rei harakamiとOvall、東西の音のスペシャリストが
5/26(水)心斎橋JANUSでの共演を前に、魅惑のトークセッション!
矢野顕子とのyanokamiをはじめ、UAの『閃光』にくるりやサカナクションのリミックス、近年は映画音楽なども手掛け、鬼才ぶりを発揮し続ける京都在住の電子音楽家=rei harakamiと、さかいゆうやKeyco、Hanahらの楽曲も手掛けながら、3月に初のアルバム『DON'T CARE WHO KNOWS THAT』を発表し、生演奏ヒップホップの新地平を切り開いた東京発の3人組=Ovall。共に国内外で高い評価を集め、ヒップホップやエレクトロニカなどを高度に消化した上で日本ならではの独創性を感じさせる両者が、FM802の人気番組『BEAT EXPO』(月~木19:00~)が主宰するライブイベント『HOOK UP!!』で、5月26日(水)・心斎橋JANUSにて共演を果たすのに先駆け、番組上でトークでコラボ。音楽家同士ならではの興味深い発言が次々と飛び出した、レイハラカミとOvallの中心人物であるShingo Suzuki(b&key)の貴重な対談を、ぴあ関西版WEB上で再びプレイバックしてみよう!
――お互いのことは以前からご存じだったんですか?
ハラカミ「いや、僕は今回のOvallのアルバムが出たことで初めて知った感じですね」
Suzuki「僕は以前から個人的にファンだったので、音源もずっと聴いてます」
ハラカミ「恐縮です」
――Shingoさんはトラックメーカーという点で、ハラカミさんの音を聴いて思うところも多いと思うんですけど。
Suzuki「そうですね。ハラカミさん(の音楽)は、僕が思うに上モノの柔らかいところに注目されがちなんですが、実はビートがスゴいんですよ。考え抜かれているし、面白いし、ストーリーがあってまさに“BEAT EXPO”な感じですね(笑)」
――(笑)。
Suzuki「美しいけど毒もちゃんとあって、何度も聴きたくなる中毒性があるんですよね」
――なるほど。ハラカミさんは今回の共演が決まる前からOvallのCDを買ってらっしゃったそうですが。
ハラカミ「とにかく、最初はmyspaceに辿り着いて。聴いた瞬間、その日はもう仕事が手につかなかったですね。今日は仕事はヤメにしてorigami PRODUCTION(=Ovallが所属するレーベル)の音源を聴く日にしようと(笑)。昼過ぎから聴き始めたら夕方になってて、とりあえず某レコード屋さんに物質(=CD)を買いにいきましたね」
Suzuki「ありがとうございます!」
――ハラカミさんの思うOvallの興味深いところとは?
ハラカミ「僕自身もヘンなリズムばかり作ってますけど、他者の音楽を聴いてリズムが面白いと思うことはあまりなくて。僕がちょうど1stアルバムを出した90年代後半とかは、新しいリズムが生まれては消え…という時期だったんですけど。21世紀に入ったくらいから、リズムに対して言及する風潮もなくなってしまったし、僕もイベントで会ったミュージシャンとかに“おまえのリズムはスゴい”と言われることはあっても、一般的なところで言われるようなことはなかったですから。だから、Ovallの音楽には“聴いたことのないリズムを聴いた”という感覚があったので新鮮でしたね。で、リズムだけじゃなくて、歌い手さんやベースなどの他の楽器もそのリズム(の面白さ)をわかって演奏しているので、単純に研究対象としてもどうやってるんだろう?って」
Suzuki「よく打ち込みと聴き間違えられるんですけど、実は100%手で演奏しているんですよ。今はデジタルの機材で(生演奏の)コピー&ペーストも簡単に出来るんですけど、CDでもそれは9割方してなくて、同じフレーズも最初から最後まで実際に演奏していますね。フィジカルな部分を出したかったので」
ハラカミ「なるほどね。ちょっと専門的な話をすると、僕はMIDI【※1】の打ち込み野郎なので基本的には(音は)ジャストなんですよ。で、それをマトリックス【※2】的にやっている部分があるんですけど…」
【※1】MIDI・・・複数の電子楽器を、異なるメーカーの製品であっても連動させて演奏や操作することのできる統一規格。
【※2】マトリックス・・・数列、パターンなどの並び。
Suzuki「僕らも、演奏としてはマトリックスというか、ポリリズムというか…」
ハラカミ「Perfumeじゃないよね?(笑)」
Suzuki「(笑)。例えば、8分の6(拍子)と4分の3と4分の4とか、複数のリズムが無意識に入っているんです。それって昔の黒人音楽のブルースなどがデフォルメされて入ってきてるところもあると思うんですよね。ヒップホップなどをずっとリアルタイムで聴きながら、リズムの冒険というのは常に考えてきて。最近は(ビートを)崩したモノは結構あるんですけど、音楽的に納得のいくモノを追求するのは大変だけど楽しいことで。今回のアルバムの裏テーマには“ビート・コンシャス”な作品を作りたいというのが実はありましたね」
――なるほど。ラジオでもロックのギタリスト談義などはよく聞きますけど、ビートの話がラジオから聞こえてくるというのもイイですね。
ハラカミ「いいなぁ。いい番組だ(笑)」
――5月26日(水)に心斎橋JANUSで行われる『HOOK UP』では、こんなお2人にステージの上で音で交流してもらうワケですが、かなりヤバい感じで盛り上がるんではないかと。
ハラカミ「もう眼鏡ギャルたちが“Ovall、超ヤバくない!?”って言ってるようなね(笑)。でも、ホントに普段はあまり聴けないような音楽が聴けると思いますし、僕自身もOvallのライブを観るのは初めてなので、楽しみにしています。僕は基本的に打ち込みですけど、バンドはやっぱり生モノなんでね。見極めてみようかと」
Suzuki「プレッシャーが…(笑)。では、(音源よりも)さらにホットなOvallを聴いて下さいということで。僕も楽しみにしています!」
Text by 吉本秀純
Photo by 芦田博人(studio713)
(2010年5月19日更新)
Check