ハイパーでサイバー、メロウでダンサブル、世界をロックオンする
圧倒的クオリティで迫りくるザッツ・エンタテインメント!
三浦大知が掲げる誇り高きニューアルバム『The Entertainer』
撮り下ろしインタビュー&動画コメントが到着
待望というよりも、渇望と言っても過言ではない。11月20日にリリースされた三浦大知の2年ぶりとなる4thアルバム『The Entertainer』。彼のルーツでもあるブラックミュージックの範疇からより広い世界へと足を踏み出し、バンドサウンドの楽しさやダンスホールレゲエなども取り込んだ前作『D.M.』(‘11)。その後に発売したシングル『Right Now』(M-11)では、自身が敬愛する米サンディエゴを拠点に世界的に活躍する振付師、Keone Madrid(ケオネ・マドリッド)と共同でダンスパフォーマンスを作り上げ、そのダンスリハーサル動画がYouTubeで150万再生回数を突破。続く『GO FOR IT』(M-7)は、日本でも人気の高いDJ兼プロデューサー、デヴィッド・ゲッタのグラミー賞受賞曲も手掛けている双子のクリエイター、Liv&Mim NERVOを曲作りに迎えるなど、ジャンルを軽々と飛び越えもはや三浦大知にしかできない音楽の新世界を次々に提示。その爆発的な進化が物語るように、昨年は初の日本武道館公演を果たし、今年9月にはツアーの追加公演として初の横浜アリーナを制覇した。17年前、わずか9歳でFolderのフロントとしてデビューし、音楽シーンをアッと言わせる天性の歌唱力でポップなR&Bを披露し、軽快なダンスパフォーマンスを繰り広げていた少年。もしも、その頃の印象だけで彼を評価しているとしたらあまりにももったいないぐらい、三浦大知の生み出す音楽は世界中を踊らせるだけの刺激とドラマに満ちている。「自分はエンターテイナーとして生きてきた」という力強い自覚の元に作り上げた圧倒的なアルバムを前にしながら本人は、「皆さんに好きなように楽しんでもらえたら嬉しい」と微塵も気負いがない。そんなギャップも彼の魅力と言えるだろうか。
三浦大知が理屈じゃない音楽への想いを語る動画コメント!
もっと振り切って、もっと自分の限界を超えて
今まで無意識の内に決めていた自分の殻を全部破る
――こんなにも発売が待ち遠しかったアルバムもそんなにありません。
「いやいやいや(笑)。ありがとうございます!」
――『The Entertainer』というタイトルは、大知くん自身を表していると受け取っていいんですよね。
「ハイ(キッパリ)。もちろんそうなんですけど、このタイトルはスタッフの方が提示してくれたんですよ。僕はこれまでもエンターテイナーとして生きてきたので改めて意識することはなかったんですけど、今回そう言って頂いたときに、すごく伝わりやすいインパクトのある言葉だと思ったんですね。ちょうど(9月8日の)横浜アリーナが終わった直後ぐらいにアルバムタイトルの話をしていたこともあって、僕の場合はショウから生まれてくる楽曲もたくさんありますし、今の三浦大知にしか付けられないタイトルなんじゃないかなと思ったので、即決で」
――夏に行われたツアーですでにこのアルバムの曲も何曲か披露されていましたね。ライブのオープニング曲にもなっていた『Can You See Our Flag Wavin’ In The Sky?』(M-1)の終盤で“未知の喜びをきみと迎えよう”と歌われていて、ツアータイトルの『Door to the unknown』ともリンクするように感じました。アルバム制作とライブは同時に進んでいたんですか?
「アルバムは、前作『D.M.』が出てからの2年間、いろんな方向からモノ作りをしていたので作業自体はアルバムの方が早くて、ツアーはその後からですね。とは言え、前作アルバムを出してからツアーは3本行っているので、並行といったら並行ですね(笑)」
――『D.M.』も、楽曲の幅や世界がそれまでより大きく広がったアルバムでしたが、今作ではどんなものを表現したかったんですか?
「とにかく“振り切ったものを作ろう”というのがテーマにあって、盛り上がるものは、それこそ笑っちゃうぐらいスーパーアガる曲を作りたかったし、バラードだったらピアノ一本で三浦大知と歌だけを伝える曲。スローでもアップでもミッドでも何でもいいんですけど、いろんな方向にもっと振り切って、もっと自分の限界を超えて、今まで無意識の内に決めていた自分の殻を全部破って、もっとたくさんの表現が出来るんじゃないかと作っていきましたね」
――昨年を振り返ってみると5月に初の日本武道館公演があり、その後に初の全国ホールツアーがあって。セットリストにはシングルメドレーもあって、これまでのキャリアを駆け足ではあるけど知ることが出来て…あのツアーで聴き手の三浦大知の入門編が完了すると共に、次の段階へ向かう離陸前夜を見ているような気がしたんですね。その後に届いたシングル『Right Now』(M-11)や『GO FOR IT』(M-7)では、海外のチームとの共同制作という新しい挑戦もして、明らかにそれまでとは曲の持つ強度や勢い、世界観の濃さも違う次元に進んでいることを感じました。
「海外のクリエイターの方たちはすごく面白くていろいろ勉強になることが多かったんですが、その中でも緻密さと勢いの良さみたいなものが共存している感じはさすがだなと思いました。コーラスとかメロディにしても、これは要らない、これは必要っていうのを結構サクサク決めていくんですね。そういう感覚を目の当たりにしながらスタジオで一緒に作っていくのはクリエイティブで刺激的でしたし、その刺激に僕も影響を受けながら、“じゃあもっともっと思い切っていろんなことをやっていいんだな”って。勉強になる瞬間がたくさんありましたね」
――確かに振り切った曲が多いですよね。簡単にジャンル分け、カテゴライズ出来ないような曲が次々と聴こえてきて。ですが、『Can You See Our Flag Wavin’InThe Sky?』の詞にもあるように、大知くんが掲げる旗の元に私たちリスナーも自分で選んで向かっていくぞ、という気持ちです。
「ありがとうございます。『Can You See Our Flag Wavin’InThe Sky?』は、曲自体がもう次のレベルに行っている楽曲だと思っていて。この曲はNao(’ymt)さんの曲なんですけど、Naoさんは時代の何歩も先に先に行っているようなものを作ってくださるので、僕自身も表現者としてNaoさんの世界を自分の中に入れて、いち表現者として曲に成長させてもらえてる感じもあって。あの曲は、Naoさん独特の浮遊感とか、こういうジャンルってカテゴライズ出来ない感じが楽曲のポイントになってる気はしますね」
僕にとってライブは、音楽をやっている大きな理由
――『Spellbound』(M-4)もかなりグイグイくるカッコいい曲ですね。
「あの曲は、歌とダンスという手法で見せていく自分のスタイルの特権が詰まったような曲ですね。すごくライブ映えする曲だと思うし、見せ場がたくさんある曲で、自分でも早くパフォーマンスしたいなと思う1曲です」
――曲を作りながら、同時にダンスやステージでの見せ方も考えていくんですか?
「はい。そういうのは全部の曲にありますね。逆に、こういう見せ方がしたいからこんな曲を作りたいとかもあるし。今回もそうですけど、自分の中の考え方としては、ライブがまず中心にあって、そこに対して自分の音楽がどうあるべきか?とか、どうあったらいいか、どんな可能性があるか?という派生の仕方のような気がしますね」
――三浦大知にとってライブとは?
「僕にとってライブは、音楽をやっている大きな理由ですね。ライブがしたくて、ライブがあるから音楽をやっている。というぐらい、三浦大知にとってライブはすごく大事なものだと思っています」
――タイトルの『Spellbound』という言葉は、“魔法をかける”、“魔法にかかる”という意味があるんでしたっけ?
「そう、呪文(spell)にかかっている状態みたいな。 (Liv&Mim)NERVOっていう双子のクリエイターとロスのスタジオで一緒に曲を作っているときに、“Spellbound~♪”っていう言葉とリフを一緒に出してくれて。聞きなじみがなかったので、どんな意味か聞いたら“呪文をかける”、“魔法にかかった状態”って意味だよと教えてくれて。言葉のリズムとか意味合いとかも含めてすごくオシャレだなって思ったので、そこから日本語の歌詞を広げて頂きましたね」
――『Baby Just Time』(M-5)にも“魔法をかけよう”という素敵なワードがありますが、中でも“ホンモノを今 選べばいい”という一節はズシッと響きました。大知くん=ホンモノを選べばいいんだよ、と言われているようで。
「それは聴いてくださった方が感じたように捉えてもらえればいいんですけど(笑)、自分としてはステージに立つ男として、どんな気持ちで立っているのか、どれぐらいの想いで向かっているのかを、ちょっと強気にガツンと歌える曲になったらいいなと思いながら書きました。そのワードも最初は強く言い過ぎてるかな?と思ったりもしたんですけど、スタッフの方からも、それぐらい攻めてもいいんじゃないかと言って頂いたので良かったなぁと」
――『Gotta Be You』(M-8)は、ちょっとうつむきがちな気分のときにグッとくるような歌詞になっていますね。
「だと思いますね。僕も好きです」
――大知くんの中で、自分が書いた歌詞と、他のクリエイターが書いた歌詞を歌うのでは、何か違いはありますか?
「違いはあると思うんですけど、壁は全くないです。1曲に対して、コンペみたいに何種類も歌詞を出してその中から選ぶこともあるんですよ。自分も書いたけど、他の方が書かれたものの方がより世界観が広がるなぁっていうものもあるし、自分の歌詞がピッタリはまる瞬間もあったりして。そこはヘンに意地を張って“自分が書かなきゃイヤだ”とかはないですね。詞も曲もそうなんですけど、素敵な作品が作れたらいいなといつも思っているので、そのためにベストなものが選べたらなとはいつも思ってますね」
ダンスがあることで聴こえなかった音が聴こえてきたり
言葉の真意みたいなものがより伝わったりする
――今、大知くんのように歌って踊るアーティストが増えていますが、大知くんの場合はダンスと歌の親和性をとても強く感じると共に、ダンスにもメッセージを感じる瞬間があります。今回のツアーでは、ステージ上のバンドメンバー間が塀のようなものでブロック分けされていて、そういった場所や階段を大知くんとダンサーがステップを踏んで踊っている姿を見たときに、平凡な道でも階段でも、人生のどんな場所もステージになるんだなぁと、世界がちょっと明るくなったように感じました。『Two Hearts』(M-9)は、とても静かに自分の中に入ってくるバラードですが、ダンスがあることで曲の表情が変わりますね。
「“どうしてダンスがなければいけないのか?”ということを、いつもすごく大事に思って振付をしているので、そういう風に感じて頂けるとよかったなぁと思いますね。ダンスがあることで聴こえなかった音が聴こえてきたり、キーワードとか言葉の真意みたいなものがより伝わったりする。“なぜダンスを踊らなきゃいけないのか?”を考えてみると、そういうことを表現しないと、僕が音楽をやる意味がないんじゃないかなと思っているんですね。音だけで聴く楽しみ方もあっていいし、ライブに来て視覚と一緒に楽しんだとき、楽曲の持っているまた違った魅力を感じられたらそれも素敵なことだし。そうやっていろんな方向、いろんな角度から楽しめるものになっていればいいなと思いながら、いつも楽曲を作っていますね」
――『Listen To My Heartbeat』(M-13)は前作のラスト曲『Magic Word』を彷彿とさせる雰囲気もありつつ、さらに深い想いを綴られているように聴こえました。
「この曲は正直、詞を書いたときの記憶があんまりなくて…月がすごくきれいな夜だったのは覚えているんですけどね。月とか星を見るのが好きで普段もよく見ているんですよ。最初に曲が出来たときに自分の中で“決意の歌がいいな”と思って、そしたら言葉がさーっと出てきた感じでしたね。なので、特定の相手がいて、こういうことがあって、という絵が明確にあったわけではないんですけど、ある1人の男の決意を歌った曲になっているので。聴く人によっていろんな捉え方が出来ると思うし、表現の幅みたいなものは感じてもらえる1曲なんじゃないかと思いますね」
――最後の『all converge on “the one”』(M-14)も、大知くん自身の心情が反映されている曲なのかなと。
「これはNaoさんが書いてくださったんですけど、僕の中でこの曲はNaoさんらしさが凝縮された曲だと思っていて。僕、Naoさんの言葉の“人との距離感”がすごく好きなんですね。押しつけがましさがなくて、かといってすごく遠くにあるわけでもない。傍にはいるんだけど包んでくれるというよりは、ふわっと宙に浮いているような言葉たち。その言葉たちが最後のサビに向かって、より聴いている人に寄り添ってくる感じがあって。そこはこの楽曲のすごくの素敵なところだなと思っていて、タイトル通り“全ては1つに収束していく”というのが感じられて、アルバムの最後にピッタリじゃないかなと」
――『Listen To My Heartbeat』でもアルバムは完結出来たかと思いますが、最後にこのもう1曲があることで、今作の向こう側を少し見せてもらったというか、一歩も二歩も先へ連れて行ってもらえたような気がして。
「確かにそう感じますね。何かが終われば何かが始まるという感じで、僕は終わりと始まりって本当に同じものだと思っていて。アルバムも終わりを迎えるんですけど、そこから次の可能性とか新しい始まりが感じられたらなって」
――アルバムが出来上がってみて、今までと違う手応えみたいなものはありますか?
「毎回、シングルもアルバムも出すたびに最高傑作だと思っていますし、今回も最高の1枚を作れた手応えはあるんですけど、聴いてくれる人の好きなように、いろんな角度から楽しんでもらえたらと思っていますね。“こういう想いで書きました”っていう僕の気持ちと全く別の受け止め方でもいいと思っているし、それが音楽の楽しみ方であり、醍醐味だと思うので。いろんな方が自分の環境とか今の気持ちとかに合わせて聴いてもらえたら嬉しい。そうなることで、このアルバムの音楽たちも喜ぶんじゃないかなと思います。聴く人それぞれの傍に置いてもらえる曲たちが詰まっていると思うので、長く楽しんでもらえたらいいなと思いますね」
――長く楽しめると言えば、『Two Hearts』(M-9)は昨年の5月にシングル発売されてちょっと懐かしい感じもあるんですが、初めて聴いたときと現在では曲の持つ深みや響き方が違っているように感じます。聴くたびに曲の持つ違った良さを発見するようで、改めて長く付き合える曲だと思いました。
「『Two Hearts』は特に、10年後に歌ってもまた違う『Two Hearts』が聴けるのかなと思いますね。“変わらずに変わっていく曲”というか、制作中も変化しながらもずっとそこに在り続ける曲を作れたらいいなって話していたんですね。僕自身も、子供の頃に聴いていた音楽が、今聴くと違うものに聴こえる瞬間もあれば、逆に当時の思い出と共に蘇ってくるものもある。その感覚は音楽の1つの魅力でもあると思うので、『Two Hearts』ももちろんですし、僕の作る音楽がそういう風に長くみんなの傍に一緒に置いてもらえる音楽になっていったらいいなと思いますね」
大阪城ホールでライブをすることは、武道館と同じように1つの目標
――ところでYouTubeでダンスのリハーサル映像が150万回、曲によっては200万回以上も再生されていますが、我ながらこれは難易度が高いなと思った振付はありますか?
「難易度は…ある程度までくるとだいたいダンスとしては難しいのは難しいんですよね(笑)。ただ、毎回毎回しっかりレベルアップしていると思うので、今回のアルバムでもDVDにはMVやダンス映像が入っていますし、いろんなチャレンジもしているので、進化している姿を楽しんでもらえるんじゃないかなと思います」
――関西ではFM802で大知くんがDJを務める『MUSIC FREAKS』が9月まで放送されていたこともあり、まだその余韻を楽しんでいるファンの方もいるように思います。改めて関西のファンの皆さんにメッセージをお願いします。
「ラジオパーソナリティをやっていたときは、自分の曲だけじゃなく好きな音楽をかけたり、時には僕自身も知らない音楽との出会いもたくさんあって。そうやって音楽を通じてみんなとつながっていけたら幸せだなって思いながらやらせて頂いてましたね。“音楽でつながる”っていうのは僕が一番好きなコミュニケーション方法だし、会場の大きさが全てではないんですけど、大阪城ホールでライブをすることは武道館と同じように1つの目標なので、いつかそこでみんな一緒に三浦大知の音楽で遊べたらいいなと思っています。関西は盛り上がり上手な人がたくさんいるので、これからもライブで皆さんとお会いして、一緒に三浦大知の音楽を育ててもらえたら嬉しいなと思います」
――26歳の誕生日だった8月24日のグランキューブ大阪のライブで、アンコールのときにバースデーケーキが登場するサプライズがありましたが、そのときに“ずっと歌い続けます”と言われていたのが印象に残っています。
「ハイ。本当にそう思いますし、ひとまず87歳までは歌い続けようと思っていて(笑)。と言うのは、ジャズ・シンガーのトニー・ベネット(アメリカで最高のエンターテイナーといわれているシンガー)が今87歳なんですけど、レディー・ガガと一緒にアルバム制作をしたり、すごく精力的に活動されていて。僕もトニーと同じぐらいまで歌い続けたいなと思っているので、あと60年は歌い続けます!(笑)」
Text by 梶原有紀子
Photo by 宮家秀明(フレイム36)
(2013年11月21日更新)
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