ヴァイオリン・コンチェルトの名品3曲を1公演で演奏。
松田理奈が新たな境地を示す「三大ヴァイオリン協奏曲の響宴」
ザ・シンフォニーホールに登場!
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ヴァイオリニスト、松田理奈によるコンサート「三大ヴァイオリン協奏曲の響宴」が7月18日(月・祝)、ザ・シンフォニーホールで開催される。クラシックファンだけでなく、幅広い人々から愛されてきた協奏曲(コンチェルト)の名品-ヴィヴァルディ、メンデルスゾーン、チャイコフスキー-を1公演で演奏するというコンサートだ。昨年11月の東京、サントリーホールでは完売となった公演である。聴く者を惹きつける高度な技巧、そして華のある演奏で数々の実績を重ねてきた松田理奈が新たな境地を示すステージと言えるだろう。公演に先駆けて大阪を訪れた松田に訊いた。〔音楽ライター/逢坂聖也〕
オーケストラとの一体感を感じたチャイコフスキーの最終楽章。
■昨年11月23日のサントリーホールが完売。この大阪公演のあと、東京の再演も決定しましたね。おめでとうございます。

松田:ありがとうございます。コンチェルトを続けて弾くということが生まれて初めてでしたし、満席のサントリーホールも久しぶりだったので、ステージに出た瞬間からほんとうに気持ちよく、幸せだなって思う時間を過ごせました。かなりのボリュームがありますから、これを全部弾き終わったあとにはもっと疲れるかなと思ったんですよ。でもまったくそんなことはなくて、全然疲れなかったんです。それが自分でもびっくりしました。ほんとに楽しかった。
■全体で2時間15分ほどとうかがいました。どういう経緯で実現した企画なのですか?
松田:ピアニストの清水和音さんが12年くらい「三大ピアノ協奏曲の響宴」というコンサートをやっていらして、主催者の方はその他の楽器のコンチェルトもやっていきたいという意向をお持ちだったんですね。それで声をかけていただいたのが始まりです。メンデルスゾーンとチャイコフスキーは決まっていて、ヴァイオリンの三大コンチェルトというとあとベートーヴェン、ブラームスってなるんですが、華やかでよりお客さまの耳になじんだ作品をということでヴィヴァルディが選ばれました。コンチェルトという括りでこれだけソロを弾くコンサートはないと思います。休憩を入れると2時間を超えますが、新しい形のコンサートだと思って取り組んでいます。
■聴く方にとっては贅沢そのものですが、弾く側にとってはどんな体験なんでしょう?
松田:メンデルスゾーンを弾いて1回ステージ袖に帰った時に、ちょっとはっとしました。「次はチャイコフスキーだ!」って。普通なら次はアンコールってなるんですけど、ここからチャイコフスキーなんだっていう驚きがありました。私たちソリストは、オーケストラと一緒にコンサートの最後までステージに立つことってないんです。コンチェルトはたいてい前半ですよね。後半にステージにいるっていうのがすごく不思議な感覚でした。
■なるほど。それはソロの方ならではの感慨だと思います。
松田:だから私はずっとシンフォニーに、ある意味の憧れがあったんです。オーケストラの方は常に最初から最後までステージにいらっしゃるでしょう?そしてシンフォニーに向かって山場を創っていく。それは音量だったり、音の密度だったりするわけですが、1つのコンサートを通した盛り上がりをそこに持っていく。その全体のクライマックス、みたいな体験にすごく憧れがあったんですが、それを去年、このコンサートで実感できたと思うんです。
■その実感とは?詳しくうかがえますか。
松田:普段のコンチェルトではあまり感じたことのない盛り上がりでしょうか。それをチャイコフスキーの最終楽章で感じたんですよ、シンフォニーみたいだって。弾きながら、オーケストラを見ながら、思わず笑いがこぼれましたから。オーケストラの人たちっていつもこの景色を見てるのか、と思いましたし、それと一体になっている感じがして、すごくうれしかったですね。
■燃焼度の高い演奏だったのでしょうね。それは大阪公演でもぜひ聴いてみたい。
松田:すごく音楽に向き合わせてもらっていると思いました。だから、疲れなかったって最初に言いましたけど、次にまたあそこにいくためには、かなり努力しないと弾けないのが正直なところです。普段コンチェルトを弾くときには、がんばってます感はあまり出さないようにしたいんですけど、これを続けていくに当たっては結構な努力が必要だと。だからちょっとだけ、そういう自分の姿が滲み出ていたらいいな、と思っています。
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(2022年7月 6日更新)
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