ホーム > インタビュー&レポート > ポピュラリティもユニークさもないまぜに奏でる音楽のマジック! 稀代のポップマジシャン、ビッケブランカの 1stワンマンツアーをレポート
開幕のSEが鳴り響くと、蛍光イエローのパーカーに身を包んだビッケブランカに、バンドメンバーも颯爽と登場。1曲目はオープニングにふさわしく『VBのテーマ』を。ハンドマイクでステージ中を飛び跳ねるように歌い、初っ端からエンジン全開! 続く『Wake Up Sweetheart』では扉を開け放つようなスカッとした爽快感をもたらしてくれる。ピアノの上を踊るようになぞる指先。そこから生まれるメロディは、まるで光がこぼれていくようにキラキラ輝きに満ち、早くも音楽のマジックが会場に降り注いでいくようだ。
「ようこそ! ビッケブランカの1stワンマンツアーへ。Twitterなんかを見ていると、日本全国から集まって来てくれたそうで…。本当にありがとう!」と喜びを言葉にする中、続いて放ったのは『アイライキュー』だ。凛としたボーカルに甘酸っぱいメロディが実に心地よく、客席も自然と横揺れに。かと思えば一転、『さよならに来ました。』では、やさしいサウンドが切ない詞世界を際立たせ、聴く者の心へセンチメンタルな情景を映し出していく。楽しさにしても悲しさにしても、それは誰にとっても親密な感情。しかしビッケブランカが生み出す“それ”は決して陳腐な安物の言葉にならず、実にさりげなくオーディエンスの心の深みに迫ってくるのだ。
MCでは大阪への愛も語ってくれた彼。「大阪に来るのは3回目。大阪弁はリズムがいいんですよね。話しててほんと楽しい! “ゆうて!”(なんちゃって、またまた…など状況に応じて意味が変わる相づちに似た大阪弁)とか好きです。ここに生まれていたら作る音楽も違っていたかもしれませんね」なんてうれしい言葉も。続いてはビッケブランカいわく「異質で変な感じの歌!」と評する『Flash Love』を。全面にデジタリック感を押し出したクールかつ硬質なダンスサウンドは彼の言葉どおり実にユニーク! さらに『Remedy』では、壮大な世界感を展開。一筋縄ではいかない、メロディーメーカーとしての振れ幅の広さをまざまざと見せつけていく。ビッケバンドのメンバー紹介を挟みつつ、「この1曲だけ“HIP HOPブランカ”になります!」と宣言した『ユー、チック、オーバー』では、ギタリストのコジロウがDJに変身。疾走感あるグルーヴィーな展開を繰り広げたかと思えば、早くも宴はクライマックスへと向かっていく。変則的なリズムで刻まれるリリックが頭を占拠する『ココラムウ』、弾むようなピアノ使いの『アシカダンス』と、ライブパワーの高い楽曲で会場のテンションを容赦なく引き上げていく。
「僕は昔からよく“いいかげんにせぇ~!”って言われていて。昨日はそのことをボーッと考えてたんですけど、ハッと気が付いたんです。“いいかげんに…”って“イイ加減”でもあるんだよなって。そう考えるとすごくポジティブに思えてきたんですよね。これからも何をやるにも“イイ加減”にがんばっていきます!」
そう高らかに叫ぶと、本編最後を飾る『この幸運な日』を。力強く爪弾かれるギターに乗せ、ストレートに歓びを歌うビッケブランカ。全身で今宵のステージへの歓喜を表す彼に、ポジティブな感情が会場の隅々まで伝播していく様は圧巻の一言! アンコールでは、ステージにひとりで現れた彼。キーボードの弾き語りでしっとり歌い上げた『グッド・シェパード』で、この宴を締めくくってくれた。
老若男女様々なオーディエンスが一様に楽しんだ光景は、ポピュラリティを忘れないビッケブランカのサウンドの証明。ゆるりと力の抜けた“イイ加減”なポップス・メイカーでもあり、ハイスピードにまくし立てるダンスサウンドの妙を知る巧者でもあり…。自在にサウンドを、場をも操る音楽の魔法使い・ビッケブランカの次なるマジックが楽しみでならない。
Text by 後藤愛
(2013年1月28日更新)
01. VBのテーマ
02. Wake Up Sweetheart
03. アイライキュー
04. sorrow sorrow
05. さよならに来ました。
06. Flash Love
07. Remedy
08. 秋の香り
09. ユー、チック、オーバー
10. ココラムウ
11. アシカダンス
12. Star Charter
13. この幸運な日
En. グッド・シェパード
※曲名が仮のものもございます。
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