ホーム > インタビュー&レポート > 『第43回 サントリー1万人の第九』 大阪城ホールに集った1万人の合唱団が 力強い歌声とハーモニーを届け “1万人で歌を贈る日”に!
12月7日、大阪城ホールで師走恒例のイベント『サントリー1万人の第九』が開催された。1983年に始まった世界最大規模の合唱コンサートは今年で43回目を迎え、世界的指揮者の佐渡裕が27回目となる総監督・指揮を務めた。

2025年は、終戦から80年、そして阪神・淡路大震災から30年という、平和と感謝を深く考える重要な節目の年であり、「1万人で歌を贈る日にしよう」をテーマに開催。日本全国47都道府県より参加した6歳から98歳の1万人の合唱団が、力強い歌声とハーモニーを 会場に響かせた。司会は俳優の松岡茉優とMBS・三ツ廣政輝アナウンサーが務め、第1部では太鼓芸能集団 鼓童が「大太鼓」「結(ゆい)」を披露。そしてオーケストラと太鼓で「いのち第6楽章」を演奏した。


また、プロ野球セントラル・リーグ優勝の阪神タイガース・小幡竜平選手が会場にサプライズで登場し、1万人の合唱団にエールを送る一幕も。そして歌手の一青窈が、「耳をすます」を歌い、佐渡裕総監督の指揮とオーケストラの演奏で「もらい泣き」「アレキサンドライト」を披露し、世代を超えて愛されているヒット曲「ハナミズキ」を1万人の合唱団とともに、歌いあげた。


第2部は、佐渡裕総監督の指揮で、ベートーヴェンの「交響曲第9番」の第1楽章、第2楽章、第3楽章の演奏が繰り広げられた。ここで、俳優の蒼井優による"よろこびのうた"の詩の朗読があり、その後、クライマックスの第4楽章の演奏が始まると、1万人の歓喜の歌声が響き渡り、会場は深い感動に包まれた。

この模様は、12月20日(土)午後4時から全国ネットの特別番組として放送される。
©MBS /サントリー1万人の第九
公演終了後の出演者コメント
【総監督・指揮 佐渡裕】
今年は本当に様々なことがありました。僕が現在住んでいる兵庫県で起こった阪神淡路大震災から30年、また4月の大阪・関西万博では初日に、しかも野外で「1万人の第九」を発信することができました。「1万人の第九」は以前から世界に誇れる素晴らしい取り組みだと思っていましたが、万博という場で発信ができたことは、多くの方にその魅力を届ける大きな機会になったと感じています。さらに、今年は戦後80年という節目の年でもあり、これまで知らなかった多くのことに触れる機会がありました。世界では今もなお戦争が続いており、その現実を深く考えさせられる一年にもなりました。そのような中で、阪神タイガースの優勝は本当に嬉しい出来事でしたし、ワールドシリーズの盛り上がりを見て、スポーツの持つ力を改 めて感じました。音楽やスポーツのように、形として残るものではなくても、人の心を豊かにすることができる。そうした仕事に自分はついているのだと、強く実感しました。
また、今年は特別な年ということもあり、超強力な4人のソリストをお迎えし、本当に満足のいく内容になりました。合唱団のレベルも年々上がっており、今年は本当にピークに達したのではないかと思うほど素晴らしい出来でした。多くの方に音楽の面白さを知っていただきたいという思いがあり、総監督として第1部からどのように構成していくかには責任を感じています。今回、一青窈さんにご出演いただく決断をし、今日その素晴らしい歌声を届けていただけたこと、そして鼓童のみなさんによる圧巻のオープニングでスタートできたことも含め、「第九」を通して、音楽の面白さを生み出せた第1部になったのではないかと感じています。
そして、今回初めての試みとして、朗読を第九の中に取り込みました。今までであれば第九の第1楽章の前に行っていたのですが、歌詞の内容をより直接お客様に知っていただきたいと思い、第3楽章から第4楽章へ入る直前に組み込む形にし、第3楽章が終わった後に、蒼井優さんには舞台へ上がっていただきました。非常に緊張感のある場面だったと思いますが、今年の状況、世界の状況、そして一人ひとりの愛情のあり方など、さまざまな思いを込めて、心に深く響く朗読を披露してくださいました。これはとても大きな効果があり、これまでドイツ語の歌詞を必死に覚えてきた合唱団の皆さんにとっても、「自分たちはこういう思いを歌うのだ」という気持ちを新たにする機会になったと思います。また、合唱を口ずさみながらご覧になっていたお客様も、「自分もその一員なんだ」と感じていただけたのではないでしょうか。本当に素晴らしい朗読でした。総監督 として、すごくハッピーで、満足のいく公演になりました。ありがとうございました。
【司会 松岡茉優】
今回は少し落ち着いて、冷静に見ることができました。そこで、信頼とか尊敬というのは、目に見えるものなんだと感じました。去年は、私は感動するばかりで、心が震えて、涙が出て、それは今年も同じなんですけど...感動するばかりで帰ってしまったんですが、今回合唱団の方々お一人お一人のお顔を拝見していたら、当然ですが、佐渡さんを見ていらっしゃいますよね。その目線に、信頼と尊敬が宿っていて...。これは、概念じゃなくて、目に見えるものだったんだって、本当に感動しました。
オーケストラの皆さんも、そしてあの鼓童さんが入られた時も、一青窈さんの演奏の時も、やはり、佐渡さんが中心にいて、皆さんが絶大な信頼を持って佐渡さんを見つめているっていう、この構図そのものが、平和で美しくて、まさに歌を送る日にふさわしく、素晴らしい光景を目の当たりにしました。
『1万人の第九』大好きです。ありがとうございました。
【朗読 蒼井優】
私は初めて参加させていただいたのですが、お客さんも含めると1万人を超える人がいて、この人数で1日限りの作品を作るというイベントで、最初は1万人以上の皆さんの前で詩を朗読するのはとても緊張するなと思っていました。でも、「1万何千人っていう 仲間がいるんだ」って気付きました。
私が読ませていただいた『よろこびのうた』という詩の内容に、そして一青窈さんの歌を聞いて背中を押されました。
私が今回目指していたのは、1万何千人の前で詩を読ませていただくけれども、1人の人に向けて届くものにしたい、ということでした。
一青窈さんってお客さんが1万や何万人いようが、1人しかいらっしゃらなかろうが、多分同じ愛情、同じ祈り、同じ願いを込めて、きっと歌われるんだろうなと思いました。その姿を見て「私が目指すところはあそこだぞ」っていう思いを持って、今日は読ませていただきました。ありがとうございました。
【ゲストアーティスト・歌手 一青窈】
「『ハナミズキ』ってどうやったらうまく歌えるんですか?」と聞かれることが多いのですが、今回一緒に歌った高校生の子たちのようなまっすぐな心で歌うのが正解だと思いました。
「うまく歌を歌おう」というより、例えば「大好きな人に好きと伝える」や「いま私は悲しいんだというのを伝える」というような「伝えたい」っていう気持ちが大事なんじゃないかなと思いました。
今日は、佐渡さんの指揮で感情の渦がほんと生き物みたいに、会場中をうねっていて、それを浴びた瞬間に寿命が100年ぐらい伸びた気がして、すごく幸せな気持ちになりました。
佐渡さんは、このイベントを毎年やってらっしゃるので、世界一の医者なんじゃないかなと思うぐらいでした。それと同時にずっとずっと続けていってほしいなと、思いました。
参加させていただいて非常に光栄でした。ありがとうございました。
(2025年12月 8日更新)
放送日時:12月20日(土) 午後4時00分~午後4時54分
ネット局:MBS・TBS系全国28局ネット
出演:佐渡裕、松岡茉優、太鼓芸能集団 鼓童、一青窈、蒼井優 ほか