強烈なエネルギーを放ちながらシーンを進撃するSiMが
絆と希望を繋ぐニューアルバム『PANDORA』制作秘話から
『京都大作戦』『RUSH BALL』、そしてツアーで訪れる
STUDIO COAST、なんばHatchへの想いまでを語ったインタビュー
誰が今このバンドの勢いを止められるのだろう!? ’04年の結成から幾多の試練を乗り越え何度も蘇ってきたこのバンドは、その道のりの中で繋いできた絆と強烈なエネルギーを放つライブで、多くのオーディエンスを納得させてきた。そして、昨年リリースしたミニアルバム『LiFE and DEATH』、それに伴うツアーファイナルの模様を収録したDVD『DUSK and DAWN』、今年満を持してリリースしたシングル『EViLS』と、数々の作品をTOP10チャートに叩き込み、今にも爆発しそうな期待を一身に背負って10月23日にリリースしたのが、2年ぶりとなる3rdアルバム『PANDORA』だ。レゲエ、パンク、メタルにハードコア、スクリーモと、様々な血をたぎらせるこの新作を手に、現在は年をまたぐ全国ツアーを展開中のSiM。見事オリコンウイークリーチャート5位を獲得した『PANDORA』制作秘話から、’13年に数々の舞台を踏んだロックフェスや、ツアーで訪れる会場への想い、そして現在進行形のバンドの状況を、MAH(vo)とGODRi(ds)に語ってもらった。
MAH(vo)とGODRi(ds)の名コンビによる動画コメントはコチラ!
――まず今年を振り返って、’13年は今まで以上にかなりの本数のロックフェスに出演されましたが、印象に残っているシーンはありましたか?
MAH(vo)「やっぱり、『京都大作戦』は印象が強くて」
――MCでの“’08年の牛若ノ舞台(サブステージ)から5年越しの夢が叶った。あの丘を超えられた”っていう言葉が、すごく印象的で。主催者であり、レーベルメイトでもある10-FEETからの期待も高かったと思いますが。
MAH「昔からかわいがってもらってて、自分たちが泣かず飛ばずの状態だった’08年から出させてもらって。MCで話したことが全てなんですけど、活動を続ける中でいろんな葛藤があっての源氏ノ舞台(メインステージ)での出演だったので…ものすごく思い入れがあるフェスですね」
――『京都大作戦』のあの丘(会場には2つのステージを隔てている丘がある)は、反対側の景色が全く見えない状態ですよね。憧れの光景を実際に目の前にした瞬間はどうでした?
MAH「お互いのステージは全く見えない。でも、音は聴こえるんですよね。牛若ノ舞台にいると、源氏ノ舞台からの音がガンガン聴こえてくる。でも、牛若の音は源氏のステージには届かない。ずっと牛若ノ舞台から悔しい気持ちでライブをしてて…ギラギラしたヤツがいっぱいいるんですよ、牛若のステージには。その中からMAN WITH A MISSIONが最初に源氏に出て、その次にHEY-SMITHが行って、オレらが出て行った。今年のオレらのステージを観て、スゲー悔しい思いをしているバンドもいるはずだし。いいよね、あの試練は(笑)。やっぱり燃えるんですよ! オレらが’08年に初めて出演したときから、気付けばずっと源氏ノ舞台でライブすることを想像してたりして。シングル『EViLS』に入っている『Same Sky』は、まさに源氏ノ舞台で歌うことを想定して作った曲なんで。5年間ひたすら考えてたんでね」
――関西では他にも『RUSH BALL 15th』がありました。
MAH「『RUSH BALL』はやっぱり、GODRiの勢いがすごかったね(笑)」
GODRi(ds)「バンドで僕だけが関西出身で、高校生の頃POTSHOTが出演していたのを観に行って、いつか自分も出たいなってずっと思ってたんです。今年出させて頂いて、たまたまPOTSHOTも復活して出演されていて。夢が叶ったなって。当時から会場は変わりましたけど、場所は違えどステージの上から見てて“こっちから観る景色はこうなのか”って噛み締めながらライブが出来ましたね」
――フェスに対する想いも変わってきますよね。
MAH「去年から夏フェスに徐々に出させてもらえるようになったんですけど、去年はフェスの雰囲気に飲まれちゃってるな、っていうことも多くて。地元が神奈川で、行ったことのあるフェスが幕張のサマソニぐらいだったんで、それ以外のフェスはどんなものか知らない状態だから、“こんな感じなんだ~”って思ってる内にライブが終わっちゃってるというか(笑)。そういう経験があったから、今年はしっかりとやることはやって。“今日はSiMが一番良かった!”って言ってくれる人もきっといるだろうなって思えるライブも出来てきた。それでも、まだ若手中堅のような位置にいるから朝一番とかの出演も多くて、お客さんの入り具合もまばらだったりするんですよね。物販に並んでたら終わっちゃった、みたいこともよくあるじゃないですか? そういう人たちが悔しがるようなライブを今年は出来たはずなんで。それを受けて来年…もうちょっと階段を上りたいなっていう、野望はありますね」
この2年間はお客さんに希望を与え続けることを考えて生きてきた
――今回の『PANDORA』は、シングル『EViLS』の制作時にはすでに作り終えてる状態だったと伺いました。
MAH「1月にまとめてレコーディングまで終わらせちゃって。ミックスとマスタリングはツアー中に、『京都大作戦』の前日とかにもミックス作業をして。ツアー中に録り直したりもしてて、かなりバタバタでしたね」
――作品を作るための時間の使い方も、今まで以上に変わってきてますね。
MAH「全然違うよね。今年はシングルを出すタイミングで“47都道府県ツアーを回りたい”ってワガママを言ったことで、結果的に自分たちにツケが回ってきちゃって(苦笑)」
GODRi「自分たちで首を絞めてたよね(笑)」
――時間に追われながらも制作してきた今回の作品ですが、テーマは最初から決めていたんですか?
MAH「制作に入るまでは特になくて。単純に曲を作っていって、そこからイメージを膨らませて歌詞を書いて。曲が出揃って、さぁレコーディングですよっていうときには、タイトルが仮のままだったんです。例えば“8コード”とか」
GODRi「“イントロ・メタル”とかあったよね」
MAH「あったね(笑)。そういう印象だけの仮タイトルだったから、ちゃんとしたタイトルを付けていくときに、1曲目の『PANDORA』を思い付いて。改めて“パンドラの箱”についての話を読み返してみたら、すごく面白くて。箱の中にはこの世の最悪と言われるものが全て詰まっていて、箱を開けたとたんにそれがボワッと出てきて、危ないって箱を閉めたら、中には希望だけが残っていた…。何で悪いものばかりの中に希望だけが入っていたのか。ちょうど2年前に出したアルバムが『SEEDS OF HOPE』=“希望の種”で、震災を経ていろんなことを考えて、もっとポジティブに歌わないとと作った作品だったんです。そこで『PANDORA』と繋がった。この2年間はお客さんに希望を与え続けることを考えて生きてきたんです。でも、果たしてその希望とはただの光なのか?って。実際に買わないと分からないようになってるんですけど、歌詞カードの中にも“パンドラの箱”のストーリーを分かりやすく書いたものを入れたりして。ブックレットを全部読めば、歌詞以外のことも結構書いてあるんで、お客さんにもいろいろ分かってもらえるかなって。でも、正解を用意してるわけじゃなくて、何か考えるキッカケになるかなって思ってるんです」
今までは、言わないことがカッコよかったんですけど
ここからは言っていくべき時代だと思うんですよね
――事前に発表されたMVもシングルと地続きだったり、全てが時間をかけて繋がっているのが印象的で。MVを作るときのこだわりはあるんですか?
MAH「結局、最終的に言いたいのは、音楽をもっと楽しんで欲しいってことなんですよ。音楽が右から左に流れていって、“カッコいいな”だけではなくて、“これってこういう意味なのかな?”って、いろんなことを思って欲しい。MVを観て“カッコいいな”でもいいけど、“あのシーンって、あの言葉と繋がってる? この歌詞と映像は合ってないんじゃない?”でもいいし、無限大に楽しんでもらいたいんですよね」
――作品単体で終わらず、そこからいろんな考えを派生して欲しいと。
MAH「それが音楽っていうものの価値を深めると思うし。本当は、音楽ってもっと芸術として偉大なもののはずなのに、今はただの音で、ただのデータでしかなくなってる。それは=アーティスト側が発信していかないとダメな時代だから。今までは、言わないことがカッコよかったんですけど、ここからは言っていったヤツがカッコいい…というか、言っていくべき時代だと思うんですよね。CDを買って欲しいなら特にね。オレはそういうことを積極的に言うようにしてて。『KiLLiNG ME』っていう曲の歌詞カードの最後に、“この曲は一見ラブソングなんだけど、ただのラブソングじゃない。分かるヤツにだけその意味が分かるだろう”って書いてあって。それを読むことによって、お客さんが“この歌詞って実はこういうことなんじゃないの?”って勘ぐるようになって、それがオレはすごく嬉しくて。“知りたい”っていう欲はものすごくいいものだと思うから、それをどこまでも深くしていきたい。4月に出したシングル『EViLS』から今回のアルバム『PANDORA』までMVは全部で5本あるんですけど、それを全部観ながら歌詞カードを読んで、もう一度アルバムを通して聴いてみたら、もっと音楽に魂を奪われると思うんです。そういう楽しみ方をオレらから提示していかないとなっていうのが、こだわりですね。MVの監督はオレらの1つ下とかなんですけど、ものすごいよねアイツは。オレの歌詞を読んで、その世界をさらに広げてくれて。だって、『Blah Blah Blah』っていう曲を出したとき、監督が歌詞を読んで“ここはこうだよね、ああだよね”なんて話してくれて、それを聞いた上で最後に歌詞を付け足したくらい、そいつのことを信頼してて。だから今回も、ものすごいMVを作ってくれてますね」
このバンドが出来ることって、無限に近いと思う
――今回のアルバムで“パンドラの箱”を開けたことで、そこに“希望”だけが残った。ということは、その作品を経た次の作品はどうなるのか。“希望”をどう魅せるのかも気になります。次から次からにアイデアが出る中で、挑戦していきたいことはありますか?
GODRi「このバンドが出来ることって、無限に近いと思うんですよね。今回もどんどん新しいことに挑戦していて。次も何をするか決まっていなくても、何でも出来る! 何にでも挑戦していきたいなとは思いますね」
――あと、47都道府県ツアーが終わったところで、次のツアーがどんなものかを聞くのは心苦しいですが(笑)。
MAH「47都道府県はやり過ぎたんでね(笑)。その反省を活かして次はいい感じに絞って、対バンツアーが13本、1月からはワンマンツアーもやるんで。東京以外はワンマンでライブをやったことがなくて、大阪でもワンマンライブをやりたいってずっと言い続けて、やっと実現するのがすごく楽しみ。最終日は東京・新木場STUDIO COASTでのワンマンで、その翌日は自分たちが年に1回主催しているイベント『DEAD POP FESTiVAL』があるんです。2日続けてSTUDIO COASTでライブすることは、僕らにとってすごいことで。他の会場と比べて思い出があるんですよね。’08年にSUM41の来日公演でオープニングアクトをやらされて…」
――“ヤラされて”って(笑)。
MAH「“自分たちにはまだ無理だって”って言ったんですけど…いや、ウソです。“出ます!!”って言いました(笑)。でも、当然そのときの力では無理で…パンパンに人が入った会場で、お客さんが棒立ち状態。あとで“私の払ったチケット代が1円でもあのバンドに入ると思ったら許せない!”なんてネットで書かれたりもして(苦笑)。当時はギャラなんてもちろんなかったけど、それがすごく悔しくて! そこからは、絶対に有名になってやると思ってたんで、あの場所で、ワンマンライブと主催イベントが出来るのが、ものすごく楽しみでしょうがない。アルバムの最後の曲『Upside Down』(M-13)が今までのSiMの歴史をそのまま書いた曲なんですけど、辛かった時期とかいろんな想いを描いて、その曲をSTUDIO COASTで歌ったとき…」
――そこで体感する快感や歓喜とか…たまらない気持ちになりそうですね。
MAH「そうですね。『京都大作戦』もすごかったけど、やっぱり夢が叶う瞬間っていうのはアドレナリンがすごく出て、そしてそれはすぐその瞬間に終わっちゃうから、是非みんなに生で観て欲しいですね」
GODRi「泣いちゃうかもしれないですね」
MAH「泣いちゃうでしょ?(笑) オカンは泣いちゃうな」
――オカンも来ちゃうんですか!?
MAH「ウチのオカンはSiMの大ファンなんで(笑)」
超楽しみです!!
――大阪でのライブは、なんばHatchですね。
MAH「なんばHatchにはランシドを観に来たよね」
GODRi「みんなで行ったよね~」
MAH「大阪では2年間くらいずっとBIGCATでライブをやらせてもらってて。なんばHatchでやりてぇなぁと思ってたら、今回はワンマンです。(小さい声で)埋まるかなぁ…」
GODRi「あっオレ、なんばHatchの思い出あるわ! 『TEENS MUSIC FESTIVAL』ってあるじゃないですか?」
――今の『Music Revolution』ですね。
※23歳以下のアマチュアミュージシャンのための日本最大規模の音楽コンテスト。
GODRi「高校生のときに出場して、関西予選でなんばHatchのステージに」
MAH「ガキのくせに~(笑)」
――メンバーよりもいち早く夢の舞台に立ってるっていう(笑)。
MAH「スゲー偉そうなんだけど(笑)。あそこがトイレだよ、とかみんなが知らないこと教えてくるんでしょ?」
GODRi「いいじゃん!(笑)」
MAH「お客さん来るかなぁ」
――今のSiMなら大丈夫ですよ!
MAH「何人くらい入るんでしたっけ?」
――2000人弱ぐらいですね。
MAH&GODRi「うわぁ…怖い怖い!(笑) でも、超楽しみです!!」
Text by 黒田奈保子
(2013年11月29日更新)
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