ヴィジュアル・シーンの一時代を築いたPENICILLINの
結成20周年アニバーサリーイヤーもいよいよクライマックス!
2枚のベスト盤『DRAGON HEARTS』『PHOENIX STAR』
怒涛の20年を振り返るメンバー全員インタビュー&動画コメント
‘98年にリリースされたシングル『ロマンス』が90万枚を超える大ヒットを記録し、ヴィジュアル・ロックシーンの一時代を築いたPENICILIN。’92年の結成以来、今なお精力的な活動でヴィジュアル・ロックシーンを走り続け、その幅広い音楽性でオーディエンスはもちろん、若手バンドからも支持を得る彼らが、昨年結成20周年のアニバーサリーイヤーに突入。事務所からの独立やメンバーの脱退など、紆余曲折あったこの20年の年月を振り返ってもらいつつ、2枚のベストアルバム『20th Anniversary Fan Selection Best DRAGON HEARTS』『20th Anniversary Member Selection Best PHOENIX STAR』、このベスト盤を携え展開中の全国ツアーについて話を訊いた。
HAKUEI(vo)からの20周年メッセージ動画はコチラ!
――まずは、20周年を迎えられたことに対する率直な気持ちをお聞かせください。
HAKUEI(vo)「光栄だし幸せなことだとは思うんですけど、20年続けることが目標でもなかったですし、あまりそういうことに興味はなくて。ただ、通過点の1つとしてこういうものがあるんだなって思うのと、これくらいの年数続けると周りがそういう風に言ってくれるんだなって。そこは素直に受け入れようかなと思ってるくらいで。それよりも、今どういう曲を作るか、どういうライブをするか、ということが大事なので、さらっと喜んでおこうかな(笑)。20周年に向けてカウントダウン・マンスリーライブを半年くらいやったんですけど、そのライブで今までリリースした200曲を全曲演奏するという企画をやったんですね。それが自分の中ではすごく良かった。こういった機会がないと20年間を…さっきも言ったみたいな考え方なので振り返らないんですけど、強引に振り返らされたというか。1曲1曲しっかり構成から何から思い出して、身体に叩き込んでライブをすることを全曲でやったわけですから。それで20年分を味わいました」
O‐JIRO(ds)「その時々にゴールを設けて突き進んできたと思うので、この20周年もHAKUEIさんが言ったように通過点の1つ、ゴールの1つに過ぎないのかなって。20周年だから何かしてやろうとは思わないんですよ。気持ち的にはいつもフラットでいたいなって。でも節目なのでみんなの気持ちに残るように活動をしたいなとは思います」
千聖(g)「自分たちが生きているんだと思える証がここにあるから、それだけでも幸せだなって。ただ、僕らは毎年全力でPENICILINのベストを尽くしたいわけですよ。言い方がちょっとマジメっぽいけど、毎年100点を獲りにいく感覚で頑張っているわけです。それが20周年だから100点で、それ以外は60点くらいでいいやじゃ厳しいと思うし、それこそそんなことでは次の年を迎えられないと思うので」
――皆さん共通して20周年は通過点の1つということですが、ここまでバンドを続けてこられるのも並大抵のことではないかと。
HAKUEI「本当に運が良かったと思います。ただ、全てが運任せという意味ではないです。そのときそのとき、音楽だけはマジメにやってきたバンドなので。そういう環境を一緒に作れたメンバー、スタッフと出会えたこと、支えてくれたファンがいることとか、それが20年も続くことは奇跡だと思うので、運が良かったなって。もちろん、振り返ればスゴく恵まれているときもあれば当然辛かった時期もあるんですけど、思い出すとそういうときでもみんなへっちゃらな感じで、あまり危機感がないというか。“ヤバいな”ってときこそ結束が固まって、“良い曲を作らないと”みたいなノリになる。誰から言われるわけでもなく、自然とそういう雰囲気になる。ここまで続いたのはそういうところでしょうね」
――そうやって積み重ねた20年の中で、今だから話せることがあったら教えて頂けますか?
千聖「“実はあのときオレはトイレに行きたかった”とか、“座ろうと思ったらドラムのイスの部分がなくて支柱に思い切りケツに刺さって、あのとき目覚めた”とかエピソードがあると良いんですけど(笑)、ないですね。ベースのGISHOが辞めるときもファンにはちゃんと伝えているので、裏話はないですね」
O‐JIRO「あとは、ぶっちゃけられないくらいヘヴィで墓場まで持っていくしかない(笑)。中間がない(笑)」
――アハハハハ!(笑) では、忘れられない思い出はありますか?
HAKUEI「それこそ数え切れないくらいあるけど、いっぱいある中で思い浮かんだのは、初めてのホールライブ、渋谷公会堂かな。それまではキャパが300人くらいの会場でワンマンライブをするのが精いっぱいだったのに、血気盛んな当時は人と同じことはやってられないって、少しずつ会場の大きさを上げていくことをせず、300人キャパの(目黒)鹿鳴館でやった後すぐ、一気に2000人も入る渋谷公会堂でやって。300人から2000人になったときのあの声援の大きさ…あのときの歓声が忘れられないです」
O‐JIRO「最近だと、カウントダウン・マンスリーライブですね。半年かけて今までリリースした200曲をやってきた中で、締めが一番最初に作った曲『イミテーション・クイーン』だったんですよ。あれは感動でしたね」
HAKUEI「セットリストを考えるとき、特に意識はしてなくて。ライブが終わった後に言われて、“あ、そうか”って。全然意識してなかったです」
――千聖さんはいかがですか?
千聖「バンドをやってると大変なことの方が多いので、感動する余力がないんですよ。でも確かにHAKUEIが言った渋公はいいライブだったなと。あとはGISHOが辞めるとき、“3人でやっていく!”となったときの姿勢が美しかったなって…真実の気持ちだった気がしたので。イヤらしい話、儲からなきゃとかいう邪念もなかったし、単純にやりたいっていう純粋な気持ちがぶつかっているんだなって。35歳以上になるとそこら辺を考える人もいるかもしれないのに、20歳のままの気持ちがあるのはいいことだなって。あとは、震災後にもやっぱり頑張ろうと思ったし、節目節目に思うことがあるなって思います」
HAKUEI「好きな音楽をやらせてもらえて、やってこられたことを幸せだと思わないとね」
――20代にあった気持ちっていうのは今も変わらないですか?
HAKUEI「もちろん経験値がある分スキルアップしたり、引き出しが増えたりは確実にしてると思うんですけど、中身は変わってないと思います。もしかしたら変わってるのかもしれないですけど、気付いてないです(笑)。本当に集中して魂が込められたものは必ず伝わると信じてやっているだけなので。そこにヘンな邪推が入ると良くないというか…そこはやっぱり裏切りたくない。そこを信じられなくなったらミュージシャンっていう職業はつまらないと思ってます。純粋にやらざるを得ないと思います」
当時のエネルギーをどれだけ今に投影しながら
いかに表現の深み、グルーヴを出すか
――純粋にやってきた結果として、歴代200曲の中からファンが選んだベストアルバム『DRAGON HEARTS』、メンバーセレクトの『PHOENIX STAR』がリリースされました。『DRAGON HEARTS』をファン選曲としたのは?
千聖「ベスト盤は10年以上前に1回出してるんですよ。今回リリースするにあたって“ファンの人たちから見たときのPENICILINってどうなのか?”を改めて問いかける意味合いと、“みんなで作ってみよう20周年”という想いを込めて…ですね」
――ファン投票の結果のベスト15は、皆さんから見て予想通りでした? それとも?
HAKUEI「やっぱりライブでよくやってたり、シングルカットしてたり、みんなが耳にしたり目にしたりするものが多かったですね。ただ、僕らの楽曲の中で世の中的に一番認知されてるヒット曲『ロマンス』は1位ではないし、デビューシングルなんて15位にも入ってない。僕らがフラットな気持ちで世の中に送り出しているように、聴いてくれる人たちもフラットに取り入れて、自分の中で消化してちゃんと投票してくれてるのかなって感じられたので、すごく嬉しかったですね」
――ちなみに1位はどの曲だったんですか?
HAKUEI「1位は『花園キネマ』っていう曲で。これはライブでガッツリ盛り上がる曲ではなくて、淡々と演奏してしっかりと聴く曲なんですね。シングルカットした曲でそのときのPVの出来が良くて、周りのミュージシャンからの評判も良かった曲なので、それが1位になったというのは意外でもあり、嬉しくもあるというか。ちゃんとそういうところまで考えて投票してくれているのかなって」
――結構バランス良く昔の曲から最近の曲までが入っていますよね。
HAKUEI「インディーズのときの曲もたくさんあるんですけど、アルバム毎に考えると、僕らが前の事務所を独立して1枚目に作ったアルバム『No.53』(‘02)から選ばれている数が1番多いんですよね。こじつけかもしれないけど、そのときのメンバーの前向き感っていうのは、スゴいエネルギーだったと思うんですよね。PENICILINの歴史の中で一番曲を書いた時期じゃないかな。何か、もっと、もっと良いものをっていうテンションがあって。そういう想いがあるからこのアルバムから3曲も選ばれたのかなって」
――“魂が込められたものは必ず伝わる”ということですね。『DRAGON HEARTS』もメンバーセレクトの『PHOENIX STAR』も結構な曲数が再録されていますが、改めてレコーディングして感じたことはありますか?
千聖「速い、激しい、パワーもある(笑)。今出来ることを楽曲にぶつけないと、再録だと思って舐めてかかると痛い目にあうのは目に見えて分かっていたので、勢いとか特徴は削ぎ落とさないように神経使っちゃったりして。昔と比べられてどこが違うか分からないって言われたら“勝ったな”って思うくらい、意識しましたね」
HAKUEI「新曲よりもヘンに気を使ったりしちゃう。だって、比べられて“前の方が良かった”なんて言われたら目も当てられないですし。多少好みもあるでしょうけど、当時はそれぞれのスキルも今よりなかったでしょうけど、やっぱり最高なものを作ろうとして、大袈裟じゃなくて命懸けで作り出したもの、生み出したものですから、そう易々とライブでたくさんやってきたからって簡単に乗り越えられるものじゃない。逆にそういう新鮮味のある、曲が出来たばかりのテンションってなかなかのもんだなって思ったし。でも、この曲を10何年もやってきたおじさんのパワーを見くびるなよって(笑)。過去の自分との戦いみたいな(笑)。ホント、いいとこどりが出来たテイクというか。テンポも一緒ですし、歌い回しとかも変えてないから。あとは当時のエネルギーをどれだけ今に投影しながら、いかに表現の深み、グルーヴを出すかを意識して。トレーニングしてビルドアップするような方向性でいけたので自分でも満足はしています」
O‐JIRO「僕ら、アナログとデジタルのちょうど狭間くらいの時代にデビューしていて、インディーズ時代の曲はアナログがあったんですね。アナログの良さを100%引き継ぐことは出来ないんですけど、そこの良さを超える勢いは人間が出さなきゃいけない。録り直しの難しさはありましたけど、本当に満足がいくベストに仕上がったと思います」
ライブに来たら、間違いなく痩せます(笑)
――20周年のアニバーサリーツアーも、いよいよ終盤ですね。
HAKUEI「ほとんどの曲が、ライブで盛り上げたいときにやる曲なので疲れると思いますよ。帰るときには2kgくらい痩せていると思います(笑)」
千聖「ダイエット効果もあるし、若返りも出来るツアーです(笑)」
HAKUEI「全箇所来たら10kgは痩せるんじゃないですかね。個人差ありですけど(笑)」
千聖「音を聴けばリンパ腺も刺激されてね」
HAKUEI「代謝がよくなってね。デトックス効果もあり、肌も綺麗になり(笑)。美容にいいツアーです(笑)」
――(笑)。それでは、最後にメッセージをお願いします。
千聖「いろんなアーティストがいるんだけど、僕らはやっぱり常に攻撃姿勢、前向きな姿勢で常に進んでいる感じがするので、俺たちの曲でパワーを感じてくれたら嬉しいなって。懐かしいなぁって思う人もいるだろうし、初めての人もいるかもしれないけど、良かったらベストアルバムを聴いてみてください」
HAKUEI「これを読んでいる人は、PENICILINを聴いたことがない人の方が多いと思うけど…これも何かの縁。偶然読んだからにはそこには必然があると思うので、とりあえずロックとかヴィジュアル系みたいな音楽にあまり触れたことのない人も、触れて頂いて。自分らで言うのも何ですけど、ヴィジュアル系だからこういう音楽、ロックだからこういう音楽っていうことは考えてやってないんですよ。とにかく僕らがやる音楽なので“PENICILIN”というジャンルというか。それをカテゴライズすると、ロック寄りだったりヴィジュアル系寄りだったりするだけなので。1回カテゴリを無視して僕らの音楽に触れて頂く、入門編に相応しい作品が出せたと思うので。そして、それが気に入って頂けたらライブにも来てください。ライブに来たら、間違いなく痩せます(笑)」
O‐JIRO「情熱を持って作ったので触れて欲しいなって。音楽は聴かないと始まらないので、まずは聴いてもらって。あと、ライブってスゴく楽しいんですよ。今までライブに行ったことがない人がハマるくらいのライブだと思うので、是非」
HAKUEI「初回盤にはいろんなライブ映像も入ってますので。それを見てもらって、1歩ずつ近付いて来てください(笑)」
Text by 金子裕希
(2013年1月24日更新)
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