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日本のポップスを支えるゴールデン・トライアングル
SING LIKE TALKINGが7年半ぶりのアルバムと共に帰還!
その真意に迫るインタビュー

 深い音楽的バックグラウンドを反映したジャパニーズAORの担い手として、高品質なポップソングを世に生み出し続けたスーパーグループ、SING LIKE TALKING。誰にも似ていない、誰にも真似できないその唯一無二の音世界は他の追随を許さず、日本の音楽シーンに確かな軌跡を残していたものの、’03年にその活動を休止…。それぞれがソロワークスにいそしむ中、2011年、7年半という長い期間を経て遂に再始動! 休止と言うにはあまりにも長い月日を経て、なぜ再び3人は集まり、SING LIKE TALKINGは動き出したのか? ニューアルバム『Empowerment』はどうやって生まれたのか? フロントマンでありソングライティングも手掛ける佐藤竹善(vo&key&g)に、その真意を聞いた。

SING LIKE TALKINGの動画コメントはコチラ!

――この度、なんと7年半ぶりのアルバム『Empowerment』が5月18日(水)にリリースされますが、外タレならまだしも日本の音楽シーンを見渡しても、こんなペースで活動してるグループはまずいませんよね?(笑) 
再始動のきっかけとなったのはいったい何だったんですか?

 

「これは紛れもなくFM802のイベント『RADIO MAGIC』(‘09年に大阪城ホールにて開催)ですよ。あれがなかったら集まるのは当分先だったでしょう。6年間一切連絡もとってなかったぐらいですから。出演OKの返事を出すまでだいぶ待ってもらっていたので、いざ出るとなった頃にはポスターに写真が間に合わず、後から合成してもらったくらいで(笑)」
 

――ホントですか!?(笑) 当時は気づかなかったなぁ~。
 

「きっと…“きっかけ待ち”だったと思うんですよね。翌日には(そのイベントの)取材もあって、“曲書かなきゃ”って言ってしまってましたからね。だから今回の再始動はFM802さまさまです。頭が上がらないですよ(笑)。あと、休止してた間に活躍していた若いアーティストや先輩たちが“次はいつやるの?”とか“音源はいつ出すんです?”とか訊いてきてくれたり、(葉加瀬太郎主催の野外イベント)『情熱大陸』も毎年ソロで出てたんだけど、SING LIKE TALKINGとして出てからは、葉加瀬が“今年もバンドで出るよね?”って言ってくれたり(笑)。そういう周りのミュージシャンたちの声も支えになったし、自分たちの自信にもつながりました」
 

――7年間、音楽シーンには(SING LIKE TALKINGの)“あの音”がなかったんですよね。代わりになるアーティストも出てこなかった。久しぶりにメンバー3人が集まって、改めて制作に取り組んでみていかがでしたか?
 

「今回3人で集まって、海外に行ってレコーディングもしたんですけど、作業中もそれ以外の時間も変わらないリラックスした空気があって、制作していたこの1年間、純粋に楽しかったんですよね。(’03年の)活動休止前はそれぞれの方向性が変わっていってるのを制作の中で感じていたので、このままSING LIKE TALKINGとしてやり続けるのは良くないなと思ったんです。この7年間、自分はソロとして、SALT&SUGARとして、あとは『CROSS YOUR FINGERS』などのイベントをしてきたりしたけれど、その間ふたりもそれぞれがプロデューサーやプレイヤーとして活動してきたから、いざ再び会って制作を開始したときは、同じ音を出しても休止前とはレベルがまったく違う次元にまでいってて。プロデュースやアレンジまですべてやっていた人間が、いちメンバーとして専念したときに出す音に対するそれは、やはりすばらしいものがありましたよ」
 

――昨今の再結成ブームもある中で、その活動再開がビジネスライクだったり結局昔のほうがよかったと思い知らされたりと、正直いい話ばかりじゃないと思うことも多いんですが、ぶっちゃけその辺はいかがです?
 

「実はそれは自分でも感じていて。周りを見渡して再結成したバンドの活動内容や結果は、自分の中にデータとして蓄積されていきました。だからこそ、逆に自分たちが100%全力で取り組めるまで、思い描く音を出したいと思うまでは、中途半端に活動は再開させまいと思ってました」
 

――それだけ自分たちの中に高いハードルを課していたSING LIKE TALKINGがようやく活動を再開させたとき、どういった作品を作ろうかと思い描くプランはあったんですか?
 

「語幣がないように真意が伝わればいいなと思うのが、これは制作する前からずっと考えていたことだったんだけど…“脱J-POP”ということがポイントでした。自分はソロは挑戦の場だと思っていて、自分が影響を受けてきた逃れられない洋楽なんかの要素を土台にして、聴きやすく分かりやすいJ-POPのかたちに落とし込んでみても、それではなかなか満足度につながらないんですよね。例えばフランス料理でも本場のフランス料理そのままの味じゃなくて、日本人の口に合うように味付けした方が伝わりやすいのかと思ってみても、僕らはそういったことをするよりも、自分たちが思う音楽をまじりっけなくやった方が僕らの音になるんだと改めて感じました。また、それだけで充分、日本人としての僕らの独自性は盛り込まれるだろうと。今回は全曲書き下ろしたんですけど、それでも収録曲の倍くらいは作っていて。でもそれはアルバムを作るための曲作りではなくて、自分たちが好きなように曲を作って、その結果としてアルバムを出したいっていう流れで。それができたのはすごくよかったですね。あと今回の制作では、僕が作曲、(藤田)千章(key)が作詞、西村(智彦)(g)がギターという原点に戻って作って」
 

――ゴールデン・トライアングル復活ですね。
 

「ソロだと全部のジャッジや責任が自分にかかってくるんだけど、グループだといい意味でお互いに甘えられる。しかもそれぞれがこの7年で積み上げたものを注ぎ込むんだから進化もあるし、何よりそれぞれのいいところが、逆により出るというかね」
 

――タイトルが『Empowerment』=“自己の力による各個人それぞれの内面的可能性の開花”というのも納得ですね。アルバムが完成したときはどう思いました?
 

「千章がぽろっと言ってたんだけど、“これはSING LIKE TALKING以外の何者でもない”と(笑)。言われてみたら確かにそうで」
 

――まさに(笑)。言い得て妙ですね。
 

「スティーヴィー・ワンダーとかビートルズとか、洋楽から受けた影響を消化した日本人として僕らが素直にやることで、難しいことを考えずとも自ずとそれはSING LIKE TALKINGの音になるんだなっていうのはスゴく感じましたし、自信にもなりましたね」
 

――緻密なアレンジとグッドメロディ、そして圧倒的な歌唱力…脈々と流れる血をきっちり受け継ぎながら、アップデートされた2011年の“これぞSING LIKE TALKING”の音がちゃんと鳴らされている作品になりましたよね。またリリースに伴い、5月13日(金)の新潟からはアコースティックツアーも始まります。ライブに向けてはいかがです? 新曲を持ってライブしに来てくれるのをオーディエンスも楽しみに待っているはずです。
 

「僕はソロでもずっとライブをしてましたけど、ふたりはこの間ほとんどステージに立ってないから、今は“リハーサル”ならぬ“リハビリ”中ですよ(笑)。僕らは曲の合間にコントができたりする訳でもないし(笑)、SING LIKE TAKINGのライブは何かと何かを混ぜ合わせて美味しいカクテルというよりはウイスキーモルツみたいなもので、歌とサウンドで聴かせる…それしかできないんですよね。ライブでは何しろ楽しくお客さんと時間を共有するポップスとしてありたいと思ってますね」
 

――Twitterでも再始動への反響で盛り上がっていますね。
 

「昔はファンレターしかなかったのが、今ではFacebookやTwitterでダイレクトにファンの反応が分かる。ミュージシャンと観客が同じ立場で交信できるのは、すごくいい時代だなと思います」
 

――ライブ後はリアルな感想がタイムライン上に飛び交いますから(笑)。そしてツアー前には、当初予定されていたライブの内容を変更し『東北関東大震災被災者支援コンサート「心の復興まで」~Cross your fingers~』が開催されます。この一夜に、復興を願う灯火が大阪の地で1つでも多く灯ればと思います。それでは5月4日(水・祝)のグランキューブ大阪で、関西のファン共々お待ちしていますね。本日はありがとうございました!
 

 

Text by 奥“ボウイ”昌史

 




(2011年5月 2日更新)


Check

Release

どこを切ってもSING LIKE TAKING!  7年ぶりの現在進行形ポップアルバム

Album
『Empowerment』
5月18日(水)発売 
3000円
ユニバーサルJ
UPCH-1829

<収録曲>
01.Through The Night
02.A Wonderful World
03.飾りのないX’mas Tree
04.Dearest
05.涙の螺旋
06.きみの中に輝くもの
07.祈り
08.Do-Nuts?
09.硝子の城
10.Desert Rose (Adenium)
11.Wild Flowers
12.Dog Day In The Noo

Profile

シング・ライク・トーキング●写真左より藤田千章(key&syn)、佐藤竹善(vo&key&g)、西村智彦(g)。高校の同級生であった3人を中心に結成。’88年メジャーデビュー。透明感としなやかさを兼ね備えたボーカル、ロック、ファンク、ブルース、R&Bやポップスと様々なジャンルを独自に昇華した楽曲には巧みなアレンジが施され、5thアルバム『HUMANITY』('92)がオリコンチャート初登場3位を獲得して以来、毎作品をコンスタントにTOP10チャートにランクインさせ、’96年にはシングル『Spirit Of Love』が関西でも大ヒット、その人気を不動のものとした。’03年に11thアルバム『RENASCENCE』に伴うツアー終了と共に活動休止。’09年5月、FM802開局20周年記念ライブ『RADIO MAGIC』にて約5年半ぶりに再集結し、’10年夏には『情熱大陸』などの各フェスに登場。そして、'11年5月には約7年半ぶりの12thアルバム『Empowerment』をリリース。ソロ活動も多く、佐藤竹善はソロ&カバー作のリリースに加え、塩谷哲(p)とのユニット・SALT&SUGAR、小田和正のコーラスや同氏とのユニット・PLUS ONE、コカ・コーラのCMソング等も担当。藤田千章は『サモンナイト』等のゲーム音楽、西村智彦は甲斐よしひろのサポートなどでも知られる。

SING LIKE TALKING オフィシャルサイト
http://singliketalking.jp/


Live

ツアー前半戦の内容を変更し      盟友たちと復興を願うライブで大阪へ

『東北関東大震災被災者支援コンサート
「心の復興まで」~Cross your fingers~』
チケット発売中 Pコード128-919
▼5月4日(水・祝) 18:00
グランキューブ大阪 メインホール
全席指定6800円
[出] SING LIKE TALKING/スキマスイッチ/
Skoop On Somebody/松たか子
ソーゴー大阪■06(6344)3326
※未就学児童は入場不可。