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存続問題に揺れる神戸市室内管弦楽団が
その真っただ中に放つ魅力全開のプログラム
第173回定期演奏会『からみあう情熱』

神戸市室内管弦楽団は6月20日(土)の第173回定期演奏会を「からみあう情熱」と題し、生誕150周年を迎えたファリャなど、スペインゆかりの作曲家の作品を中心に贈る。スペインにルーツを持つラヴェルの、2024年に初演された『道行く恋人たち』や、そのラヴェルが生きた時代、パリに学んだ神戸出身の作曲家、大澤壽人の日本初演作品『小ミサ曲』を散りばめつつ、ファリャの幻想的な交響詩的作品『スペインの庭の夜』、さらにロシア(旧ソ連)のシチェドリンがビゼーのオペラ『カルメン』をバレエ組曲へと編曲した『カルメン組曲』まで、同団ならではの趣向に富んだプログラムだ。指揮にスペインの俊英ロベルト・フォレス・べセス。そして『スペインの庭の夜』のピアノには93歳を迎えた同国の至宝、ホアキン・アチュカロを迎える。

神戸市室内管弦楽団は1981年、神戸市によって「神戸室内合奏団」として設立。2018年に管楽器団員が加入したことを機に、現在の名称に改名した。2021年、世界的なチェリストであり指揮者の鈴木秀美が音楽監督に就任して以降は、室内オーケストラとしての個性を前面に打ち出し、古典派を中心に現代音楽までもとり込んだユニークなプログラミングで全国からも注目を集めている。また姉妹団体である神戸市混声合唱団(音楽監督:佐藤正浩)とともに、合唱作品にも積極的に取り組み、ヘンデル、ハイドン、ベートーヴェンほかの大作も上演。"オーケストラと合唱のある街、神戸"という全国で唯一の文化モデルを確立している。

その神戸市室内管弦楽団が、今、揺れている。今年3月、神戸市は同団を所管する神戸市民文化振興財団に対し、オーケストラへの補助金を2027年度で打ち切る方針を発表したのである。財団は解散もやむなしの姿勢を示し、神戸市室内管弦楽団は存続の危機に立たされた。打ち切りは来場者数の頭打ちや収支の見通しの厳しさを理由とするが、それこそはこの5年、同団が改善に取り組み、その実績を積み上げてきたところだった。

この方針に対し、同団はただちに存続に向けた活動を開始。4月16日には音楽監督の鈴木秀美が会見に臨み、現状の受け止めを語るとともに、広く楽団への理解と応援を訴えた。

鈴木秀美630.jpg▲4月16日、神戸市内にて。記者団を前に鈴木秀美氏

「音楽の価値というのは文学や美術などと同じように、時間をかけて尊敬と理解を持って見ていく、聴いていくことによってわかってくるという面がたくさんあります。ですから目の前の数値目標とか、儲かるものは残っていいが、そうではないものは切っていくというのは非常に殺伐とした感じがします。芸術は数値では測れないもの。それに価値を見出すからこそ、私たちは人間なのです」

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▲ホールの中だけではなくお客さまと身近に触れ合えるオーケストラに、と山田和樹氏(前列)

また、5月11日には、三宮の市街地の2か所で団員有志によるまちかどミニコンサートを開催。サプライズとして、大澤壽人作品の演奏などにより、同団と親交のある世界的指揮者、山田和樹が登場した。山田は電子ピアノに向かって団員たちとヴィヴァルディの『四季』ほかを演奏。集まった人々を沸かせた。同時に記者会見にも臨み「(神戸市には)お金がないから楽団を無くすという単純な結論にはしてほしくないが、一方でわれわれオーケストラがどれだけ神戸の人たちに支持される存在になれるかということも重要な課題。ホールの中で演奏するだけではなくて、神戸市室内管弦楽団にできることはまだまだたくさんある」とエールを送った。

5月16日に行われた第172回定期演奏会では、会場の神戸文化ホール1800席がほぼ満席となった。存続の話題に後押しされたとはいえ、来場者数の頭打ちという問題について1つの可能性を示した形だ。神戸市民文化振興財団はこの結果と次の定期演奏会の実績を踏まえ、今夏までに活動方針を見直すとしている。一方、神戸市は6月6日に楽団や芸術団体関係者らを交えたフォーラムを開催し、文化芸術活動に対する補助金の在り方について話し合いを進めるという。

こうした中で行われるのが、第173回定期演奏会「からみあう情熱」だ。神戸市室内管弦楽団の持ち味である練り上げられたプログラム。スペインを代表する巨匠たちとの共演。さらに合唱をまじえた大澤壽人作品の日本初演は、彼らの実力を神戸市内外に広く示すに違いない。オーケストラがいかに市民の支持を得る存在となり得るか。またそれを行政がどのように判断して行くか。今、起きているこのことは神戸だけの問題にとどまらず、日本全国の文化行政の在り方を問うものと言える。その議論は芸術や文化、そしてエンターテインメントのファンである私たちが、それぞれの公演にまず足を運ぶことから始まるのだ。

                                 取材/文:逢坂聖也




(2026年5月28日更新)


神戸市室内管弦楽団
第173回定期演奏会
『からみあう情熱』

6月20日(土)15:00開演
神戸文化ホール 大ホール

S席一般 4,000円
A席一般 2,000円
U25(25歳以下) 1,000円 ※要身分証
チケット発売中 Pコード:319-571

【プログラム】
大澤壽人:小ミサ曲[日本初演]☆
ラヴェル:混声合唱と管弦楽のための
     『道行く恋人たち』☆
ファリャ:スペインの庭の夜★
     (生誕150年記念)
ビゼー/シチェドリン:カルメン組曲

指揮:ロベルト・フォレス・ベセス
★ピアノ:ホアキン・アチュカロ
☆神戸市混声合唱団

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▼次回定期演奏会


第174回定期演奏会
歌劇『スザンナの秘密』

8月1日(土)15:00開演
神戸文化ホール 大ホール

S席一般 4,000円
A席一般 2,000円
U25(25歳以下) 1,000円 ※要身分証
チケット発売中 Pコード:324-368

ストラヴィンスキー:組曲『プルチネルラ』
ヴォルフ=フェラーリ
 :喜歌劇『スザンナの秘密』
 (セミ・ステージ形式)

指揮:小林資典
演出:籔川直子

伯爵夫人スザンナ:森谷真理(ソプラノ)
ジル伯爵:大西宇宙(バリトン)
サンテ:いいむろなおき(黙役)

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【問い合わせ】
■神戸文化ホールプレイガイド
078-351-3349