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不可思議な言葉のチョイスとポップセンスでリスナーを翻弄!?
正体不明のバンド“宇宙人”の謎を解け!
メジャー2ndミニアルバム『珊瑚』に迫る
しのさきあさこ(vo)インタビュー&動画コメント

 “宇宙人”はボーカルのしのさきあさこを中心とした男女4人組。昨年、初音源となるシングル『アメーバダンス/あこがれのネクタイ』を、アルバム『お部屋でミステリーサークル』をリリースし、シーンで注目を集めてきた彼ら。今年に入ってその活動を加速させ、5月にミニアルバム『慟哭』で突如メジャーデビューしたかと思えば、約半年で早くも2ndミニアルバム『珊瑚』が完成した。その名が“宇宙人”だからといって、SFや超常現象的なジャンルとは無関係。敢えて意味付けするなら“宇宙人”とは、「何も考えずに身近な言葉をパッと選んで付けた」(しのさき)という自由奔放さを象徴するキーワードであり、そこから発信される常人離れした言語&音楽センスこそ、“宇宙人”的と言えるのかもしれない。そんな彼らの存在が気になって、いてもたってもいられない!というわけで、創作活動の鍵を握るしのさきあさこの単独インタビューを決行。天然のあどけなさと確信犯的な鋭さを併せ持つ、宇宙人の真相が遂に明らかに!?

しのさきあさこの素顔チラ見せ!? 動画コメントも独特です

――宇宙人のメンバーは全員高知出身ということですが、結成のいきさつは?

 
「詳しくは自分たちでも全く分からず、本当にいつの間にか集まってしまった、みたいな…」
 
――最初の頃はメンバー間でどんな話をしたんですか?
 
「そういう話は全くせずに、お酒を呑んだりとか(笑)。たまにスタジオで録音に向けての練習をしつつ、最初は音楽活動よりほとんど食べ歩きがメインでした。お鍋を食べてからグルーヴ感が高まったかも(笑)」
 
――そういうノリが宇宙人にとっては大事なコトだったんですね。
 
「でした! 初期は」
 
――今は違ってきている?
 
「今回から曲作りはレコード会社に1人で1ヵ月通って、ディレクターさんと話し合って、1曲ずつ練りながら」
 
――そういう作り方は初めてなんですか?
 
「初めてです。前回のミニアルバム『慟哭』までは、流れでいつの間にかふわぁ~っと出来上がってたので、それは良くないかなって。人の意見をどんどん取り入れて、より良い作品を作り上げていこうと思いました!」
 
――なぜそういう風に思うようになってきたのですか?
 
「自分の中で、このままじゃ駄目だと思いました」
 
――何かきっかけがあったんですか?
 
「スタッフの人が全員変わりました! 前まではレコード会社のスタッフの人ともほとんど話したことがなくて…話してみると楽しい方ばっかりだったんです」
 
――前作からわずか半年でのリリースですが、その間に製作環境がすごく変わったんですね。前作の1stミニアルバム『慟哭』と今回の2ndミニアルバム『珊瑚』の関連性はない?
 
「別モノです! 気分を一新しました。バンドの第二期が始まりました!」
 
――展開が早い(笑)。
 
「(少し考えて)結成した2008年から考えると、4年ごとに変わるんです。今年はオリンピックイヤーなので(笑)」
 
 
この曲は、海遊館に行ってエイを見たことから始まります(笑)
 
 
――前作『慟哭』と今作の『珊瑚』を聴き比べてみると、確かに今作の方がサウンド的にアグレッシブというか攻めている印象で、自己完結していたようにも思える詞の世界も、他者を意識するようになったんじゃないかと。
 
「今回の歌詞は、意味を“匂わせる”書き方をしようと企みました。直接的な言葉は使わないけど、聴いた人が“こういうことか!”と自分で発見出来たり、想像出来る歌詞作りを目指しました!」
 
――曲ごとのテーマみたいなものはあったんですか?
 
「全部にあります! 共通して“対極の意味”を忍ばせています。『ものすごい関係』(M-1)は、“善と悪”。『孔雀草』(M-2)は不倫旅行をテーマにした“強さと儚さと美しさ”。『はーとトリップ』(M-3)は、“幽体離脱をした人としていない人”(笑)」
 
――面白いので全部教えてください(笑)。
 
「『楽日』(M-4)は“死後の世界と死後の世界じゃない世界の間の世界”。『ヤノコージ』(M-5)は“ちょっと不思議な人と普通の人”。『脳内ふりかけ』(M-6)は、“同性愛の人とそうでない人”。『アウトレイジ』(M-7)は、“裏社会の人と普通の人のお祭り感”。『エイのうらみたいないきもの』(M-8)は“表と裏”です」
 
――そこまで具体的なテーマが全曲にあるのにはビックリです。何だか哲学的ですね。その発想の源は、自分の日常生活から来ているんでしょうか?
 
「『孔雀草』はモデルになった人物がいます(笑)。でもモデルがいるのはそれぐらいです。他は映画を見たりとかして、いつの間にか刺激を受けているかもです。暮らしがいつの間にかアイディアになっていっています」
 
――しのさきあさこという人は独自の世界に生きていて、あまり外部と関わらない、普通の人とはちょっと違う日常生活を送っているんじゃないかって思わせる世界観が作品から感じられます。テレビとか見るんですか?
 
「『ホンマでっかTV』とか『マツコの知らない世界』を見てます。あ、あと昼ドラ!(笑)」
 
――TVからもインスピレーションを受けたりする?
 
「『ホンマでっかTV』からは(笑)。でも今回は、1ヵ月間TVも窓もない部屋に通っていたので、曲作り中にTVはほとんど見てないです」
 
――でも、それまでにTVやなんかで見聞きして蓄積されてきたものが出てくることもありますよね。
 
「それはいつの間にか紛れ込んでいるかもです。あ、『ものすごい関係』とかはニュースで知った個人情報流出、振り込め詐欺、労働基準法違反なんかが入っているかも。あと、トランペットを入れたのも刑事モノのドラマを見たから(笑)。昔の…『はぐれ刑事純情派』『太陽にほえろ』『熱海の捜査官』とかは主題歌にトランペットが入っているので。あと、今回は男女のもめごとも入っているので、やっぱり昼ドラも関係しています(笑)」
 
――宇宙人の世界観は、ちょっと不思議ちゃんっぽくてファンタジックな部分もあるけど、時事ネタとか社会問題も結構入っているんですね。個人的には『エイのうらみたいないきもの』が大好きです(笑)。“エイのうらになっておしまい”っていうフレーズが呪文のようで。勝手に深読みしてたんですけど、いろんな情報を鵜呑みにしてしまう人に向けての…。
 
「警告? 歌詞とかタイトルが気になるってよく言われます(笑)。いろんな人がいろんなとり方をしますね」
 
――そうそう! 面白いけど、ちょっと怖さもあって。この曲は何がきっかけで出来たんですか?
 
「まずこの曲は、海遊館に行ってエイを見たことから始まります(笑)。エイって表から見ると全然かわいくないけど、裏からみたら笑ってる。それを考えていくと、人って表と思うところは本当は裏かもしれないし、裏と思うところが本当は表かもしれないよ~っていうのを歌にしました!」
 
――ただふわ~んとしてるわけではなく、結構鋭く物事を見たり考えたりしていますよね。歌詞の中の“たたたたたた…”っていうのは?
 
「攻撃音です(笑)」
 
――ちなみにこのリズムパターンは?
 
「これは海遊館の一番大きい水槽をイメージしました。海遊館って(館内を)ぐる~っと回て見るので、結構気持ち悪くなりました。ぐにゃ~みたいなそういう感覚。エイが角度によってぐにゃ~って見える位置があったり、丸い水槽がぐにゃ~って見えるところもあって」
 
――1曲として同じ曲調がないですよね。意識してそうしたんですか?
 
「意識して書きました。今回は構成もディレクターさんと一緒に考えたので、全曲バラエティに富んだのではないかと思います!」
 
――自分にとって新しい試みをした曲はありますか?
 
「『アウトレイジ』です」
 
――この曲は日本の祭り囃子みたいな音色が出てきますね。
 
「この曲はプログレを意識しました。笑える曲を絶対に作ろうと思って、一番最後に作った曲です。“銃口をつきつけて”という怖い歌詞の後に、突然“祭り”が出て来たらおかしいな、と思って作りました。怖いけどお祭りで意味不明っていう面白さを出したくて」
 
――『脳内ふりかけ』も童謡っぽい旋律ですね。
 
「すごくポップな曲を作りました。この曲もアレンジをポップにしてしまうとダサくなるんじゃないかと思って、プログレっぽく仕上げました」
 
――そんなユニークなアイデアも飛び出す今回の『珊瑚』で、リスナーの幅がグッと広がりそうですね。
 
「広がりそうです。広げたいです!」
 
――今までのファン層ってどんな人たちなんですか?
 
「ファンがいるのかいないのか…いますかね?(笑) 宇宙人を聴く人ってどんな人かな? ライブをあまりやっていないので、どういう人が聴いてくれているのか…」
 
――インディーズ好きで、ありきたりでない音を求めるマニアックな人とか?
 
「ああ~それはちょっと避けたいです。マニアックな人よりは、メジャーな香りがプンプンする人になりたいです」
 
――そういうのがイヤって言うアーティストもいますけど。
 
「全然ないです、こだわりが。人の意見をどんどん取り入れます!(笑)」
 
 
よくいろんな人に面倒くさいって言われます
 
 
――前作ではアバンギャルドなインスト曲なんかも入ってましたよね。今作では、敢えてやめておこうと?
 
「はい、宇宙人が第二期なので。アルバムを作り始める前まではインストの曲も用意してましたが、やっぱりそれを入れるよりは歌詞やメロディをちゃんと聴かせた方がいいだろうと。でも、今後どこかで発表出来たらします!」
 
――タイトルの『珊瑚』というのは?
 
「キレイな言葉を選びました。響きがキレイで、文字の形もキレイ。自分の中で珊瑚という言葉には、“終わった感”と“始まる感”を感じるんです。例えば珊瑚のアクセサリーも、実際は珊瑚の“死体”で…(苦笑)。海の中でもキレイで、終わっても(=死んでも)キレイなアクセサリーになる。それが“終わり”と“始まり”というか…」
 
――考えたこともなかったです…スゴイ発想力!
 
「感心されました(笑)。でも、よくいろんな人に面倒くさいって言われます」
 
――いえいえ、やっぱり宇宙人は只者ではない!ということが話していてよく分かりました。それがアルバムの内容とどう関係しているんですか?
 
「その“終わった感”と“始まる感”も、対極しているんです」
 
――なるほど! 納得です。ところで、この第二期はいつまで続きますか?
 
「オリンピックイヤーですので、4年…後? かな(笑)。まあ、二期が自分の中でオッケーになったら三期へ突入です。なので、予測出来ないですね。明日かもです。それはないですけど(笑)」
 
――メンバーはあさこさんの自由な発想について来てくれてるんですね。ついていけなくなったらメンバー交代や解散ってことですかね?
 
「(少し考えて)その辺は全然考えてないですね。流れで進んでます。でも、今回は初めてメンバーと揉めました。今までみたいにダラダラするなって。エンジニアの方が“1曲1曲をちゃんと考えて、フレーズをちゃんと決めてやりなさい”と言ってくれて、より良くなりました」
 
――2012年はミニアルバムが2枚出ましたが、来年に向けてはどうですか? 今後のライブの予定は?
 
「今のところライブの予定はないでーす。でも、“ライブを見たい!”と言ってくれる方が現れると、いいライブを見せたいと思います!」
 
――では最後に、ぴあ関西版WEBを見た方にメッセージをお願いします。
 
「良い曲が出来たので聴いてください! いろんな方に聴いてもらいたいです!」
 
 
Text by エイミー野中



(2012年12月29日更新)


Check

Release

独特過ぎる。でもポップ!
クセになるメジャー2ndミニアルバム

Mini Album
『珊瑚』
発売中 2000円
キングレコード
KICS-1841

<収録曲>
1. ものすごい関係
2. 孔雀草
3. はーとトリップ
4. 楽日
5. ヤノコージ
6. 脳内ふりかけ
7. アウトレイジ
8. エイのうらみたいないきもの

Profile

うちゅうじん…しのさきあさこ(vo)、こまつけんた(g)、にいやひでひろ(b)、わだまこと(ds)の4人で、'08年に結成。'10年、『FUJI ROCK FESTIVAL '10』の“ROOKIE A GO-GO”への出演をきっかけに話題を集め、'11年には1stシングル『アメーバダンス/あこがれのネクタイ』、続いて1stアルバム『お部屋でミステリーサークル』を発表した。そして、'12 年5月にミニアルバム『慟哭』でメジャーデビューを果たし、ポップでオルタナティヴな唯一無二の宇宙人ワールドへの注目度はさらに上昇中。

宇宙人 オフィシャルサイト
http://uchu-jin.com/