選ばれしロックンロール・ジェダイが3.11に立ち上がる!
猛者揃いの新バンド・TAIJI AT THE BONNETが
初アルバム『ROCK STAR WARS』をリリース
佐藤タイジ(vo&g)が震災、原発、ロックの未来を激白!!
THEATRE BROOK/The Sunpauloの佐藤タイジ(vo&g)が、あの3.11当日に始動させた新バンド、TAIJI AT THE BONNET。メンバーにthe HIATUSのウエノコウジ(b)、The COLLECTORSの阿部耕作(ds)、うつみようこ(vo&g)にソウル・フラワー・ユニオンの奥野真哉(key)というキャリア豊富なツワモノばかりを迎え、1月25日に発表した初のアルバム『ROCK STAR WARS』は、強靭な音と共に3.11以降の日本に対する包み隠さぬメッセージに満ちた衝撃作となっている。タイトル曲中で“オビワンケノビーは/キヨシローという名のジェダイさ”と歌われる本作、そして結成時のエピソードから今後の驚きの展開までを、佐藤タイジにたっぷりと語ってもらった。
似合い過ぎ! 佐藤タイジ(vo&g)がローブを身にまといコメント
――まずはTAIJI AT THE BONNETという新バンドが結成に至るまでを聞かせてください。
「もともとTAIJI BANDという名義で、阿部くんとウエノくんとは3人でライブはやってたんですよ。で、シアター・ブルックが一段落したところで、次はTAIJI BANDをちゃんとリニューアルしてやろうという話が固まって、昨年の3月11日の昼3時に渋谷で待ち合わせて2人とミーティングすることになっていたわけ。ほんで15分前にそろそろ行こかと車に乗ろうとしたらあのデカい揺れがきて、渋谷に出たらもう街はタダならぬ雰囲気で騒然としていたけど、待ち合わせのカフェに行ったら阿部くんが店の前にポツンといて。ウエノくんは山手線の中で足止めになっていたんだけど、奇跡的に電話がつながって場所を変えて合流出来ることになったんですよね」
――ものすごい結成のいきさつですね。
「そこでバンド名はTAIJI AT THE BONNETでいくぞということと、再始動するにあたってオレはキーボードを入れたいと話したんですよ。で、“考えてんけど、奥野どうかな?”と提案したら2人は爆笑して」
――ま、キャラクターは強烈な方ですからね(笑)。
「ま、でも腕はちゃんとしているし、オレとしてもシアター・ブルックではエマーソン北村、The Sunpauloでは森俊之という(日本屈指の)キーボーディストと一緒にやってきたから、もうひとり一緒にバンドをやれる鍵盤奏者となると、奥野しかいないと思っていたんですよね」
――かつては奥野さんと共にソウル・フラワー・ユニオンの中心メンバーだったうつみようこさんの参加は、どういう経緯で?
「ようこちゃんとは昨年の初めにセッションする機会が結構あって。やっぱり彼女の歌はスゴいし、ハモリっぷりもいいなと思ってたんですよね。で、家に帰ってからテレビなどで震災の被害の大きさを目の当たりにして、慌てて仲が良くて機動力のあるミュージシャンたちにメールを送ると、まずはようこちゃんから“我々の仕事は音楽なので(動き出すべきなのは)、早くても2週間後くらいです。それまでは自分の体を守ることに集中しましょう”と返信がきて。こんな素晴らしいことを(的確に)言ってくれる先輩はいないな、と」
――うつみさんは、’95年の阪神大震災後の経験が豊富な方ですもんね。
「そう。それでTAIJI AT THE BONNETの初リハーサルにようこちゃんにも来てもらって。奥野からも震災当日にメールを送ってから1ヵ月後くらいにようやく連絡が来て、キャリアも経験も似た40代が5人揃いましたね」
今までに体験したことのないような、凄まじい時代の変わり目が来ている
――そんな3.11と共に始動したTAIJI AT THE BONNETですが、初のアルバム『ROCK STAR WARS』の収録曲は震災以降の原発問題に関するメッセージをストレートに示したものが多くなりましたね。
「最後に入っている『ソノラ砂漠のドレッドライダー』(M-12)以外は、全部3.11以降に書いた曲ばかりだから、どうしてもそのことになっちゃうよね。それでエエと思うし」
――しかも、アルバムタイトル通りに今の原発を取り巻く日本の状況を、映画『スター・ウォーズ』のジェダイと帝国軍の戦いに対比させていて。聴き進めながら、まさに今の日本における原発をめぐる議論は“フォース”を善く使おうとする人間と、暗黒面に手を染めた体制側のバトルとまったく同じ構図だと思えてきました。
「そうなんよ。オレにはそう見えるし、似てるッスよ。今までに体験したことのないような、凄まじい時代の変わり目が来ているというか。たぶん明治維新とか太平洋戦争くらいのインパクトのあることが起こっていると思うし、しかも世界中で似たようなことが起きてるわけやん? 原発のことと、中東のことと、ウォール街のことって、人間の“業”の話としては全部一緒よね。結局1%の人間になりたいのか、99%の自分を認めるかとか。今のままでエエのか、変えるために何かするのか、とか…。人間社会に対して、ものすごく突き付けられていると思うんよね、今。しかも、誰かの役割は大きくて誰かは小さいとかじゃなくて、みんなやらなアカンことがあると思うし、それぞれに自分の立っているところでものすごくいっぱい出来ることがある。で、誰が悪かったのかとかより、オレは未来に集中したい。我々が思い描いていた通りに世の中を、昨日より明日の方がちょっとでもマシに出来るエネルギーというか…。そういう力や気持ちに対して背中を押してくれるのがロックという音楽だったと思うし、このタイミングでこのバンドをやれているのは必然的やなと思う」
――確かに、これまでにタイジさんが関わってきた音楽の中でも、とりわけロック度が高い音ですしね。
「うん。シアター・ブルックと比べても完全にロック、というかパンク入ってるし。特にようこちゃんとウエノくんは根がパンクで、オレの両サイドにパンクがおるから(笑)。でも、この5人でやっているのはすごく楽しいッスよ。ウエノくんはいつもオレのギターソロが長ぇってばっかり言ってるし(笑)」
――(笑)。でも、話を少し「未来に集中したい」ということに戻すと、歌詞の中には“未来への責任”[『ROCK STAR WARS』(M-4)]とか“変えなくちゃダメさ/未来の基準”[『THIS IS WE ARE』(M-5)]とか。未来のためにココで変えよう、というメッセージに強く貫かれています。
「オレには子供はいないけど、メンバーや周りのスタッフにも子供はいて。結局その子供たちに対してオシメを替えるのはオレの役目ではなかったけど、オレにはオレの役割があると思うんよね。アメリカン・インディアンの話で“オマエの3代先の100年後の子孫が、地面からオマエのことを見ているぞ”というのがあるけど、それは次の生命は水があって食べ物が生まれてくる地面にある、ということで。そういう風に考えると、今のままにはしておけないよね」
『100% SOLAR BUDOKANの歌』、コレは実際に今年やるからね
――そんなシリアスで真摯なメッセージを含んだ作品なんですけど、的確に『スター・ウォーズ』を対比させたりしつつ痛快なロックアルバムに仕上がっているのが、何よりタイジさんらしいなと思います。
「要するに、やっぱり言いたいことを言うにしても、怒ってばかりではなく楽しくやりたいし。楽しく音楽をやって死んでいきたいんスよ。あと、ロックバンドでも若い奴らはまだまだこれから生まれてくるし、そいつらに対して先輩として守ったらなアカンことがあるんちゃうかな、という気持ちもあって。今でもOKAMOTO'Sとか黒猫(チェルシー)とか若いバンドは出てきてるけど、若い奴らではヤラレてしまうこともあるだろうし、オレらがロックバンドのアティテュードというのを示して伝えたいというのもあったよね」
――デビューして間もないような若いバンドだと、どこまでやってしまっていいのかとか、さじ加減もわからないでしょうし。
「そう。オレらの世代には(忌野)清志郎さんとかがおったから。まだ日程とかは公には出来ないけど、アルバムの中に『100% SOLAR BUDOKANの歌』(M-11)という曲が入ってるけど、コレは実際に今年やるからね」
――マジですか!? ソーラー(太陽光)電力だけを使っての武道館公演を。
「もちろんハードルは高いし、詳しいことはまだまだ明かせないけど、それで成功出来たら夢があるでしょ? 100%クリーンなエネルギーだけで武道館公演も出来るとなれば、大きなニュースにもなるだろうし」
――なるほど。その動向も楽しみですが、その前にアルバム発売後初のツアーが、大阪では4月21日(土)に梅田Shangri-Laで行われます。
「新人バンドなんで、よろしくお願いします(笑)。個人的には、2010年に自分のこれまでのロックバンド人生みたいなものを『やめんかったらロックスター』という本でまとめてみて、昨年に地震が起きて新しいバンドが始まってという流れがあって。そして、今年は“100% SOLAR BUDOKAN”にまっすぐに向かえてる感じがするんですよ。メンバー全員のスケジュールを押さえるのがなかなか大変なバンドでもあるので、ぜひ!」
Text by 吉本秀純
(2012年2月20日更新)
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