夢は、続く――。『800BEST』『GOOD MORNING OKINAWA』
そしてモンパチ初の大阪城ホールワンマンへ!
結成15周年プロジェクトがいよいよクライマックスを迎える
MONGOL800キヨサク(vo&b)インタビュー&動画コメント
‘98年夏、沖縄の高校の同級生3人で結成したバンドが、’01年にはインディーズ史上初となるミリオンセラーとオリコンチャート1位を獲得。そのアルバム『MESSAGE』は300万枚を突破し、マイペースに、そして真摯に制作とライブ活動を続ける彼らは、今なお多くのリスナーとオーディエンスに愛されている…。衰退して止まないと言われる音楽シーンで、15年前に始まったそんな奇跡が、今でも続いている。昨年はWEBにてファン投票を募った初のベスト盤『800BEST –simple is the BEST!!-』、3.11以降の世界に沖縄から強靭なメッセージを放った4年ぶりのオリジナルアルバム『GOOD MORNING OKINAWA』をリリース。ライブハウス&ホールツアーに2度目の日本武道館公演と、結成15周年のアニバーサリーイヤーを全力で駆け抜けた、MONGOL800。ここ数年は、フロントマンの上江洌清作=キヨサク(vo&b)が、ロックにレゲエにR&B etc気の向くままに化学反応を繰り返し、フィーチャリングで繋いだ絆と経験をバンドに濃縮還元。持ち前のジャンルレス/ボーダレス/ピースフルな魅力を増幅させ続けているが、そんなモンパチがアニバーサリー・プロジェクトの肝に据えるのが、2月13日(木)にいよいよ開催される初の大阪城ホールワンマンだ。結成当時10代だった彼らも、今では30代。この大舞台を前に、15年の歩みと現在の想いを、改めて語ってもらった。大阪城ホールというこれ以上ない宴が、もうじき幕を開けようとしている――。
15周年っていうのもあって、うちらも気合いが入ってはいるんですけど
お客さんの方も“待ってました!”というか
――昨年は15周年で年始からベスト盤『800BEST –simple is the BEST!!-』、オリジナルアルバム『GOOD MORNING OKINAWA』も出て、ホールツアーに二度目の武道館もあってと、結構てんこもりでしたね。
「15周年っていうのもあって、うちらも気合いが入ってはいるんですけど、お客さんの方も“待ってました!”というか、やっぱり各地の反応とか手応えも大きかったですね。ベストを出したのもあるし、新しいお客さんもいれば、昔からのお客さんもいたし、最初から最後までみんなテンションが落ちないというか。モンパチ自体の状態もいいので、ライブのクオリティもツアーをやっていく中で上がっていく+お客さんからもらうものも大きいので、余計に」
――うんうん。お祭りを楽しんでくれているというか。そういった意味では、15周年のタイミングでベストを改めて聴いてもらったのもよかったかもしれないですね。
「最初は少し抵抗あったんですけどね(笑)。でも、お客さんを巻き込んでリクエストももらって。その結果、1位が『DON’T WORRY BE HAPPY』(M-1)で。1stアルバム『GO ON AS YOU ARE』(‘99)の1曲目だったのが嬉しくて」
――敢えて録り直さなかったのも生々しくてよかったですね。時間軸で明らかにバンドとして成長していっているのが音で分かるのもあったし。
「結局、お客さんが普段聴いてるのはあのテイクだしね(笑)。そういうのも全部ひっくるめて、モンパチの歩みで。本当は録り直したい気持ちもあるんですよ、アーティストとしては(笑)。ただ、その当時のテンション、空気感がそこには入ってるから。あとは最初からギター、ベース、ドラム、歌の一番ミニマムな状態でライブで再現出来るかをずっと考えてるから、その辺は全然変わってないですね。逆に3人のアンサンブルでどこまで表現出来るか」
――あと、他のインタビューを読んでめっちゃ印象的だったのが、“『MESSAGE』(‘01)が売れたとき、神様がゆっくり音楽をやっていいんだよって言ってくれている気がした”って。
「元々そんなガツガツしていたわけでもないし、学生だったし、卒業してようやく全国ツアーが出来て、全部後追いなんですよ。10年目くらいでようやくスタートみたいな(笑)」
――めっちゃかかっとる(笑)。10周年のときって、逆に何か思いました?
「10周年は冠だけで、正直そんなに身に沁みてはなかったですね(笑)。さっき言った結成からの4~5年は学生だったりしたんで。だから今回の15周年の方が大きいです」
――15年やってきて、“もうヤバいなモンパチ”みたいなときもあったんですか?
「それはもう、いつでも(笑)」
――アハハハハ!(笑) やっぱり“バンドあるある”はあると(笑)。最大の危機はあった?
「うーん、人並みに、定期的にね(笑)。結局、メジャーみたいな決まりとかコンスタントに出してっていうのが何もないから、自分たち発信で旗を振らないといけないので。自分たちが動かなかったら何も動かないし、かと言って、誰かが先導して何かをやってくれるわけでもなく。だから放っておいたらずっとね、どこまでも休もうとする(笑)。15周年だからちょっと休もう、みたいな(笑)」
――周りは祝う気でいるのになぁ(笑)。あと、最新アルバム『GOOD MORNING OKINAWA』もそうなんですけど、モンパチがどうあるべきか、ド真ん中の音が鳴りながら、ちゃんと15年の引き出しが見え隠れするというか。あと、このアルバムでは怒りも含めて確信犯的に表現したところもあると思うんですけど、気になったのが“ドリーム”とか“夢”っていう言葉がよく出てくるんですよ。『Love song』(M-2)『GOOD MORNING OKINAWA』(M-3)『Rise & Shine』(M-5)にも出てくるし、『Fatty Silver』(M-6)にも『forget me not~勿忘草~』(M-11)にも出てくる。これは15年目の偶然なのか、必然なのか。
「面白い(笑)。そういう風に見たことがなかったから。精神鑑定みたいですね(笑)」
――インタビューが終わった後、たまに“セラピーや”って言われます(笑)。15年もやってくると、また夢の形が変わってくるじゃないですか。10代20代ではない、2度目の夢というか。今沖縄から伝えるべきメッセージの各所に、ちゃんと夢が配置されているのが、何かいいな~って。
「すげぇ。すげぇセラピーだ(笑)」
――あと、モンパチのライブを観たときにいつも思うんですけど、言葉に出来ない無敵感みたいなものがあるというか…いつ観てもモンパチに任せておけば何とかなるみたいな、頼もしさがすごいあるんですよね。
「うちらは演奏している側だけど、ずっとファンでいてくれる人もいるし、若い人もいるし…ライブのあの空気感は俺らが作っているというよりは、モンパチを好きなお客さんが作っている気がするんですよね、うん」
フィーチャリングでは客観的に何を求められているのかも考えるし
そうすると逆に、モンパチはこうあるべきっていうのが明確になる
――最近のキヨサクさんは、いろんなアーティストとフィーチャリングで歌いもするし、曲も書くしって、多忙ですよね。取材にあたって“フィーチャリング キヨサク”で検索したら、ホントにいっぱい出てきましたから(笑)。
「何だかんだ、そうですね。依頼をもらってもあからさまにヘンじゃなかったら、一応全部受けてるんで(笑)」
――アハハハハ(笑)。しかも結構、ジャンルレスで。
「ジャンルレスで、しかも仕事っぽく依頼が来るときもありますけど、直接繋がりでっていう方が多いので。すんなり、じゃあやろっか~って。飲みの席で決まる話もあるし(笑)」
――モンパチとはまるで違う畑の人たちともよくやってるじゃないですか。その現場で何か感じることはあります?
「そのメリットの方が大きいというか、人様の現場ってなかなか見れないもんだし、それぞれ音楽に対しての熱量が高い人だから刺激的だし。歌だけで誘われるのも自分にとっても1つ1つチャレンジになるし、持ち帰る部分は大きいですね。客観的に何を求められているのかも考えるし。そうすると逆に、モンパチはこうあるべきかなっていうのが明確になるというか。例えば『GOOD MORNING OKINAWA』に入っている『タユタウタ』(M-10)は、おとき(加藤登紀子)さんに書いた楽曲なんですけど、それをまた3人で料理しても面白いだろうなって思ったし。そういう楽曲はアルバムに入れていってますね」
――あと、以前鈴木雅之さんに取材させて頂いたときも、「マーチンさんとキヨサクさんを繋ぐ線が見当たらないんですけど」っていう話をして(笑)。
「アハハハハ!(笑)」
――小田和正さんのテレビ特番『クリスマスの約束』のときに隣に並んでっていうね。その絵面がすごい(笑)。
「絶対確信犯的に並べてるだろうっていう(笑)。そこで、1本のマイクで一緒にハモるっていう。まぁ系統は近いじゃないですか、黒い感じとか(笑)。そこから、一緒にやりたいねっていう話になって、普通にメールでやりとりして、めっちゃかわいい絵文字が来てね(笑)。それを経て、モンパチではまず行かないであろういろんな現場に呼んでくれて。大阪でも葉加瀬(太郎)さんの『情熱大陸』とか」
――そうやって接点が出来るもんなんですね。
「不思議っすよ。歳もひと回りもふた回りも離れているし、子供みたいなもんじゃないですか。小田さんとかはいまだにハングリーであると同時にやり尽くした感もあるんじゃないかと思うんで、そんな中で俺らを見てると、多分ほっこりするんじゃないですかね(笑)」
沖縄もルーズだけど、ジャマイカはルーズなんてもんじゃない(笑)
――外仕事で何か印象的だったエピソードってあります?
「ジャマイカでのレコーディングはやっぱり面白かったですね。あの人たちって俺らよりもっと直感的に動く人間だから。先に渡しておいた音源も、絶対聴いてないし(笑)」
――アハハハハ!(笑)
「絶対練習もしないし、集中力もすぐ切れるけど、“俺のプレイはどうだ!”みたいな(笑)。でも、音楽って瞬間瞬間の熱量が上回ればそれでOKなんだなって感じるし、逆に日本人は細か過ぎるというか、繊細過ぎるかな。最初のテイクとか2~3回目までの熱量がやっぱりそれ以降とは違うから、“大丈夫、これくらいでいいよ”って」
――さっきの話じゃないですけど、沖縄以上にほっこり感を出せる人たちはいないんじゃないかと思ったら、それを超える人たちがいるんですね(笑)。
「ジャマイカ人くらいですね(笑)。沖縄もルーズだけど、ジャマイカはルーズなんてもんじゃない(笑)。普通に行ってもスタジオに誰もいないし、遅れて来ても悪びれた素振りもないし(笑)」
――それでもちゃんと物事は進むんですね。
「それでこっちも大きく構えるんですよ。録れたらいいやじゃないけど、ハードルがすごい下がる(笑)。でも、すごい集中力でクリアしちゃうっていうね。(アール・)チナ・スミス(ジャマイカの往年の名プレイヤー)と一緒にやったときも、最初はおじいちゃん過ぎて分からなくてさ(笑)。しかもブースの一番狭いところに追いやられて1人でギター弾いてるから。帰りしなに“今のがチナ・スミスだよ”って言われて初めて気付いて(笑)」
――あと1つ思ったのが、『forget me not~勿忘草~』とか『tomorrow』(M-12)の外タレ感みたいなものがすごいなって。完全にそっちのバンドの匂いというか。このスケール感はなかなか出せないなぁって。海外ツアーとかやって欲しいですね。
「あ~嬉しいですね。何でしょうね…自然と出てきたんですけど、音作りをしてるときに鳴ってる音は、UKだったりヨーロッパの空気感が好きかもな~。ベスト盤はロンドンでマスタリングしたんですよ。エンジニアがクレイジーな人で、ミキサーもめっちゃ古くて。ノブがこんなにデカいんですよ(と身振り手振り)」
――えー! もう金庫やん(笑)。
「しかもつまみが5段階くらいしかない(笑)」
――アハハハハ!(笑)
「ビートルズとかも使ってるくらい古いところで。でも、値段は案外安かったりしてね」
――そこはどうやって知ったんですか?
「上江洌.清作 & The BK Sounds!!っていうレゲエのユニットのマスタリングでそこを使って、これはいいかもって。音数が少ないものに対してはすごい効き目があるなと思ったので」
――そう考えるとやっぱり、全部返ってきてますね、モンパチに。
楽しみですね、大阪の人たちがどれだけはっちゃけてくれるか
――そして、去年の夏には2度目の日本武道館もやって、それはどうでした?
「楽しめましたね~。1度目は結構体調もボロボロで必死な感じやったんですけど、去年はベストの冠を掲げていたのでお客さんの期待感も半端なかったし、お祭りでしたね。武道館は自分たちのワンマンで一番大きい会場なのかな。でも、お客さんとの距離が何か近い。それはすごくいいところで。定期的に節目で出来たらいいですね」
――そして、今まで散々話を聞いてきましたけど、次は初の大阪城ホールだと。
「武道館だけやって終わるのもね。大阪とか関西圏って、沖縄だったりモンパチを好きな人が多い気がして。大正区とか『琉球フェスティバル』とかもあるし、他のところとは何かちょっと違うんですよ。波長が合うというか。武道館とはまた全然違うことになりそうな雰囲気がありますね」
――確かに大阪って沖縄が好きな人多い気がする。あと、かつてグリーンデイの来日公演の際に、大阪城ホールのステージには立ったことがあるとのことですが、どういう形で出たんですか?
「うちらとゴイステ(GOING STEADY)が前座みたいな感じ連れて行かれて。’02年かな。グリーンデイのセットは動かさず、その前にポンッて立たされて。何にも覚えてないですけどね(笑)。でも、そういや城ホールの側で赤犬のアキラ(‘09年に脱退)さんと喋ってたな」
――赤犬はその頃からの繋がりなんですね。キヨサクさんがフィーチャリングでめっちゃデカいアーティストとも繋がっているはずなのに、何でアルバムに参加してるのは赤犬なんだろうってちょっと(笑)。
「しかもバグパイプで(笑)」
――しかもボーナストラックでっていう(笑)。そんな前からの繋がりなんですね。
「そうそう(笑)。難波マザーホール(‘05年に閉館)での対バンで。将番頭とかもいたかな。あのときから赤犬は異様な輝きを放っていましたから」
――15周年で、改めて城ホールでやることになるとはって感じですね。
「楽しみですね、大阪の人たちがどれだけはっちゃけてくれるか。武道館に来たお客さんも来ると思うし、初見の人もいると思うし、どっちもいい意味で裏切れるようにね。大阪ならではのゲストとか。最近、新幹線で村上ショージと毎回会うんで(笑)。NGK(なんばグランド花月)でライブしたこともあるんですよ」
――えー! そうなんですね。
「ライブの合間に芸人さんのちょっとしたコントがあって、あやまんJAPANが出て、池野めだか師匠が出てきて、次が俺ら(上江洌.清作 & The BK Sounds!!)だったんですけど」
――どんなブッキング(笑)。なかなかミュージシャンでNGKに立てる人いないですよ(笑)。
「アハハハハ(笑)」
――もちろん大阪城ホールに立てる人も限られてます。
「みんなからアイディアをもらいながら、ちょっと何かしたいね。大阪のバンドの友達も多いんで。何だろうね、みんな人懐っこいから。普通に音楽以外のことでも盛り上がって喋るし。そういう繋がりがあるのがいいよね」
――楽しくなりそうですね。15周年プロジェクトはこれでひと区切りみたいな?
「そうですね、大きいやつは。でも、何だかんだ今年も結構動くんで、もう15周年じゃないですよね(笑)。だってベスト出してからもう1年経ってるし」
――『MONGOL800 ga FESTIVAL What a Wonderful World!!』は昨年台風で中止になりましたが、今年こそは。
「今年こそやるから。もう10月までみっちりだな。休もうと思ってたのに(笑)。どうせなら動くか、みたいな」
――最後に城ホールに向けて、何か言葉を頂けたら。
「お祝い事なんで、武道館のときもお客さんに粗品をあげて。何が欲しいんだろう、大阪の人は」
――武道館では何がもらえたんですか?
「クリアファイル。しかも入場のときに渡して、席がある人はいいんですけど、スタンディングの人はもうグチャグチャ(笑)。だから、“帰りに渡して欲しかった”って(笑)」
――その反省点は活かして(笑)。
「大阪仕様の粗品も考えていますので(笑)。面白いことが出来たらなと思っているので、ぜひお楽しみに。大阪ならではの何かが出来るといいなぁ」
――今日の話を聞いていたら、楽しい祭になりそうな気がしますね。
「うん、見えてきたな」
――それでは大阪城ホールでお会いしましょう。本日はありがとうございました!
「ありがとうございました~!」
Text by 奥“ボウイ”昌史
(2014年2月10日更新)
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