高らかに鳴らせ! 鋼の歌声と美しき轟音
強烈な才能を更新し続けるロックシーンの超新星
小林太郎のメジャー1stアルバムにして最高傑作『tremolo』
インタビュー&動画コメントが到着!
‘10年、僅か19歳にして『Orkonpood』、そして『DANCING SHIVA』という驚異のロックアルバム2枚を世に放ち、突如としてその名をシーンに知らしめた小林太郎。あれから早2年…。昨年1st EP『MILESTONE』で遂にメジャーデビューを果たした彼が、満を持してメジャー1stアルバム『tremolo』を1月にリリースした。グランジ/オルタナティヴの重量級サウンド、心の琴線にそっと触れるような憂いと強さを持つ鋼の歌声…彼のキャリア最高傑作と言える今作は、自身の才能に押し潰されそうになりながらも音楽を手放さなかった1人の若者の覚悟が、圧倒的なエナジーとすさまじい生命力へと昇華し見事に刻まれている。そこで、K点越えし続けるロックシーンの驚異の新人に、メジャーデビューから今作にたどりつくまでの揺れ動く心の旅をインタビュー。音楽に選ばれた原石の輝けるストーリー、見届ける価値は十分にある。
話すと22歳、でもこの色気。小林太郎からの動画コメント!
――2010年当時ね、『Orkonpood』『DANCING SHIVA』といいアルバムを連続で出して。去年1stメジャーEP『MILESTONE』を出すまでの2年という時間の話をまずはしてもらいたいなと。
「最初に『Orkonpood』『DANCING SHIVA』を1年で2枚リリースさせてもらって、その後また同じ1年間を小林太郎とYE$MANとしてバンドもやらせてもらえて…元々高校のときからバンドをやってたし、ソロを経験出来た状況でバンド組んでみたらどうなるんだろうっていう想いもあって。誤解を恐れずに言うなら実験的というか、ソロ期間もバンド期間も、腰を入れてというよりは、もう何も考えずにガムシャラにやってみて今一度深く考えた、みたいな2年間だった気がするんですよね。ソロもバンドも経験出来て、音楽的には器用な方なのでやろうと思えばいろんなことが出来る気はしたんです。でも、だからこそ何をやればいいのか分からなくなってきて…」
――うんうん。
「いくら考えても分からなかった結果思ったのは、音楽の才能っていうのは“もらいモノ”のようなもんだなって。皆さんが褒めてくれるのって、自分自身じゃなくてその奥にある才能に対してだから。とりあえずはそれを届けるだけでいい。簡単に言ってしまえば、小林太郎が作る音楽をやればいいんだって気付けたというか。正しいかどうかは分かんないですけど、これまで小中高とずっと音楽をやってきた答えみたいなモノが出た気がして。じゃあ、あとはもう小林太郎の音楽を120%純粋にやるだけで。現状それが出来るのはソロなんじゃないかということで去年からまた再始動して、タイミング的にもメジャーデビューと重なって、前作の『MILESTONE』から今回のフルアルバム『tremolo』にたどり着いたというか」
――よくそれを見付けられたというか、その発想の転換が出来ましたね。
「小林太郎とYE$MANの頃は、音楽を始めてからずっと思ってきた“何のために音楽するのか”を探す期間でもあったので。ミュージシャンはメッセージを発信しなければいけない立場で、でも震災があったとき俺にはそれが分からなかったことで拍車がかかって、自分の気持ちを整理するためにも、ホントにいろんなことを吸収しようと思うようになって。それがあったからこそ、ちゃんとしたイスを見つけられたというか、腰を落ち着かせる場所が出来たなと」
――そのイスっていうのは、言わば才能とは“もらいモノ”だと自覚するということだと。
「そうですね。自分の部屋にあるイスじゃなくて、誰かに用意してもらった高級なイスに座って楽してりゃいいんだなって。ただそのイスを捨てたり、もう少しよくしようとかしなければいいだけで。今までは分からないなりに“このイスじゃないんじゃないか?”とか、“もっとよくしなきゃいけないんじゃないか?”っていうのはあったんですけど。やっと力を抜いて腰を落とせたなぁという感覚はあります」
――それって、例えば30も半ばを過ぎたら気付くことかもしれないですけど、今の若さでその俯瞰の目線じゃないけど、分からない自分を自覚するみたいなところにたどり着けたんやね。
「逆に30~40でもなかなかたどり着けなかった話もいっぱい聞くんですけど、それだと俺、きっと音楽を続けられなかったですね。音楽だけしてればいい環境だったら分からなかったですけど、音楽は仕事でもあるので、そこで自分を出そうと思ったら考えなきゃいけなかった部分もたくさんあった。けど、それが全部無駄にならずに今につながって、このアルバムが出来たのがホントによかったなぁと思うんです」
小林太郎はギターと歌で癖が出なきゃいけない
――それこそ過去の2作を出したときに、“聴き手を意識することが自分にとって1つのやり甲斐にもなる”みたいなことを言ってたけど、それは今ではどう?
「自分を出来るだけ出そうと『tremolo』を作ったんですけど、そうした理由は俺が何かに染まるよりかは、小林太郎という音楽をそのまま出して欲しい人がいるんだろうなって感じたんです。その作業下で何が貫かれていたかと言えば、『MILESTONE』でガムシャラにやった自分の出し方を今度は見極めて、バラードでもロックでも、ピンポイントに力を集中して自分を出そうと。歌とギターの音量をものスゴく上げようとか(笑)。小林太郎はギターと歌で癖が出なきゃいけなかったんです。だから前よりもスゴく歌も意識したし、ギターも意識したし、ミックスのバランスも意識した。地続きながらも前作をそのままグレードアップしたようなイメージで作りましたね。ただ、地続きなんですけど、楽器面では結構新しい挑戦も多くて、ループだったりがホントにいっぱい入ってる。だから今までとはまたちょっと違った面があるかもしれないですけど、俺から言えば逆に『tremolo』はずっと頭の中に鳴っていたイメージで、『MILESTONE』以前の3枚はイメージとはちょっと違ったところにある作品で。いいか悪いかは置いといて、それを表現出来ないがための知識不足とか経験不足が功を奏して出来た作品というか。自分の頭の中のイメージ通りCDにして、アルバムにして発表する。この『tremolo』でその第一目標をクリア出来た感はスゴくある」
――これは新しい試みに入ると思うんやけど、『艶花』(M-3)とかはスゴく新鮮で色気もあっていいなと。
「安全地帯系のヤツですね(笑)」
――あと『ナユタ』(M-6)も好きかな~。
「何かそういうキレイだったりJ-POPだったり、キラキラ感があるものがホントは大好きだし、最初の入口はむしろそっちだったので、それもちゃんと自分っぽさを出しながらやりたいなって。ロックって定石みたいなものがあるから、今まではそれにあやかってる部分もあったんですけど、これからは独り立ちというか、ロックだからバラードだからってわけでもなくて、何を作っても小林太郎の曲ですよって言えるぐらいのポテンシャルが必要で。『艶花』は今までの曲と比べてもグレーゾーンというか、なかなか際どいところにあるので、一種の挑戦ですよね」
――この曲は録音にもスゴく苦労したみたいですね。
「録音も複雑だったんですけど、ミックスでも挑戦が多くて。今までのロックだったら按配が分かるんですけど、『艶花』の雰囲気は何となくCHEMISTRYさんとか松尾潔(音楽プロデューサー)さんのオケの感じというか(笑)。そういう意味では作家さんっぽい感覚なのかもしれない。さっきも言いましたけど俺って結構器用な方で、コレしか出来ないじゃなくて、手を伸ばせる範囲だなぁと。それがギリギリ『艶花』では表せたかなぁと」
『tremolo』で引退するなら今スゴい喜んでると思うんですけど
次を作んなきゃいけないからなかなか喜べない(笑)
――それにしてもまぁ、クソカッコいいアルバムが出来ましたね。2013年度で言うと個人的にはベストかも。まだ2ヵ月やけど。
(一同爆笑)
「ありがとうございます(笑)。暫定1位(笑)」
――それぐらいやっぱり聴いててワクワクするし、“なりたい”と思わせるというか、そういう憧れの対象に成り得る音だと思ったし、嫉妬混じりの気持ちすら沸き上がるような作品な気がします。こっちも仕事として聴いて分析するっていうところを越えた気持ちになるというか。
「そうなってくれれば1番嬉しいんですけどね。『tremolo』を作ってる最中は、ホントにコレが正解かどうか分からないで進んでいたので。『tremolo』で引退するなら今スゴく喜んでると思うんですけど、次を作んなきゃいけないからなかなか喜べない(笑)」
――あと、小林太郎を形成する核はやっぱり歌とギターっていう。もうリフがよかったら何とかなる(笑)。
「そう! リフ以外覚えてない洋楽たくさんあるもん(笑)」
――リフが良かったら自分の中で=いい曲って認定されますから(笑)。
「それはね、ギターが好きなんですよ(笑)。洋楽だったりそういうロックな感じが好きな自分と、J-POPから入った歌の雰囲気が好きな自分が、より集中して出せたかなぁと」
――出来上がったときはどう思ったんですか?
「“あ、コレはスピーカーから鳴らしたらカッコいい”だろうなって。まぁ当然っちゃ当然なんですけどね、カッコよくないことやろうと思ってないから(笑)。頭の中に流れてたイメージが初めて出来たな、という思いもありながら、初めて出来たからこそいいか悪いかが分かんないんですよね。だから嬉しい作業って言ったら、このプロモーションで褒めてもらうぐらいです(笑)」
ライブ自体も何かが変わる気がしてる
――それこそツアーまでやって一区切りというか。それこそ『tremolo』に至るまでの前回の『MILESTONE』のツアーからも、得るモノが多かったみたいですね。
「もちろんライブパフォーマンスが良ければお客さんと演者の距離は近くなると思うんですけど、1番思ったのが『MILESTONE』自体が以前のアルバムよりもリスナーさんと近いところにあったというか。俺からなのかリスナーさんからなのか、歩み寄れてる部分があった気がしたんです。それをずっと聴いてもらった上でのワンマンだったので、ライブパフォーマンスどうのこうのの前に近かった。その結果、ライブも頭から近い距離で楽しんでもえらえた。その全ての1番最初のキッカケとなる作品に助けられたというか、作品ありきでライブが出来たのがスゴく嬉しかったなぁ。ということは次のアルバムも、その次のアルバムも、俺が作品をリリースすればするごとに、その作品に影響されるんだなぁって」
――ライブを始める時点で、会場の空気に今までとは違う近さを感じたってことですよね。
「そうなんですよねぇ。おっちゃんがボロ泣きしてたり(笑)」
――おっちゃん!? おっちゃんが来てることもスゴいし、それがボロ泣きしてるのもスゴい(笑)。
「おっちゃん何かあったんかなぁ…?って思いながら(笑)」
(一同笑)
――そんなおっちゃんが解放される場が…。
「アハハハハ!(笑) おっちゃんが、自分を曝け出せる場が、俺のライブだった」
――おっちゃんこのインタビュー見たら喜ぶやろな~(笑)。
(一同笑)
「そのおっちゃんに読んで欲しいですねぇ(笑)。でも『tremolo』はホントにスゴくよく出来たので、何がどうなるかはまだ全然未知なんだけども、ライブ自体も何かが変わる気がしていて。そこは楽しみなところですね。ホントにワックワクするアルバムではあると思いつつ、作るのは大変だったなぁ…またこの作業をするのかと思うと、スゴくイヤな気持ちになってくる(笑)」
――そういう意味で言えば、普通どのアーティストも作品ごとにそれなりに波があるじゃないですか。でも小林太郎はどのアルバムもいいから、単純にスゴいなぁと。
「普通は波があるもんなんです。俺もそうやって言い訳したいんですけど、マネージャーさんに怒られちゃう(笑)」
(一同笑)
「前作の『MILESTONE』は休み期間があったからこそ、自分の中で充実感もあったし作りやすかったかもしれない。でもそれがあった上での『tremolo』なんで、コレでいい作品が出来なかったら、他のアーティストと同じで。それがホントに1番怖かったんです。もしくは『Orkonpood』『DANCING SHIVA』の方がよかったねって言われたりしたらね」
――俺も同じことを思いました。先に聴いた『MILESTONE』がかなりよかったから、越えられるのか? 前の方がよかったってならなきゃいいなって。
「ホンットに。作家さんっていつもスゴいなぁと思うんですよね。言いわけが通用しないじゃないですか。でも曲を作ってる時点でアーティストもバンドマンも作家だから。そこに波があるって言えちゃうのもオカシイなぁと思って。波があるとか言うヤツらはみんな甘えてるんだなぁって思いました(笑)」
――プロ意識が高いのかもね。高いというより、元来そうあるべきなのかもしれないね。
「ねぇ。だからアーティストは悩んでる方が曲がよかったりするじゃないですか。売れた後とかじゃなく(笑)」
――それスゴく思うわ。特に男はそうだと思う。
「女の人ってスゴく感覚的だから状況に左右されないんで、ちゃんとそのときの自分の感情に素直になれる。でも男って野心とかがあるから、叶っちゃうと落ちるんですよね(笑)。だからこそ男にしか出せないような魅力はあるかもしれないですけどね」
――でも小林太郎があと10年歳を取ったら、諦めて強くなるっていうことを感じると思いますよ。
「諦めて強くなる?」
――自分が出来ないことを知って、だからこそ自分のいい部分を伸ばそうと強くなれる。
「なるほど! それは今からバリバリ思ってて。コレを5枚出すとか無理だわと。5枚出す前に誰か気付いて(笑)。いつでも出来るようなことやってるわけじゃないですし、今だから出来ることを、自分の役目みたいなものをとりあえずこの1枚では出来たなぁと。30で同じことをやるべきなのかも分かんないですし、枯れたら枯れたでいい。でも枯れてない状況で辞めちゃったりっていうのは、申し訳ないし」
――消えてしまうぐらいなら燃え尽きてしまう方がいいじゃないかと。
「ねぇ~ホントにそうなっちゃうとね、長生きしたいんですけど(笑)」
――でもまだまだね、これだけの作品が出来たなら燃え尽きることはないでしょう。次どうなるんだろうね。楽しみですわ。2013年中には何か聴けるのかな?
「2~3枚聴けるかもしれないですよ」
――お? マジで!? そんなに?
「俺もね、マジで!?って思ってます(笑)」
(一同爆笑)
――そういう意味でのマジでね(笑)。レコード会社さん、お手柔らかに(笑)。じゃあまたそのときに是非お会いしましょう。本日はありがとうございました!
「ありがとうございました!」
Text by 奥“ボウイ”昌史
(2013年3月 1日更新)
Check