(苦笑)。スタート地点に戻ってる。それが一番辛かった」
江口「そのループが絶頂を迎え、彼が“辞める”って」
田邊「結局それでも残ってくれた彼には、もう永遠に感謝していかないといけないな~」
辻村「おぉ~。それ今後も言って(笑)」
――その暗黒時代を、何で抜け出せたんでしょうね?
辻村「そこから、ちゃんと4人で向き合って必死にやっていこうと思えた。それを機に、少しでも思うことがあるようなら言いたいことを言って。あとは、自分たちの反省を活かしつつ、1本1本のライブを今まで以上にすごく大切にするようになりましたね」
江口「そこが多分大きいですね。彼が辞めるって言う前とそれ以降だと、そこの意識がやっぱり違う。そこでみんなの意識が変わって、1本1本のライブのやり方が変わって、余計な部分を削ぎ落としていった結果、今のライブ感に近付いていったというか」
“BLUE ENCOUNTがここにいる”って分かるような作品になっている
――とは言え、昨年末の東名阪福のワンマンツアーでも、改めてライブの怖さを知ったという話も。初日の福岡で何があったんですかね?
辻村「即ミーティングだったアレ(笑)」
田邊「多分ずーっとおんぶに抱っこというか、有名な方のオープニングアクトをやらせていただいたり、それこそフェスでオイシイところに出させてもらったりが続いて。単純に“取っていかなきゃ精神”、“しっかり喰らい付いていかなきゃ精神”が…ワンマン=僕らだけっていうライブ=敵がいないんですよ。敵がいないから盛り上がるだろうと思ってやった1曲目で、おっとっとと(苦笑)」
――あ、もう、明らかに分かるぐらいの反応が。
辻村「みんな曲を知ってるから盛り上がるだろうと思ってたんですけど、曲を知ってるからこそ、みんなシビアで。やっぱりすごく冷静に観てる。そこでちょっと大きく構えてた俺らは…」
田邊「間違いでした…(超小声)。完全に俺ら4人だけでパスを回してるみたいな」
辻村「それだと、選手と試合を観てる観客、になっちゃうもんね」
田邊「だから一緒に戦わないとって、そこからセットリストもガラッと変えて、次の大阪からは全然違うライブが出来て。ファイナル前の名古屋は4人の中でもベストライブ的な感じで、東京ファイナルはいい意味でちゃんと悔しさも残り、しっかり次に繋がるように終えられたなっていうのはありました」
――いや~まだまだ教えてもらうことありますね、ライブに。
辻村「ありますね~。でも、それは多分ずっとこの先もそうなのかなって思いますし」
田邊「多分永遠に僕らは、安定しない(笑)。安パイのことをし出した瞬間に、ムズがゆくなってしまうバンドなので。ず~っと何かと戦ってるんだと思います。言ってることは普通なんですけどね。でも、多種多様にいろんなことをやってきたからこそ、普通のことが活きてくるというか。歌詞に関しては敢えて普遍的なことを言っているというか、だから伝わるんじゃないかなって思っているので。最近はね、江口がライブですごくエモくなるよね?(笑)」
高村「そう、俺のオイシイところでね(笑)」
辻村「彼のドラムソロのときに…」
田邊「思いっきりかぶってギターソロを弾き出す(笑)」
――アハハハハ!(笑)
田邊「で、俺も楽しくなっちゃって同じことを…(笑)」
江口「もうグチャグチャ(笑)」
田邊「もう毎回とっ散らかるんですけど、最後の最後で僕が言いたいことを言って、ちゃんとその日のライブのクライマックスに向かっていく。だからこのアルバムも、同じような感じだと思います。最後の『PLACE』(M-15)に向けて、ちゃんといい流れが出来ているのかなと」
――『PLACE』には“無くしてから大事なものに気付くんだな”とありますが、その次の1行が“だから全部取り返したいんだよ”っていうのが、すごくいいなと。気付いたけどもう遅いじゃなくて、ちゃんとそれを取り戻せって自分にもみんなにも言ってあげられるのが、今のブルエンの強さというか。
田邊「僕らはもう失くし放題でしたから本当に(笑)。ちくわ状態で穴だらけだったので(笑)。当時は、僕たちのことを思ってかけてもらった大切な言葉でさえも、“何言ってんだ”って思っちゃう時期があったので(苦笑)。この『PLACE』を書いているときは、バンドとして苦しい時期のことをすごく思い出したんです。一番辛かったときのことがフラッシュバックしたからこそ、こういう言葉が書けたのかなと思いましたし」
――自分たちにとっても、ズッシリとくるアルバムが出来ましたね。
田邊「一見、勢いでバーって聴けそうなんですけど、軽そうに見えて持ったら重いアルバムというか。“BLUE ENCOUNTがここにいる”って分かるような作品になっていると思います」
4人全員でどこまで飛べるか
――リリースから時間を置いて、いよいよツアーが始まります。大阪の心斎橋JANUSはワンマンとしては一発目で。今回のツアーでも、大阪が終わるや“即ミーティングですよアレ”、みたいになったりして(笑)。
田邊「逆にマニアな人はね、“ワンマンは初日がいいの私”、“この荒削りがいいんだから!”、“ちょっとクセのあるチーズが好き”みたいな感じで(笑)。今回は対バンもあるんですけど、憧れだったバンドもいますし、同じようにメッセージ性の強いバンドもいますし、本当に負けられない戦いがあって、またワンマンに戻る。今回のツアーではもっともっと、より泥臭く伝えていきたいと思っているし、それには日常生活が物を言うと思うので、しっかりアンテナ張って生きていきたいなと」
――音に全部出ますもんね、不思議なもんで。あと、ブルエンは2年後に日本武道館でやると公言していますね。
田邊「そこは絶対に通りたい場所ではあるので。先輩のライブを観に行ったときに、“うわ、絶対にここでやりたいし、やれる!”と思ったんですよ。今までは本当に、ちょっと先の未来すら見えなかったバンドだったんですけど、去年1年でそれが自信に変わったというか、未来が見えてきたのもありますし。僕らは絶対に武道館という場所を1回通って、そこからまたさらに…その場所でもっと大きな会場でのワンマンを発表出来たりしたら、もう最高だなって」
――うんうん。最後にそれぞれ、迫るレコ発ツアーに向けてのひと言をもらえればと。
田邊「このアルバムを聴き込んでもらったら、自ずとハードルは上がるんじゃないかなと思ってるんです。だからあとはもう、4人全員でバッと飛び上がったときにどこまで飛べるか、お客さんにはその僕らの飛びっぷり…ブチ切れっぷりをしっかりと観て欲しいなと思います」
高村「このアルバムで一応集大成みたいな意味合いもありますけど、ここがまた新しいスタートだと思ってるんで。それを一緒に見届けてくれたらというか、一緒に上っていけたらなと思っています」
辻村「素直に4人共が思うことは、このCDを聴いて、ライブに来て欲しい。そこで一緒に楽しんで、価値観を分かち合えたらいいなと思います」
江口「今回再録した曲たちをずっとライブでやってきて、今回のツアーでまたどう育っていくのか、その楽しみが自分らの中ではありつつ、お客さんに負けないように、曲も、自分たちも成長していきたいと思います」
――そして、ファイナルは7月5日(土)東京・渋谷CLUB QUATTROということで、関西で同日開催の『見放題2014』には出ないということで(笑)。Twitterでもひと悶着ありましたね(笑)。
田邊「散々民やん(『見放題』実行委員会 実行委員長)さんとは会議をしまして、謝罪会見もいたしましたので(笑)。ず~っと言われました。“あ、ブルエンは出ぇへんねや。(遠征のとき)散々家にも泊めたよね?”って」
(一同笑)
辻村「圧がすごい(笑)」
田邊「圧がすごいんですけども、それはしっかりと来年お返ししたいなと(笑)」
――まずは目の前のツアーということで(笑)。本日はありがとうございました~!
全員「ありがとうございました~!」
Text by 奥“ボウイ”昌史
(2014年5月28日更新)
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