ダンスミュージックの向こう側へ――
1100日ぶり大躍進の1stフルアルバム『Punch Games』を手に
Sawagiが主催イベント『Mitole』を前に語った!
笑いと感動の秘蔵エピソード満載全員インタビュー&動画コメント
‘09 年にリリースされた1stミニアルバム『hi hop』は、ダンスミュージックのエネルギーとインストゥルメンタルの可能性、そしてSawagiの名を関西から全国へと知らしめるディープ・インパクトとなってシーンに鳴り響いた。あれから1100日、遂にリリースされた1stフルアルバム『Punch Games』は、徹頭徹尾の強烈なダンスミュージックを聴かせた前作の血を受け継ぎながらも、より切なく美しいメロディ、フルドライヴするアグレッシヴでスリリングなビート、エレクトロでスペーシー、ファニーでオリエンタルと、様々な顔を見せる多彩なサウンドスケープ、映画的ですらあるドラマティックな曲展開とスケール感etcと、全てのベクトルを完全アップデート! Sawagi自身とシーンの枠すら飛び越える大躍進の1枚となっている。そこで、臆することなく破壊と想像を繰り返すジャンルレスでノーボーダーな4人に、『Punch Games』のストーリーの終着点とも言える主催イベント『Mitole』を前に、上京を含むこの3年間の道のりを、笑いと感動の秘蔵エピソード満載でざっくばらんに語ってもらった。それにしてもコイチ(key)さん、あんたスゲェよ…(笑)。
なかよしインスト4人組Sawagiからのいい感じの動画コメント!
――キャッチフレーズ的にも“1100日ぶり”という名のもとに、ようやくリリースされたニューアルバム『Punch Games』でしたが、前作『hi hop』はSawagiを知ってもらった作品であり、明確なイメージ付けというか、強烈にダンスミュージックのイメージがあった1枚で。リリース間隔としての3年というのは、日本の音楽シーンにおいては決して短い時間ではなかったと思うんですけど、具体的にこの3年間リリースがなかった理由、振り返ってみてどんな3年間でした?
nico(ds)「もっと早く出そうとは思ってたんですけど、今となって思えば、3年経った今出せて良かったって率直に思いますね。やっぱり前のSawagiのイメージが俺らの中でも強くて、多分この3年の間のどこかで出してたら、『Punch Games』みたいなアルバムにはなってなかったと思うんですよ。この3年間ライブをずっとやってきて、その間に俺らも変わって変わって、今ここにいる感じなんで。あと、アルバムの振り幅が結構デカいんで、もっといろいろ文句言われるかなと思ったら、意外にいいこと言ってもらえてるなっていうのが率直な感想です(笑)」
雲丹亀(b)「実際期間は長かったんですけど、期間があったからこそここに行き着いた結果みたいなところもあるので満足というか。あと、リリースが久々っていうのもあったんで、地元の友達とかから“買ったよ~”とか“聴いてるわ~”とか“頑張ってんねや東京で!”って連絡が来たときは、リリースしたなって実感しました(笑)。ようやく出せたなっていう感じはありましたね」
観音(g)「嬉しいことにこの3年間はいろいろとライブに呼んでもらったりもしてたんで、ライブの見せ方とかクオリティを上げていく期間としてもいい時期だったと思うし」
コイチ(key)「いろんなライブとか音楽をこの3年間で見聴きしてきた中で、それぞれの考えが変わってきた結果が『Punch Games』だと思いますね」
――この期間は音楽的な変化もそうですけど、’11年の夏には上京したりと環境も変わって。でも、行くならもっと早く行ってると思うんですよね。あのタイミングで上京することになったのには何か理由があったんですか?
nico「行った方がいいと言う人と、行かんでもいいって言う人と両方いると思うんですけど、俺ら的には何か可能性があるんやったら1回やってみな分からんやんっていうのはあったんで。結成したのが遅かったのもあるんですけど、28~29の男4人が全員東京行こうってなったんがまずすごいことやと思うし、何せ反対したヤツがいなかった。それだけでもバンドにとっては相当勢いがあることやと思ったんで」
雲丹亀「あのとき行っとけばよかったとか、30代半ばになってウダウダ思うくらいやったら行こうやみたいなね」
――仕事でも何でも、それなりに生きてきた環境を変えるのはなかなか思い切れなかったりしますから、ええ年の男4人が音楽やろうぜって東京に行けたのもよかったですよね。環境的にも創作的にもプラスに作用してる感じで。
雲丹亀「そう思いますね。もちろん大阪も楽しかったですけどね」
観音「ホンマにいろんな方と知り合いましたね」
――何が楽しそうって、一緒に酒呑める人いっぱいおるなって(笑)。
コイチ「友達は確かに一気に増えました(笑)」
――あと個人的にずっと疑問だったのが、コイチさん上京早々何で骨折したんですか?(笑)
コイチ「ようご存知で(笑)。僕たちの(事務所の)ボスがフットサルチームをやってまして、僕もちょっと運動したいし、サッカーやりたいなと思って参加させてもろたんですよ。その1日目にはしゃいで、誰も見てないところでコケたら折れたんですよ(笑)」
――ハハハハハ!(笑)
nico「開始何分?」
コイチ「3分くらい(笑)」
――接触プレーとかじゃなくて?
コイチ「1人で(笑)」
雲丹亀「フットサルのまぁまぁ狭いコートの誰も見てへんところで(笑)」
コイチ「骨折&靭帯切って(笑)」
――マジで(笑)。
コイチ「一応全治半年くらいやったんですけど、半年経ってもまだ痛みとがあったんで、完全に治ったなと思えるまでは、1年くらいかかりましたね(笑)」
――当時ブログにさらっと骨折したって書いてたけど、その後全然それに触れてないから何でやろってずっと思ってた(笑)。
nico「当時はもう、ホンマこいつ何しとんねん!って思いましたけどね(笑)」
(一同笑)
コイチ「しかもその頃ツアーがあったんですけど、右足やってもうたから運転も出来ないし。骨折と分かった瞬間、全員に電話しましたから」
雲丹亀「気遣い過ぎて、ちょっと声震えてて(笑)」
(一同爆笑)
コイチ「泣きそうになってました」
――音楽やるぞ!って東京に行ってまず骨折(笑)。
観音「ホンマにスタジオにもまだ入ってないような最初の時期やったやんな?」
nico「引っ越し屋のバイト決まった!言うて、2回行ったら骨折(笑)」
雲丹亀「雇う側も始めて2日で足折りましたって言われたら、“あぁまたこのパターンで辞めるヤツね”みたいな(笑)」
コイチ「バイトもでけへんし、いきなり引きこもってましたね…(苦笑)」
Sawagiは踊らせるだけのパーティーバンドじゃない
――『Punch Ganes』に向けては、いつから動き始めたんですか?
nico「すぐ音源は作ろうみたいな話はしてたんですけど、東京行って作り出した曲が今までの曲とちょっと違い始めて、それを1つの作品にするために時間がかかって。最初はめっちゃ迷いましたけど、今までのSawagiどうこうよりも、ホンマに好きなことをやろう、新しいことも全部やろうって。そう決めてからは早かったですね」
――そうなれたのはいったい? やっぱり今までのSawagiは徹底的に踊らせるイメージがあったと思うんですけど。
nico「そうじゃない感じでいい曲が結構出来てきたのがデカいですね。俺らも最初は強烈にダンスミュージックぽい、今までシングルっぽいと言われてた曲を作ろう作ろうとしてたんです。けど、3年間待たせた人への答えとして、今まで通り“やっぱりSawagiってこんなんやな”よりは、“やっぱ3年あったらちゃうよな”の方が面白いなって」
――今までのSawagiのイメージに応えるよりも、裏切ることで応える。
コイチ「僕らのイメージって踊らせてライブでガーンと盛り上げるみたいな。それも結構長い間やってきたんですけど、いろんなライブとか音楽を聴いている間に、じっくり聴かせても感動出来るような音楽をやってみたいっていう話をみんなでしたことがあって。今作は、そういうことも考えながらやった結果でもあると思うんですけど。Sawagiは踊らせるだけのパーティーバンドじゃない。そういうことが出来るのが僕らの強みやと思うし」
――今作はそれこそ11曲で全部違う顔を見せるというか。映画のサントラみたいなテイストあり、刑事ドラマで流れててもいい曲あり(笑)、いろいろなシチュエーションで見せる顔が変わる感じがすごくありますね。
nico「せっかくインストやるんやしっていうところで、海外への意識が最初からみんな強くて。海外のアーティストの音源って、こんなんどういう発想で生まれてくるねんみたいな…何かちょっとちゃうなって聴いてていつも思うんです。日本でよく言う“○○っぽい”っていうことから外れたことをやりたくて。俺らのイメージを持ってくれてるのはすごく嬉しいんですけど、それも小さい範囲内での話やと思うし、それやったらいろんな国の人が聴いても面白い音楽をやりたい。それも大きかったですね」
――結果、今作の方がかえって間口が広い感じがしますね。これだけ引き出しがいっぱいあれば、インストの強みとか面白さを改めて感じることもあったんじゃないですか?
nico「やっぱり鍵盤がいるのがデカいと思いますね。メロディになる楽器の音色や音階が結構変化させられるんで。ただ、“この人が歌ったらこのバンドになる”みたいなものがないんで、どこかでアルバムのこの曲が流れてて、あの曲がかかってて、どっちもSawagiやなって感じさせるのは難しいっちゃ難しい。そこにいかにSawagiらしさを出しつつ、面白いことが出来るのか。いろんなことをやろうと思う分振り幅も広いんで余計に」
コイチ「例えば、僕がビンテージのエレピとか生ピアノを使ってたら、サウンドが一定してるんで分かりやすい。シンセはいろんな音が出るから面白いんですけど、その分音色がめちゃくちゃ難しい。それが今の振り幅にもなってると思うんですけど」
雲丹亀「出来ましたか、今回は」
コイチ「分からへん」
(一同爆笑)
――分からんねや(笑)。
コイチ「客観視出来ないんですよね、自分らで作ったやつって」
nico「正直なアーティストやな、いいかどうか分からへんって(笑)」
(一同笑)
コイチ「いや、いいねん! アルバムはすごくいいと思ってるんやけど」
雲丹亀「結果的にSawagiらしさで統一感はあると思うんです。音色とかジャンルは違えど、メロディとか作り込みとかバランスとか。ヘンに何かに特化し過ぎる感じはなくて、あくまでSawagiとしてやりたいことの範疇の中で、面白く飛び出した音みたいな」
――それこそ外国人に聴かせてどう思うか聞きたいですね。でも海外のバンドと対バンもしてるわけですもんね。何か言われないんですか?
観音「喋ってもない(笑)」
コイチ「ノリでしか会話出来ない。イェーイ! カンパーイ! みたいな(笑)」
雲丹亀「音楽性について会話出来ひんというか」
nico「誰か英語出来るようにならなダメっすね、もう(苦笑)」
――完成したときに感慨深いものはありました?
雲丹亀「手元に盤が届いた瞬間が一番嬉しいときで。まぁ僕は観音がTwitterに上げてるのを見て“あ、出来たんや”って知りましたけど(笑)」
――ハハハ!(笑) 観音さんはどうだったんですか?
観音「もちろん、“やったー”っていうのはありましたけど、今回は特にリリースの期間も開きましたし、レコーディングをこの4人で始めた、その初日の方が喜びも大きかったし、嬉しかったですね」
nico「名言残しましたからね。2人で一緒に住んでるんですけど、レコーディングの初日が終わって、明日もレコーディングやし寝よかって電気消して真っ暗になった中で、めっちゃちっちゃい声で…」
観音「“終わりたくない…”って(笑)。それくらい、4人でレコーディング出来るのが嬉しいし楽しかった」
――ブログを遡って読んでめっちゃ印象的な一節があって。“商品ではなくて作品を作ることが出来て良かったです”っていう言葉。あれがすごく印象的でしたね。
雲丹亀「やっぱり3年もリリースが開いたら、前に好きやった人はSawagiのアルバム出たんやって気にしてくれるかもしれないですけど、誰やろっていうのが大半やと思う。なら尚更、視聴機で聴いたときにノリノリでイキのいい感じの方が手に取りやすいかもしれない。けど、それよりも長く聴ける、何回リピートして聴いても疲れへんとか、流れてても自然とか、そういうのを自分らは目指してたし。もちろんCDとしてリリースしてる時点で売りもんなんですけど、自分らのやりたいことを精一杯出来たなって」
『Mitole』には、“見とれる”っていう意味もあるし
今に“見とれよ!”っていう意味もある
――上京して作品も出来て、ようやく第2期じゃないですけど、Sawagiとして活動していける起点が出来た感じですね。このアルバムに伴うライブは…。
nico「ツアー自体はないんですけど、1月に東京と大阪でイベントを打ちます。僕等が上京するタイミングで打った『Mitole』っていうイベントを、地元と新天地と両方でやろうと」
――『Mitole』ってどういう意味なんですか?
nico「ホンマ言うと、僕が子供に付けたかった名前で。女の子が生まれたら“ミトレちゃん”にしたかったんで(笑)」
――かわいい(笑)。でも、なかなかある名前じゃないですね。
nico「『Mitole』には、“見とれる”っていう意味もあるし、今に“見とれよ!”っていう意味もある。もう1コくらい意味あったんですけど、忘れました(笑)」
――そうやって聞いたらええ名前ですね。美しさと反骨精神が共存してる。言うたらこのアルバムもそんな感じがするんですよ。メロディの美しさもあるし、それだけじゃない骨太さというか、ハングリーさみたいなものがあるし。一貫してるんですよね、Sawagiは。だからこの4人で続けられてるんじゃないですか?
nico「かもしれないですね。雲丹亀とコイチとは幼馴染で」
観音「僕はコイチと音楽の学校が一緒」
コイチ「で、昔バンドやってたり」
――そう考えたら付き合い長いですもんね。解散の危機はなかったんですか? ケンカもせず?
コイチ「たまに。ケンカというか、俺が怒られるっていうくだりはよくありますけど(笑)」
――しっかりしてそうやのにね。
nico「それはバンド組む前からそうなんで。叱らなあかん!」
――このタイミングで骨折る?とか(笑)。
雲丹亀「1回叱られ過ぎて気遣い過ぎて、ピアノから始まる曲のイントロ弾く前に、“ごめん…間違えた!”って(笑)」
(一同爆笑)
nico「まだ一音も出してないのに(笑)」
――もう天才やん!!(笑)
nico「ホンマですよ!(笑)」
コイチ「ちょっとスピリチュアルな間違いが(笑)」
nico「俺ら3人とも固まりましたからね」
――それってライブ?
nico「いや、スタジオで。コイチが曲に入るの待ってたら、“ごめん、間違えた…”って言われて。みんなで“えぇ~!”って(笑)」
――理解が追いつかへんよね(笑)。
雲丹亀「今となっては面白エピソードの1つとして語られてる(笑)」
――何か他にもいっぱいありそうやな~(笑)。
雲丹亀「こんくらいブ厚い本書けるかもしれん」
コイチ「しょーもない本書けるな(笑)」
――主催イベント自体を大阪でやったのはもう上京前ですもんね。久々の地元でのイベントも、また楽しみですね。
nico「僕ら実はやってないことがめっちゃ多いんです。普通バンドがCD出したら、ツアーして、全国廻って、ファイナルどこでやってとか…僕らはワンマンもやったことがない。だからもう人とちゃうことをやっていくのも面白いかなと思って、今回はツアーもいいかなって思った部分もあったんで。あと、やってる音楽の幅的にも、イベントに呼べるバンドが多いと思うんですよ。クラブ系からも引っ張ってこれるし、めっちゃロックとか、ちょっとクラシカルな人たちを呼んでも合う。主催イベントが最終的にフェスみたいなことになっても面白いと思うんですけどね」
――それではいよいよ近付いてきた『Mitole』に向けて、オーディエンスに向けて、ひと言ずつお願いします。
nico「今回のアルバムを出す直前くらいに、昔からのファンの子が“ありがとう”みたいなメッセージをくれたんです。俺ら3年間もアルバム出してなくて、いつもライブで“新曲やります、新曲やります”って言っていつ音源化されるねん!みたいなバンドに、ようついてきてくれたな~と思ったのが結構大きくて。今はホンマにありがとう、これからよろしくお願しますって」
雲丹亀「ようやくアルバムを出すことが出来て、好評な声も上がってて嬉しくて。それにちょっと味しめて、次はもっとはよ出したいっていう想いがあって(笑)。曲もガンガン作っていくんで」
――割と今作で何やってもオッケーな地点にいったのもあるから、逆にこれからどうするんかな?(笑)
雲丹亀「幅を広げてしまった分…何するんでしょうね?(笑) 自分自身が楽しみです」
コイチ「期待しといて欲しいです」
雲丹亀「だけ? 大まかやな~!!」
コイチ「言おうかなって考えてたこと、全部ウニちゃんが言うたんで(笑)」
――いやいやいや、あるでしょ。エピソードあるでしょ(笑)。
コイチ「あ、エピソードですか?(笑)」
(一同爆笑)
観音「曲のワクワク感だったりもそうなんですけど、活動とか主催イベントとか、常にファンに期待感を持たせられるように、これからも頑張っていきますので、よろしくお願いします!」
――締まりましたね~(笑)。本日はありがとうございました!
全員「ありがとうございました~!」
Text by 奥“ボウイ”昌史
(2013年1月 9日更新)
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