くるり岸田繁とのデュエット曲『ザ・ワンズ』も収録
マイア・ヒラサワが贈るディープエンドでポップな
4年ぶりのオリジナルアルバム『ホワット・アイ・ソウ』!
ジャパンツアー開幕直前インタビュー&動画コメント
本国スウェーデンでは'07年にデビューし、ゴールドディスクを獲得するほどの人気を獲得したシンガーソングライターのマイア・ヒラサワ。もう1つの故郷ともいえるここ日本では、'10~'11年に手がけた花王エッセンシャルのCM曲『イット・ダズント・ストップ』や、国際的にも高く評価されたJR九州のキャンペーンCM曲『ブーン!』をきっかけに、より広く知られる存在となった。実は、'10年から1年間、仙台に住んでいたため、スウェーデンに帰国する直前に東日本大震災に遭遇していた彼女。5月にリリースされた約4年ぶりのスタジオアルバム『ホワット・アイ・ソウ』はポップな中に内省的な要素が深まり、これまでとは違った趣きで聴く者を引き込んでいく。そんな彼女の人生観をはじめ、音楽面においては新たにエレクトロサウンドを導入したこと、くるりの岸田繁とのデュエット曲『ザ・ワンズ』について、さらに間近に控える日本ツアーに向けての意気込みまで誠実に語ってくれた。
マイア・ヒラサワからのチャーミングな動画コメント!
――ニューアルバム『ホワット・アイ・ソウ』は、スタジオアルバムとしては4年ぶりになりますが、その間に’11年の日本での震災体験、双子のお子さんを出産してお母さんになったことなど、マイアさん自身いろいろな体験を経て出来上がったアルバムだと思います。制作する上ではどういう想いで取り組まれたんでしょうか。
「最初からコンセプトやメッセージを考えていたわけではなくて、アルバムの曲がほぼ出来上がったときに、“あぁ私、伝えたいことがあるんだな”と初めて気付きましたね。今作の歌詞は今までよりシリアスでヘヴィな内容のものもあると思いますが、これは人生の中で遭遇する苦難を歌っていて。でも、人生というのはそういった困難があるけれど、時には素晴らしいこともある。それが人生なんだと。そして、今ここにいる自分、今を生きることが大事だということ…“今を楽しむ”ということがこのアルバムのメッセージとしてはありますね。あの震災によって多くの友達がいろんなものをなくしたし、全てをなくした友達もいます。人生何が起こるかわからない、一瞬で変わってしまうということを身に沁みて経験したことが大きかったと思います」
――特に表題曲『ホワット・アイ・ソウ』(M-8)の歌詞は震災のドキュメントのようですが、やはりあの記憶をリアルに歌の中に残しておかなければという意識が強かったんでしょうか。
「そうですね。『ホワット・アイ・ソウ』は震災が発生した次の日に、まさに自分自身が感じたことを歌っています。こういうことがあったんだということを皆さんの心に心に留めておいてもらいたい気持ちと、自分自身の心に留めておくためにも、この曲を作りました。震災の1年後ぐらいに一度曲にしようかなと思いましたが、まだそのときは辛くて書けなかったんです。それから1年3ヵ月ぐらいして、どんどん自分の中から気持ちが湧き出てきたので書くことが出来ました。『ホワット・アイ・ソウ』の中で“ずっとあなたを思っていた”と歌っているんですが、それは私の仙台の友達のことを歌っています。どんなときも一番大切なのは愛だと思います。そういったことを皆さんに伝えたかったんです。また、この曲を書く過程は自分自身のセラピーのようでもありました」
――ジャケット写真からも内省的なものを感じたんですが、自らの内面の深い部分を見つめて出てきた言葉や音楽が、アルバムの中に反映されているんですね。
「全くその通りです。アルバムカバーの撮影はいつも難しいのですが、このアルバムのカバーは自分でもすごく満足していますし、一曲一曲に合ったものだと思います」
エレクトロサウンドを取り入れつつも、あたたかい音に仕上げる
――これまでマイアさんが手掛けたCM曲はいろいろありますが、アルバムではより純度の高いマイアさん自身の世界観が感じられます。特に『ユー』(M-1)は情感を込めて相手に歌いかけるような曲調で、明るくポップにはじけるCM曲の印象とは明らかに異なります。その点、何か意図することがあったのでしょうか。
「『ユー』は私自身ホントに好きな曲なので1曲目にしたんですけど、そういう風に感じてもらえて嬉しいです。CMというのはどうしてもハッピーでアップリフティングに盛り上がる曲を求められることが多いのですが、アルバムでは違う面を出せるので、こういった曲調にしました」
――今作では今までなかったようなエレクトロサウンドが導入されていますが、音楽的にはどういったチャレンジをされましたか。
「これまではトランペットやストリングスを使った曲が多かったんですが、今回は違った音にしたいというのがありました。それで、今まではセルフプロデュースをしてきましたが、初めてプロデューサーを迎えて音作りをしていったんです。自分としては、エレクトロだけど親近感を持って聴いて頂けるものにしたくて。それはすごくチャレンジングなことでしたね。エレクトロサウンドを取り入れつつも、あたたかい音に仕上げることが一番大事でした」
――『ホワット・アイ・ソウ』の中には、日本の琴のような音色が入っていますね。
「まさに琴の音を取り入れたかったんです。というのも、この曲は震災のことを歌っているので、何か日本の音を入れたかったんですよ」
――『ゴー・トゥ・スリープ』(M-11)は子守唄のような曲ですが、この曲の最後に聴こえてくるエレクトロサウンドもすごく優しい音色ですね。
「この曲は典型的な子守唄のような音になるのは避けたかったので、エレクトロサウンドを取り入れつつ、あたたかくて落ち着く曲に仕上げました」
――この曲は、単に眠りに誘うというだけでなく、安息の境地に誘うというか、心の平穏を取り戻すような曲にも感じ取れます。
「この曲は息子を寝かしつけているときに作ったんですけど、自分のための曲でもあったんですよ。だから、聴いて頂ける方それぞれの感じ方をしてもらえたらと思います」
ラブソングって失恋の曲とか
恋に落ちたばかりの盲目の状態を歌った曲が多いですが
私は長く続いているカップルの日常的な関係について歌いたかった
――ところで今作では、くるりの岸田さんと『ザ・ワンズ feat. 岸田繁(from くるり)』(M-13)という曲で一緒にデュエットされていますが、そもそもくるりと出会ったきっかけは?
「最初はくるりを好きな日本の友達に薦められたんです。その後’11年に、くるり主催の『京都音楽博覧会』に誘われてから親交が深まりました」
――マイアさん自身はくるりのどういったところがお好きですか?
「メロディがいいですね。それと、岸田さんの声。彼が日本語で歌っているときの声の出し方がとても自然で素敵な声だと思います」
――『ザ・ワンズ』は、最初から岸田さんとのデュエットをイメージして書かれた曲なんですか?
「最初は英語で作った曲なんですけど、岸田さんにピッタリだなと思うようになって。自分自身も日本語で歌いたかったのでデュエットすることにしました。岸田さんとは日本とスウェーデンと離れていたので、別々にレコーディングしてお互いに連絡を取り合いながら仕上げていきました」
――この曲で歌いたかったのは?
「この曲は愛についての歌なんですが、恋に落ちたばかりではなく、付き合いの長いカップルの歌ですね。空気のようなお互いの存在の大切さだったり、一緒にいられることが大事だよねっていうこと。日々ずっと一緒にいられることで安心感がある心地よい関係を歌っています」
――マイアさん自身もそういう関係を大切にしているんでしょうか。
「そうですね、自分自身のことでもあるし、友達のことだったり、自分と同世代のカップルの話題にインスピレーションを受けて作りました。ラブソングって失恋の曲とか、恋に落ちたばかりの盲目の状態を歌った曲が多いですが、私は長く続いているカップルの日常的な関係について歌いたかったんです」
――日本語で歌う曲は今後も増えていきそうですか?
「そうですね。日本でライブをしたときに日本語で歌うと、すごく歌詞に共感してくれているのを感じるし、とてもやり甲斐があるので、努力して日本語の歌にもチャレンジしていきたいですね」
大阪のお客さんは非常にノリが良くて、ワイルド!
――秋には日本でツアーが開催されますね。
「今回のツアーでは新たに2人のシンセサイザーを入れたバンドで来日して、このアルバムからの新しい曲を中心に演奏します」
――シンセが入ることでサウンドの幅が広がりそうですね。
「新しい音になって新たな一面を見てもらえると思いますが、音は変わっても、同じようにマイア・ヒラサワの世界を感じてもらえるものになると思います」
――ちなみに、関西のお客さんの印象は?
「とにかく皆さんフレンドリーですね。特に大阪のお客さんは非常にノリが良くて、ワイルド! 自分も演奏していてとても楽しいし、大好きです」
――最後にファンに向けてメッセージをお願いします。
「いつも私の音楽を聴いてくれてありがとうございます。皆さんの前でライブをすることとを楽しみにしています。ライブではホントに自分をさらけ出して表現したいですし、大きな愛のあるコミュニケーションが出来ればと思っています。期待してくださいね」
Text by エイミー野中
(2013年9月15日更新)
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