驚異のピアノ連弾で世界を熱狂させるレ・フレールが
ニューヨーク・シンフォニック・アンサンブルとの名演を音源化した
『レ・フレール管弦楽団』をリリース&大阪で一夜限りの再演も!
結成10周年から新作秘話までを語るインタビュー&動画コメント
実の兄弟ならではの息の合った連弾で話題を呼ぶ斎藤守也、圭土によるピアノデュオ、レ・フレール。1台のピアノを2人4手で弾く演奏法、そしてクラシックやポップスとも線引きすることが出来ない独創的な楽曲で異彩を放つ彼ら。昨年、結成10周年を迎え、オーケストラとの初めてのコンサートツアーも実現させ、今年の3月20日にはそのツアーの模様を収めたライブアルバム『レ・フレール管弦楽団』もリリース。この4月から9月にかけては、ファンの応募によって選ばれた彼らの人気楽曲を参考に構成された『Best of Les Frères』ツアーに臨み、その合間の7月には、昨年行ったニューヨーク・シンフォニック・アンサンブルとのツアーの再現となるプレミアム・アンコール公演を大阪のみで開催することも決まっている。2~3年先もスケジュールが埋まっているなど多忙を極める彼らに、10周年を迎えた想い、そしてアルバムやツアーについても話を訊いた。
レ・フレールからの動画コメントはコチラ!
――まずは昨年秋で迎えた結成10周年、おめでとうございます。活動を始めた頃から、いつまで続けようとか、どんな目標を持って活動を始めていたんですか?
守也「実は当時は目標がなかったっていう…(笑)。そもそも飼っていた犬が交通事故に遭って落ち込んでいる僕を、圭土が励ますために声を掛けてくれたことがキッカケなんですよ。愛犬の手術代を稼ごうと言ってくれて」
圭土「それで10年前にコンサートを開いたんですね」
守也「だから、当時の目標と言えば、その手術代を稼げればって(笑)」
圭土「犬が健康になること、でしたね」
守也「おかげさまでその後は本当に元気に復活しました。ただ、去年亡くなってしまったんです…」
――キッカケはどうあれ、10年を越える活動を行ってこれたことを、今どう受け止めていますか?
守也「只々嬉しいですね。特に'06年にメジャーデビューしてからは内容の濃い時間だったと思っているので、いろんな方に支えられて、迎えられた10周年だったと思います」
圭土「僕ら兄弟だけでは無理だったと思うんですよ。いろんな方にお会いして、支えて頂いたのでやってこれた10周年だったなと、今振り返って改めてそう思いますね」
――実際に活動を続けられる原動力は、そうやって支えてくれる身近な人たちと、応援してくださるファンの方がいるというのが大きいんでしょうね。
圭土「それに尽きますね」
想像力をかき立てられる出会いがありました
本当に新しい試みで新しい作品が出来た
――3月には、『レ・フレール管弦楽団』というアルバムをリリースしています。オーケストラとのコラボという発想はどこから?
守也「元々2人ともオーケストラとやってみたい気持ちがあって、10周年ということで、知り合いの方を通じてオーケストラを紹介して頂いて実現したんですけれど」
圭土「まず指揮者の高原守さんが僕らのコンサートを観に来てくださって、僕らも今回共演したニューヨーク・シンフォニック・アンサンブルの来日公演を観に行って、そうやって交流を深めていきました」
守也「お客さんの中にも、オーケストラとの共演が観てみたいっていう声も頂いてたりしたんですよ」
圭土「ピアノは音域の広い楽器で、特に連弾だと4手ありますので、オーケストラをイメージしたアレンジの曲など作れますが、やっぱり弦楽器の響きとかは、オーケストラそのものとは全然違いますし。その表現力に驚きましたね。想像力をかき立てられる出会いがありました」
守也「オーケストラは特に、弦が重なってきたときにグワーっと音が増す、音が迫ってくる…レ・フレールもそういうところを意識してピアノで表現してはいるんですけれども、やっぱり実際の音は違いましたね」
圭土「あの壮大な感じは、なかなかピアノだけじゃ出せないですよね」
――選曲に関しては?
圭土「これは2人で話し合って、元々オーケストラのイメージがあった曲、あとは合いそうな曲ということで選びました。ピアノとオーケストラ、オーケストラだけで演奏する曲というコンセプトがあったので、そういう中で決めていきましたね」
――そういう意味では、オーケストラとの共演である程度の完成形は事前に見えていたということですか?
守也「自分の曲では1曲だけオーケストラだけの演奏がありましたが、もう彼らに任せていたので、ある意味完成形が見えている部分もありました。共演という部分では、リハーサルを通して作り上げていくところもあったので、徐々に出来上がっていった感じの曲もありましたね」
圭土「自分は逆で、自分たちが弾いていればまだ見えるんですが、自分たちの手を離れてオーケストラだけに任せたときに、想像以上のものが出てきたっていうのはありましたね。そういう意味では全く新しい化学反応を感じたってことでしょうね」
――オーケストラに対して特にオーダーしたことはありましたか?
守也「“クラシカルな編成で”というのはお願いしました。例えば、ドラムスやベースetcも入れられるよっていう提案に関しては、NOでと」
圭土「あと、細かいイメージがあるものに関しては先に伝えて」
――実際に、オーケストラとの共演でどんな刺激を感じました?
圭土「想像力をものすごくかき立てられるというか、その表現方法があったのか!って」
守也「ずっとピアノで弾いてきた自分たちの楽曲を違う楽器で演奏されたとき、やっぱり新鮮さと喜びと、いろんな感情がありましたね。あと、オーケストラの方々が陽気な方たちで、コミュニケーションも取れてすごく楽しいツアーだったんですよ。何より自分たちの楽曲を理解してくれて、やりとりをして、一緒に作れたのがすごくよかった。振り返ればすごく刺激的な時間でしたね」
――2人にとってどんな意味を持つ作品になったと思いますか?
守也「日が経って聴いても飽きないですね」
圭土「すばらしいものが出来たと思いますし、本当に多くの方に聴いて頂きたいなと思います。このアルバムを聴くまではなかなか想像出来ないとは思うんですけれども、クラシックでもないし、かと言って今までのレ・フレールのアップテンポな曲ばかり入っているわけでもない。本当に新しい試みで新しい作品が出来たので。なかなか言葉で説明するのは難しいので是非聴いてみてください!」
何1つとして同じコンサートってないんです
――もちろんCDで聴くのもいいんですが、やはりコンサート会場で生で聴くのが何よりだと。4月から『Best of Les Frères』と題したツアーも始まっています。
守也「これはタイトル通り“ベスト・オブ・レ・フレール”ということで、過去に出したアルバムの中から選曲してプログラムを作るんですけれども、事前に自分たちのホームページでベスト3を募集しまして」
圭土「出た結果のまま…まさにベスト(笑)」
――出た順位の結果を、どう感じましたか?
圭土「ポップスのアーティストと違って、いわゆるヒット曲というものは特にないんです。それでも聴いてくださった方々の中に僕らの曲が残っている、支持して頂けたのは素直に嬉しかったですね。“この曲が好き”っていう気持ちを皆さんが持ってくださっていて、作り手としてはそれはすごい喜びでした」
守也「インディーズ時代を含めて、オリジナルアルバムを4枚出してるんですけど、その中から満遍なくプログラムには入っていて、そういう幅広い楽曲構成のコンサートはなかなかないので。そういった意味では、今までとは違う楽しみ方をしてもらえるんじゃないかなって思います」
――コンサートを行うときに、意識していることはありますか?
圭土「レ・フレールには、弦を直接ミュートするミュート奏法、手を交差させるクロス奏法とかいろんな奏法があるんですけれど、そういう奏法を満遍なく入れるようにとか、いろんなタイプの曲を折り混ぜて、平坦にならないように…1本の映画を見ているようにっていうのはいつも考えますね。CD通りに弾かない曲もありますし、即興を結構入れたり。そのライブでしか弾かないアレンジもあるので、それも見どころなのかなと。何1つとして同じコンサートってないんですよ。その会場に来てくれたそのときのお客さんと、僕たちのコンディションで出来上がるものなので。特に即興演奏なんかは全く違うものになったりする。コンサートって、その一瞬、そのときにしか出来ないものが本当にあるんです。一期一会、それがコンサートの醍醐味だなって思いますね」
守也「確かにコンサートでしか感じない瞬間ってありますよね。自分たちのコンディションがあって、会場によってお客さんが違って、ピアノの調子も日によって違って。コンサートによっていろんなことが起きるんですけれども、今日はどの瞬間にそれが来るのかなっていうのもオモシロいんですよね。それこそ、弦が切れたりすることもあるんですが、張り替えている間にMCをしなきゃいけなくなったり(笑)」
――ちなみに、ピアノはコンサート会場に据え置きのものを使っているんですか?
守也「自分たちは持って行きますね。同じ楽器で、なるべく同じ音をと考えているので」
圭土「使用している楽器が、ベーゼンドルファー社のインペリアルという世界最大級のピアノで、通常のピアノよりも鍵盤数が多いんです。連弾向けというか、僕らはずっとそれを使用しているんです。コンサート会場にはそのピアノを持って行くので、それも見どころでしょうね。僕が師と仰いでいるドイツのピアニストがいるんですけれど、彼がベーゼンドルファーのアーティストなんです。日本にその楽器がないかを調べてもらって…そこからの縁ですね」
――文字通りの愛器ですね。でも、まさか名前まで付けてたりは…!?
守也「…付けてます(笑)。事務所が付けました。ダニーくんって(笑)」
圭土「3月までメンテナンスを受けていたところで、今回のツアーは万全ですよ。そういう意味では、レ・フレールのオリジナルメンバーが揃って廻りますので(笑)」
守也「ぜひ、会場でお待ちしています!」
Text by 金本真一
(2013年4月27日更新)
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