ホーム > インタビュー&レポート > 神戸文化ホール開館50周年記念 ヴェルディ《ファルスタッフ》上演
神戸文化ホールは今年12月21日(土)、開館50周年記念事業のひとつとしてヴェルディのオペラ《ファルスタッフ》を上演する。8月13日には神戸市内で制作発表記者会見が行われ、神戸市混声合唱団の音楽監督で今回の指揮を務める佐藤正浩、演出の岩田達宗、ファルスタッフを歌うバリトンの黒田博ほかが出席した。神戸市はプロの管弦楽団と合唱団を持つ全国でただ一つの自治体。本公演ではその強みを活かし、両団体の共演のみならず主要キャストに合唱団の現役メンバーや出身者を迎え「神戸文化ホールオペラ」と銘打った同ホール初の本格オペラ制作に臨む。
「今回の企画のユニークな点は神戸市混声合唱団が主体であるということ。合唱団が主体となってオペラを創った例は過去には無いと思います。私自身、音楽監督就任当初はヨーロッパや日本の伝統的な合唱音楽を中心にやっていくつもりでオペラは少し触れる程度と考えていたんですが、次第に団員のオペラに対する高い見識や能力が見えてきましたし、神戸にはオーケストラもホールもある。ホール50周年を機に取り組んでみようと思いました」。佐藤正浩はそのように語る。就任から4年、機は熟したという思いのようなものがその口調に滲む。
演出の岩田達宗はこの作品を、男性優位のヨーロッパ文化が呪いのように抱え込んだ"対立"という概念を女性の力が乗り越えていく物語と語る。「殺し合いやいがみ合い、そして戦争というものが今も世界にあり続ける中で、これはヴェルディが100年以上も前に到達していた1つの回答だと思います。人類全体が対立を乗り越えて平和な世界を目指す大切さを神戸の街から発信できれば」。さらに客演の黒田博が「喜劇的人物であるファルスタッフの中にある悲しさとか苦しさのようなものまで演じることができればうれしい」と存在感を示したのに続いて、神戸市混声合唱団のメンバー、OGを含む10人のキャストがそれぞれの抱負を披露。会見は一気に熱を帯びた。記者による質疑応答の終盤、改めて合唱団を中心としたオペラの聴きどころを問われた佐藤は「『ファルスタッフ』はヴェルディが人生の最後に書き上げた、彼のどの作品とも違うフレッシュなオペラ。その魅力はわれわれだからこそ表現できると思う」と答え、会見を締めくくった。本番への期待が募る刺激的な会見だった。
■12月21日 (土)14:00開演(13:15開場)
神戸文化ホール 大ホール
■チケット発売中 Pコード:276-746
S席-10,000円
A席-8,000円
B席-6,000円
U25(25歳以下)S席,A席,B席,1,000円
■問い合わせ
神戸文化ホールプレイガイド:078-351-3349
取材、文/逢坂聖也(音楽ライター)
(2024年8月28日更新)
【作曲】ジュゼッペ・ヴェルディ
【台本】アッリーゴ・ボーイト
【原作】ウィリアム・シェイクスピア
全3幕 イタリア語上演 日本語字幕付き
【指揮】佐藤正浩
【演出】岩田達宗
【ファルスタッフ】黒田博
【フォード】西尾岳史
【フェントン】小堀勇介
【カイウス】谷口文敏
【バルドルフォ】福西仁
【ピストーラ】松森治
【アリーチェ】老田裕子
【クイックリー夫人】福原寿美枝
【ナンネッタ】内藤里美
【メグ】山田愛子
【合唱】神戸市混声合唱団
【管弦楽】神戸市室内管弦楽団
【美術】松生紘子
【照明】原中治美
【衣裳】下斗米大輔
【音響】平井英一
【振付】河森睦生
【副指揮】柴愛/森脇涼
【コレペテトゥア】
高崎三千/関口康祐/前川裕介
【合唱指揮】青木耕平
【舞台監督】菅原多敢弘
【演出助手】唐谷裕子/薮川直子
【舞台監督助手】
岩崎由香/角田奈緒子/松岡敬太
【制作協力】株式会社ザ・スタッフ
【合唱】神戸市混声合唱団
【管弦楽】神戸市室内管弦楽団