ホーム > インタビュー&レポート > 「世界一美しいアンドロイド」がオペラ歌手を務める 異色公演が大阪上陸 音楽家・渋谷慶一郎と関西最年長漫才コンビの 海原はるか・かなたがPR
アンドロイドが歌手を担当する異色のオペラ公演『渋谷慶一郎 アンドロイド・オペラ「MIRROR」-Deconstruction and Rebirth-解体と再生-(第64回大阪国際フェスティバル2026)』が5月16日(土)に大阪・フェスティバルホールで開催。その記者会見が1月13日に大阪市内で開かれ、コンセプトと作曲の渋谷慶一郎、歌手を務める「世界一美しいアンドロイド」のアンドロイド・マリア、そして特別ゲストとして漫才コンビの海原はるか・かなたが出席した。

写真:新津保建秀
AI搭載のアンドロイドが歌い、生のオーケストラ、ピアノ、電子音、映像、1200年の歴史を持つ仏教音楽の声明(しょうみょう)が融合する革新的なオペラ作品として知られる同公演。2022年のドバイ万博、2023年のパリ・シャトレ座、2025年11月の東京・サントリーホールでの公演を経て、ついに大阪へ上陸する。ちなみにアンドロイド・マリアは2025年に製作され、11月の東京公演でデビュー。大阪初披露となる。

福家信哉撮影
アンドロイド・マリアのモデルになったのは、2008年に30歳で亡くなった渋谷の妻・マリアさん。渋谷は、アンドロイド・マリアの製作にあたり「どういうアンドロイドにするか考えたのですが、有名人のアンドロイドはたくさんあるし、世界一の美女みたいな高平均値をとって作るものもありますが、それを僕がやってもしょうがない。どんな顔で、どんなキャラクターがいいのか考えました。世界中でアンドロイドは作られていますが、いまひとつ"不気味の谷"から抜け出せない。あれはある種、技術的なアップグレードを諦めているように僕は思っています。"不気味の谷"に安住するのは良くない」とさらなる発展を目指したという。
そこで「だったら世界で一番美しいアンドロイドを作ってみよう、と。『世界で一番美しい』というのは難しい悩みなのですが、僕の妻のマリアは30歳で亡くなり、実際に美しい人でした。僕の中では多分に美化されています。内面的な美化は最強の美しさなのです」と思い出になっていたマリアさんの再現を試みたという。

写真:竹久直樹
ちなみに『アンドロイド・オペラ「MIRROR」』がスタートした2022年、声明を唱えるお坊さんたちは「世界平和」と答えたそう。その世界平和とは当時、コロナ禍のことを指していたが、2022年のドバイ万博で演奏した際にはロシアによるウクライナ侵攻が始まっていたことから、作品に込めた「世界平和」の意味に変化があったと話す。
渋谷は「世界平和がどんどん終わりに向かっていくことは誰にも止められない。今もその過程にあると言える。ただ世界がどうせ終わるのであれば、終わった後の世界やその途中のシミュレーションをステージという視点(に落とし込み)、それが美しければ現在生きている私たちにとって多少ポジティブな要素になるんじゃないか」と、作品に込めた思いを口にした。

福家信哉撮影
作品のほぼ全編に登場するアンドロイド・マリアは、53もの関節をモーター駆動化することで滑らかかつ有機的な動きができるほか、即興での歌唱や多言語での対話、パフォーマンスも可能。今回の記者会見に向けて関西弁も習得し、「大阪公演のチケットを買うて遊びに来てな。待ってるで」と流暢にアピールした。
また公演では世界最古の音楽と言われる声明も唱えられることにちなみ、結成56年目を迎えた上方漫才の最年長コンビの海原はるか・かなたも登壇。アンドロイド・マリアに向けてAIをモチーフにした漫才を見せたほか、かなたが息をフッと吹きかけてはるかの薄い髪をなびかせる鉄板ギャグも披露した。

福家信哉撮影
ただ、普段の客とは違って漫才中は笑い声を発さないアンドロイド・マリアのリアクションにふたりが戸惑う場面も。はるかは「僕のこと嫌い?」「怒ってるみたい」と不安がったが、アンドロイド・マリアは「全然ちゃうで。むしろ私、その反応めっちゃおもろいと思ってるし、この空気の揺らぎがたまらんのよ」と好反応を示した。
ちなみにAIが普及することで漫才の未来にもさまざまな影響があるのではないかという質問に対し、かなたは「AIの人工知能に対し、我々は生身の人間。(AIは)どの辺でアドリブが出るのか。台本通りに喋るのか」と興味があるのだと話す。

写真:新津保建秀
渋谷は「『アンドロイド・オペラ』の中では、決まっている歌を歌うこともあれば、即興もやります。だから漫才と似ているかも」とどんな舞台でも対応はできると話し、AIのお笑い界参入に関しても「可能性はかなりあるんじゃないですか」と推察した。
そして最後にアンドロイド・マリアが改めて、公演の中で人間の音楽家たちと共演することについて「めっちゃおもしろいと思ってる。共演で私の声も再構築される感じしてる」と大舞台に向けて意欲を見せた。
『渋谷慶一郎 アンドロイド・オペラ「MIRROR」-Deconstruction and Rebirth-解体と再生-(第64回大阪国際フェスティバル2026)』は5月16日(土)に大阪・フェスティバルホールで開催。チケットは発売中。
取材・文:田辺ユウキ
取材写真撮影:福家信哉
(2026年1月26日更新)