1/29(日)2nd LINE、1年ぶりの大阪ワンマンを前に
人気ドラマ『深夜食堂2』主題歌『嘘のつき方』も好評を博した
京都発の3ピース・LOVE LOVE LOVEが
新曲、帰郷、2011年を総括したぶっちゃけトーク!
マスター役の小林薫を軸に、繁華街の片隅の小さな食堂で繰り広げられる悲喜こもごもの人間模様を描き好評を博した深夜ドラマ『深夜食堂』。人気コミックを原作とした同作のテレビシリーズ第2部にて、その主題歌に抜擢されたのが京都発の3ピースロックバンド・LOVE LOVE LOVEの新曲『嘘のつき方』だ。切なくポップなメロディをぶ厚いバンドサウンドで鳴らし、人柄を投影した素朴な詞の世界観が持ち味の彼らが、ドラマの世界観にインスパイアされ書き下ろした今作は、LOVE LOVE LOVEの名前を改めて知らしめるきっかけとなり得る物憂げで優しいミドルバラード。折しも昨年は3枚のシングルと1枚のアルバムに配信カバーシリーズのリリース、2年半にわたる東京生活から地元京都への帰郷、そして今回の大型タイアップ…多忙にして自らの音楽に向かう足元を今一度確かめる1年を経た3人に、1月29日(日)2nd LINEでの1年ぶりの大阪ワンマンを前にインタビュー。新曲『嘘のつき方』にまつわるエトセトラから2011年を振り返る総括トークをしてもらった。
3人のシチュエーションコント風(!?)動画コメントはコチラ!
――前回取材させてもらったのがシングルの『プラネタリウム』('10)で。あれがもう何年前…?
浦山(g)「2年?…もう2年くらい経ちますね」
――マジか!? そんな経つ? ホンマに早いね…でも一応ちゃんと、まだメジャーに(笑)。
(一同笑)
寺井(vo&b)「いや~もう…ビクターさんサマサマですよ!(笑)」
――今やいつどうなるか分からないスリリングな音楽業界で、シングルを切ることもなかなか難しい時代に、今回はこれまたいいタイアップが付いてます。『嘘のつき方』はLOVE LOVE LOVEの名前を改めて知ってもらうにはいいきっかけになるシングルだと思うけど、今回は『深夜食堂』というお題がまずあってそこに対して曲を書くパターンだったのか、それともLOVE LOVE LOVEの音楽性がマッチしてテーマ曲に選ばれたのかで言うと?
浦山「前者ですね」
寺井「…実は『嘘のつき方』っていうタイトルは、曲を作る1ヵ月くらい前からあったんですよ。東京に行ったとき、ホテルでシャワーを浴びてたら思い付いて。去年は地震もあったし、全てが不穏な感じじゃないですか。そんな世の中を見て、“自分の役割って何なんやろ?”って考えたんですよ。それは、個人としてじゃなくて、音楽として、バンドとして…それが=エンタテインメントっていうことなのかもって…なんかそう思ったんですよね。人に対して何かを与えられるというか、プラスに向かわせるというか。そこから自分の音楽の役割をすごく意識するようになった。エンタテインメントってフィクションとかファンタジーとか、本来は存在しないものを作って人を喜ばせたり、生きてて良かったとか思わせることが多いじゃないですか。まぁ遊園地とかが一番いい例だと思うんですけど、着ぐるみの中には人が入っていて、子供たちも大人たちもそれを見て喜んでる。でも、その中に人が入ってることは当たり前に知っている。けど、それを見て喜べるだけのものがある…そのときに、エンタテインメントってそれ自体が“嘘”やと思ったんですよ。でもその嘘は=いい嘘で。今の日本の社会も、ある意味そうだと思うんですけど」
――誰もがやっぱり何かしら嘘をついて生きていくことは悪いことのように感じるけど、切り取り方ひとつでマイナスにも優しい嘘にも、いろんな意味にも取れるもんね。
寺井「そうなんですよ。そういうことを考えていたらちょうど『深夜食堂』の話が来て。『深夜食堂』ってマスターとお客さんの間で繰り広げられる一夜のドラマみたいな話じゃないですか。でも、実際はマスターもお客さんの人生の一部しか知らない。けど、そこで粋な計らいをしたり、言葉をかけたり、敢えてかけないときもあるし、それで人に喜んでもらってる…その図式が、まさにエンタテインメントやなと思って。その関係性と自分のやりたいこと、叶えたいことがすごくマッチしたんです。だから今回、書き下ろしではあるんですけど、自分の中であんまり書き下ろした感じがなくて。なんか、いいタイミングやったなぁって。しかも好きなドラマでね(笑)。嬉しいなぁって」
浦山「あと、事前に監督と会って話す機会があってね」
寺井「曲を書く前にお会いしてミーティングして。そこで最初に、“こういう曲を書いて欲しい”みたいなオーダーもあって。そのときは“柳ジョージさんみたいな”って(笑)」
――まぁでも、言わんとしてることは分かる(笑)。『深夜食堂』に合う感じはするから。それをLOVE LOVE LOVEに求めるかどうかはアレとして(笑)。
寺井「ブルージーとかソウルフルな引き出し、自分たちにはあんまりないけどな…と思いつつ(笑)、僕もミーティングに行く前にある程度構想を練ってたんで、ノラ・ジョーンズをちょっとカントリーっぽい感じにしたい、みたいなことを言って。だからその会議では、柳ジョージ+ノラ・ジョーンズでいこうみたいな(笑)」
――その着地点めっちゃ不安やな(笑)。実際、書き下ろした曲にはスムーズにOKが出たんですか?
寺井「そうですね。ちょっと曲が長いとは言われましたけど」
――アハハハハ!(笑) こういう“お題があって曲を書く”みたいな経験は初めて?
寺井「実はなくはなくて。電力会社のCMのために書いた曲とかもありますし」
浦山「『きみにハロー』っていう曲で、中部電力系の設備会社のテレビCMなんですけど。それは『KYOTOKYO』に入ってます」
寺井「意外に得意かもしんないです」
――ある種のコンセプトが先にある方がやりやすいのか、やり甲斐があるのか、それともいつもと変わらないのか。
澤本(ds)「やりやすさはありますね~僕は」
浦山「まぁ普段も寺井くんが曲を作って、そのイメージをどう膨らまそうかって詰めていくから、あんまり変わんないじゃないかな。ただ、もっと大きな、向かう方向が分かりやすくなるから」
寺井「あと、今まではバンド3人で集まって作ることが多くて、その良さも分かってるんですけど、行き慣れてるラーメン屋があったらそっちに入ってしまうみたいな感じもあるから(笑)、最近は自分でだいたい大筋を作るようにしてて。後から、もうちょっと壮大な感じの方がいいんちゃうかなぁっていう話になってDメロを付けて」
浦山「寺井くんに割とハッキリとしたイメージがあったしコンセプトも分かってたから、逆に、この世界を広げるために自分が何か出来る隙間はどこだ、みたいな(笑)」
寺井「逆に2人は難しかったかもしれない。ピアノとバイオリンがかなり入ってる分、いつもよりギターとかの量が減るんですよ。最近アイリッシュな感じに凝ってて、ぶっちゃけバイオリンがすごく好きなんで、今(笑)。曲調的にはピアノが中心にあった方がいいし、そのバランスを考えたときには自然とそうなっていきましたね。さんちゃん(=澤本)とかも、“ドン”と“パン”しかない。あと“シャ~ン”(笑)」
澤本「ホンマに…(笑)。何パターンかフレーズは考えていったんですよ。三拍子、刻むやつ、裏だけ…いや、もうナシにしようみたいな(笑)」
――アハハハハ!(笑)
寺井「キョンピー(=浦山)も最後ぐらいだもんな…(笑)」
――そこに自分を出していかなあかんと。ここしかない(笑)。
寺井「入魂のギターですよ(笑)」
――それで言ったら、ホンマに楽曲至上主義というか、プレーヤーとしてのエゴとかは…。
寺井「もう完全にないっすね。あと、レコーディングではのあのわの(荒山)リクくんにピアノを弾いてもらって」
浦山「それも新鮮でしたね。それもみんなでせーので録ってね」
寺井「やっぱりバンドっていいなって改めて思いましたね。LOVE LOVE LOVEはもう長いから、なんとなくみんなの呼吸感とか分かってるじゃないですか。リクくんとは初めてやから、“こんなに違うんか!?”と思って」
浦山「そうそう」
寺井「やっぱり…人が楽器を弾く意味っていうのは、すごくあるんだなって。自分も打ち込みでがっちりクリックに合わせて曲を作ったりもしてたけど、最近はそれだとつまんねぇ~と思うようになってきて。表現としてピッタリ合った方がいいのはあるけど、やっぱり如何に生っぽく出来るかを、ちょっと考えさせられた瞬間でもあった」
澤本「最近、ライブでもキーボードにサポートに入ってもらってるんです。3人ぐらい一緒にやらせてもらいましたけど、ホンマに1人1人違うので面白いんですよ。ずっと3人でしかやったことがなかったから、1人増えると“こんなに違うんや”って」
――あと、最近は改めて言葉の重要さをすごく感じるようになってるとか。
寺井「最近、カバー企画をやったのにも実は関係してて。今回のカップリングにも『強い気持ち・強い愛』(M-3)が入ってますけど、特に小沢健二さんの曲って、簡単な言葉を使ってるのに核心を突いてるなって、歌い始めてからすごく気付かされて。あとは結局、音楽って乗り物みたいなもので、乗ってる人=言葉がやっぱり大事なのかなって。特に僕らはオーディエンスを踊らせたりモッシュさせたりするバンドではないし、言葉の強さっていうものをすごく意識するようになった」
――歌詞への重心は、震災云々だけじゃなくてそこも関係してたんやね。
寺井「震災に考えさせられることはもちろんありましたけど、それはミュージシャンとしてというよりは、人としてが多かったから。あと、歌詞って“歌”に“詞”って書くじゃないですか。歌と合わさって初めてマックスになる。そこが歌のズルいとこでもあり、スゴいとこでもあるというか」
――直接言われても素直に受け入れられないことが、メロディに乗ると案外心に残ったりとかするもんね。
寺井「それは、やっぱり歌の魔法ですよね」
――この配信カバー企画では『TRUE LOVE』(藤井フミヤ)、今回のカップリングでもある『強い気持ち・強い愛』(小沢健二)、『Love Somebody with ボビー・オロゴン』(織田裕二)の3曲やっていて、どれも著名な曲ですよね。
寺井「すごい選曲ですけどね(笑)」
浦山「LOVE LOVE LOVEにちなんで、過去の“LOVE”を歌った名曲という裏テーマがあって、しかも90年代を改めて追究する、みたいな。どれも名曲やし、思い出の曲って言う人も結構多いと思うんですけど、それって結局言葉とメロディがその人の記憶に残ってるから、聴くとそのときの自分を思い出す。だったら、僕らが作った曲も聴いてくれる人の生活にマッチして残っていけばいい曲なんやろうし、そうなるためには入ってくる言葉じゃないと、想像を喚起するような言葉じゃないとね」
――あと『Love Somebody』はね、マキシ・プリーストならぬ“withボビー・オロゴン”というところにあざとさを感じるんですが(笑)。
(一同爆笑)
寺井「でも、ホントにレコーディングはめっちゃくちゃ大変だったんですよ! とりあえずめっちゃ歌下手なんですよ(笑)。だから“こう歌って”って伝えても、全然違うメロディを歌う(笑)」
澤本「でも、踊りはめっちゃカッコいいんです(笑)。踊りのリズム感はいいのに、歌は…拍っていう感覚がないんでしょうね。ラップはまぁいいんですけど、一緒に歌ってる最後のところとかはもう…(笑)」
――『嘘のつき方』は『深夜食堂』の主題歌、『強い気持ち・強い愛』はカバーと明確なテーマがある中で、間に入る『ハルジオン』(M-2)の立ち位置はなかなか難しいけど、コレはどういうきっかけで収録されたのかな?
寺井「コレは結構前からあった曲なんですけど、まぁ今回入れとこうかなぁぐらい」
――アハハハハ!(笑)
寺井「しいて言うなら季節感とかですかね(笑)。あと、今回のシングルでセルフプロデュースした唯一の曲ですね。京都のstudio SIMPOっていうところで録って、それが結構大変やったけど勉強になったというか。アルバム『KYOTOKYO』でもセルフプロデュースはしてますけど、今思えばあんまり出来てなかったな、みたいな(笑)。今回はそれを踏まえてやってみたんですけど…ポップソングって難しい。でも、だいぶ自分の中で見えてきたんですよ。どうやったらグッとくるのか、ずっと聴いていられるのか、そういうことが何となく見えてきて。セルフプロデュースをやり出して半年ちょっとぐらいですけど、曲を作るのも面白くなってきたし。詞を書くのは相変わらず大変やなぁと思いますけど(苦笑)、音楽はやっぱり面白い」
――今ではその京都にまた戻ってきてて。東京にはだいたい何年ぐらいいた?
浦山「2年半ぐらいですね」
――戻って来て改めて分かった京都の良さとか、上京する前には見えなかったことや、今感じることはある?
寺井「精神的な余裕は大きいかな。余裕があるから曲も出来やすくなったし。まぁ東京も全然嫌いじゃないんですけどね。でも、やっぱり自分に合う場所がある。環境選びってすごく大事なんやなって。東京に比べたらスピード感は全然遅いし、今のペースに染まり切っちゃいけないと自分に言い聞かせてるんですけど、それでもやっぱり、京都に帰ってきて単純に良かった。素晴らしい街やなって。自分にすごく合ってると思います。合ってるからこそ広げられることがあると思うんですよね」
浦山「東京には事務所もあるしスタッフもいっぱいいるんですけど、向こうにいたら人に任せ切ってしまうところもあったんで。今はちょっと距離がある分、自分らでもっとよく考えて、いい意味でのインディペンデント感、自分らでやってる実感がすごくある」
澤本「東京に行って一度は経験して帰って来たっていうのは、すごく大きいなって。今でも東京に行くことは多いんですけど、東京の見え方とか感じ方もまた違って、わざわざ行く分身も引き締まるし。東京と京都で緊張と緩和がちゃんと感じられるという意味でもいいですね」
――それこそ活動的にも、さっきのセルフプロデュースをやろうとかいうきっかけにもつながってくるもんね。むしろ、そういうことにどんどん挑戦していかなあかんというか。
寺井「そうですね。持続可能なバンド社会を目指して、自給自足出来る環境を備えていきたいのは実はすごくあります。いつどうなるか分かんないし」
――その技術や方法を盗める間にね、つながりを自分のものにしていければね。
寺井「自分で動けるっていうのは生命力があるし、いっぱい選択肢が生まれるじゃないですか。時代が時代なだけに、今やからこそ特に大事やなって思ってます」
――あと、『嘘のつき方』のリリース前後にはアコースティックツアーもあったけど、最近アコースティックでやる機会も増えて。
寺井「僕らの場合はニュアンスが大きく変わらないのもあるんですけど、自分が曲を作ったときの絵に寄せていけるから、アコースティックって楽しい。思いのほか良くて、もうこれでいいんちゃうかと思ってしまったぐらい(笑)」
澤本「思うときある(笑)。音も心地よく聴こえるし。こっちの方が伝わるんちゃうんとか思ったり」
寺井「うちにロックスターはいーひんから、それやったらアコースティックスターを目指した方が(笑)」
――それこそ重要性を噛み締めてきた歌詞やメロディが際立つという意味では、アコースティックはすごく理想形というかね。2011年は『嘘のつき方』が出てLOVE LOVE LOVEの大きな動きとしてはシメという感じでしたが、振り返ってみてどんな年でした? 京都に戻ってきたことも含めて、いろいろと変化のあった年やったと思うけど。
澤本「バンドらしくなったというか、LOVE LOVE LOVE=寺井っていう図式が、2011年はすごく見えてきた気がしたんですよね」
寺井「サボったらあかんで~(笑)」
澤本「いや、サボってるつもりは全然ないけど(笑)、『嘘のつき方』の作り方とかもそうですけど、役割がハッキリしてきた」
浦山「それはあるかもしれない」
澤本「そう。そういうのがね、サボりたいみたいになってるけど!(笑)」
(一同爆笑)
澤本「いやもうホンマに書いてもらいたい。いろいろとやってますから(笑)」
浦山「あと、去年1年で相当ライブが楽しくなりましたね」
寺井「確かに。リラックス出来るようになったしね」
寺井「キョンピーがダンスしたりね(笑)」
――そうそう!
澤本「あれ、あの日からじゃん!」
浦山「あの日からか?」
――マジで!? アレそれまでやってなかったんや?
浦山「あの日からやりました(笑)」
――めっちゃ盛り上がってたしね。突き抜けたというか開き直ったというか吹っ切れた、そういう感じが。
浦山「もっと早く吹っ切れば良かったのに、なんか考え過ぎて“コレやったら引かれるんちゃうか?”とか思ってた時期もあって。そういうのも京都に戻って、“自分らのやりたいようにやったらいいやん”みたいになってきて」
寺井「キョンピーはライブ番長ですから」
――そやね~。でもそんなキャラとは思ってなかったからね、最初は。
寺井「いや、目立ちたがりやなんですよ、実は」
澤本「アッハッハッハ(笑)」
――そして、その本領を発揮出来る1年ぶりのワンマンライブが、1月29日(日)2nd LINEであって。そこから始まる2012年のLOVE LOVE LOVEの展望を最後に聞かせてもらいたいなと。
寺井「2012年はやっぱりアルバムを出したい。今までのミニアルバム三部作とか『KYOTOKYO』とかも瞬間的に作ったアルバムだったから、より作品性の高いアルバムを、じっくり時間をかけてちゃんと作りたいっていうのは、明確な目標としてありますね」
浦山「自分らに自信を持てるようになったし、もっといろんな人の耳に僕らの曲が触れて欲しいのはあります。そのために自分らが出来ること…例えばライブが好きな、ライブハウスに来る人たちに向けてだけじゃなくて、アコースティックでもある程度出来るようになったから、いろんなところで勝負したいなって」
寺井「あと、ラーメンがめっちゃ好きでめっちゃ食ってるんで、ラーメンマップとかを出せたらいいのにと思って。もうありったけの才能を使い尽くして、音楽以外にも広げたいですね、幅広いビジネスを(笑)」
――アハハハハ!(笑)。どんな入口でも最終的にLOVE LOVE LOVEに戻ってくればOKやからね。それでは1月29日(日)、2nd LINEでまずは会いしましょう!
Text by 奥“ボウイ”昌史
(2012年1月27日更新)
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