執念、情念、生き様、葛藤、怒り、アホ、メタル愛etcを歌い上げる
渾身の全方位型ニューアルバム『帰ってきたヘビーメタル』!
鋼鉄の時代再来を占う“シャウトして生きてきた男”
THE冠インタビュー&動画コメント
鎧兜を装着して、関西弁を操り、華麗なるハイトーンシャウトをぶちかます冠徹弥。ここ数年のテレビ露出で一気に知名度をあげた彼のヘビーメタル・ソロユニット、THE冠の渾身のニューアルバム『帰ってきたヘビーメタル』が、ちょっとスゴいことになっている。THE冠の全てが詰まっていると言っても過言ではないアルバムだが、何よりもこのアルバムがスゴいのは、ヘビーメタルを知らない人間でも楽しめること。そして、冠の音楽に賭ける、ヘビーメタルに賭ける情念も、しっかりと伝わってくるのだ。THE冠に制作秘話を聞いた。
ちゃんと鎧着てくれました(笑)。THE冠からの動画コメント!
――『帰ってきたヘビーメタル』は、ヘビーメタルを、THE冠を知らない人にも伝わる音楽力がある1枚でした。ただ、ここ数年はテレビ露出もあり、イメージのみの勘違いで大変だったこともあるような気がするのですが。
「3年ほど前にテレビ番組に出て、鎧兜を着て下半身は丸出しやないけど、丸出しみたいなんで誤解されることが多い(笑)。でも、芸人ちゃうしね。だから、今回はしっかり音楽やってるなというイメージを出したくて、今まで一番激しいアルバムになったかなと。“これが俺の仕事だ!”というのを出したくて」
――僕らが貰う紙資料やブログでも、アルバムについて、そして各曲について冠さんが細かくセルフライナーを書いているのが印象的でした。読み物好きとしては、たまらないので。
「シモネタやオモロイことを言ってるところだけ切り取られてしまって、伝わっていない人も多いから。こういうことを歌っているんだぞと伝えるためにも、分かりやすいかなと。オモロイだけじゃなくて、深く聴いて欲しい。ライナーは自画自賛みたいで照れくさくはあるんですけど、あくまでガイドやと思って読んでもらえたら」
――サウンドも、本当に全身全霊を込めた感じが伝わります。
「中学高校のときに聴いてきたカッコいい衝撃を、このアルバムでも与えようと。それも変化球なしでね」
――伝わります。前作から1年半ですが、いつ頃から作業には入られていましたか?
「去年の秋頃から作っていて、ただいろんなことを同時にやっているので、いろんなところで刺激を受けてきて。例えば、『サンダーロード』(M-7)では“パッと咲いて ポッとさせて サッと散ればいいだろう”という歌詞があるんですけど、劇団☆新感線の舞台に呼んでもらったときに、古田新太さんや橋本じゅんさんという先輩方が“わしらの商売なんてパッと咲いて、観客をポッとさせて、サッと散ればエエんや! こんなもんやで!”と言っていて、ああいう大人になりたいなと思って! その上にこの曲が画期的なのは、シモネタの箇所で曲が止まるという(笑)。ライブでは、ザワつくのを楽しみたい!」
――やっぱり、言っちゃうんですね(笑)。
「そのまま言えばいいのに、なかなか言いたいことだけを言えない。カッコいいことは、若手バンドに任せます! 全体的にネタが散りばめられてるんです、出し過ぎたのもあるし(笑)。でも、ちゃんと実体験の葛藤とか怒りとかを俺のフィルターを通して、歌っている。楽しくアホやけど憎めないキャラクターたちの歌やねんな、全曲」
――歌詞を読むのが楽しいし、発見もあるなと思ったんですよ。
「歌詞カードを何回も見て、歌詞カードがヨレヨレになるくらいに聴いて欲しい。中古屋に出せないくらいブヨブヨになるまで、歌詞カードを読んで欲しい」
――でも、ちゃんと聴いたら、イメージのみの誤解はなくなりますよね。
「まぁ、全部自分のせいなんやけどね(笑)。“本筋はコレ!”と言うてるけど、やっぱり小ネタを楽しみながら本筋に行って欲しいしね。真っ直ぐなことを言うだけの性格でもないし。照れくさいとこもあるのかな? カッコよく告白出来ないタイプ。“なんてね!”と絶対最後に言ってしまう(笑)。このアルバムを聴いて、音楽までたどり着いてくれたら、見る目を変えさせる自信がある。歌も演奏もフザけてないと分かってもらえると思うから。最後まで聴いてもらえたら、本気が伝わる。どアウェーで音を出していくのも快感やしね」
俺、シャウトして生きてきたんやな
――今の時代、ヘビーメタルが響く気がするんです。
「ヘビーメタルという音楽は、俺の体感的には今キてるなと。ヘビーメタルの時代が帰ってきて欲しいという意味を込めて、タイトルも『帰ってきたヘビーメタル』にしたし。ヘビーメタルは帰ってきたので…そして、ここから始まる感じというか。10年くらい前はちょっとしんどい時期もあったけど、今の若い世代は新鮮に感じてくれるし、盛り上がってくれる。ラウド、ハードロックを聴いて、80年代MTVでヴァン・ヘイレンやスラッシュメタル…好きな要素が全て入った、俺なりに消化したヘビーメタルアルバムが出来てしもたね…。まぁ、毎回言うてるけど(笑)」
――冠さんも今おっしゃってましたけど、僕ら30代半ばくらいの世代はヘビーメタルをちゃんと通ってない人もいて、でも中途半端な知識だけがあって、今の若い世代ほど新鮮に聴けなかったんですよ。でも、このアルバムは違う。新鮮なんですよ。
「はい、キタッ!! 本当に新鮮に聴こえると思います。『帰郷』(M-2)もハイトーンシャウトから入る王道なんやけど、今の時代には新鮮やと思う。42歳の本気を感じて欲しい」
――僕は42歳で続けてる時点で、何かグッとくるんですよ。
「そりゃ、いろいろと考えたことは何回もありましたよ。でも、そういうときにいろいろお声がかかったりすると、“俺、シャウトして生きてきたんやな。その需要があるなら続けよう”と思うんです。だから、低空飛行を続けてますよ(笑)。鳥人間コンテストも低空飛行の時間長いでしょ? ほんで、あっこから上がっていくでしょ?(笑) まぁ、失ったものもありましたけど、得るものも多かった。1つのことを貫いていると、何かに出会える…それを信じて、若い人もやれる内はやって欲しい。続けたくたって家の事情などで無理なヤツもいっぱいいたし…。そいつらに今会うと、“いまだに頑張っているんやな”と言ってくれる。前にやっていたSo What?のライブに来てくれていたお客さんが、“子供が大きくなったので、またライブに来れました!”って、THE冠のライブに来てくれる。そんなん見てると、簡単に辞められへん」
――何か…このアルバム自体がエエ意味での執念というか…すごい情念を、パワーを感じるんですよね。生き様が詰まった感じというか。それが過去の歴史を知らない人にも伝わるんですよ。
「嬉しい。とにかく聴いた人に深く残って欲しい。激しい曲から、最後はボケも入れず、歌い上げのバラードまでしっかり歌うという…そんな物語も感じて欲しい。簡単に言うと、俺という人間を10曲で表現しているので」
――相当の手応えを感じたんじゃないですか。
「毎回同じように嬉しいんですけど、今回はかなり手応えがありました。ガッツポーズしましたからね。今の自分を全部出せたなと。迷いもなくなったし」
――でも、いまや芝居やナレーションなどいろいろな仕事をしているスケジュールの中で、よくここまでのアルバムが出来ましたよね。
「日々アイデアは出てくるので。今だって、まだすぐには作ろうとは思わなけど、書き留めてますしね、いろいろなアイデアを。“あれ作りたい! これ作りたい!”というアイデアがなくなったら、終わりやし」
――いや~もう早く次のアルバムも聴きたいと思いますもん!
「ちょっと待って!! まだ聴こう、これを!(笑) まず聴こう、これを!」
――(笑)。最後になりましたが、さっきの歌詞カードの話じゃないですけど、ジャケットが本当に素敵で…。
「昭和テイストなんですよね。いろんなところを旅して、帰ってきた感じを出したくて」
――本当に今日は、たくさんお話が聞けて嬉しかったです。ありがとうございました!
「こちらこそ、ありがとう!」
Text by 鈴木淳史
(2013年11月 8日更新)
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