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「想像力全開のパーティーを!」
京都の劇団・悪い芝居がライブハウスでバンド公演を敢行
ツアーラストを飾るOSAKA MUSEの公演直前インタビュー!

2012年度のOMS戯曲賞(※1)最終選考にノミネートされた劇作・演出家・俳優の山崎彬を中心とする京都の劇団・悪い芝居が、ライブハウスにてバンド公演『不要想像力パーティー』を敢行。京都・丸太町METRO、東京・新宿LOFTでのライブを経て、11月30日(金)OSAKA MUSEでツアーのラストを飾る。通常の劇場公演とは異なるスタイルで贈る本公演について、作詞・構成・演出を手掛ける山崎と、登場するバンド「ザゴーズ」のボーカル・池川貴清に話を訊いた。

――今回の『不要想像力パーティー』はバンド公演とのことですが、どんな形で展開されるんですか?

山崎「お芝居の形式をとったライブです。演劇の中にたまに生演奏が入るというよりも、普通にライブハウスでライブをする。バンドがライブをするという枠を使い、そこに物語をつけて構成していきます」

――このライブハウス公演をやろうと思ったのは?

山崎「好きなバンドやアーティストのライブを観に行ったときに、普段ならこっちがちょっと恥ずかしくなるような言葉を、マイクを通して放つとすごく説得力があったり、すんなり聞けたりするのって何なのかなってずっと思ってて。それで15ヵ月前、“劇場”という場所でセリフを言うことに対して考え直したいと思っていた時期に、音楽が出来るメンバーが入ってきたこともあって『サマーキラーチュンチュン』というライブハウス公演をしたんです。ライブハウスをただ劇場として捉えて作るのではなく、演劇を作るときと同じように僕が全て構成して、ミュージシャンが俳優としてステージに立つと何が起こるんだろうっていう興味をもとに作りました」

――演奏している人は俳優としてステージに立っているということですよね。

池川「僕はたまに曲を作ってライブをすることがあるんですが、音楽をするときはすごく内向きの状態で、どれだけ自分が満足できるかという感覚なんですよね。音楽そのものでお客さんを惹きつけようとするんですよ。でも、この悪い芝居の『不要想像力パーティー』は、お客さんをどう楽しませるかという意識を強く持ってやってるから、そこは普段のライブと全然違います」

――お客さんを意識したもの。

山崎「整理している感じです。演劇人だからか、ライブを観てても気になるところがいっぱいあるんですよね(笑)。ちょっとあそこを変えるだけで全然見え方とか聞こえ方が違うのになって思っちゃったり。それはきっと純粋に音楽をやってる人たちからするとまた違う考えがあると思うんですけど。だから僕が多少人より台本を書けたり演出ができる人間だとしたら、もしかしたら、誰も知らないバンドがステージに立っててもすごく盛り上げることができるんじゃないかって」

――曲順や曲の内容も全て考え尽くされているんですか?

山崎「オリジナル曲も20数曲あるんですよ。前回やった曲も少し入れていますけど、僕はお芝居的な考え方やから、前回のライブで演奏した曲をやろうとは思わないんですよね。音楽って、何度も何度も生き返らせれる良さがあると思うんですけど、演劇は、再演するとしても意味がなければしない。そんな違いを改めて感じたりして面白いなって思います」

――曲は課題を与えられて作るんですか?

池川「山崎さんが詞を作ってきて、僕と、実際にバンドマンでもある音楽担当の岡田太郎君とで半分ずつに分けて曲をつける。その歌詞に、お客さんに求める反応が書かれてあるんですよ。“ここで盛り上がってなかったらこの曲は絶対にできないだろうな”っていう詞を書いてくるので、やっぱり特殊やと思いますね。でもだからこそ形はすごく見えやすい。ミュージシャンは、スタジオにこもって作った音源をネットに上げたりCDにしてどんな反応があるかを見ることができますけど、お芝居は目の前に人がいないと成立しないから、“お客さんありき”で考えるというのは面白いですね」

山崎「それと、一応曲だからAメロ、Bメロがあってサビという形はとるんですけど、僕が書くとどうしても演劇的にそこに物語を乗せようとするから、1番と2番のサビの歌詞が変わってくるんですよ。こっちとしては時間を進めたいから内容を変えたいんですけど、歌う方からしたらそれが覚えにくいみたいで。だから同じ歌詞で作るにしても、繰り返す必要性を持たせて作るっていうふうにしましたね」

――歌詞も含めてひとつの物語に仕上げているんですね。

山崎「基本的に、誰もが知ってるアーティストの人たちって、その人の奥行きの深さも含めて自分をどうやって見せるかって考えてやってると思うんですよ。YUKIが神に見えたり、木村カエラが妖精に見えるような感覚(笑)。そんなふうに、この人は池川貴清なのに池川貴清でないというような不思議な感覚になってもらえたらいいですね。」

――演劇とはまた異なる錯覚を起こさせる空間ですよね。このライブでは、お客さんとしては普通にライブを観に来る感覚だけど、そこには巧みに構成されたものがあるという。知らなかったら演劇とは思わない感じですよね。

山崎「途中寸劇みたいなものは入るんですけど、メインでは「ザゴーズ」と、昭和生まれ最後のアイドルグループ「りっぷくりーむ」、謎の新人ミュージカル女優「薔薇巻霞」、ヒップホップグループ「Stammerings」が出演します。ただライブを観に来てもらうだけでいいんです。一応、1万人とか、武道館レベルのフェスを意識して作っているので、お客さんが4人くらいしかいなかったらかなりサブイことになる…。お客さんがいないと完成しないんです」

池川「会場広いですからね…」

――池川さんは「ザゴーズ」のボーカル担当で、この作品のために作られたバンドなんですよね。

池川「そうです。劇団員の植田さんが学生の時にドラムをやってて、ふとしたときにバンドやろうやって言って。そこからどんどんこのライブハウスでの企画が発展していったんですよ」

――前回は普段悪い芝居を観ている人たちが来られたんですか?

山崎「大体はそうですが、中には悪い芝居を知らずに来たライブ好きの女の子もいて。それをきっかけに本公演も観に来てくれるようになったんです」

――前回やってみてわかったことや、今回試してみたいことはありますか?

山崎「普段お芝居やるときは、お客さんは座って観るし、途中で笑いとか涙を誘う場面があるとしても、基本的には最後の拍手の反応で評価される。ライブハウスでやるとしてもほとんどそういう人だろうから、僕たちがうまく盛り上げないと難しいだろうなと思っていたんです。でも意外とライブハウスだと身体が違う感覚になるのか、結構自然と盛り上がってもらえたんですよね。だから今回もそういった部分をすごく楽しみにしていますし、ただ楽しいだけのノリで終わらせることはもちろんしません。普段の演劇とは違って、マイクを通して言葉に魔法の力をかけて、一緒にパーティーを作る感覚でやれたらいいなと思いますね」

池川「いつもの劇場での演劇とは違って、お客さんも口を出せるというのもあるから。前回、冗談で“Say!!”ってレスポンスを求める場面があって、こっちの前提としては返ってこないはずだったんですが、めっちゃ返ってきたんです。それにビックリしましたね(笑)」

――予想外のことが起こるという面白さがありますね。

池川「そうなんです。お客さんは本来ライブハウスに盛り上がるために来るから。今は規制されたりして、モッシュとかダイブもあまりされなかったりするけど、ライブで求められているのは一緒に盛り上がるっていうことだと思うんですよね。だからやりながらお客さんがどんどん自由になっていくのを見るのはすごく面白いですね」

――お客さんを操っている感覚を楽しんでいる。

池川「去年は結構そうでしたね。普通、知らない曲だとあまり盛り上がれないと思うんですよ。でもどんどん盛り上がってくれて」

山崎「あと、曲ひとつをとっても、前回は手探りの状態で作っていましたが、その経験を踏まえているので質も上がっていますね、無駄に(笑)」

――では最後に、タイトルに付けられた“不要想像力”とは?

山崎「演劇とか音楽って、“別に生活にはなくてもいいもの”と思われることも多くて。でも人って勝手に“これは神様の試練だ”とかって無意識に物語を乗せたり、鼻歌を歌ったりしますよね。それは人間の本能に必要とされているから生まれたものだと僕は思ってて、広い意味で考えたら“想像力”に行きついて。人は自分の目の前にあることを信じてしまいがちだけど、ちょっと想像力があればうまくいくことはもっとたくさんあると思うんですよ。だから今回のライブでは、普段の生活で必要とされない想像力が踊りまくるようなものにしたいと思っています。『不要想像力パーティー』と言いながら、“必要だよね、やっぱり”という感覚を持って帰ってもらいたいですね」

※1:OMS戯曲賞…’94年から続く、関西発信の戯曲賞。2012年度の最終選考は12月14日(金)19時~、ドーンセンターにて開催。

(取材・文:黒石悦子)
 




(2012年11月28日更新)


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左・池川貴清/右・山崎彬

悪い芝居
わるいしばい●’04年12月、山崎彬を中心に京都で旗揚げ。「現在、自分たちでしか、この場所でしか表現できないこと」を芯に、中毒性の高い作品を発表し続ける。'11年に上演した『駄々の塊です』が第56回岸田國士戯曲賞最終候補に残るなど、注目を集めている。次回、新作本公演『キャッチャーインザ闇』は2013年2月20日(水)より、大阪・in→dependent theatre 2ndで開幕。新潟、東京でも上演予定。

●公演情報

悪い芝居

発売中

Pコード:184-281(11/29(木)23:59まで販売)

▼11月30日(金) 19:00

OSAKA MUSE

前売-2000円(オールスタンディング、整理番号付、ドリンク代別途要)

[共演]有

[問]OSAKA MUSE
[TEL]06-6245-5389

「不要想像力パーティー」特設サイト
http://waruishibai.jp/fsp/

悪い芝居オフィシャルサイト
http://waruishibai.jp/

チケットは11/29(木)23:59まで販売!
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