ロックンロールへの深い愛と憧れを胸に
ムッシュかまやつとの世代を超えたコラボも話題を呼んだ
THE BOHEMIANSが、バンドのヒストリーから
新作『BOHEMIANS FOR LIFE』までを語った全員インタビュー!
明快でスタイリッシュに、現在進行形のロックンロールを体現するバンド、THE BOHEMIANS。ムッシュかまやつ氏との世代を超えたコラボ実現で注目されたザ・スパイダースのカバーアルバム『THE SPIDER BEAT』を10月に、そして、早くも完成したオリジナル3rdアルバム『BOHEMIANS FOR LIFE』が12月5日にリリースされた。一瞬で心を掴むシンプルでフックの効いたナンバー、ロックンロール初心者からマニアまでを理屈抜きに虜にする。そんな彼らが結成から現在までの歩み、ロック観を赤裸々に語るメンバー全員インタビューをお届け!
メンバー勢揃いの動画コメントも最後に転調!?(笑)
――ボヘミアンズはファッション性も重視していて、スタイリッシュにロックンロールを体現してますね。
星川ドントレトミーダウン(b)「やっぱ、そういうの大事ですよね。カッコつけるのは好きです(笑)」
平田ぱんだ(vo)「でも、割とライブはがんばるタチなので、汗びっしょりになって衣装が汚れてしまいます(笑)」
――自分たちでスタイリングされるんですか?
平田「赤いナポレオンジャケットは私服です。集めるのが趣味だったりしまして。見つけると買っちゃうんですよ」
ビートりょう(g)「基本的に細かいところは自分らで考えてます」
――メイクするようになったきっかけは?
平田「元々はギターのビートりょうが、“俺、最近ニューヨーク・ドールズにハマッてて、今日からニューヨーク・ドールズみたいに女装してステージに上がりたい”って言い出したから(笑)。それなら俺も付き合うよって。俺はパンクロックが好きだったから、遠藤ミチロウさんの真似をしてやってましたね」
――結成は8年前の2004年ということですが。
平田「結成したのが山形の大学、じゃないや、アートスクール(芸大)だったんですけど(笑)。ビートりょうが、俺に“バンドメンバーが何となく集まったような気がするからやろう!”って言ってきて(笑)」
りょう「実際に動き始めたのは2005年かな」
平田「当初は下手だったから、ガレージパンクバンドと呼ばれてましたね(笑)」
ロックンロールバンドではあるんですけど
メンバーみんながポップスマニアなんですよ
――ボヘミアンズの曲は一回聴くだけで馴染んでしまうというか、一瞬で頭にインプットされてとっても楽しい気分になりますね。
星川「ロックンロールバンドではあるんですけど、メンバーみんながポップスマニアなんですよ」
平田「ロックが好きと言うよりポップミュージックが好きで、その中の一番好きなジャンルがロックンロール」
チバ・オライリー(と無法の世界)a.k.a .ジャン(ds)「60年代ってみんながロックを聴いていた、いわゆるロックンロール=ポップだった時期だったので」
――そういうお話を聞いてると、なんだか60年代からタイムトリップしてきた人たちのようですけど(笑)。
星川「そう言ってもらえると嬉しい(笑)」
平田「ムッシュかまやつさんとも、そういうところで気が合ったのかもしれません(笑)」
りょう「かまやつさん本人からも“君ら(自分と)よく似てる”って何回か言われました(笑)」
――でも、実際のロックンロール全盛期って皆さんが生まれる前で。それで余計に憧れてしまうんでしょうか?
本間ドミノ先生(key)「そうですね。リアルタイムじゃないからこそ、追っかけてしまうのはどこかにあると思う」
チバ「今はもう形がないものへの憧れは強いですよ」
りょう「(平田ぱんだを指して)この人、マイケル・ジャクソンも好きだし」
――ロックにしろポップミュージックにしろ、何かスターという大きな輝きを持って音楽でパフォーマンスしている人に対して、リスペクトとか憧れの気持ちが強そうですね。
りょう「そういう存在に憧れて、単純に真似してみたいっていうところから始まってたりもするから、コスプレが入ってる部分も結構あって」
平田「ファンだからこそ、(憧れてる)その人と同じ状況になりたいっていうのがあるんです」
――ロックスターとしての状況って、きっといいことばかりじゃないと思うんですけどね…。
平田「そういうところも味わいたいんですよ。“分かるぜ、ミック(・ジャガー)!”って、語れるじゃないですか(笑)」
――そして、自分たちが楽しむだけじゃなくて、ボヘミアンズが作る音楽やライブによって、聴いてくれる人たちや観てくれる人たちを楽しませたいと。
平田「人から愛し愛されて音楽をするのはこんなに楽しいんだって。僕もステージに立つと人格が変わる方なんですけど、それもオーディエンスありきですから」
本間「あとは、僕らが好きな古い音楽をまだ観たことも聴いたこともない、若い10代の女の娘たちに、僕らを通して僕らが好きな音楽をどんどん掘り下げていってくれてる人たちもいるので。そういうきっかけになるバンドになりたいですね」
星川「だからメジャー1stアルバムも『憧れられたい』(‘11)っていうタイトルなんです。自分たちも憧れからスタートしてるので」
――ロックンロールってマニアックな世界にとられがちなところもあると思うけど、もっと初心者にも間口を広げていたいと。
平田「俺らが人生で一番楽しいと思ってることがロックンロールだから。ロックンロールを純粋に楽しんで欲しいなあと思うわけですよ。いつからマニアックになっちゃったんですかね?」
りょう「昔の、ドームでライブしてたり、TVとかにもガンガン出てるロックバンドのイメージがすごい好きだったので。僕らもTVに出てガンガンやりたいし」
平田「子供の頃はロックバンドが当たり前のように売れてたんですけどね。GLAYとかラルクとかイエモンとかスピッツとか」
星川「そういう思春期を過ごしてきたからこそ、うちらもそういうところに行きたいんですよ」
――その辺りのロックバンドの全盛期って90年代後半ぐらいですよね。それから15年ぐらい経って、今、改めてロックバンドやロックンロールの良さを世に知らしめるというか、ロックンロールの復興を担っている?
本間「それはひとつの大きな柱としてありますね」
――ボヘミアンズの資料に、“ロックンロールアイドル”とか“現代版グループサウンズ”と書かれていますが、それは自分たちから発しているんですか? それとも周りがそう呼んでいるんでしょうか?
平田「周りがそういう風に見てくれている方が正しいですね。でも、ロックバンドとはそういうものだと思ってるし、別に自分たちから言ってはないですけど、そういう風に受け取ってもらえるなら俺らは本望ですね」
――“アイドルじゃねーんだよ!”みたいな拒否感はないんですか?
平田「むしろ言われて嬉しい。そういうアイドル性みたいなものを否定してるバンドって、俺はあんまり気に入らねーなと思ってたんで。もっと華やかに前に出て行ってくれたらいいのにっていうバンドをいっぱい見てきたんで」
――そうですね。そういう存在って今こそ必要な気がします。
モノラルはひとつの塊で攻めてくる音だから
ロックンロールに一番向いてる音質なんです
――10月に出たTHE BOHEMIANS avec ムッシュかまやつ名義でのアルバム『THE SPIDER BEAT』についてお聞きしたいのですが、そもそもかまやつさんは皆さんにとってどういう存在だったんですか?
平田「TVスターですね。60年代のロックンロールとして、ビートルズと一緒にスパイダースも聴いてて。ムッシュかまやつさんがスパイダースの人だったんだって後から知って」
本間「みんなビートルズとか(ローリング・)ストーンズとかと並列で他のグループサウンズと呼ばれていたものもいろいろ聴いてて、なじみはある人でした」
平田「めちゃくちゃ好きっすよ。カバーしたい曲がホントいっぱいあったので。絞りに絞って」
星川「選曲はかまやつさんとボヘミアンズでそれぞれ案を出して選びましたね。かまやつさんは有名な曲はあんまりやりたがらなくて、やるならもっとロックンロールな曲をやりたいって。ただ、平田ぱんだは『あの時君は若かった』(M-4)をやりたいと」
平田「それはスパイダースも何も知らない子供の頃から好きだった曲なので、せっかくだから歌わせて頂きたいなと! かまやつさんは『なればいい』(M-5)をやりたいって」
――この曲いいですね~!
平田「甲本ヒロトさん(ザ・クロマニヨンズ)もハープで参加してくださいました」
――憧れの存在なんですよね。
平田「そうですね。僕にとってロックンロールの入口はハイロウズだったんで」
――レコーディングはどうでした?
平田「『RISING SUN ROCK FESTIVAL 2012 in EZO』から帰ってきたら、(ヒロトさんの)ハープがもう入ってて。しかも入るなんて知らなかった(笑)。すごいシビれました。かまやつさんとのコラボだったからこそ、絶対に気合いを入れてくださったと思うし」
――かまやつさんはどの程度参加されたんですか?
りょう「現場ではギターとコーラスで。基本的には君ら主導でやりなよって感じでしたね」
チバ「自分がコラボレーションで参加する作品で、自分が前に出るのがあまり好きじゃないとおっしゃってて。一時代を築いた人がそう思うってすごくいいなって」
りょう「何でも面白がってやろうとしてくれて、だからこそ俺らみたいな小僧に話しかけてくれたと思うんです。面白いと思うことに反応するセンスはすげーなと
――このアルバムはモノラル録音なんですね。スタジオも特別なところで?
りょう「THE NEATBEATSのMR.PAN(vo&g)さんのスタジオです。ヴィンテージ機材の世界有数のコレクターということでも有名で、ジャック・ホワイトともお友達という方で」
平田「今回でモノラル録音というものを初めて聴いた人や、モノラルの音が好きだと認識したっていう声はかなり聞きました。モノラルはひとつの塊で攻めてくる音だから、ロックンロールに一番向いてる音質なんです。古い音楽が好きな理由には、そういうところもあるんじゃないかと思ったり。ボーカルとコーラスはジミヘンが使ったというマイクで録りました」
――より幅広く、男女問わずいろんな世代の人に聴いて欲しい1枚になりましたね。
平田「その架け橋になればいいなあと思います。僕らは男女どちらも大歓迎です!(笑)」
――リリース後はどんな反応が返ってきてますか?
りょう「ボヘミアンズは若い女の娘のファンが多いんですけど、ラジオ番組でボヘミアンズがかかってたら自分の父親もすげー反応して、アルバム聴かせてって言ってきたって(笑)」
本間「たまに親子連れでライブに来てる人もいますね」
平田「(忌野)清志郎さんの追っかけでしたっていうような人が親子で来たり」
――ロックのファッションに興味のある男性ファンのアンテナにも引っかかりそうです。
星川「若い男性のお客さんとかは、すっごいお洒落な人が多い。メイクをしてくる人もいて、ああいうのはすごく嬉しいですね」
平田「男も普段からメイクするような流行にならないかな(笑)。そしたら楽なのに。ロックってめちゃくちゃカッコつけることだから。そういうのが文化として流行しねーかなって」
りょう「お客さんがお洒落でカッコイイ雰囲気っていうのはすげー憧れます。パンクロックの会場とかもそうだし」
――そういうシーンで何か変化を生むような存在になりたいと?
平田「ボヘミアンズを1つのモデルケースにして欲しいなと。僕らが目立ちまくることで、“ボヘミアンズがやってるからいいんだ”ってなんないかなと」
自分でもやれるとか、こんなの簡単じゃんって思わせるような
隙みたいなものがロックンロールには絶対にあるべきなんです
――そして、12月5日には3rdアルバム『BOHEMIANS FOR LIFE』がリリースされましが、今年はかなり早いペースで作品をリリースしていますね。
平田「ロックンロール・アイドルはペースが早いです。ビートルズと同じペースで出します。ビートルズも8ヵ月毎に出してますから(笑)」
――今年はずっとレコーディングが続いてるんじゃないですか。『BOHEMIANS FOR LIFE』はどういう流れで作っていったんですか?
平田「絶え間なくリリースもあるし、年中ツアーをしていたので勢いづいていて。これはバンドを始めた頃、いや、それを超えてるかもしれないっていうぐらいだったので、一番勢いのある頃のボヘミアンズの衝動を思い出したというか…バンド始めた頃のスピード感と似てたんですよね」
――確かに1曲目からすごく勢いがありますね。3曲目『That Is Rock And Roll』はカバーですよね。
平田「コースターズのカバーでライブの定番曲ですね。レコーディング直前のツアーでもライブの最後にやって一番盛り上がってたので、これは入れるしかないと」
りょう「そういう過去の曲も自分たちの解釈で日本語にしてやってる曲は他にもあるんで、そういう曲もどんどんアルバムに入れていこうと」
――ちなみに一番古いのはどの曲ですか?
平田「最後の『チャックベリーはアメリカ人』(M-11)ですね。ボヘミアンズの結成前からある曲です」
本間「僕がビートりょうくんに初めて聴かせてもらった曲ですね」
りょう「オリジナルを作り始めた、ちょうどその頃に作った曲です。“これはバンドでもやれるんじゃないか?”って感じて、ボヘミアンズを始めたので」
平田「バンド結成時のようなスピード感を思い出す、ポイントになるなと思って入れました」
――この曲は最後に激しく転調しますよね。
平田「いつもアルバムの最後ではふざけてきたんです、僕たち(笑)。だから、この『チャックベリーはアメリカ人』といういい曲を台無しにすることをやろうと思いまして」
――それはロックンロールバンドとしては必要なこと?
平田「必要です。ロックバンドは笑えないといけないんです」
――ちょっと切ない歌詞ですよね。でもそれをロックンロール・マジックで反転するような。
平田「だから、余計に笑わせなきゃ!って思ったんじゃないですかね」
りょう「最後にテレ隠し的な曲があることで、かえってどんな感情を出したような曲でも入れられるのかなって」
平田「どこかで隙を作ってあげなきゃいけないと僕は思ってるんです。ガチガチにカッコいい存在で、手の届かないような存在はロックンロールじゃないというか。自分でもやれるとか、こんなの簡単じゃんって思わせるような、隙みたいなものがロックンロールには絶対にあるべきなんです。スポーツ選手とは対極にあるべきなんですよ。マイケル・ジョーダンみたいになれるとは誰も思わないけど、バンドのボーカルぐらいだったら“楽器が出来なくても俺でも出来るかも!”って、思えるはずなんですよ。そう思わせるためには、どれだけ歌が上手くてカリスマ性に満ち溢れた存在でも、ちょっとした隙がいる。僕はそういう音楽をロックンロールと呼んでおります」
――なるほど。チャック・ベリーはやっぱり、ロックンロールの象徴っていうことで?
平田「ジョン・レノン曰く、“ロックンロールに別の言い方があるとしたらチャック・ベリーだ!”と。チャック・ベリーって言っとけば、ロックンロールだろうと(笑)。チャック・ベリーが一番好きと言っても、過言ではないです」
――来年はツアーの予定は?
平田「まだ未定なんですが」
りょう「いろいろ計画中です」
平田「若いファンが多いから、学生事情を考えて。一番ライブに来やすくてお金があって心も自由でテストとかがないときにしたいなと思っております(笑)」
チバ「やっぱ、ライブに来れないっていうのをツイッターとかで見ると、こっちもすごく残念なので。ライブって俺らが演奏してるのをこの場で一緒に楽しもう! それをより多くの人と一緒にやりたい!っていう気持ちがすごくあるので」
――ボヘミアンズはまだまだ化けていきそうですね。今後はさらに期待してます!
全員「ありがとうございます! ガンバリマス!」
Text by エイミー野中
(2012年12月25日更新)
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