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「皆さんの心が震えるようなコンサートにしたい」
エポックメイキングな楽曲を軸に“全編ソロ”で
『ピアノソロ・コンサート2026』開催
加古隆インタビュー

1973年にパリでデビューして半世紀を越える活動を続ける音楽家の加古隆。日本を代表する作曲家/ピアニストとして、“ピアノの詩人”と評され、心の一音一音を楽譜に書きとめた曲の数々を比類なき美しい音色で響かせる。近年は加古隆クァルテットやオーケストラとの共演も多かったが、2019年以来7年ぶりとなる“全編ソロ”のステージとなるツアー『ピアノソロ・コンサート2026』が4月11日(土)の福島から開催される。注目のプログラムはNHKスペシャル『映像の世紀』で大反響を呼んだ『パリは燃えているか』をはじめ、ピアノソロバージョンでの初演となる『神のパッサカリア』など、エポックメイキングな楽曲を軸にした構成になるという。本公演にどのような思いで臨むのか。今回ぴあ関西版WEBではその軸となる楽曲の背景やエピソードと共に語ってもらった。

ソロというのは絶対に欠かすことのできないもの


――今回久しぶりに開催されるピアノソロコンサートにはどのような思いがありますか。

「音楽家、加古隆を語る上でもソロというのは絶対に欠かすことのできないものなんです。ソロが僕から無くなることはないし、無くしてはいけないと思っています。今回、自分のコンサートツアーとしては2019年以来なんと7年ぶりになります」

――ソロというのは加古さんの原点ともいえますか?

「そうなんです。僕は(1973年に)フランスでデビューして、そこから10年間ぐらいはグループでピアノを弾いていたんですけれども、1980年に日本に帰ってきて、2年ほどして本格的にピアノソロを始めるようになったんです。その中で自分自身の音楽を見つけていくきっかけがあり、今の僕の音楽に繋がっています。それからピアノソロが僕の演奏活動の中心になり、その頃に僕の代表作のいくつかが生まれていったのです。(作曲家としては)1994年にNHKスペシャル『映像の世紀』の音楽を僕が担当したことがきっかけになって、作曲の依頼というのも多くなってきました。2000年代に入ると、『ライブ・イマージュ』というコンサートに僕も参加していく中で、ソロだけではなくアンサンブルでいろんな音楽家と出会うことができました」

――2010年にはピアノ四重奏団『加古隆クァルテット』を結成されました。

「このクァルテットは僕自身にとってとても大切なグループなんです。自分自身のグループを持ちたいと思って結成しました。それをなんとか盛り上げていきたいと思って、そこに集中してやってきましたし、映画音楽やそれ以外の作曲の仕事も多くなってきたので、前のようにソロコンサートが頻繁にはできなくなって、間があくようになりましたが、今でもソロコンサートというのは大切な存在です」



オーケストラの曲として書いた『神のパッサカリア』
今回のツアーではピアノソロで初演する


――今回開催されます『加古隆 ピアノソロ・コンサート2026』は加古さんの作品の中でもエポックメイキングな楽曲を軸にしたプログラムになるのですね。

「僕が日本に帰ってきてピアノソロ・コンサートを本格的に始めるようになって、自分自身の音楽スタイルを見つけるきっかけになったのが『ポエジー』という曲なんです。この曲ができたことで自分自身が進んでいく道が開けていきました。それまではとても前衛的で自由な即興音楽、フリージャズをグループで演奏していて、今の僕の曲からだいぶ距離があったと思います。僕自身はそれが楽しいものだと思ってやっていたわけですけど、ピアノソロを始めてからは自分がたどってきて体の中に蓄えられた音楽を総動員して臨まないと、ソロでひとつのコンサートをやることはなかなかできないと思いました」

――『ポエジー』は和の風景を想起させるような印象です。

「そう感じますね。やっぱり日本人の感性というのが強く影響してると思います。それまでそんなことはあんまり考えてなかったんですけれども、徐々にそういう日本人の感性っていうことを、僕自身が意識するようになりました。『ポエジー』はイングランド民謡の『グリーンスリーブス』のメロディーを元にして、そこから自分なりに曲を作っていったんです」

――その着想を得るきっかけというのは?

「"1曲だけでいいから、みんなが知ってるメロディーを題材にして作ってみませんか"と提案してくださった方がいたんです。それがきっかけで、みんなが知ってるいろんな曲の中から、自分が何か生み出せそうな曲を探していた時に、『グリーンスリーブス』が浮かんできました。それが僕の中の日本人的な感覚ともマッチングしていって、ああいう曲になっていったのかもしれないですね」

――『ポエジー』が1985年で、翌年の1986年に発表されたピアノ組曲『クレー』の中からも今回の公演では披露されるのですね。

「『クレー』もエポックメイキングな新しい形の音楽を発表することができたきっかけになりました。これは初めてパウル・クレーの絵を題材にした作品で、クレーの12枚の絵を選んでピアノ曲を発表したんです。この組曲の1曲目が『秋を告げる使者』で、12曲目の最後の曲が『いにしえの響き』です。この2曲が浮かんだ時に12曲のクレーの組曲イメージが僕の中で完成しました。そういう強い思いを持ってる曲を今回演奏したいと考えました」

――今回は『神のパッサカリア』がピアノソロとして初披露されるというのも注目です。

「はい、これは『映像の世紀』のシリーズで僕が作曲した曲で、元々はNHK交響楽団と録音した曲なんですよ。現在放送されている『映像の世紀バタフライエフェクト』でも頻繁に使われています。そもそもオーケストラの曲として書いた曲なので、ピアノだけでは到底できないと思ってました。ところが、今回のソロコンサートのツアーに合わせて、僕のピアノソロの楽譜を出版することになり、それも並行して準備していた時に出版社の方から『神のパッサカリア』を楽譜に入れてもらえないかと打診されまして。最初はお断りしてたんですが、自分でいろいろ試してみたら、気に入ったものが出来上がったんです。それで、これはコンサートでも取り上げるべきということになり、ピアノソロでこの曲を演奏するのは今回のツアーが初演になります。まだ人前で弾いたことがないので、ぜひ楽しみにしてください」



最後にしようとは思ってないが
最後になっても悔いがないようなプログラムできちんと演奏したい


――コンサート自体はどのような構成になりますか?

「ここまでお話しました『パリは燃えているか』『いにしえの響き』『ポエジー』という3曲は僕のエポックの中で特に重要なものを選んでいて、もうひとつ今回のポイントになるのが『エンプティー・トランス』という曲なんです。これだけは他の曲とはちょっと違ったストーリーを持っている作品です。僕がもっとも親しく長い間付き合っていたアーティストで、山海塾という舞踏のグループを立ち上げた天児牛大(あまがつ うしお)さんという方がいまして。彼もフランスと日本に拠点を持っていました。そういう僕との共通点があり、お互いに尊敬し合える間柄だった彼が一昨年亡くなられたんです。僕は彼からいろんなことを学んだし、一緒にたくさんの仕事をしてきました。彼は海外でもとても有名で、すごく特別なステージを作ってきた人です。そんな彼と一緒に生み出した曲も今回入れたいなと。それが『エンプティー・トランス』で元々はピアノを弾いているステージでダンサーが踊るという作品で。彼の演出で作り上げた空間がとても素敵だったんですよ。そういうこともちょっと思い出させるようなコーナーを作りたいと思って。コンサートの一部の最後の方で彼と作った『アポカリプス』という作品から1曲選んでやります。今回初めての試みになります。そこに彼の世界が投影できたらお客様も新鮮だろうし、僕にとってはやっぱり大切な時間になると思ったんです。二部の後半では『パリは燃えてるか』と共に音楽的な流れを考えて、今の『映像の世紀バタフライエフェクト』のために書いた『風のリフレイン』『グラン・ボヤージュ』を構成する予定です」

――デビューから50年を越える加古さんの集大成的なプログラムになりますね。

「もう決して若くはありませんからね。もしかしたらこれが最後のコンサートになるかもしれない。僕は最後にしようとか、そんなことは思っていませんよ。だけど、最後になっても悔いがないようなプログラムできちんと演奏をしたいなと思ってます。ソロであれ、どんなコンサートであれ、僕がやるコンサートで一番大切にしていること、それは感動です。やっぱり皆さんの心が震えるような、そういうコンサートにしたい。ご自分の心の震えがどこかにあるはずだから、それを体験してほしいですね。それを皆さんと一緒に共有したい。特に今回はピアノソロですから、ピアノの音色の美しさ、和音とかメロディーの美しさだけで涙が出てくるほど綺麗な音を届けたいし、それを皆さんに体験してほしいと思っています」

※名前「隆」は旧字体、生の上に一が入ります。

Text by エイミー野中




(2026年1月29日更新)


Profile

かこたかし…東京藝術大学・大学院作曲研究室修了後、フランス政府給費留学生として渡仏。パリ国立高等音楽院にて現代音楽の巨匠とも称されるオリヴィエ・メシアンに師事し、アカデミックな作曲家としての道を目指していたが、1973年のパリでフリージャズ・ピアニストとしてデビューするというユニークな経歴を持つ。
クラシック・現代音楽・ジャズというジャンルを包含した音楽スタイルで、ピアノ曲からオーケストラ作品まで幅広く、映画音楽での受賞も多い。
代表作に、パウル・クレーの絵の印象から作曲したピアノ組曲「クレー」、NHKスペシャル「映像の世紀」のテーマ曲「パリは燃えているか」がある。
2010年にピアノ四重奏団『「加古隆クァルテット」を結成。
作曲家・ピアニストとして活躍を続け、演奏家としての音色の美しさから「ピアノの詩人」とも評される。
2023年はパリでのデビューから50周年となり、記念アルバムとして自選映像音楽集「KAKO DÉBUT 50」を発表。
2025年公開された映画『雪の花』(小泉堯史監督)の音楽を担当。


『加古隆 ピアノソロ・コンサート2026』

【福島公演】
▼4月11日(土)
けんしん郡山文化センター 中ホール
【宮城公演】
▼4月12日(日)
仙台市太白区文化センター 楽楽楽ホール

Pick Up!!

【大阪公演】

チケット発売中 Pコード:314-047
▼4月18日(土) 15:00
住友生命いずみホール
全席指定-8800円
※未就学児童は入場不可。
※販売期間中はインターネット販売のみ。1人4枚まで。チケットの発券は、3/18(水)朝10:00以降となります。
[問]キョードーインフォメーション■0570-200-888

【福岡公演】
▼4月19日(日) FFGホール
【愛知公演】
▼4月25日(土) しらかわホール
【東京公演】
▼5月2日(土) サントリーホール 大ホール
【北海道公演】
▼5月9日(土)
札幌コンサートホールKitara 小ホール

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