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ピアソラのスピリットを受け継ぐバンドネオン奏者が
クラシックのトッププレイヤーたちと贈る
”三浦一馬キンテート(五重奏団) 熱狂のタンゴ”

タンゴ界に革新をもたらした音楽家、アストル・ピアソラ。その精神を受け継いだ若きバンドネオン奏者、三浦一馬が、この春、自らのキンテート(五重奏団)を率いて兵庫県立芸術文化センター大ホールに登場する。メンバーはいずれも現代のクラシック音楽界を代表するプレイヤーたち。ピアソラの音楽に大きな愛情を寄せる仲間たちでもある。血をたぎらせるような熱いリズムから、切ないまでの優しさを秘めたメロディまで聴く者の心を震わせる宝石のような楽曲の数々。待望のオール・ピアソラ・プログラムに挑む三浦一馬に聞いた。

三浦一馬の現在の重要な活動の1つが、この三浦一馬キンテートだ。この編成はピアソラが生涯にわたって追求した形態でもある。バンドネオンとピアノ、ヴァイオリンとコントラバス、それにギター。ピアソラの魅力を追求する活動だと三浦は語る。

バンドネオンを弾くからには、やはりこの編成を究めてみたいという思いでスタートしたキンテートです。メンバーは必ずしも固定ではないんですが、ほぼ現在の5人。皆さん、ピアソラへの深い愛情をお持ちなので演奏していてすごく楽しいんですよ。弾いても弾いても音楽の魅力は尽きないし、まだ演奏していない作品もたくさんあるので、これからも続けていきたいです。実はこの五重奏団と並行して東京グランドソロイスツ(TGS)という活動も行っているんですが、TGSは小さなオーケストラのような編成で、これまで僕がピアソラから学んだものをベースに僕自身が考える、これからのピアソラの音楽を演奏していこうというもの。対してこのキンテートはピアソラの楽譜に忠実に、奏法などもピアソラ当時のスタイルを守りつつ演奏しようというものです。よりピアソラのストレートな魅力を感じていただけるのはこちら、と言えると思います。

傍らに愛器であるバンドネオンを置きながらのインタビュー。ピアソラとこの楽器を語る三浦の口調は自然、熱を帯びる。三浦とバンドネオンの出会いは10歳の時。小学生の三浦少年がたまたま眺めていたテレビから、それは訪れたという。

「N響アワー」っていうNHKのクラシックの番組でピアソラの特集をやってたんです。そこでバンドネオンが紹介されていて、子ども心に「なんだ、この箱みたいな楽器は?」って思ったわけです。当時、僕は機械が大好きな結構なメカ少年で、この楽器のいろんなギミックにすっかり心を奪われてしまったんですね。まずボタンの数がすごく多い。どうやって鳴らすんだ?って思いました。それから昔のカメラみたいな大きな蛇腹。楽器の表面のきれいな装飾。そういった機械仕掛けの雰囲気にまず惹かれました。でも、多分それだけじゃなかったんですね。何かすごく「大人の音楽」を、この楽器の音色とピアソラに感じたというのが、ほんとのところだったような気がします。すごく変な言い方ですけど、僕は早く大人になりたかったんです。憧れと言えばいいのかな。当時自分が思い描いていた、何か漠然としたものの輪郭がピアソラの音楽を聴いた時に見えたような感覚があったんですよ。

その憧れは、彼を生涯の師であるネストール・マルコーニとの出会い、そしてアルゼンチン留学へと導いた。2012年にキンテートを結成。旺盛な活動を開始する。2021年(生誕100年)、2022年(没後30年)と続いたピアソラ・イヤーの締めくくりに、三浦一馬は「ピアソラ:スタンダード&ビヨンド」というCDをリリース。改めてピアソラの素晴らしさと向き合った。こうした勢いをそのままに伝える今回のステージだ。

ピアソラはワールドワイドな国際人で、クラシックを学びながらもジャズやロックや現代音楽までも吸収してそのエッセンスをタンゴの中に組み込んで行った音楽家です。その魅力は一言ではとても言い表せませんが、聴いた人すべてを虜にしてしまうところ、とは表現できると思います。このキンテートで、僕はいろんなものピアソラという巨匠からある意味、盗むようにして教えてもらいました。それをこのメンバーで演奏しているといまだにゾクゾクするような瞬間があるんですよ。それはもう、思い残すことはないや、と思うくらいのすごい瞬間で、いつも僕らはそこを目指してコンサートをやるんです。僕らだけじゃなく、お客さまにもその瞬間に立ち会っていただければ最高ですね。

兵庫県立芸術文化センターの大ホール(KOBELCO大ホール)では初めてのコンサートになります。小ホール(神戸女学院ホール)では何回も演奏していますが、今回はさらにたくさんのお客さまということで、初めてこのキンテートというもの、あるいはピアソラの作品に触れる方もきっと多いと思います。ですから初めての方でもお楽しみいただけるし、知っている方にも、さらに一歩踏み込んで楽しんでいただける曲を織りまぜています。ぜひ多くの方に聴いていただきたいと思っています。




(2024年1月 9日更新)


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三浦一馬キンテート 熱狂のタンゴ

●3月27日(水)
兵庫県立芸術文化センター 
KOBELCO大ホール
15:00 開演 ( 14:15 開場 )
全席指定-4000円(消費税込み) 

【曲目】
■1部
リベルタンゴ
デカリシモ
オブリビオン
スール:愛への帰還
エスクアロ(鮫)
レビラード
ブエノスアイレスの夏
■2部
現実との3分間
悪魔のロマンス
アディオス・ノニーノ
ミケランジェロ’70
天使のミロンガ
タンガータ

【出演】
三浦一馬(バンドネオン)
石田泰尚(ヴァイオリン)
黒木岩寿(コントラバス)
大坪純平(ギター)
山田武彦(ピアノ)

【問い合わせ】
キョードーインフォメーション
      :0570-200-888

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PIAZZOLLA :
STANDARD & BEYOND

発売中[UHQーCD]¥3,300(税込)
日本コロムビア

1.ルンファルド
2.天使のミロンガ
3.ミケランジェロ'70
4.悪魔のロマンス
5.カリエンテ
6.天使のイントロダクション
7.レビラード
8.オブリビオン
9.ムムキ