ホーム > インタビュー&レポート > 「いろんなジャンルを詰め込んで 音楽のテーマパークを目指してます!」 ケーシーハシモトインタビュー
クラシック音楽を使って一般の人が心から楽しめる
面白いエンターテインメントを作ろうと思ってやっている
――ケーシーさんはテノール歌手で落語家もされていて、とてもユニークな経歴ですね。
「ベースはクラシックのテノール歌手なんですが、僕が落語を始めたのはドイツの音楽院に留学してる時なんです。ドイツ語の生活がちょっとしんどくなってきて、たまたまYouTubeで落語聞くようになったんです。それから3年間のドイツ留学中、ずっと落語を聴いてたので歌が上手くならずに、落語がうまくなりました(笑)。帰国してから、ひょんなきっかけで桂文枝師匠に出会わせていただきまして。内弟子ではなく外弟子という形にしていただいて、自分がコンサートで落語する時とか落語会する時は稽古つけていただいています。自分の新作落語の中でオペラを歌うこともあるし、全て音楽を中心としたエンターテインメントの中でパフォーマンスをさせていただいてます」
――プロフィールによると、中学生の時は競馬の騎手を目指していて、高校生ではラグビーをされてたそうですね。
「そうなんです。中学生の時はずっと競馬の騎手になりたくて、騎手になるためにずっとダイエットしてたので体重が38キロやったんですよ。栄養失調で2回倒れるぐらい痩せていて。競馬学校の騎手課程を受験して最終試験まで残ってたんですが、最終で落ちてしまったんです。それで、高校生になったら、全然違うことしようと思ってラグビー部に入りました。僕、めちゃくちゃ足が速かったんで、ラグビーで大学推薦取ろうと思ったんですけど、やっぱ上には上がいるし、僕の体格では無理でしたね。それから何もやることがなくて...、家族会議が開かれて、親父に"お前これからどうすんねん?"と。大学でも行こうかなって言ったら、"お前が行ける大学どこにあんねん"言うて、自分が考えたことはことごとく否定されまして(苦笑)。昔、小学校の時に習ってたピアノの先生に相談にしたら、 "歌うことは好きだよね?"って音大をすすめられたんです。それで、音大に進学しました」
――小学生の時はピアノと一緒に声楽も習ってたんですか。
「声楽は高校3年生から始めたので、最初はめちゃくちゃ下手でした。音大に入ると、やっぱりみんなめっちゃ上手いんですよ。僕だけ下手だから歌うのが嫌で...。練習室でも人の足音が聞こえたら隠れたりしてましたが、大学3年生の時にドイツリートっていうドイツ歌曲に出会ったんです。ドイツリートはどっちかというと内向的な音楽なので、ものすごい自分にマッチしたんですよ。本来の性格はそっちなんですよね(笑)。これだったら、ちょっと音楽を続けて勉強してみてもいいかもなって思って、それから人前で歌うことも積極的にするようになって、あれよあれよという間に、今までずっと音楽をやってます」
――最初から音楽一筋ではなく、いろんな紆余曲折を経て、音楽にたどり着いたんですね。
「そうですね。ただ自分は競馬の騎手になりたかったり、ラグビー選手になりたかったりして、音楽にぜんぜん関係ない世界で生きてきたので。大学に入って初めてオペラを見た時、信じられないぐらい面白くなかったんですよ(笑)。でも、勉強していく中で、クラシックとかオペラが本来はすごく素晴らしいものだっていうことは理解できるようになりました。でもそれが一般のお客さんに面白いものとして提供できてないなと。じゃあ、自分がもっと勉強して、クラシックの音楽使った面白いエンターテインメントとしてもっと間口を広げて発信していこうと思ったんです。それが今もずっと続いてるような感じだと思います」
――クラシックにもっと現代的な要素を入れたものにしたかったと?
「そうですね。クラシックはクラシックで素晴らしいので、クラシック音楽を使って、一般の人が心から楽しめるエンターテインメントを作ろうと思ってずっとやってます。クラシックだけやってても、それを毛嫌いする人はいるし、ポップスはポップスですごく素晴らしいので。クロスオーバーっていうジャンルがあるように、ポップス好きなお客さんにも、クラシック好きなお客さんにも、どっちも楽しんでもらえるように掛け合わせた音楽をするようになりました」
――その中には昭和歌謡などの要素も入っていますか。
「コンサートとか、その催しものによって全部プログラム変えるので、お客さんのターゲットの層が昭和歌謡だったら、それを積極的に取り入れます。その場所その場所にいらっしゃる方々に合わせたプログラミングをずっとしてるので、昭和歌謡ももちろん歌いますし、演歌もJ-POPもリクエストがあれば歌います。今、作ってる楽曲もどっちかというとJ-POPとクラシックの掛け合わせみたいな感じで、前半ちょっとポップスで後半クラシックになったりする曲も作ってます」
オペラの世界から飛び出して活動するために
オリジナル曲を制作
――You TubeやSNSで公開されている『タフマン』は思わず踊り出したくなるような曲調ですね。
「あれは2番目に新しいオリジナル曲で『威風堂々』が1番新しいと思います。『タフマン』を作ったのは2021年ぐらいで、全国のヤクルトレディさんの大会でずっと歌ってまわってたんですよ。僕の肩書きの1つが企業営業歌手で、The Party Orchestraというのもそのために作った団体なんです。企業パーティーとかエンタメショーに特化したチームですね。企業パーティーって本当にいっぱいあって、演奏に行く時はその会社のための新曲を用意するんです。『タフマン』はヤクルトさんのために作った曲ですが、そろそろ外に出してもいいかなって思って。今年になってミュージックビデオを録りました」
――コミカルなストーリー仕立てで凝った展開ですよね。ケーシーさんも出演されていてダンスシーンもあります。
「僕の踊りはネタとして楽しんでいただけたらと(笑)。『タフマン』はヤクルトレディーさんたちがライブを聞きながら一緒に踊れるようにあの振りも作ったんです。できたらこれからTikTokにも出していこうかなと」
――ちなみにあのMVはどこで撮影されたんですか。
「大阪の十三のキャバレー、グランドサロン十三です。 80代の現役コンパニオンさんが働いていらっしゃいます。素敵ですよ!」
――そうなんですね。最新曲の『威風堂々』はどのような目的で作られた曲ですか。クラシックの壮大さとポップな疾走感があって気持ちが煽られます。
「『威風堂々』は今までやってきたクラシックの要素を取り入れながら、イイとこ取りをして作ろうと思った曲なんです。クラシックの歌手とかオペラの歌手って、基本的に(歌い手の)オリジナル曲がないんですよ。オペラって200年300年前のものを再現して今も歌ってるものなので、すごい昔のものなんですよね。でも、こうやってオペラの世界から飛び出して活動していくには自分のオリジナルが必要だなと。いろんなパーティーのアンコールで使うことを想定して盛り上げるための曲として作りました。この前やった時も全員スタンディングで、うわあ...と思ったら、元から立食パーティーでした(笑)」
プロフェッショナルなエンターテイナーが揃う
The Party Orchestraはオールジャンル可能!
――さきほどもお話しされていたThe Party Orchestraはどのようなメンバーで構成されているんですか。
「大阪と東京中心にメンバーがいるんですけれども、東京にもチームがいてトータルで60人ぐらいメンバーがいます。オペラ歌手、楽器の演奏者、テーマパークダンサーとか、いろんなジャンルのアーティストが集まって、企業のテーマに合わせたショーをするために毎回新作を作っています」
――具体的にどんなパフォーマンスを?
「いろんなパフォーマンスがあります。本当にオールジャンルのミュージシャンがいて、プロフェッショナルなエンターテイナーが揃ってるので。ダンスだけのショーもあれば、楽器だけのショーもあるし、歌だけのショーもあるという感じで、どんなセッションでもオールジャンル可能です」
――神戸朝日ホールオープニングシリーズで9月18日に開催される『ケーシーハシモト&The Party Orchestra~ザッツ・エンターテインメント!~』はどのようなステージを目指していますか。
「聞き馴染みのあるクラシックはもちろん、ミュージカルの曲もダンスナンバーもあるので、いろんなジャンルを詰め込んで、音楽のテーマパークみたいな感じを目指してます。家族のお出かけのついででもいいですし、デートコースの中盤でもいいし、本当に片肘張らずに遊びに来てもらえるようなコンサートになればいいなと思ってます!」
――気になるプログラムの内容は?
「僕たちのこと知らない人たちに、僕たちの名刺として観てもらいたいような内容になっています。今まで僕とThe Party Orchestraがやってきた色んなパーティー演奏でのプログラムを、パーティーに特化したものではなくて、一般のオーディンスの皆様が楽しんでいただけるように再アレンジしてお届けします。幕開けはサプライズ感のあるような演出で始まるかもしれませんね。(開演前の)開場している時から楽しんでいただけるようなショーになると思います。すべての方の琴線にどこかは触れると思いますし、笑いたい方は笑えるところもあると思います。大きな舞台装置や特殊装置があるわけではないけれど、一流のアーティストたちが身ひとつで表現して、どの角度から見ても楽しめる音楽エンターテイメントになっています。クラシック好きの方も、ポップス好きの方も、歌謡曲を好きな方も、ふだん音楽聞かないわっていう方も、どの世代でも、どのジャンルの趣味趣向であっても楽しめるショーケースになってると思うので、ぜひ皆さんに来ていただきたいですね」
Text by エイミー野中
(2023年8月 8日更新)
ケーシーハシモト 橋本恵史
3人の兄を持つ四人兄弟の末っ子。B型。中学生の頃より競馬の騎手を目指すが、最終試験で脱落。高校時代はラグビーに明け暮れ、その後なんとなく音楽大学に進学。劇団四季の一般オーディションに合格するも、スケジュールの都合で辞退。大阪音楽大学音楽学部声楽学科卒業。大阪音楽大学大学院歌曲研究室修了。在学中に関西歌劇団、オペラ『道化師』ペッペ役でデビュー。その後渡独し、ハンブルグ音楽院を修了。『魔笛』タミーノ役は国内外において30公演以上を数える他、多数のオペラにおいて主役から脇役までを演唱する。またミュージカルの分野においても出演が多く、オペラ・歌曲・宗教曲・ミュージカルと、分野を問わず国内外で活躍している。様々なキャラクターを演じ分け、主役から脇役、更には女役まで歌いこなしてしまう貴重なテノールである。特にドイツ歌曲を専門とし、オリジナルの解釈による自作の音楽劇を上演。過去二度の音楽劇リサイタル 『死に取り憑かれた男』『薔薇のリボン』は、どちらもセンセーショナルな成功を収めている。2017年に落語家 六代 桂文枝に弟子入り。歌曲亭文十弁(ぶんとうべん)としても活躍の場を広げる。舞台演出の仕事も多く、オペラ・ミュージカル・ダンス作品の演出、新作オペラの台本制作など、その才能は止まる所を知らない。演出を担当したオペラ「Turandot」は、令和三年度大阪文化祭賞大賞を受賞している。またドイツ留学中に、「世界の学校に音楽を」をスローガンにWorld Music Project を立ち上げ、カンボジアを中心とした途上国の音楽教育の普及に尽力している。2011年より、コンサート『橋本恵史のお愉しみ会』シリーズを開始。クラシックの常識には捕らわれないスタイルで人気を博し、チケットは毎回ソールドアウトを記録し続けている。このコンサートで集められた資金は、NPO法人World Music Projectを通し、すべてカンボジアの音楽教育発展のために充てられている。
チケット発売中 Pコード:246-785
▼9月18日(月・祝) 16:00
神戸朝日ホール
全席指定-4500円
※未就学児童は入場不可、6歳以上は有料。
※販売期間中は1人8枚まで。
[問]キョードーインフォメーション
■0570-200-888