ホーム > インタビュー&レポート > 泣く子も黙るへヴィなサウンドで遂にメジャーフィールドへ進出! lynch.が語るデビューアルバム『I BELIEVE IN ME』制作秘話
――6月2日・Zepp Osakaで行われた黒夢のライブではお疲れ様でした。率直にその日のライブはいかがでしたか?
「アウェイっていうのは最初から覚悟していたんですけど、想像以上にお客さんは優しかったです。清春さんから、“ある程度、覚悟しておいたがいいよ~”って言われていたので(笑)。やっぱり黒夢/清春さんのファンは熱狂的な方が多いので、他のバンドには興味ないかなと思ったんですけど、カバー曲をやらせてもらったときに良い反応をいただいて。優しくしてくださって、ホッとしました(笑)」
――(笑)。確かに会場の反応は良かったですね。カバーしたのは『棘』ですよね?
「はい。『棘』の速いバージョンですね。僕も黒夢の大ファンなので、選曲だけは自信があったんです(笑)。絶対にこれが聴きたいだろうなって。清春さんに了承を得て、いざ本番でやったら良い反応がきたので、“ほら!聴きたかったでしょ!”って(笑)。最初、中盤に『棘』をやるのか、本編最後に『親愛なるDEATHMASK』をやるかで悩んだんですけど、最後にカバーをやるのもさすがにどうなんだってことで『棘』をやることにしました」
――デビュー直後に、憧れの黒夢と同じステージ立てたのは感無量だったんじゃないですか?
「本当ですね~。“感無量”以外の言葉が出てこないくらい、感無量でした(笑)。黒夢がきっかけでバンドを始めたので、15年くらいずっと、将来いつか一緒にライブができたら……と思っていたので、この話を直接、清春さんからもらったときは、夜中だったんですけどすぐにマネージャーに電話しました(笑)」
――他のメンバーにはいつ話をされたんですか?
「マネージャーに電話してスケジュールの調整をしてもらって、決定が出た後ですね(笑)。実はこんな話が……っていうメールをしたら、みんなからもやるやるって言ってもらえたので(笑)」
――事後承諾ですね(笑)。さて、そんな夢のステージの前日、6月1日にニューアルバム『I BELIEVE IN ME』でメジャーデビューされました。もともとメジャーへの願望はあったのでしょうか?
「正直、最初は別になかったんですよ。メジャーデビューして状況が良くなるならしたいけどっていうくらいで。でも今回、レコード会社の方とちゃんと話をして、マイナスになることはないなとみんな判断したので、お願いしますと。それがメジャーじゃなくてインディーズのレーベルだとしても一緒にやっていた、とリーダー(g・玲央)も言ってました(笑)。メジャー云々ではなく、“この人たちとなら一緒にやりたい”という点で決めたので、たまたまメジャーの会社でデビューが決まったっていうだけなんですけどね」
――なるほど。実際、今はメジャーもインディーズもそんなに境目はないような気はしますしね。
「僕もないだろうと思っていたんですけど、ありました(笑)。いざデビューしてみたら何もかも違いますね。レコーディング環境も今までの比じゃないですし。メンバーみんながある程度の機材を持っているので、今までは自分たちの家で録音していたりしてたんですけど、今回は大きなスタジオで時間をかけて録れたので、サウンド面は格段に良くなりましたね。ドラムとかが特に違うと思うんですよ。広いスタジオならではの音の反響が得られるみたいで」
――メジャーデビュー作と言えばシングルが多いと思うのですが、アルバムを選択した意図はありますか?
「バンドの音楽性の幅が広いので、どうしても1曲で判断してもらいたくなかったんですよね。根底にインディーズ時代よりサウンドはより激しくいきたいっていうのがあったんですけど、かと言ってすごく激しい曲をシングルで出してもうるさいだけになるし、1曲の中に全部を詰め込みたくもなかったので、アルバムの方がいいんじゃないかって。最初からその方向でしたね」
――なるほど。それにしても、メジャーデビュー作ながら本当にヘヴィで激しいサウンドですよね。そう思ったきっかけは何だったんですか?
「やっぱりメジャーにいくことを発表したときに、“lynch.もポップになっちゃうんじゃないの?”とか、周りからは心配されるわけですよ。元々ポップじゃないわけでもないんですけど、そんなに心配なら逆に激しくなってやろうっていう、舐められたくない精神から始まったわけです(笑)。あと、メジャーってプロモーション力…世間に広げられる力があるじゃないですか。そこに敢えて激しい音楽を乗せるのも面白いし、痛快かなと思って。それに今の時代、振り切っていた方がかえっていろんな人のアンテナに引っかかると思ったんですよ。“うるせー!”って言われるか、“うわっ何? こんな音楽あるんだ!?”って思われるかのどっちかだろうから(笑)。ただ、普通にポップな曲だと聴き流されて終わっちゃう気がして。元々そういうバンドじゃないから、自分たちの一番得意なところを、活かせられればいいんじゃないかなって思ったんです」
――いろんな考えのもとで、ヘヴィな作品に仕上がったのですね。激しいとは言え、メロディアスな楽曲など、様々な表情が収録されていますよね。
「そうですね。歌謡曲みたいなテイストもありますし。あくまで“みたいな”ですけど(笑)」
――過去作との違いは?
「そんなに変化してきたわけではないんですけど、前作の『SHADOWS』(‘09)方がポップでしたね。もっとおとなしくて歌モノが多かったです。でも、昔からそんなに言うほどは変わっていないですね。ずっと同じことを突き詰めて、ここまで上がってきたみたいな感じなので」
――そのlynch.の核となっているのは何ですか?
「ヘヴィなサウンドがあって、綺麗なメロディがあって、シャウトがあって……本当にそれくらいしか要素はないと思うんです。そのバランスを曲によってどう変えていくかっていうだけなんですけど、それが今回で極められたと思います。昔の方がもっと荒削りだったので」
――シャウトにはこだわりがありそうですね。
「こだわりまくっています。黒夢で1曲丸々シャウトの曲があるんですけど、中学生の頃にその曲をテレビで見て“何だ? この歌い方は!?”って衝撃を受けて。こういうカッコいい、“ロック・ボーカリストになりたい”と思ってバンドを始めたので、シャウトは自分の中で必須なんです」
――ということは、葉月さんのイメージするロックボーカリストはシャウトが出来ないとダメ?
「ダメですね(笑)。シャウトも曲によって使い分けているので、使っている声は多いと思います…いろいろと欲張りなんですよね、多分。やりたいことは全部やりたい(笑)」
――ちなみに、今作で冒険されたことはあったりしますか?
「冒険はそんなに出来てないですけど、今までと明らかに違うのはベーシストがいるっていうことですね。前作までは僕がずっとベースを弾いて録音していたんですけど、去年のラストインディーズツアーでサポートをしていた明徳が、ツアーファイナルに正式加入したんで、今回はベースを弾かなくて良かったので楽になりました(笑)」
――なるほど(笑)。音の変化はありました?
「あると思いますね。ノリが全然違うというか。僕はクリックに忠実なタイプなんですけど、明徳はベーシスト特有のゆるさというか、グルーヴ的なものが違いますね」
――そもそも今までベーシストが正式メンバーにいなかったのは、こだわりか何かだったんでしょうか?
「バッサリ斬ると、僕よりベースを弾ける奴がいなかったんですよ。僕より弾けて、lynch.でやりたいって言ってくれる奴がいれば入れたかったんですけど、現れなかったので。本当はずっと入れたかったんですけどね(笑)」
――そんな事情があったんですね(笑)。現体制となって初、しかもメジャーデビュー作品となったアルバム『I BELIEVE IN ME』は、訳すると“自分を信じる”ですが、このタイトルにしたのは?
「3曲目のタイトルそのままなんですけど、アルバム全編を客観的に見たときに、歌詞が自分と戦っているものばかりだということに気が付いて。あとは、lynch.の今までの活動スタンス…すごく頑固なバンドで、今回契約するのにもすごい時間がかかったんです。CDをリリースするにしても、ライブをやるにしても、全員が完全に納得するまで何事にも動かないんですよ。信じたことしかやってこなかったから、バンドがそういうスタンスなんですね。だから、メジャーの一発目にちょうどいい言葉だねって」
――それでは、アルバムにちなんで…lynch.はこれから何を信じてメジャーフィールドを突き進みますか?
「何をと言われると…自分しかないですよね。それは今まで通りでいいかなと。自分たちのチームとファンですね」
――自分を信じることは、自信がないと出来ないことだと思います。
「そうですね…今回は“自分を信じる”というタイトルなんですけど、ニュアンス的には“自分を信じる…と願っています”くらいのニュアンスだったりするんですけどね。自分を信じるしかないので、信じられると願ってね」
――そして、この作品を携えての全国ツアーも6月よりスタートしています。
「久しぶりにセットリストがガラッと変わるツアーになっていますね。新しいアルバムを出してのツアーって2年ぶりで、逆に言えば2年間ずっと同じようなセットリストでやっていたので、久しぶりに一新出来るのを楽しみに来てもらえたらいいかな。あと、ライブを観たことのない子に、すごく観て欲しいんです。あと、ロックに興味のない人に聴いて欲しいんですよ。興味がなかった子が幼い頃の僕のように、“何、このうるさいの!? でも…カッコいい!!”ってライブに来てもらったら最高なんですけど。女の子のお客さんが多いですけど、男の子も照れずに来て、暴れていってください(笑)。メジャーだからって急にコンサート的なものにはなったりしないので。むしろ、今までよりハードなライブをしていこうかなと思っているので。いつメンバーが飛んでくるか分かりませんよ(笑)」
――そんなことがあるんですか!?
「ありますね~(笑)。だから“覚悟して来い!”と。ロックらしいライブをやりに全国に行きます」
――葉月さんの中で“ロック”とは?
「従わないことじゃないですか。自分を信じて行動する、自分が発信源であることじゃないですかね」
――おおっ! 素晴らしいですね~。それでは、ぴあ関西版WEBを見ている方々へのメッセージをお願いします。
「メジャーだと珍しいくらいうるさいバンドですが(笑)、CDを出して割と良い反応をいただいているので、今後も調子に乗ってもっと激しくなっていくと思います(笑)。うるさいのが好きな人はぜひ聴いてみてください」
――lynch.の目標、目指すところは?
「バンド・キッズに憧れられるバンドNo.1になりたいです。これは、個人でもバンドでもそうなんですけど。“あのときlynch.を観て、バンドをやりたいと思いました”っていう子が増えて欲しくて。とにかく男の子に指示されるバンドになりたいです。今年の目標に関しては、健康でいる、ですね(笑)」
ツアー初日となった6月11日のumeda AKASOでのライブは、ツアー初日ということを感じさせない熱いライブパフォーマンスで会場に詰めかけたオーディエンスを魅了。ヘヴィなサウンドと繊細で美しいメロディ、多彩なシャウトから艶のある歌声……静と動、光と闇といった二面性のある音楽性は、ライブでより輝きを放っていた。関西でのライブは8月6日(土)KYOTO MUSEが控えるが、残念ながら既にSOLD OUTしているので、広島や岡山まで観光を兼ねて足を延ばして、lynch.の創り出す音楽を体感して欲しい。
Text by 金子裕希
(2011年7月 7日更新)
Album
『I BELIEVE IN ME』
発売中 3000円
キングレコード
KICS-1666
<収録曲>
01.INTRODUCTION
02.UNTIL I DIE
03.I BELIEVE IN ME
04.JUDGEMENT
05.LIE
06.-273.15℃
07.THIS COMA
08.SCARLET
09.ALL THIS I'LL GIVE YOU
10.TIAMAT
11.BEFORE YOU KNOW IT
12.A GLEAM IN EYE
リンチ…写真左より悠介(g)、明憲(b)、玲央(g)、晁直(ds)、葉月(vo)。’04年8月に葉月、玲央、晁直の3人によって結成され、ライブ活動をスタートさせる。’06年に悠介が加わり、昨年には過去最大規模となるラスト・インディーズツアーでサポートをしていた明憲が正式加入。5人編成となって、今年6月リリースの『I BELIEVE IN ME』でメジャーデビューを果たした。ヘヴィなサウンドと流麗なメロディ、そして、葉月のシャウトが絶妙なバランスで織りなす幅広い楽曲が持ち味の名古屋発のロックバンド。
lynch. オフィシャルサイト
http://lynch.jp/
『TOUR’11『THE BELIEF IN MYSELF』』
【広島公演】
チケット発売中 Pコード135-883
▼7月30日(土) 18:00
広島・ナミキジャンクション
オールスタンディング3000円
夢番地広島■082(249)3571
※未就学児童は入場不可。
【岡山公演】
チケット発売中 Pコード:135-884
▼7月31日(日) 18:00
岡山・IMAGE
オールスタンディング3000円
夢番地岡山■086(231)3531
※未就学児童は入場不可。
Thank you, Sold Out!!
▼8月6日(土) 18:00
KYOTO MUSE
オールスタンディング3000円
当日券その他の問い合わせは…
夢番地■06(6341)3525
※未就学児童は入場不可。