ホーム > インタビュー&レポート > ロック無敵艦隊・Nothing’s Carved In Stoneが 最新アルバム『echo』を独白! 7/22(金)心斎橋BIGCATワンマン直前インタビュー
―― 6月8日に3rdアルバム『echo』がリリースされましたが、今作からはリラックスした雰囲気や風通しの良さをすごく感じたんですけど、制作のムードの中にもそれに通じるものはあったんですか?
生形(g)「それはあるかもしれない。やっぱり2枚のアルバムを作って、ツアーも3回廻って、シングルも出して、もう結構何をやってもうちっぽくなるというか」
村松(vo&g)「基盤が出来た感じはしましたよね」
生形「方向性とかの話し合いとかは前作ほどはなかったんですよ。毎回そうなんですけど、ツアー中に楽屋にラジカセを置いといて、みんなが買ったCDとかiTunesに入ってる音楽を聴いて話をするんです。“これカッコいいね”とか“それいいね”とか、そういうやりとりの延長線上でアルバムを作るんで、今回もその感じで。ただ、今までと多少リズムのアプローチを変えたとしても全然うちらしくなるだろうとか、そういう自信はあったかもしれない」
――逆に2ndまでは、ある種の気合いじゃないですけど、明確なイメージを持って挑んだというか。
生形「そうですね。今作に比べると肩に力が入っていたというか、“これぞNothing’s~”という決め打ちでやっていたというか…要はすごく焦点を絞ったアルバムだったんですよね。今回はもっとレンジが広いというか」
――ツアーで同じ時間を共にすると結束も深まるし、それに伴って考え方やアプローチも徐々に変わっていったと思うんですけど、今回の制作時に各々のテーマみたいなものはありました?
村松「結構明け透けに思うことを話すバンドだし、過ごす時間が少ない分すごく濃密というか。ツアーを通してバンドが成長していく日々を通して、そして、今作の制作をしてる間にも、大口径で鳴らしていけるボーカルリストになりたい気持ちは生まれていきましたね。歌詞についてもなるべくリアリティのあるもの、みんなに自然と寄り添ってもらえるようなものにという想いで書いてましたね」
――前作のインタビュー時から、ボーカリストとしての強さを持たなきゃっていう意志が発言の中にすごく出てましたもんね。
村松「まぁペーペーでしたからね(笑)」
――(笑)。生形さんはどうです?
生形「ギターに関しては、最近はよりシンプルにしたくなっていて。でも、シンプルだけど印象に残る力強いフレーズを作るのがやっぱり難しい。音を重ねるのは簡単と言うか得意なんですけどね。ギタリストとして、ごまかしの利かないアプローチをしてみようと思ったのが今回ですね」
――生形さんのギターってある種の音数の多さや構築されたフレーズの美しさみたいなものがやっぱりあるし、その緻密さがギタリストとしてのひとつの個性でもあると思うんですけど、逆に今回のような間の大きなフレーズの取り方とかは、自分の新しい引き出しを自分で感じることもあったんじゃないですか?
生形「そうですね。例えば『Truth』(M-2)にしても、ギターから始まってドカッとリズムが入ってくるんですけど、そこで今までの俺だったら絶対にギターをもう1本入れてるんですよ。それをなくすのは最初はやっぱり勇気がいったけど、この後にドラムとベースが入れば全然音圧も出るしグルーヴも出るだろうという信頼関係というか、自信みたいなものはありましたね」
――メンバーに対する信頼もそうですけど、さっきの“Nothing’s~とはこういうものだ”というバンドの骨格を、自分たちの中で感じ始めてるのもあったんでしょうね。
生形「まさにそうですね。日本語詞にしてもそうなんです。具体的なきっかけは、THE YELLOW MONKEYのトリビュートで『バラ色の日々』をやらせて頂いたことなんですけど、日本語詞で初めて録って、それをライブでやってみて、他人の曲なんですけど、これもアリじゃないか!?って。それもやってみないと分かんなかったですから」
――トリビュートの話がバンドにいいきっかけを与えてくれた感じですね。あと、1~2枚目はバンドの基礎を築く時代でもあるから、そこであんまりとっ散らかったことをするよりも、コレというものを突き詰めようという思惑もあったかもしれないですけど。
生形「やっぱり焦らず1つ1つやっていくのがうちのスタイルなんでね」
――Nothing’s~は当初はいろんなバンドやプロジェクトに参加している人間が集まったバンドだったじゃないですか? にも関わらず、普通のバンドよりもどっしりしてるというか、長いスパンで物を見てますよね。
生形「最初からそういうバンドやりたかったんですよね。それまでのキャリアとかは関係なく、ゼロからやりたいっていうのがあったんで」
――だからよりバンドとしての密度が濃くなっていってる感じが音にも現れてる気がします。さっき日本語詞の話がありましたけど、それにトライしてみたことで、何か新鮮な驚きや発見はありました?
村松「今回は僕が『Chain reaction』(M-5)を書いて、『Goodnight & Goodluck』(M-11)はウブが書いて。単純に2人で歌詞を書くという可能性も広がったと思うし。やっぱり全然違うんで。あとはライブが楽しみなんですよ。ライブでどういう風にみんなに響いていくかが結構大事なところなんで。日本語はそのためのツールとしてやりたい気持ちもすごく大きかった。対バンとかでハンドマイクに日本語詞で歌うだけのバンドの潔さを観て、すごく魅力を感じたし。だからやれて良かったと思いますね。これからライブを通してこの曲たちがどう成長していくかも楽しみです」
――日本語の詞が乗っているからなのか、たまたま曲とすごくマッチしてるのか分からないですけど、『Chain reaction』はこのアルバムの中でも鍵となる曲というか、面白い響きの曲ですよね。歴代の曲の中でもポップだとも思いますし。やっぱりNothing’s~ってイントロから緊張感のあるリフがまず鳴って、“うわ~キタキタキター!”ってアガる感じが“らしさ”みたいなところもあるんで。この曲のアプローチはちょっと新鮮ですよね。
村松「いつも通りじゃない感じが良かったので、この曲をPVにしたんですよね」
生形「最初に『Truth』『Spiralbreak』(M-4)『Chain reaction』の3曲を録ったんですよ。で、時間的にこの3曲のどれかからPVを撮らなきゃスケジュール的に間に合わないと。じゃあ、イントロから一番うちだと思えない曲にしようって。しかも日本語だし、もうこの曲しかないなって。やっぱり自分たちの中では新しいことをどんどんやっていきたいのがあるんで」
――なるほど。あと聞いておきたかったのが、村松さんは並行して動いていたABSTRACT MASHが活動を休止して、今はNothing’s~が自分のメインの歌う場としてあると思うんですけど、それによってボーカリストとしての立ち位置や覚悟みたいなものに変化はありました?
村松「元々中途半端なことはしたくなかったので、どっちも本気でやってたんですけど、いろいろと思うことはもちろんありましたね。でもまぁ当然使える時間も増えるし、物理的な面での余裕が出てくるのも確かで。これからだとは思うんですけど、出来ることはきっと増えるだろうなって。あとはやっぱり、頑張ろうって思いますけどね(笑)。何て言ったらいいんだろうな…すごく個人的な話になっちゃうんですけど、Nothing’s~だけの状態になったら、この場所でどれだけ自分のこと伝えられるのか!?っていうことじゃないですか? だからこのバンドによりのめり込んでいくんだろうなと」
――ボーカリストとして長い目でキャリアを振り返ったときに、これからが自分の中ですごく大事な1年だったと思うかもしれないですね。
村松「“明日死んでも満足出来るのか?”とか、そういう言葉ってよく聞くじゃないですか? その感覚が、最近すごくリアルになってきてる。アブストを休止した影響もあったのかもしれないですけど、今はとにかく頑張って、頑張って、すごく当たり前なんですけど、死ぬ気でやって。それがいい結果にそれがつながればいいなと思ってます。今年1年がどういう風になっていくのかは、正直すごく楽しみですね」
――今回の作業的には割とスムーズにいった感じですか?
生形「去年のツアーが終わってから制作に入ったんで、実は考える時間は結構あったんです。それでもやっぱりギターのアレンジとかには時間かかるし。まぁ性格なんですけど、時間がある限り考えたくなっちゃうんで」
――他誌のインタビューでも、“ウブがネチネチ考えてる間にフレーズが変わって…”とか書かれてましたね(笑)。
村松「ホント8時間とか平気でギター弾いてるもんね(笑)」
生形「だからエンジニアとかがいると、待たせるのがだんだん悪いなって気持ちになってきちゃって(笑)。だから1人で操作覚えて、狭い部屋で1人でやって。それが実は一番集中出来るし、何も気にしないでいいし(笑)。そうやって作ったんで、ギターのアレンジも曲もそうなんですけど、理想通りに出来たというか一筋縄ではいってない自信がありますね。やっぱり長く聴ける音楽がいい音楽だと俺は思っていて。最初に聴いていいなと思えて、何回か聴くと今度は他の発見があるような。それってアレンジの力だと思うし、すごく細かいところまで一生懸命考えましたね。時間があったおかげで、そういうところは煮詰められたかなと」
――パッと聴いたキャッチーなフレーズがどうのとかじゃなくて、より見えないところにその緻密さが現れてるかもしれないですね。そう考えたらもう匠の業ですね(笑)。やっぱり20代前半の勢いで押すバンドではないし、30代ならではの人生経験も含めた味みたいなものありますね。
生形「あとは作品を作るごとに、もしかしたら達成感というものは薄れていくかもしれない。でも、そこを手抜いちゃダメだっていうのがすごく分かってきて、それだけはやりたくないのがあるんです。毎回毎回全力でやる、そうやっていけば、絶対に少しずつでも結果が出ると言ったらアレですけど、共感してくれる人も増えるだろうし」
――自分にハードルを課していくべきだと。
生形「そうなんです。正直どんどん良くなくなっていっちゃったなって思うミュージシャンもいるし、そういう人はいつの間にかいなくなっちゃったりするし。この間ある大先輩ミュージシャンの話を聞いたんですけど、その人は1つのフレーズをいまだに5時間くらいかけてレコーディングすると。やっぱり残ってる人はそういう人なんだって」
――続けていれば上手くはなるし、逆に手の抜き方も覚える。かと言って簡単に出来ることだけをやってたら自分が成長するのかと言ったら、やっぱりしないですからね。
生形「そうなんですよね。例えばジェフ・ベックなんかはやっぱりすごいと思ってて。いまだどんどん弾き方が…もはや何をどうやってあの音を出してるのか分からない(笑)。20~30年した頃にああいう風になりたいというか、常に成長したいですね。そういう人ってまた、練習してる姿とかは絶対見せないんですよ。遊んでるように見える人に限って…例えばレッチリのフリーにしてもそうだし。そういう人って単純にカッコいいなと思うんです」
――やっぱりNothing’s~はストイックなバンドですね。
生形「1人1人にちゃんと責任感があるんでしょうね。俺はそこが一番大事なとこだと思うんですよ」
――今回のタイトルには『echo』と付いてますけど、これはどこからきたんですか?
生形「これは拓ちゃんが考えてきたんですけど、バンドが充実してきて、お互いがお互いを引き出してるような…響き合って今作が生まれたようなところがあって。正直に向き合って、響き合って出来たもの。それがみんなにも響いていって欲しいなっていう願いを込めて、『echo』なんです。だからすごく聴いて欲しいし伝わって欲しい。自己満足でやってるつもりもないし、俺たちバンドにとってそれは大事なところなんで。是非聴いて欲しいですね」
――そして、アルバムツアーは全ヵ所ワンマンライブで。
生形「うちのライブはエネルギーをかなり消費するので、あんまり長時間出来ないというか(笑)、やらない方がいいと思っていて。短期集中です」
――完全燃焼出来るジャストのサイズじゃないとね。確かにNothing’s~のライブを観てたらそりゃ燃え尽きるだろうなって思いますもん(笑)。やっぱりバンドがそれだけ熱いものを出すと、お客さんもそれに応えてくれるし。
生形「そのやり取りがうちらしさかなって。別にみんなでこういうライブにしようぜなんて話したことは1回もなくて。あと、ツアーでいろいろ先のことを決めてますね。やっぱりバンドが一番成長する時間なんで。ツアーでは毎回必ず初めて行く場所を入れてるんですけど、そういうところではやっぱり、待ってました!感をすごく感じますね」
――いつか47都道府県ツアーが出来たらいいですね。でも、あのエネルギーのツアーを最低でも47本やると思ったら、結構キツいですけど(笑)。
生形「消耗するとは思うんですけど、ツアー中は逆にいろんなパワーをもらっていくみたいなところもあるんで、楽しみですよ」
――なるほど。それでは、7月22日(金)心斎橋BIGCATでお会い出来る日を楽しみにしています!
Text by 奥“ボウイ”昌史
(2011年7月15日更新)
Album
『echo』
発売中 2520円
Dynamode Label
GUDY-2008
<収録曲>
01.Material Echo
02.Truth
03.Falling Pieces
04.Spiralbreak
05.Chain reaction
06.False Alarm
07.Seasons of Me
08.My Ground
09.9 Beat
10.Everlasting Youth
11.Goodnight & Goodluck
12.TRANS.A.M
13.To Where My Shoe Points
ナッシングス・カーブド・イン・ストーン……写真左より日向秀和(b)、生形真一(g)、村松拓(vo&g)、大喜多崇規(ds)。’08年に現在活動休止中のELLEGARDENの生形、ストレイテナー / killing Boyの日向を中心に、村松(ABSTRACT MASH ※現在は活動休止中)、大喜多(FULLARMOR / killing Boy)が集まり始動。’09年には1st アルバム『PARALLEL LIVES』を、‘10年には2ndアルバム『Sands of Time』をとコンスタントにリリース。高い演奏力とキャリアに裏付けられたハイボルテージなライブで、各地のイベントやフェスで圧倒的な存在感を見せ付けている。バンド名はモーゼの『十戒』に出てくる十の規律が刻まれた石に、何も書かれていない=規律、タブーがないという逆説的な意味。
Nothing's Carved In Stone
オフィシャルサイト
http://www.ncis.jp/
『Tour echo』
チケット発売中 Pコード137-265
▼7月22日(金) 19:00
BIGCAT
オールスタンディング3300円
ソーゴー大阪■06(6344)3326