ホーム > インタビュー&レポート > 音楽監督・藤倉大といずみシンフォニエッタ大阪が 世界のレジェンドたちを迎え、現代音楽の魅力に迫る新シリーズ。 第1回は「クラウゼを聴こう!」
いずみシンフォニエッタ大阪(ISO)は今年度より、年2回の定期演奏会に加えて年1回のペースで、音楽監督、藤倉大によるスペシャル公演「藤倉大のこんな音楽、いかが?」を行う。国際的に活躍する藤倉が敬愛する作曲家や演奏家を迎え、現代音楽の魅力を紹介するシリーズだ。10月3日(土)に行われる第1回は「クラウゼを聴こう!」と題して、ポーランドの作曲家、ジクムント・クラウゼの委嘱新作を中心としたプログラムを贈る。クラウゼは1938年生まれ。ピアニストとしても著名であり、ピエール・ブーレーズの要請によりIRCAM(フランス国立音響音楽研究所)の芸術顧問も務めるなど、ヨーロッパにおけるレジェンド的存在だ。だが、なぜ、今、クラウゼなのか?藤倉の言葉をまじえながら、聴きどころを探ってみたい。
藤倉:この第1回には、僕にとって運命的とも言えるようなものが重なっています。まず始まりは僕が20歳の時に、クラウゼさんがポーランドでやっていた現代音楽作曲コースというのに参加したこと。古い宮殿を使って行われているサマー・コースで、クラウゼさんとはそこで初めて会ったんですが、そのあと僕がセロツキ国際作曲コンクールで優勝した時の審査員もクラウゼさんだったんですね。それから僕はまたサマー・コースに戻ったので、1年くらいのあいだに3回は会っていたんです。でも当時はメールなんかもないから、その後はクラウゼさんの活躍は気に留めながらも、特に連絡は取ったりしていませんでした。ところがほんとについ最近、クラウゼさんからメールが来て「Dai(藤倉)が昔、生徒で来てくれたサマー・コースに今度は先生として来てほしい」って。すごくうれしいじゃないですか。何と言ってもあそこは僕の青春の場所だし。それで交流が復活して近況を報告し合ううちに、クラウゼさんから「いずみシンフォニエッタ大阪のためにピアノ・コンチェルトを書きたい」って提案があったんです。
指揮は藤倉の信頼厚い松井慶太。ピアノ独奏には現代音楽への取組みが注目を集める北村朋幹。音楽監督として委嘱や出演者への交渉を重ねるうちに、藤倉自身、思いもよらなかったさまざまなつながりが見えてきたという。それらが本人の言葉で語られる時、変化と刺激に富んだ世界の現代音楽シーンと、そこに集まる才能のドラマが活きいきと見えてくるような面白さがある。
藤倉:ピアノは北村朋幹さんを推薦したんですが、万が一、クラウゼさんの考えと合わなかったらどうしよう、なんてことも考えていたら、ポーランドで北村さんのピアノの先生とクラウゼさんは知り合いで、しかもその先生が当時クラウゼさんと同じ通りに住んでいたことがわかってきたんです。つまり北村さんは、クラウゼさんの家のご近所までピアノのレッスンに通っていたんですね。それでピアノは北村さんに決まりました。
藤倉:クラウゼさんと並んで、今回もう1人ご紹介するのがジョージ・ルイスさん。前衛的なジャズ・トロンボーン奏者で、どうしても取り上げておきたかった作曲家です。僕は2020年にコロンビア大学のルイスさんのクラスで作曲について話す機会があったんですが、その時に彼の生徒だった福岡似奈さんとも知り合いました。彼女とはルイスさんを通しての出会いだったので、僕はまったく知らなかったんですが、ISOのコンサート・アドヴァイザーの川島素晴さんから福岡さんはクラウゼさんの生徒でもあったことを教えていただいて、びっくり。それでクラウゼさんとルイスさんの両方に学んだ作曲家である彼女にも、作品をお願いしました。僕の中でクラウゼさんから始まった全部のストーリーがつながって、この公演ができあがったような気がします。
演奏される作品は世界初演2曲、日本初演2曲を含む全5曲。ISOならではの世界水準のプログラムだ。藤倉とISOは今後のビジョンとして「世界中のレジェンド作曲家に委嘱すること」を掲げており、そんな楽団のカラーを力強く打ち出すような内容となった。クラウゼの委嘱新作に加え、そこには藤倉自身の作品も置かれ、これまで以上にグローバルな音楽を追求するISOの姿勢が見て取れる。さらに後半に取り上げられた西村朗の作品は、あらためてISOの演奏と一体となった生命力を感じさせてくれることだろう。
藤倉:作品を委嘱する、というのはとても重要なポイントで、そうじゃないと新しい作品は生まれないんですよ。誰かが委嘱しなかったら生まれなかった名曲って世の中にはたくさんあるわけで、だから誰が委嘱するか、ということはものすごく大事なことなんだと僕は考えています。実際の問題としては今、円安でとても大変なんだけど、そんな中、共同委嘱も付けてやっていくというのはすごいことで、何よりその言い出しっぺはいずみシンフォニエッタ大阪なんだから、こういうことはできる限り続けていきたいと思います。そしてこうした作品を考え得る最高の人たちと演奏できる機会というのもまた貴重なので、それを最大限に活かすべく、公演の前日には僕も参加してスペシャル・イベントも行います。本公演と併せて、たくさんの人たちにお聴きいただきたいと思っています。
取材/文:逢坂聖也(音楽ライター)
(2026年9月14日更新)
2026年10月3日(土)
16:00開演(15:15開場)
住友生命いずみホール
◆15:30~ロビーコンサート
◆15:45~プレトーク
一般-6000円 ※指定、
10/2(金)スペシャル・イベントチケット付き
Pコード:325-530 チケット発売中
【出演】
指揮:松井慶太
ピアノ:北村朋幹
ファゴット:中川日出鷹
いずみシンフォニエッタ大阪
プレ・トーク:藤倉 大
【プログラム】
Z.クラウゼ:
ピアノと管弦楽のためのコンチェルティーノ
(IAMとの共同委嘱/世界初演)
G.ルイス:Assemblage(日本初演)
福岡似奈:
Body without Organs(2025)(日本初演)
西村 朗:
ロプノール(彷徨える湖)(2022)
藤倉 大:ファゴット協奏曲
(アンサンブル版 世界初演)
※イギリス(バーミンガム市交響楽団)と
アメリカ(個人のファゴット奏者)との
共同委嘱
【問い合わせ】
住友生命いずみホールチケットセンター
■06-6944-1188
10月2日(金)19:00開演(約60分)
【出演】
藤倉大:お話/いずみシンフォニエッタ大阪音楽監督/作曲家
北村朋幹:ピアノ/お話
福岡似奈:作曲家/お話
※クラウゼを知る3人が本公演に先駆けてその魅力を紹介するスペシャル・イベント。
本公演のチケットをお持ちの方に限り、ご入場いただけます。