ホーム > インタビュー&レポート > 「煌めくようなダンスの情景を想像して聴いてほしい」 「高雅な響きを求めて」をテーマにショパンとラヴェルを演奏 福間洸太朗(ピアニスト)インタビュー
──ショパンとラヴェルの組み合わせはユニークですね。
私もこの2人の作曲家だけでリサイタルを行うのは初めてです。今年はラヴェルの生誕150年にあたり、年の初めから「高雅で感傷的なワルツ」を弾こうと決めていました。リサイタルのテーマもこの曲にちなんでいます。"高雅"の響きのイメージはフランス的な色彩感、そして軽やかで凛とした清らかさ。スパンコールのような華やぎでしょうか。ラヴェルの作品は高貴なショパンの曲にぴったりだと思います。今回は2人の作品からマズルカ、ボレロ、パヴァーヌなど宮廷舞曲から農民の踊りまで数々の舞曲を演奏しますのでさまざまな"舞"の情景を想像しながら聴いてほしいですね。また、踊りでない曲についてですがショパンのスケルツォ第2番は私が中学3年で弾いた思い出の曲でもあり今回久しぶりに取り上げます。
──ラ・ヴァルスはご自身の編曲版ですがアレンジの際に重視している点は?
テーマ性のあるプログラムを組む時に自身で編曲した作品を入れることがあります。今回のラ・ヴァルスも同様です。編曲するときに大切にしているのは作曲家の意図をリスペクトすること。基本的に原曲の調性やハーモニー、主要なモチーフはそのまま生かして、所々にピアニスティックな装飾を入れる程度にとどめつつピアノで弾く醍醐味をお客様に感じてもらえればと思っています。ちなみに私はヨーロッパで貴族の館のサロンで弾く機会もあるのですが、ラヴェルの作曲メモにあるようにラ・ヴァルスをシャンデリアの光輝くような空間で弾くと、臨場感がありテンションが上がりますね。ザ・シンフォニーホールにも美しいシャンデリアがあり、まさに高雅な雰囲気でこの作品にぴったりの空間だと思います! このホールでこれまでリサイタルをはじめとして室内楽やオーケストラと共演など多くの経験がありますが、ステージに上がるたびに響きの心地よさと楽器の品質に感銘を受けています。
──独自の配信コンテンツもピアノファンの間で評判ですね。
普段なかなか取り上げられない珍しい作品を紹介する「レア・ピアノミュージック」という演奏会シリーズをプロデュースしています。2020年7月のコロナ禍で始め、初めは毎月行っていましたが、今は年に6回のペースでそのうち5回は事前収録で私のYouTubeで配信、年に1回ホール有観客公演を行い、お陰様でもうすぐ第40回を迎えます。若手から大御所まで国内外の素晴らしい演奏家が出演され、演奏会の1ヶ月ほど前には出演者とのプレトーク生配信をお届けしているので、ぜひご覧いただければと思います。演奏活動との両立は大変なこともありますが、幸いチームやご協賛・ご協力いただける方にも恵まれ、今では私にとって大切なライフワークとなっています。
取材・文:城間 勉(音楽ライター)
(2025年10月27日更新)