ホーム > インタビュー&レポート > 子どもの感性を育てる超人気オーケストラコンサート 完売必至!いますぐポチッ!
新井:音楽にはロックやポップスなどいろいろなジャンルがありますけれども、子どもの感性を育てるコンサートになぜクラシックの名曲を持ってくるのか。クラシックの名曲って、200年という単位の、桁違いのロングラン・ヒット曲なんですね。何かしらの意味があるからこそ、人間の歴史に残ってきたわけです。それは人間の生活に、そしてお子さんの感性を育てることにも良い作用があると思います。
飯森:前回、満員のオーチャードホールで、親御さんたちがみなさん口を揃えておっしゃっていたのが、子どもたちが退屈するかなと心配していたけれども、寝たりせずに、みんな真剣に聴いていたという意見でした。実際、じつに盛りだくさんなので飽きずに楽しんでもらえると思います。杏さんの司会や茂木さんの解説はもちろんですけど、映像がとても凝っていて、いろんな映像を音楽と同時に楽しめるのがいいという感想もたくさん聞きました。
新井:いろいろな方面から感性を刺激したいですからね。このコンサートを聴いて、音楽に興味を持つ子もいれば、映像に興味を持って、将来映像作家になってみたいと思う子がいてもいいですよね。
飯森:とくに幼稚園ぐらいの子どもって、何に興味を示すかってわからないですよね。音に反応する子、動きに反応する子、人の笑い声に反応する子もいる。いろんな感性があるじゃないですか。それが2時間のコンサートの中で全部体験できて、タイトルどおり、感性をくすぐってくれる。とても貴重だなと思いましたね。
そして今回は、ご自身も子育て中の笑里さんも出演して、非常に楽しみです。うちの下の子と笑里さんのお子さんが同い年の小学生なんです。だから舞台上のわれわれも、客席の親御さんの気持ちがいろいろわかるかなと思っています。
宮本:大人から子どもまで、全員が一緒にクラシック音楽を楽しめる空間って特別ですよね。素晴らしいコンサートに参加させていただけて光栄です。
子供って集中力を保つのがけっこう難しい。このコンサートは、一曲一曲が比較的短めの楽曲で構成されていて、そこはすごく大事だと思います。私自身も幼い頃によく聴いていたのは、やはり短い楽曲でした。そこからだんだん興味が深くなると、交響曲とか、大きな曲を聴いてみようと探していくんですけれども、一気にそこだと、やっぱり体力的にも、集中して最後まで聴くのって難しいですよね。こういうコンサートできっかけをどんどんつなげていけるのは、ほんとうに素晴らしいことだと思います。
新井:選曲は全部、直球ど真ん中の名曲です。構成作家の仕事としては、何も考えていないと言われてしまうかもしれないんですけど(笑)......。
飯森:大丈夫! 言わない言わない。
新井:でも長年やっていて、名曲の力というものをすごく信じているんです。やはり名曲と言われるには理由があって、ほんとうに魅力が詰まっているからこそ残っている。お子さんに最初に聴かせるのはまずこれだというものを、臆せずに選びました。
飯森:大人が「あ、この曲知ってる!」とリラックスして聴ける曲は、やっぱり子どもたちにも体験してほしいし、それがきっかけとなって次のステップに行けるような可能性を見つけたいですね。
温かく愛情に満ちた司会は女優・杏さん
新井:そしてこのコンサートでは、脳科学者の茂木健一郎さんが、名曲を聴く新しい視点を提供してくれます。ありきたりな楽曲解説ではなく、この曲をこんなふうに聴くと、脳のここが刺激されますよみたいな。すごく新しい視点です。
飯森:茂木さんの感覚って面白いよね。
新井:前回は、脳の模型を持ってきて。パカッと中を開いて見せるんですよ。リアルな模型で、ちょっと気持ち悪かったんですけど(笑)。
飯森:平気でやるからね。大丈夫かなと見ていました(笑)。
新井:茂木さんはサービス精神満点。東京と大阪で4公演、絶対に全部違うことをしゃべってくれますから、何が出るかはお楽しみです。
飯森:僕は前回とくに素晴らしいなと思ったのが杏さんの司会でした。子どもたちにしっかりと伝わるような口調で。自分のお子さんたちにしゃべっているような感覚なのかな。それがとても好印象で、すごい方だなと思っていました。
新井:そうなんですよね。子どもコンサートの司会というと、元気よく、「みなさーん! こーんにーちはー!」という感じが多いんですけれども、杏さんはものすごく品が良くて、なおかつ温かみがあって愛情があって。
飯森:小さなお子さんたちにとっても、自分のお母さんが話しかけているような感覚で、彼女の言葉がすうっと入ってきてるんじゃないかなと感じさせるトークですよね。
新井:そう思います。茂木さんが暴走しても、クールに「別に?」みたいな感じだし(笑)。
飯森:動じない。すごいよね。こっちのほうが焦っちゃう。それと前回忘れられないのが、指揮体験コーナーで出てきた子どもが、本番で「やっぱりイヤだ!」と泣き出しちゃったのを、杏さんが抱きかかえて指揮させてあげたこと。手を取って一緒に振ってあげるぐらいならわかるけど......。
新井:ほんと、びっくり! ひょいっと片手で抱きかかえて。
飯森:あれはみんな、うらやましかったと思うなあ。
新井:司会って、もちろんすごく大事なんですけど、やはりテレビとかで見て知っている人が出ているということは、とても大きいと思うんです。何をしゃべるかではなくて、誰がしゃべるかということも大事ですからね。その意味でも、得がたい人材をキャスティングしてくれました。
僕が指揮者を目指すきっかけになったのが《ボレロ》
飯森:今回笑里さんが弾く2曲、モンティの《チャールダーシュ》とエルガーの《愛のあいさつ》って、みんなが弾く名曲だけど、どちらもヴァイオリンのいろんな可能性を表現できる曲だと思うんですね。《チャールダーシュ》なんて、こんなにシンプルな和音の中で、よくこんな面白い曲を書いたなって。だからこそ名曲として残っているわけで。
宮本:そうですね。《愛のあいさつ》も、タイトルどおり愛情を感じられて、心がすごく穏やかになります。私は幼い頃から五嶋みどりさんの演奏でよく聴いていて、こういう曲を演奏できるお姉さんになりたいと思っていたんです。ですから、それを今度は自分が子どもたちのために弾けるというのは、すごく思いがあふれるものがあります。
新井:飯森マエストロも、今回指揮するラヴェルの《ボレロ》には思い出があるそうですね。
飯森:僕は《ボレロ》を聴いて指揮者になりたいと思ったんです。僕の祖父はずっとチェロを弾いていて、ほんとはチェリストになりたかったそうなんです。京都大学のオーケストラでは朝比奈隆先生と同期で、一緒にカルテットをやっていた写真もあるんですよ。3歳の僕は、その祖父のSPレコードでアルトゥール・ルービンシュタインが弾いているチャイコフスキーのピアノ協奏曲を聴いて、ピアノを弾きたいと言い出したそうです。そして10歳の頃。今度はユージン・オーマンディ指揮フィラデルフィア管弦楽団の《ボレロ》に衝撃を受けて、こういう曲を指揮してみたいと思ったんですね。15分間ずっと同じリズムで、2つのメロディが交互に出てくる。これだけでなんでこんなに感動して興奮するんだろうって思って。こういう曲を作曲したい、ではなく、指揮したいと思ったんですね。
新井:今回の客席の中にも、《ボレロ》を聴いて指揮者を目指す子どもがいるかもしれませんよ。
飯森:そうですね。なにかに感動してくれたらいいですね。演奏は僕が音楽監督を務めているパシフィックフィルハーモニア東京。去年から楽団名も変わって一新、今どんどん新しい優秀なメンバーが入ってきているんです。その彼らの共通の意識なのですが、大人の真剣な姿を子どもたちに見せよう、聴かせようと取り組んでくれる。このコンサートに限らず、とにかくつねに最高のパフォーマンスをするんだという思いが、この1年でかなり強くなっているのを感じます。それは裏を返すと、ひとつひとつを成功させていかないと次のコンサートにつながらない、東京にたくさんあるオーケストラの中で生き残っていけないという意識なんですね。オーケストラってそういうことを意外と忘れがちなですけど、それがみんなの中に芽生えてきている。2月のこのコンサートでもすごくいい演奏をしてくれましたけれども、またすごく面白い演奏をしてくれるんじゃないかなと期待しています。
新井:この「子どもの感性を育てるクラシック名曲コンサート」は、ものすごく丁寧に、全スタッフで曲の順番を考え、お話の内容を話し合いながら作っているんですね。オーケストラのメンバー一人一人も、コンサートの意図をわかって演奏してくれる。ですからコンサート全体で、お客さまにまるっとコンセプトが伝わるようにできているんです。
とにかく種をまいておくことは必要
新井:笑里さんは、お子さんに楽器を習わせるにあたって、どんなことを考えましたか?
宮本:私自身はヴァイオリンを始めたのが遅かったんですね。7歳からでした。ヴァイオリンはだいたい、3歳頃から始める場合が多いのです。早い年齢から楽器を触らせることによって、指の動きや脳の反応に良い影響を与えてくれるんだと思うんです。だから私も娘に、3歳でヴァイオリンを弾かせてみたのですが、残念ながら相性が合わず続きませんでした。子どもによって合う合わないがあると思うんですね。でも時間が経って、私が真剣にステージに立つ姿なども見て、すごく興味を示してくるようになって、自分からチェロをやりたいと言って弾き始めました。
飯森:それはすごい!
宮本:本人がやりたくないのに、無理矢理やらせてしまうのはどうかなと思っていたので、すごく良かったと思っています。私の父も、どちらかと言うと、私にはずっと「やめなさい」と言い続けていたんです。甘い世界じゃないから絶対にやめたほうがいいと(※宮本笑里さんの父親は、世界的オーボエ奏者で指揮者の宮本文昭さん。現在は引退)。でも私は自分が興味を持ったのだから、徹底的にやりたいと思っていたので。
飯森:それは大事ですね。
宮本:やっぱり興味があるかないかで、続くかどうかが変わってくると思います。私はそれで何とか長いこと続けられたので、このコンサートがそんなきっかけになったらすごく素敵だなと思っています。
飯森:親や先生が嫌いにさせてしまうこともありますよね。それは悲劇なので、絶対にそうなってほしくない。とくに学校の先生は、音楽の面白さを感じさせる授業をしてほしいと、僕は声を大にして言いたいです。学習指導要領があったりして仕方ないとも思うけれど、工夫していろんなことをやっている先生もいるんですよ。
新井:まず嫌いにさせないっていうのは重要ですよね。
飯森:僕の上の子は今16歳ですけれども、じつは5歳の時にオーケストラの指揮をさせたりしちゃったんですよ。僕が音楽監督だった山形交響楽団の演奏会でカルメンの《前奏曲》を。本番ですよ。主催者がそうさせてほしいと言ったからなんですが、それで一気にクラシック音楽が嫌いになっちゃった。ピアノ弾くのも辛くなっちゃったみたいで。
でも小学校5年生ぐらいの時、お風呂場から、ショスタコーヴィチの交響曲第5番が聴こえてきた。どうしたの?と聞いたら、「これ、かっこいいでしょ」って。やがてそれがショスタコーヴィチの交響曲第11番になったり。難しい曲ですね。そんなのが聴こえてくるようになって。そしたら今度は自分で作曲するようになって。「一度は大嫌いになったけど、最近いい曲に出会って、お父さんの演奏会も聴けるようになった。あの時、お父さんに無理矢理やらされたことも、今は役立ってるからよかったよ。父親としては最低だけど、音楽家として最高だよ」とか(笑)。生意気なこと言うわけですよ。
新井:本人がそう言ってくれるんですね。素晴らしい。どこで目が出るかわからないけれども、とにかく種をまいておくことが必要だと思います。笑里さんも、お嬢様にご自身のコンサートを聴かせてあげたり、一緒に音楽に触れる機会はありましたか?
宮本:そうですね。普段から私や父が真剣に音楽をやっている姿を見てきたので、すごく刺激を受けるみたいです。だからぜひ、子どもをコンサートに連れて行って音楽に触れさせてあげて欲しいですね。小さな子のお母さんの立場だと、どうしても周りに迷惑をかけてはいけないという気持ちが働いて、ちょっとでも泣きそうになったりするとドキドキしちゃう。それがいやでコンサートに行くのを躊躇してしまう方も多いと思うんです。でも勇気を出して、そこをちょっと頑張って前に進んでみると、良い音楽に触れることは子どもにきっといろんな影響与えてくれるし、自分自身にも新しい出会いがあると思うんですね。
飯森:勇気を持って踏み出してくれるといいですね。このコンサートは4歳から入場可能。幼稚園の子どもが客席でちょっとぐらいおしゃべりしたりしても、僕らは全然気にならないですよ。それに、大人が真剣に音楽をやっている姿を見て、しかも演奏がいいと、意外と静かに聴いてくれるんです。今日は泣く子を黙らすような演奏ができたなって(笑)。
宮本:私自身も客席に座って聴きたいようなプログラム。子どもたちが笑顔で、クラシックがそんなに難しくないんだって感じてもらえたらいいですね。どうしても、どこか緊張して聴かなきゃいけないと考えがちなんですけれど、親子で肩の力を抜いて、気楽な気持ちで。でも演奏は真剣。そのバランスもちゃんと考えて制作されているコンサートだと思います。私も今回初めて参加させていただくので、皆さんと一緒に楽しみながら過ごしたいなと思っています。
撮影:源賀津己
文:宮本明
(2023年7月26日更新)
【東京公演】
チケット発売中 Pコード:242-605
▼8月5日(土) 12:30/16:15
東京オペラシティ コンサートホール:タケミツメモリアル
全席指定(大人)-8800円
全席指定(4歳~高校生)-3800円(当日要身分証)
[司会]杏
[ゲスト]茂木健一郎
[独奏・独唱]宮本笑里(vl)
[指揮]飯森範親
[出演]パシフィックフィルハーモニア東京(演奏)
※4歳未満は入場不可。
※チケットは1人8枚まで。
[問]チケットポート■03-6327-3710
チケット発売中 Pコード:242-581
▼8月12日(土) 13:00/16:30
フェスティバルホール
指定席(大人)-8800円
指定席(子ども)-3800円(4歳~高校生、当日要身分証明書)
BOX席(大人)-11800円
BOX席(子ども)-5800円(4歳~高校生、当日要身分証明書)
[司会]杏
[ゲスト]茂木健一郎
[独奏・独唱]宮本笑里(vl)
[指揮]飯森範親
[出演]パシフィックフィルハーモニア東京(演奏)
※4歳未満の入場はご遠慮ください。
※販売期間中は1人1公演6枚まで。
[問]キョードーインフォメーション■0570-200-888