ホーム > インタビュー&レポート > チェロは一番ヒューマンな楽器。 この楽器を通して僕はお客さまにhappyを届けたい。 柏木広樹 チェロ・コンサート “Made in musicasa 2023”
「このコンサートは僕の"ご褒美ライブ"なんです」。そう語るのは公演に先駆けて大阪を訪れた柏木広樹。東京藝術大学在学中の1989年"G-CLEF"としてデビュー。活動歴は30年を超える。作・編曲家としても数々の楽曲を手掛け、多彩な活動を続けてきた。
柏木:やりたいことを全部やりましょう、というライブ。今回は押尾コータロー君がゲストに来てくれます。東京ではほぼ1年に1回のペースで続けているんですが、このライブだけ僕の活動の中でちょっと特殊で、前半はメインの楽器を使って小編成の演奏をお届けして、後半はバンド用のチェロに持ち替えてメンバー全員と一緒に演奏するというスタイルでやっているんです。チェロは構造上、マイクを付けるだけで音を大きくできるものではないので、それぞれの編成に対応した楽器が必要。でもチェリストとしてはステージで2本を弾き分けることが難しいので、なかなかこうしたライブはやらないんです。でもこのステージだけは別。普段やっていることを全部やりますよ、という意味で自分にとってもご褒美ライブなんです。
今年3月にはデビュー以来の盟友ともいうべき葉加瀬太郎、そしてピアノの西村由紀江と2019年に結成したNH&K TRIOの1stアルバム『Adagio』をリリース。録音は彼らが演奏の舞台としてきた八ヶ岳高原音楽堂で行われた。そこには葉加瀬、西村の作品と並んで柏木の「羽根屋」「TODAY for TOMORROW」といった代表曲が新たなアレンジで収められ、魅力を放っている。
柏木:葉加瀬君とは彼がソロになって3年目くらいからかな、もう30年近く一緒にやったり手伝ったりしてます。大学で出会って、その頃から数えると36年にはなりますから不思議な感じもしますね。別々のバンドでデビューして、それが解散したあとある公演で一緒になって「ちょっと手伝ってくれないかな」「ああ、いいよ」みたいな話があって、でそこから「これからずっとやってくれないか」「いいよ」みたいな話になっていったわけです。それで気づいたら30年くらい経っちゃった。NH&K TRIOは今年は5月でツアーが終わったんだけど、八ヶ岳で毎年、夏、やってます。よければこちらも聴いてみてください。
ライブ以外にも活動はさまざまなメディアに及ぶ。2008年の映画『おくりびと』で、主人公、本木雅弘へのチェロ指導と、作中での演奏は柏木広樹の知名度を音楽ファン以外にも広げた。またアニメ『新世紀エヴァンゲリオン』の主人公、碇シンジが弾く印象的なチェロも柏木の演奏だ。あらゆるチャンネルを通してチェロの響きを届け続ける彼に、その魅力を尋ねてみた。
柏木:チェロの魅力というのはまず音色だと思います。音色というのは人の声に当たるものだから、テクニック以前にどんな音色でどんな風に歌うかがとても大切なんだけど、チェロはたくさんの音色を持っていて人の心を歌うのにとても長けた楽器だと思います。そこが最大の魅力。そういう意味で僕はチェロが一番ヒューマンな楽器だと思っている。
もっと言えば、僕がチェロを通して届けたいものは"笑い"なんです。チェロってお堅いクラシックの楽器っていうイメージがあるでしょう。僕はそんな敷居を壊したいんです。ビリケンさんと同じようなもので僕はHappyを届けたい。それをチェロでやれたら最高。今回のコンサートでは前半はデュオやトリオでアコースティックな音楽をお届けしますが、バンド編成の後半はイケイケです。とにかくお客さまがみんな笑顔になってくれれば、という気持ちで弾きますから、僕のコンサートは初めてという方もちょっと一歩を踏み出して、チェロの世界を覗きに来てくれたらうれしいですね。「こんなチェリストがおったんや」って、きっと笑ってもらえると思います。
(2023年7月18日更新)
●8月5日(土)
松下IMPホール
17:00 開演 ( 16:30 開場 )
全席指定-7200円
学生チケット-4600円※専門学生・大学生(大学院生含)まで対象/公演当日要学生証
ゲスト:押尾コータロー(g)
共演:光田健一(p)
天野清継(g)
大島俊一(key)
木村将之(b)
齋藤たかし(ds)
【問い合わせ】
キョードーインフォメーション
:0570-200-888
●発売中[CD]
¥3,300(税込)HATS UNLIMITED
【収録曲目】
エトピリカ
The Angel In The House
瑞風〜MIZUKAZE~
ビタミン
オルクドール~プラチナの風
WITH ONE WISH
TODAY for TOMORROW
少女がみたもの
羽根屋
島々の詩
手紙
情熱大陸
ひまわり