“和製アリシア・キーズ”と賞賛されるソウルミュージック日本代表が
ビルボードライブ大阪でこの春関西初ワンマンライブへ!
ニューヨーク仕込みの話題の新人Nao Yoshiokaの素顔に迫る
1stアルバム『The Light』インタビュー&動画コメント
ニューヨーク仕込みのパワフルな歌声と表現力で圧倒するソウルシンガー、Nao Yoshioka。彼女はいかにしてソウルミュージックに目覚め、その卓越したボーカルを身につけたのか。10代で様々な苦境の重複から、音楽活動に挫折してひきこもり、意を決して渡ったアメリカで歌の世界を掘り下げ、黒人音楽の殿堂アポロシアターのアマチュアナイトで準優勝するなど、その実力が高く評価されてきた。そして、帰国後にSWEET SOUL RECORDSと出会い、国際的なコラボで制作されたデビューアルバム『The Light』を昨年11月にリリース。ニーナ・シモンの『Feeling Good』やエタ・ジェイムズの『At Last』といった難易度の高い名曲を堂々と歌い上げ、世界レベルの新星として注目される彼女が、4月30日(水)ビルボードライブ大阪での関西初ワンマンライブに向けて、これまでの歩みを切々と語ってくれた。
アメリカに行く前にすんなり日本でデビュー出来ていたら
このアルバムは出来ていないと思います
――FM802の1月度ヘビーローテーションとなった『The Light』(M-2)で初めてNaoさんの存在を知った方も多いと思います。日本で生まれ育ったNaoさんが、どんな風にソウルミュージックに目覚めていったのか教えてください。
「元々歌も音楽も好きだったし、姉の影響で見ていたMTVでゴスペルを聴いたり、アレサ・フランクリンも大好きでした。でも、ホントに自分の心の中に深く刺さってきたのは、アメリカに行ってからですね」
──初めてニューヨークに行かれたのが'09年なんですね。
「21歳のときですね。日本にいたときにいろいろあって、一時期歌が歌えなくなってしまって…。アメリカに行ってソウルミュージックを生で聴いていく中で、音楽が人を助けている瞬間をホントに何度も見るようになりました。日曜日はみんな教会に行って、“Don't give up”と歌うことで自分を勇気づけていたり、生活の中での音楽の役割がすごく大きくて。私自身も日本にいたときやアメリカに行ってからも辛い時期があったし、自分の中でどうにか成長していきたい!という気持ちがあったから、歌に自分自身がシンクロして助けられたことが何度もあるんですよ。私がソウルミュージックに助けられた体験を、今度は自分で発信していきたいなと思って今、歌っています」
──日本で歌えなくなるほど辛くなった原因が何だったのか、もしよかったら教えてください。
「16歳ぐらいの頃にCDデビューオーディションで優勝して、この道でやっていくというのは結構早い段階で決めていたんですけど…うまくいかなくて。自分が何をしたいか、何を伝えていきたいか、どういう音楽をやりたいのか、全部分からなくなってしまったんです。自分で自分を認めるものがなくなってしまって、いつの間にか家から出られなくなっていました。でも、思い切って“アメリカに行く!”と決めたら、バイトしたいって思えるようにもなったし、不思議と元気になっていったんですよ」
――日本で一度挫折を味わって、それを乗り越えるために心機一転、ニューヨークに向かったということなんですね。ご自身も何か変わるきっかけを掴みたかったんでしょうか?
「それはすごくありますね。変わりたかったです」
──ニューヨークに行ってすぐに変われましたか?
「ニューヨークでは修行みたいにマンツーマンのボーカルレッスンを受けていて、その練習とコンペ(ティション)に出ることをずっとやっていたんですが、ちょっとずつ階段を上がっていってる実感はありましたね。私はダメなところだけじゃないって、すごく自信になりました。そして、アメリカから帰ってきて、SWEET SOUL RECORDSと出会ったんです。“世界に挑戦したい! とにかく際限なく良いものを作っていきたい!”という想いが私以上に突き抜けていて、『The Light』で世界の人たちとコラボレーションするっていうのも、SWEET SOUL RECORDSからの提案だったんです。私からすればそんなことさせてもらっていいんですか?っていう感じだったんですけどね。そういう、人が期待している以上に面白いものを作ろうっていう姿勢の人に巡り会えてレベルアップしていけているのは、すごく幸運なことだなって思います。逆に、アメリカに行く前にすんなり日本でデビュー出来ていたら、このアルバムは出来ていないと思います。だから今となっては、そんな苦水を飲んできてよかったなって思えるというか…。その経験があったからこそ今、自分の歌として表現出来ることがあるのかなって思います」
──そういうエピソードを知ると、ソウルミュージックという一筋縄ではいかないものに挑んでいこうとするNaoさんの、パワーの源となるものがより分かる気がします。
「自分が落ち込んでいるときって、完璧なものだったり、フェイクなものってすごく疲れるんですよ。昨年リリースしたデビューアルバム『The Light』にも、“人間らしさや不完全なものを認めよう”、“一筋の光さえあればがんばっていける!”という想いを込めています。ただ頑張るだけじゃなくて、その背景に何かがあったり、一筋の光に向けてどうにか進んで行こうとする姿勢って、すごく人間らしいと思うんです。そこにはどん底にいた頃の自分が欲していたものを出したいっていう想いが、すごくありますね」
ソウルは自分の人生を通して歌うもの
──そのアルバム『The Light』の中では有名なソウルのスタンダードナンバーを歌われています。
「カバーしている曲は全部私がアメリカで歌ってきた曲です。ニーナ・シモンの『Feeling Good』(M-1)も何度も歌いました。エタ・ジェイムズの『At Last』(M-4)は渡米して初めて学んだ曲で、アポロシアターでも歌いました。“変化は必ず訪れる”という意味の『A Change Is Gonna Come』(M-5)は初めて自分とシンクロ出来た曲で、ホントに“変化は訪れるんだ!”とすごく元気づけられました。10代の頃から歌っていたゴスペルの『His Eye Is on the Sparrow』(M-9)は、映画『天使のラブソング』で初めて知って、素晴らしい曲だなって」
──ライブ音源で収録されているマーヴィン・ゲイの『Ain't No Mountain High Enough』(M-11)は?
「それは去年ブライアン・オウエンズとショートツアーをしたときのもので。セントルイスで行われたマーヴィン・ゲイのトリビュートライブにゲストに呼んでいただいて、2人で歌わせていただいたものですね」
───ソウルミュージックを歌うときはどんなことを意識していますか?
「ソウルは自分の人生を通して歌うものだと思います。歌詞やメッセージに対して自分がどう思うのか、自分がどう感じて、どう表現するのかを加えていくのがソウルなんじゃないかなって。そこがなければ、きっとあんまり意味のないものになってしまうんだろうなって思いますね」
──そういうことはアメリカでボーカルレッスンを受ける中でも教わってきたんですか?
「それもありますけど、一番大きかったのはシャーマ・ラーズ(※オランダのシンガーで、アルバム『The Light』で3曲をプロデュースしている)との出会いですね。私はずっと技術で自分を守ろうとしていたところがあったんですけど、もっと踏み込んで、人の心に届く歌とはどういうものなのかっていうことについて、悩んでいたんです。そのことをシャーマにお話しして、彼女といろんな曲を試していく中で、“ひと言ひと言に気持ちを込めて歌いなさい、私が歌うのとあなたが歌うのとではそれぞれ全然違う意味があるし、それがなかったら歌う意味がないんじゃないの?”っていうお話しをしてくれて…。彼女からはすごく多くのことを学びましたね」
──そんなNaoさんの歌をソウルの本場アメリカの人たちはどんな風に感じているんでしょうか。
「この前のショートツアーではすごく素直に声援をくださって、応援してくれているのが分かったので。さらに自分の歌を深めていけば、もっともっと皆さんに伝わる歌が歌えるのではと思っています」
───日本ではどうです?
「シャーマに出会う前と後ではすごく違ってきました。前は“日本語で歌ったらどう?”って言われることも多かったんですけど、今はほぼ言われなくなりましたね。あとは、聴いてくれた方が“こういうことを感じました”って感情を伝えてくれるようになりました。中には泣いてくれている人もいて…。そういうことがあって、すごく安心しました。日本人であるとかどうかは関係無いんだなって。そこは自分自身が一番気にしていた部分でもあったので」
──今ではNaoさんの歌に、心と心が通じ合うソウル本来の力が宿っているんでしょうね。
やっと立てたスタートラインなので
――今後はどんな活動をしていくのが理想ですか? これからさらに日本と世界を股にかけて、スケールの大きな活動をされていきそうで、すごく楽しみです。
「やっぱり日本とか海外とか関係なく、ずっとチャレンジしていく姿を見ていただけるように頑張りたいと思います。今は私自身とてもワクワクしています。飛び込んでいくのが結構好きなんですよ(笑)」
───将来に向けて目標にしていることはありますか?
「目標の場所とか理想像よりも、『The Light』に込めているように、思っていることを伝えていくことが全てかなと思っています。今までは“a change is gonna come”(変化は必ず訪れるのだ)って、どこか受け身でいたんですけど。一昨年、『Make the Change』(‘12)という曲と出会えたことで、“これから面白くてワクワクすることを起こしていけるんだ!”っていうエネルギーみたいなものを自分から発信し、自分から前に進んでいけるようになったんですよ。苦しい時期もあったけど、もっともっと新しいことに挑戦して、変化を起こしていこうと思います」
──それでは最後に、4月30日(水)ビルボードライブ大阪で行われる関西初ワンマンライブに向けての意気込みを。
「私は関西出身なので、ホントに嬉しくて。きっと私のアドレナリンが溢れ出すと思います(笑)。『The Light』の全てを感じていただけるステージになると思うし、アルバム以外の曲も何曲かやると思いますので、楽しみにしていてください。今までいろんな人が私を支えてくれて、やっと立てたスタートラインなので。このライブで皆さんに元気になってもらって、ライブが終わった後に“いい日だったな”って笑顔になれるようなライブにしたいと思います!」
Text by エイミー野中
(2014年3月18日更新)
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