FM802の春恒例のキャンペーン“ACCESS!”の
今年の書き下ろしタイトルは『Radio Goo! Goo!』!
楽曲を手掛けた寺岡呼人が、豪華アーティストとの制作秘話から
完全復活を遂げたジュンスカの現在、関西のシーンまでを語る
新生活が始まる春に向け、“人と人”、“人とラジオ”との繋がりを深めることをテーマに毎年展開しているFM802の春恒例のキャンペーン“ACCESS!”。’06 年からスタートしたこのキャンペーンで話題を集めるのが、このためだけに書き下ろされた楽曲を豪華ラインナップで歌うキャンペーンソングだ。気になる今年のキャンペーンソングとして現在大量オンエア中の『Radio Goo! Goo!』を手掛けたのは、昨年活動を再開したJUN SKY WALKER(S)のベーシストであり、ゆずをはじめ多くのアーティストをプロデュースしてきた寺岡呼人。そして、今年のプロジェクト“RADIO MONKEES”に参加した気になるアーティスト陣は、Salyu、ゴスペラーズ、Def Tech、福原美穂、三浦大知、宮田和弥(from JUN SKY WALKER(S))、山崎まさよしの計7組! 日本屈指の歌い手が集結したこのプロジェクト始動のいきさつから、各アーティストとのエピソードに加え、関西のシーンについてやジュンスカの再始動まで…寺岡呼人にその全貌をたっぷりと語ってもらった。
寺岡呼人からの情報てんこ盛り動画コメントはコチラ!
――そもそもどういった経緯で今回の“ACCESS!”キャンペーンソングを担当することになったんですか?
「僕は(忌野)清志郎さんの大ファンだったので『Oh! RADIO』(‘09年のキャンペーンソング)の存在は当然知っていて。経緯的には、個人的な話ですが2年前に独立しまして、みんながなかなか僕にコンタクトが取れなくなったらしく(笑)、古巣のレーベル・トイズ(ファクトリー)からFM802が連絡を取りたがっているのを聞いて。昨年末にお会いして、このプロジェクトを始めることになったんですけど」
――作るにあたって、過去の“ACCESS!”のキャンペーンソング(右記参照)を改めて聴いたりもしました?
「あえて聴かないようにしましたね。自分に余計な先入観を植え付けてしまうよりは、自分のイメージでやった方がいいと思ったんで。今回は“ロックっぽいイメージで”みたいなオーダーも実はあったんでその感じで作っていたんですけど、とにかくテーマを“ラジオ”にしたくて。僕はラジオと言えばすごくオールディーズなイメージがあって、オールディーズと言えばやっぱりフィル・スペクター(※ビートルズ他多くのアーティストを手掛け、60~70年代に主に活躍した偉大な音楽プロデューサー)みたいなポップスのスタイルもあるじゃないですか? そのアイディアを思い付いちゃったので2パターンお渡しして、結局フィル・スペクター風のポップスが選ばれた感じですね」
――今、さらっと2パターン作ってと言ってましたけど、ソロにプロデューサー業、ジュンスカと、いろんなプロジェクトが同時進行していく多忙な中で、曲を書く行為は苦もなく出来るものなんですか?
「いや~コレは…その日になってみないと分からないというか。ホントに“こんなん出ました”みたいな、大喜利に近い(笑)。あと今回は、今よく仕事をご一緒している作詞家の山田ひろしさんにも参加してもらおうと思ってたんで、あらかじめラジオの良さとかラジオを聴いたときの思い出とかいうテーマを伝えて、ざっくりとした歌詞のイメージをまずは送ってもらったんですよね。で、それを見ながらこう、大喜利で書いていったと(笑)」
――あと、肝になるのにシンガーの選定があるわけですけど、これに関してはFM802サイドが選らんだということで、コレが結構意外だったんですけど。
「僕も自分のライブイベントをよくやってるので、“頼む”ことに対するプレッシャーはいっぱい経験しているんですけど、一方で僕はアーティストでもあるんで、良くも悪くも(アーティストとは)距離が近い。だから、知り合いに頼むのは逆に気を使うんですよね。“前も頼んだしな~”みたいな(笑)。だから、僕じゃない人が選んだ方が新しい出会いもあるだろうし、自分じゃ想像出来ない組み合わせになると思ったので、もうお任せしましたね」
――なるほど。実際のメンツを見たときはどう思いました?
「まず一番最初に山崎(まさよし)くんが決まったのかな? そこで、“あ、もうイケるな”って思いました。彼の歌声が入るだけで曲のイメージが出来るし、彼とウチの…ジュンスカの宮田和弥が入るっていうのは、曲の土台としてはすごくいいんじゃないかと」
ラジオの良さをもう一度、確認し合うような曲になりましたね
――これからは、呼人さんから見た各アーティストの印象やエピソードを聞いていきたいんですけど、ド頭はそれこそ山崎まさよしさんから始まって、いきなりもう“まさやんでしかない声”が聴こえて…。
「まさに! その通りですね。オープニングは誰もが分かる歌声の方が絶対にいいと思ったんで、ゴリ押しで“ド頭は山崎くんで!”とお願いして(笑)。山崎くんは人見知りというか、意外とこういうセッションに関して消極的なイメージがあったんで、参加してくれること自体が驚きだったし、やっぱり嬉しかった。実際のレコーディングでも“何でも言ってください”って、自分のギターを持ってきて音を確かめながら、いろいろトライしてくれて」
――改めて感じた良さやスゴさはありました?
「やっぱ声ですよね。もう全国民が分かる声じゃないですか(笑)。それは改めてすごいなと思いましたね」
――次に登場する三浦大知さんは、今回が初対面だったとのことで。ジャンル的にもR&Bと、普段の活動からはなかなか接点がないアーティストだったかもしれませんが、逆にこういう場所で出会うのは“ならでは”ですよね。彼の印象はどうでした?
「彼は音感とリズム感が抜群。ワンテイクで全然OKで、ホントに30~40分でレコーディングが終わっちゃいました(笑)。フェイクのオーダーにも、すぐにバーッと何通りもやれちゃうし」
――しかも今回の参加アーティストで一番若いですよね?
「ダントツでしょ。ダントツって言っちゃいけない(笑)」
――それこそこういう機会がなければ知る由もなかったというか。ブログでも絶賛されてましたね。次は福原美穂さんです。
「福原さんだけは仕事の都合で立ち会えなかったんですけど、今回はその作詞家の山田さんが、ほぼ全ての現場に立ち会ってくれて。福原さんとはテレビでご一緒したことはあったんですけど、この曲をすごく気に入って曲を渡してからずっと歌ってくれていたみたいで、それこそいろんなパターンを試してくれて。この曲は男性キーの曲なんで女性にはちょっと申し訳ない気持ちがあったんですけど、福原さんは逆に低い声の魅力がすごく出てる。キーの設定とか歌う箇所もドンズバだったし」
「Salyuさんもお仕事は初めてだったんですけど、彼女は基本的に自分で作詞作曲をせず、作られた曲に対して忠実に歌うことが身に染み付いている方で、ホントに完璧に曲を覚えてきて、そう言う意味でも圧倒されましたね。人の歌を歌うのって、ホンット難しいんですよ。特に自分で作って歌う人は癖があるから。彼女の特徴的な声をどこかでピックアップしたくて、最後のオチサビのところで入れてもらったフェイクも、もうバッチリハマッた」
――今までの話を聞いていても、歌い手として自分のカラーをちゃんと持っていて、こういうプロジェクトに参加してもその色をきちんと出せる方が集まっていますよね。で、次は宮田和弥さんなんですけども…。
「コレは飛ばしてもいいです(笑)」
――アハハハハ!(笑)
「彼はFM802のスタッフの方からプッシュしてくれて。“いいんですか? そんなに気使ってくれて。じゃあお願いします”みたいな感じです、ハイ(笑)」
――(笑)。こういうところで、“ボーカリスト・宮田和弥”が歌っている様を客観的に見てどうです?
「ジュンスカの今度出るアルバム『LOST&FOUND』でもそうですけど、彼は割と演者に徹する、パフォーマーに撤するムードが最近は続いているのもあるんですけど、この曲に対してもいろいろとトライしてくれましたね。逆にこういう曲で彼の声を聴くと、やっぱりすごく特徴的な声をしてるな~って。レコーディングは確か彼が最初だったんですけど、今まで仮歌だった曲に彼の声が入った瞬間の、“おぉやっぱりスゲェな~”みたいな感覚は、現場のスタッフも含めて確かにありましたよ」
――まさよしさんも替えが利かない歌声なんですけど、この曲を聴くと宮田さんもそうだよなって気付かされます。
「そうですよね、うん」
「スタジオに入ってきた瞬間からもう、“外タレだ!”って(笑)」
――アハハハハ!(笑)
「2人でレコーディングするときは、街の狭いリハスタとかを借りてやっているらしいんですよ。と言うことは、いつも2人が膝突き合わせて作品を作ってるんでしょうね。だから歌入れをしてても、“ここにShenの声が入った方がいいんじゃない?”とか言い合って。そういう2人で築き上げるスタイルは、ものすごく感じましたね。ヒップホップのイメージがやっぱりあったんですけど、仕上がりを聴いてみると逆にそれがまたいいスパイスになってる」
――そして、ゴスペラーズの皆さんはコーラスの核を担ってくれています。
「そもそもこの曲のコンセプトがフィル・スペクターなんで、とにかく無意味なぐらい分厚いサウンド(※フィル・スペクターは“ウォール・オブ・サウンド(音の壁)”と称される分厚いサウンドが特徴)っていうのが、まずひとつあったんで(笑)。そこには絶対にコーラスがあった方がいい。事前に村上くんが、“どういう風にしましょうか?”ってわざわざ電話もくれたりして。もちろん彼らはフィル・スペクター風だの大滝詠一さん風だのも器用に出来るんですけど、今回はマイクを囲んで5人だけで“せーの”で全パート録り切っちゃうやり方を選びました。実際に聴いてみるとその方が空気感があって、あたたかくて。さすがでしたね」
――技術に裏打ちされたバンドの一発録りに近い感覚というか、まさに声のスペシャリストという感じですね。目の前でこれだけ豪華なメンツが歌を入れていって、作品がだんだん形になっていく様はどうでした?
「ホントにパズルを1つ1つ組み立てるような感覚で、すごく楽しかった。ちょっとマラソン的な達成感はあったかもしれない」
――そして、この曲が今年の“ACCESS!”のテーマソングになったわけですけど。
「いい曲になったと思うし、ラジオの良さをもう一度、確認し合うような曲になりましたね。別におべっかでも何でもなく、コレはもう全国のラジオ局のテーマソングにしてもらいたいぐらい(笑)。ホントにこういう機会を、与えてもらったのがすごく光栄で」
――呼人さんにとって、ラジオってどんな存在なんですか?
「田舎に住んでいたのでツールとしてはもうラジオしかなかったし、レコードを買うお金もなかったから必死でエアチェックしてね。清志郎さんが好きだったんでRC(サクセション)が出る番組は全部チェックして、そこで喋ってる言葉を全部真似するぐらいラジオっ子でしたね。あと、井上陽水さんのライブを繰り返し聴いては、“このアコギの音すげぇな…いつか欲しいな…”と想いを巡らせたり。映像で見ればもちろんどこどこのギターとかは分かるんですけど、耳で聴いて想像するからこそ、よりそのギター欲しくなったのもあると思うんです。例えば浅田次郎さんも言ってますけど、電子書籍は便利だけど、やっぱり本だからこそ頭に入ってくる。それと同じような感覚がラジオにもあるんじゃないかって、僕は思ってるんです」
もう一度シーンを押し上げる何かを作っていければ
――今回はFM802の“ACCESS!”キャンペーンソングを担当した縁もあるんですが、関西のこれからのアーティストと対バンするイベント『DESGO!』を開催したりと、呼人さんは関西のシーンにも早くから目を向けていると思うんですけど、呼人さんから見た関西のシーンってどう見えるんですか?
「僕から見るとすごくいい環境だなって思うんですよ。当の本人たちは“なかなかここから広がんないんですよ~”とか言うけど、東京って只々マーケットがあるだけで、ちょっとしたことじゃもう何をやってるのか分からない。でも大阪だとネットワークがすぐに出来ちゃう。それはうらやましいな~っていつも思ってますね。才能のあるアーティストもいっぱいいるし、やっぱり音楽が憧れのジャンルにならないと、目指す人は減っちゃうと思うんですよ。そういう意味では、大阪は“ジャストな大きさ”な気がします」
――なるほど。あと今はジュンスカも完全復活を遂げ動いてますが、現時点で手応えや感じるところはありますか?
「まず自分たち的には、割といろんなことを挑戦してみているわけです。“昔からのファン的にはどうかな…?”みたいな不安もありながら、いざツアーが始まったら昔からライブを観てくれている友達とかもホントに絶賛してくれるので。間違ってなかったのかなって」
――今改めてやる意義を感じられていると。
「そうですね。あと、例えば“30過ぎたらライブハウスに行きづらい”とか、お客さんがなぜ勝手に思うのか? それってそういうムードが漂ってるだけで、ジュンスカみたいな世代のバンドがどんどんライブをやっていけば、今の高校生のお父さんお母さんぐらいの人たちが、またライブハウスに行き出すかもしれない…やっぱそうなっていかないとダメだと思うんですよね。そういう役割をある意味、僕らの世代は担ってるんじゃないかと。例えば、その世代は拳を上げるとかタテ乗りが分かってる世代じゃないですか。子供たちからしても、“うわ、お母さんが…ジャンプしてる!”とかいう光景って(笑)、絶対にいいことだと思うんですよ」
――お母さんがジャンプしてる姿はなかなか見ないですからね~(笑)。
「ねぇ(笑)。“お母さんにイヤイヤ連れて行かれたんだけど…ジュンスカいいね!”って思ってもらえるかもしれない。そういう風に、もう一度シーンを押し上げる何かを作っていければいいなって。だから、このタイミングで僕が今回のキャンペーンソングを作らせてもらったのも、すごくいいチャンスだと思うんですよ」
――ラジオも言わばそうですもんね。今は昔ほど聴かなくなってる人もいるかもしれない。けど改めて足を踏み入れたら、ラジオにしかない世界が鳴っているというか。やっぱり循環させないと溜まった水はまた流れ出さないんで。
「そうなんですよね」
――今後の予定としては、4月25日(水)にジュンスカの16年ぶりのオリジナルのアルバム『LOST&FOUND』が出ますけど、今のジュンスカで新作を作って、それを聴いてもらうのも楽しみですよね。
「決して懐メロじゃなくて、むしろあの頃よりも青臭いモノになったと思う。そういう意味ではホントに、今の方がやり甲斐があるかもしれないですね」
――この“ACCESS!”のキャンペーンソングが流れて、春にはジュンスカの新譜が出て。さっき言った音楽の循環が起きれば最高ですよね。本日はありがとうございました!
「ありがとうございました~!」
Text by 奥“ボウイ”昌史
(2012年4月 9日更新)
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