管弦楽を大胆に取り入れたチェンバー・ポップで
極彩色の新境地に突入したアルバム『ULTRA』
ツアー大阪公演・4/7(土)心斎橋JANUSも間近に迫った
bonobosのインタビュー&動画コメントが到着!
大所帯の管弦楽アレンジを導入した新境地で驚かせた昨年9月発表のシングル『Go Symphony!』に続き、12月にリリースされた最新アルバム『ULTRA』でも“チェンバー・ポップ”な新境地をカラフルに全面展開したbonobos。これまでのダブ・ポップ的な叙情性とグルーヴをキープしながら、近年のオーケストラルな欧米オルタナ・ポップ勢と共振するような音を融合させて斬新な大作を完成させた蔡(vo&g)、森本(b)、辻(ds)の3人に、ツアーの大阪公演となる4月7日(土)心斎橋JANUSを前に話を訊いた。
bonobosからの仲良し動画コメントはコチラ!
――オーケストラルなアレンジを全面に配したアルバムになっているとは聞いていましたが、ココまでとはと驚かされました。
蔡(vo&g)「僕は前からbonobosで管楽器のアレンジを手掛けたりもしていて、もっとそういった音をbonobosのサウンドとして定着させたいなとは思っていたんですね。一昨年前にソロをやったときに、室内管弦楽みたいな音も取り入れられたらと弦と管の基本的なアレンジを全部自分でやってみて手応えがすごくあったし、ギターのフレーズを考えるよりもスッと出来たんですよ」
――ギターよりも(笑)。
蔡「ギターの方がなんか距離感があってなかなか出来ないんですよ(笑)。オルガンのフレーズや歌のメロディを考えるのと同じ感覚で弦と管のアレンジが作っていけて、bonobosではそこに夏ちゃんの太いベースと辻くんのパワフルなドラムが入ることで、すごく層の厚いサウンドが出来るんじゃないかなと思ったんですね。でも、今回のアルバムでかなり変わったとはよく言われるんですけど、以前の曲ならシンセや打ち込みでやっていた部分をホルンやトロンボーンやストリングスに変換していく作業みたいなところもあって。意外と分析して聴いてみると、やってることは今までとあまり変わっていなかったりもするんですよ」
――今まではキーボードなどが担っていた部分が、オーケストラな生演奏に置き換わった、というか。最近の海外のインディーロックでは、スフィアン・スティーブンスとか、シンフォニックな管弦楽アレンジを取り入れた才人は多いですよね。
蔡「増えてますよね。シガー・ロスとかもそうですし、アントニー・アンド・ザ・ジョンソンズのプロデュースをやっているニコ・ミューリー(※ビョークのアルバム『メダラ』(‘04)のアレンジなども手掛けた米国の作曲家/アレンジャー)の仕事もすごく面白くて。その辺りの音から刺激を受けつつも、バンドサウンド的なグルーヴはそこにはないので、ならそれを両立させた音をbonobosで作ってしまおうというのはありました」
――リズム隊のお2人も、そのような音を最近よく聴いていたんですか?
森本(b)「蔡くんが最近にハマっている管弦楽の音があって、そこにレゲエやダブのグルーヴやアフリカンなリズムがうまく加わったらもっとカッコいいものが出来る、という話は最初にしていました」
辻(ds)「僕は『Go Symphony!』を録音したときに、こうした“チェンバー・ポップ”と呼ばれる音楽を初めて聴きましたね。今回はエンジニアとしてtoeの美濃(隆章・g)さんに参加してもらったんですけど、それも良かったと思います。レコーディングも山梨県の小淵沢にあるスタジオで、商業用のスタジオとは違う自然に囲まれた環境の中ですごくいい音で録れたのも大きかったです」
――歌詞の中にも、都会から一歩離れて豊かな自然と触れ合っていないと出てこないような描写が多いように思いましたが、そうしたレコーディング環境からの良い影響も大きかったですか?
蔡「そうですね。そこは3.11の地震があった影響もあると思いますし、それ以前からもっと自然に囲まれた田舎に住みながらモノ作りをしたいという個人的な気分も反映されていると思います。実際に小淵沢に行ってみたら、ものすごく良かったですね」
――歌詞に関しては、歌詞カードだけを見ていてもひとつの詩集のような言葉の濃密さですね。
蔡「歌詞を書くときはいつも膨大な数の言葉がワーッと浮かんできて、その中からいいものを選りすぐり、手間暇をかけて乾燥させ…という作業なんですけど、今回は特に時間をかけて突き詰めましたね。昆布作りに例えると(笑)、昆布作りに必要な伝統や知識、素材を総動員して最高級品の昆布を作ったというか。音楽業界全体のことはよく分からないですけど、いちミュージシャンとして丁寧に、しっかりこだわり抜いた作品を作るという“モノづくり”の姿勢でやれましたし、これからもやっていきたいなと思います」
――メンバーの脱退を経て3人になったのですが、逆にものすごく音数の多い方向に進んだのも面白いですね。
蔡「もちろん3人だけでよりシンプルな方向に、という道もあったと思いますけどね。でも、今はまだイケるなと思っていて。次は1曲2~30分くらいの長い曲も作ってみたいと考えています」
――4月7日(土)には心斎橋のJANUSにて今回のアルバムのツアーが行われます。
蔡「今回は3人だけのライブとは違って、ホーン隊とピアノも入っての大所帯でドカンとやりますよ」
辻「3人だけでいろんな楽器を持ち替えながらアルバムの世界を表現する『Let’s go 3匹!!!tour』を経ての今回なので、是非楽しみにしていてください!」
Text by 吉本秀純
(2012年4月 2日更新)
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