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“オペラ・声楽をたくさんのお客様に興味を持ってもらいたい”
バリトン歌手 今井俊輔の今までとこれから、コンサートの魅力を語る

東京藝術大学首席卒業、同大学院修了後イタリアで研鑽を積み、オペラの主要作品で活躍。「BS日本・こころの歌」へのレギュラー出演で幅広い世代に親しまれている今井俊輔。オペラ・声楽との出会い、イタリアでの学びや経験を振り返りながら、5月2日からスタートする「今井俊輔 バリトンコンサートツアー2026〜I am I〜」に向けて、コンサートの魅力を聞いた。

――まず、今井さんと歌の出会いはいつ頃だったのでしょうか。

「幼い頃からずっと水泳をしていて、20歳の頃には水泳のイントラクターやライフセーバーの仕事をしていました。これから先の生活をどうするか、続けていけるのかと思っていた矢先に、知り合いから「チケットが余ってるから一緒に来ない?」と誘われて、オーケストラのコンサートに行ったんです。確か、マーラーの《交響曲第8番「千人の交響曲」》だったと思います。この曲には大勢の独唱者や合唱団が加わるのですが、ソリストの皆さんがすごく光り輝いて見えたというか、「なんてすごい声なんだろう。どうやって声を出しているんだろう」と強く惹かれました。そこから「歌やってみるか。嫌いじゃないし」と思ったのが始まりでしたね。」

――その時点では専門的に声楽を学ばれていたわけではなかったのですね。

「そうですね。小さい頃にピアノ教室に通っていたので、楽譜は読める程度でしたし、歌は小学校の合唱団に助っ人のような形で参加していたぐらいでした。音楽との関わりはその程度で、基本的には水泳一筋でした。」

――そこから音楽の道に進まれます。

「まず群馬県の実家近くで以前通っていた音楽教室を再び訪ねて、その先生の息子さんを紹介してもらいました。「音楽大学を受けたいんですが」と相談すると、さらに先生を紹介いただき、そこから東京藝術大学に繋がっていきました。」

――順調に進まれたのですか。

「いえ、1年浪人しています。経済的な事情もあり国立大学しか選択肢がなかったので、「もし駄目でも次の機会に受験しよう」という思いで挑み、2度目の受験で合格しました。」

――藝大に行かれて、またそこで世界が変わるわけですよね。

「そうですね。入学した当初はオペラの知識もほとんどありませんでした。師事した先生がイタリアの方で、「今井さん、イタリアオペラをやりましょう」と導いてくださいました。その際のイタリアのテノール歌手のマリオ・デル・モナコを勧められてCDを聴いたら、黄金のトランペットと称される歌声に、一瞬で魅了されました。」

――オペラの舞台に立たれるようになったのはいつ頃でしょうか。

「大学3年から 4年に変わる時にバリトンの直野資先生からオペラを勧めていただき、それをきっかけにさまざまなオペラに参加させていただくようになりました。メインキャストとしてのデビューは、2013年に東京二期会が上演したヴェルディの『マクベス』です。」

――異分野からの挑戦で、大変さはありませんでしたか。

「あんまり深く考えてなかったですね(笑)。「こういうものなんだ」と思いながら取り組んでいました。ただ舞台に立つと、やるべきことや考えることが本当に多くて、それがとてもなんか自分の中で好きでした。自分の身体の鳴りや響きがどんどん発展していく面白さ、それを追求していく面白さっていうのがやっぱりそこにはあったので。」

――まるでアスリートのようですよね。

「そうかもしれません。水泳もある程度のところまでは行きましたが、やっぱりオリンピックに行くようなトップの人たちは、全く次元が違うんです。
歌を始めてみたとて、これも結局多くの方と競い合う世界で、「ここでトップを目指して頑張ってみようかな」って思ったのが一つのきっかけかもしれません。ただ、そこからオペラとなるとイタリア語やドイツ語など言語も変わってきますので、その点では大変でしたね。」

――外国語って大変でしたか。すんなりいきましたか。

「正直に言うと、今でも苦手です。「あぁ...」っとなりながら向き合っています(笑)」

――藝大時代、周囲との関係で、印象的なことはありましたか。

「やはり皆さん、入学当時から声も良いし、上手で、知識も豊富でした。その当時は僕は「いい声」とは言われるタイプではなかったので、同期には音楽高校出身の方も多く、そこから色々教わりました。そうした環境が、結果的に僕のモチベーションになり、首席で卒業できたのは本当に幸運だったなと思います。」

――大学院に進学し、そのままイタリアへ渡られます。日本と最も違ったのはどんなところですか。

「何もかも違いましたが、精神性の違いはすごい学びになりました。一方、最終的に僕は日本が大好きだと改めて感じましたね。例えば日本のトイレは本当にすごいですし、自動販売機も素晴らしい (笑)。電車も、日本では5分遅れでも謝罪のアナウンスがありますよね。でもイタリアは、一度720分遅延っていうことがあって、「もう来なくていいよ、この電車」と思いました。そういうギャップを含めて、とても印象的でした。」

――その違いはその音楽にも反映されていましたか。

「はい。発声に関して、とてもメカニカルだと感じました。長い歴史の中で培われたシステムがしっかりあって、「こう歌わないと喉を壊すから、こう歌う」という理論が明確なんです。日本では当時、感覚的・精神的なイメージで教わることも多かったので、それはかなり衝撃的でしたし、自分にも合っているなと感じました。」

――その経験は現在にどのように活きていますか。

「当時は理解しきれなかった発声の流れや音楽の組み立て方が、今になってようやく腑に落ちています。たとえばジュゼッペ・ヴェルディの作品がどれほど難しいのかっていうことも、今になって身に染みてわかるようになりました。」

――日本語の歌に取り組まれるきっかけは、何だったのでしょうか。

「大学3年生の時にBS日テレ「BS 日本・こころの歌」という番組に出演させていただのがきっかけです。オペラっていうのを知った時期と重なっていたので、違和感なく両立して続けて来られました。毎年お声がけいただくうちに、オペラと日本の歌をミックスしていくことで、お客様がより幅広く音楽に興味を持ってくれるのかなと思い、ソロのコンサート活動へと発展していきました。」

――日本語の歌は、どのような魅力がありますか。

「母国語だからこそ、難しい部分もあります。たとえば有名なテノール歌手のプラシド・ドミンゴが歌う《赤とんぼ》や《川の流れのように》は言葉がとても明瞭に伝わってきます。母音と子音が成立してて、言葉の焦点がブレない。そこはとても研究している部分です。」

――お客様にはどんなところを聴いていただきたいですか。

「あまり「この曲はこう聴いてください」と押し付けたくはないんです。聴いてくださる方が自由に感じて、「この曲が良かった」「あの曲は雰囲気が良かった」と一つでも心に残るものがあれば嬉しいですね。僕たちはその場所を提供し、きちんと歌を届けることが責務だと思っています。」

――歌ならではの魅力は、どこにあると思われますか。

「歌は一番最初の楽器だと思っています。どれだけ技術が進展しても、人間の声は決して完全には再現できない。だからこそ、その生の響きを会場で堪能していただくことが、歌の醍醐味ではないでしょうか。」

Text by 小味渕 彦之




(2026年5月 1日更新)


Profile

ライター:小味渕 彦之(こみぶち・ひろゆき)/音楽評論家…関西学院大学、および同大学院で音楽学を学ぶ。多くの演奏会で曲目解説を執筆するほか、新聞、雑誌等で演奏会の音楽評を担当する。またコンサートの企画監修も手がけている。同志社女子大学准教授、豊中市立文化芸術センター総合館長。


Live

「今井俊輔バリトンコンサートツアー2026 ~I am I~」

【群馬公演】
▼5月2日(土) 昌賢学園まえばしホール 小ホール
【愛知公演】
▼5月30日(土) 宗次ホール

PICK UP!!

【大阪公演】

▼5月31日(日) 14:00
エナジーホール(守口文化センター)
全席指定-6000円
[出演]今井俊輔(バリトン)/濱野基行(ピアノ)
※6歳未満(未就学児童)入場不可。
※一度ご購入いただいたチケットのキャンセル・日時変更・払い戻しはできません。
※車椅子にてご来場のお客様は事前にお問合せ先までご連絡ください。事前のご連絡がなく当日お越しになった場合、スタッフがご対応できない場合がございます。【付き添い割引(チケットバック)のご案内】ご来場にあたり、何らかのサポートが必要な方1名につき、付き添い者1名のチケット代を2,000円割引(チケットバック)いたします。チケット購入・発券後、今井俊輔後援会(TEL:080-7716-8593(火・金12:00~15:00)までお電話にて事前申請をお願いいたします。【請締切:各公演日の一週間前まで】
[問]株式会社 ウドー音楽事務所 大阪支社■06-6341-4506

【静岡公演】
▼6月6日(土) 富士市文化会館ロゼシアター 小ホール
【福岡公演】
▼6月19日(金) あいれふホール
【東京公演】
▼6月24日(水) すみだトリフォニーホール 小ホール


「I am I Presents ハーモニー・コンサート スピンオフ企画 ~THE 男祭り!2026~」

PICK UP!!

【京都公演】

▼7月5日(日) 14:00
京都府立府民ホール(アルティ)
全席指定-6000円
[出演]榛葉樹人(テノール)/今井俊輔(バリトン)/川村章仁(バリトン)/濱野基行(ピアノ)
※6歳未満(未就学児童)は入場不可。 6歳以上チケット必要。 【付き添い割引】ご来場にあたり何らかのサポートが必要な方1名につき、付き添い者1名のチケット代を2,000円割引返金。 チケット購入・発券後、今井俊輔後援会までお電話080-7716-8593(火金12:00~15:00)にて事前申請が必要(申請締切は公演日の一週間前まで)。【車椅子でのご来場】チケット購入後お問合せ先まで要連絡(事前連絡なく当日来場の場合、スタッフが 対応できない場合あり)。 時間に余裕を持ってお越しください。車椅子エリアや自席へのご案内の際、安全確保の観点からスタッフがお客様のお身体に触れての介助や、ご使用中の車椅子を持ち上げることはいたしかねます。
[問]株式会社 ウドー音楽事務所 大阪支社■06-6341-4506

【東京公演】
▼7月16日(木) 浜離宮朝日ホール

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