「ツアーが終わるときが、『Signs』が完成するときだと思ってます」
locofrankからの3.11以降の回答と覚悟を詰め込んだ
ニューアルバムに伴うツアーもいよいよクライマックスへ!
メンバー全員インタビュー&動画コメントが到着
昨年届いたlocofrankの5枚目のアルバム『Signs』は、彼らが’11年3月11日以降、何を考え、何を伝えようとしているかが届く渾身の作品だ。この約2年半、彼らが震災と、そして音楽、己自身と逃げずに真っ向から向かい合ってきたからこそ出来たと言っても過言ではない今作。そのリリースに伴う全国ツアーがいよいよクライマックスを迎える今、改めて3人にその想いの丈を聞いた。
さすが関西なやりとりのlocofrankからの動画コメント!
――ミニアルバム『ONE』('12)は発表されていましたが、震災後のフルアルバムとしては初となります。そして、このフルアルバムには震災以降の想いがすごく感じられました。改めて、その間のバンドの歩みを教えて頂けますか。
木下(vo&b)「震災から半年経ったくらいのときに、SPCという普段ライブで音響をやってくれているチームが発起して、『東北ライブハウス大作戦』というのを立ち上げて、めでたくライブハウスも建ったんです。震災を忘れないでおこう、音楽の力を集めて、意識を高めようと。最初はボランティアで瓦礫の作業や炊き出しもやりましたし、1人のバンドマンとしてあの地を訪れる意味を考えましたね。Tatsuyaがおじいちゃんに“音楽やってるなら、次は音楽で元気付けてくれないか”と言ってもらって…。15年バンドをやってきてそれが当たり前になった中で、日常が簡単に失われる出来事がある…。音楽は果たして何なのか…脆いものでもあるし…。確固たる一本の道筋をしっかりと考えて、バンドは人生であり命であるということも考えないといけないと思いましたし」
Tatsuya(ds&cho)「バンド内で“こういうテーマで”とかは話してないですけど、みんな同じ方向を向いてるとは思ってました」
森(g&vo)「当たり前のことを当たり前に思っているだけじゃなく、locofrankとして何が出来るのか…発信する方になれたんじゃないかと思います」
――去年、『風雲!大阪城音泉』というイベントに出て。locofrankは自分たちで独自の道を進んでいくんだろうと思っていたのが、ああいう味のあるイベントにも出て、戦っていこうとしている姿が印象的だったんです。
木下「あのイベントに関しては、ありがたいの一言だけですね。日頃なかなか関わることのなかった人たちとやれたのは大きいですし、お客さんも俺らを観たことがなかった人も多かったと思うし。今まで知らなかったことを知れるという喜び、そういう場でもlocofrankの色をブレずに出せれば幸せですから。ちょっと前の俺たちなら、頑なにパンクス、メロディックやメジャー云々と言ってましたけど、何にせよやらずにいるのはつまらないですから。HAWAIIAN6、dustboxとやったのだって最初はビックリされたくらいで。自分たちの幅を広げていくことが、音楽にも繋がるかなと。何であろうとカッコいいもんはカッコいいので」
Tatsuya「確かに頑なに思っていた部分はあって。でも、聴いてもらえる、観てもらえる可能性を狭めるのは良くないので。自信があるんやったら、やればいいんですから。それで嫌いになられたら、仕方ないです」
森「昔からいろいろとやりたいとは思っていたんですけど、自分たちに自信がなかったのかもしれないです。今は、やっと自信を持てた気がします」
ここで解散してもいいくらいの気持ちで
――そういった想いの中で、今回の『Signs』がどのように作られたかお聞きしたいです。
木下「HAWAIIAN、dustとツアーを廻っているときも絶賛作っていました。『ONE』を作ったのもあり、そしてツアーを廻ったのもあり、いろいろと感じていったことでアイディアもあったと思います。作業的には去年の3~4月とかは地獄でしたね」
Tatsuya「安産は1回もなかったね(笑)」
森「安産祈願行こか思ったぐらいで(笑)」
木下「(笑)。いつも作るときにはコンセプトを決めないで、3人が納得したサウンドで作っていくだけなんです。歌詞も今の俺たちを映し出せるようなものじゃないとダメですし、飾ったり寄せたりは絶対に嫌だったので。そういう意味では、今の俺たちをすんなり素直に出せたかなと」
Tatsuya「今まで以上にメッセージはあると思います。ストレートに伝えたい想いはあったので。シンプル・イズ・ベストが、響くし届くんじゃないかと」
森「今まではわぁ~っと詰め込んで抜いていく作業だったのが、今回は全体像をしっかりと見ていたので。1曲に対しての強さは出ましたね」
木下「まぁ、今回は震災への想いがないといったら嘘になりますし、意識はちゃんと置きました。言い足りないことがあったら次回作で、という気もなくて、ここで解散してもいいくらいの気持ちですね」
――’12年のツアー中に岩手県大船渡で地震に合われたという話も、本当にリアリティがあって…。
木下「あれは、ビックリしました…怖かったです。機材が流されるんや…また沈むんやと本気で思いました。ホンマにライブが出来へんくなるんやなと…。避難所にも行ったんですけど、何も出来へんのやなって…」
Tatsuya「“津波が来ます”と言われて…体感せぬままよりは、経験したことで見えたこともたくさんあるし。よりちゃんと伝えないと、と思えましたね」
森「locofrankとして何を伝えていくべきかを考えるようになりましたね。今までは見えないものと戦ってきたのが、今は見えてきたというか。変わりましたね」
ちゃんとプロセスをライブで伝えていけたら
――今作は本当に歌詞が強いというか、社会情勢であったり、過去の国の過ち…何も包み隠さず、想われていることを真っ直ぐ書かれていますよね。
木下「ツアーのとき、鹿児島の知覧という特攻隊の基地があった場所にSPCの代表に連れて行ってもらったんです。学校で教えられた戦争は把握していましたが、1人の男として、1人のバンドマンとして、1人の父親として日本を考えざるを得なかった。そこを訪れたときに、二度とそのようなことが起こらない確証はないやろうなと思いましたし…。栄えある日本というものがよう分からんくなって、ちょっとうやむやにされているのかなとも思えて…。毎日毎日そういうことを考えるのは難しくても、心のどっかに置いておかなくてはいけないなと。命であったり愛であったりは意識せんでも生きてこれましたし、未来は楽しいんやろうなと思っていました。勇気はないんですけど、例え思っていることを言って非難されたり、除外されても、そこへの疑問符は提示したいなと」
Tatsuya「何を言われようが、伝えようと思ってやっているので、何の文句を言われてもいいです」
森「やるべきことをやらないと、しっぺ返しがくるので。ジャケットもタイトルの『Signs』を総称して、平和の象徴として鐘を考えましたし」
Tatsuya「警鐘鳴らす、なんて言葉もありますしね」
木下「そういうことが出来るようになったのかなと。とにかく、考えはブレたくなくて。だから是非とも手に取って頂きたい。CDが売れない時代ですけど、いいものは売れる。それにアートワークや歌詞は腐るものではないので、10年、20年経っても響くと思うので」
――ライブも楽しみです。
森「僕らはCD出して、ツアーを廻って、どこか循環作業になってしまっていたので、ちゃんとプロセスをライブで伝えていけたらなと」
Tatsuya「このツアーでどこまでやり切れるか…。いいライブを見せられたらいいなと」
木下「伝えるのに限りあるからこそ、受け取る側も発信する側も、曝け出すところは曝け出した方がいい。“楽しんで!”では終わりたくないので。楽しみの中には、感じ合える部分も欲しい。いろいろ考えてくれたみんなのレスポンスを受けて、俺たちもどう発していけるか。ツアーが終わるときが、『Signs』が完成するときだと思ってます」
Text by 鈴木淳史
(2014年1月16日更新)
Check