叫びたくなるくらいの強い想いが込められた
ふたつのヴァイオリン・ソナタ-川本嘉子
“音楽に託された愛の行方は…”
3月30日(木)、ヴィオラの川本嘉子が約1年ぶりに大阪倶楽部シリーズに登場する。昨年2月、ピアノの三舩優子とともにブラームスの晩年の作品を取り上げ、会場を深い感動で包んだ川本嘉子が今回演奏するのはシューマンとブラームス。師弟として深く関わり合ったふたりの作曲家の、生涯のさまざまな時期の作品が選ばれている。とりわけ前半と後半の最後に置かれたふたつのヴァイオリン・ソナタ(ヴィオラ演奏による)からは、彼らの人生を彩ったある種の運命的な想いを聴き取ることもできるかも知れない。ピアノは川本が折に触れて共演し、信頼を寄せる村田千佳。大阪倶楽部の瀟洒な雰囲気の中で、またひとつ良質な室内楽の演奏会が届けられることを喜びたい。新たな境地を拓きつつある川本嘉子に聞いた。
■昨年取り上げた晩年のブラームスに続いて、今回はシューマンとブラームス。全体的に少し若い情熱が感じられますね?
川本:前回はブラームスの後期ばかりで 僅かな光もすべてが思い出の中にあるような渋い曲ばかりでしたが、今回はまだまだ夢も希望もそこにある、さわやかな曲を集めました。ブラームスのヴァイオリンソナタ2番は53歳の時の作品ですが、とても若々しくて私も負けてられない!とさえ感じています。
■シューマンとブラームスを語るとすれば、どうしてもクララ・シューマンの存在が浮かび上がってきます。それを選曲や演奏で意識することはありますか?
川本:クララとブラームスとの仲をシューマンが疑ったという説がありますが、ブラームス側の資料を読むとプラトニックな関係だったのでは?と思わされます。ブラームスはシンフォニー(特に第1番)を何度も直してはクララに添削してもらっていたようですし、音楽を間に置いた強い信頼がある関係は私からするととても羨ましいと思います。
■シューマンとブラームスのヴァイオリン・ソナタは前半と後半の終わりに置かれています。それぞれはどんな風景を描いているのでしょう。また、ふたつを弾くことで見えてきたものはあるでしょうか?
川本:とても大きな感情が込められていると思います。どちらのソナタもヴィオラで弾くことは大変難しいのですが、ヴァイオリンからすると大きなヴィオラでさえも、あの2曲に込められている大きな感情のうねりを表現するには小さ過ぎると感じています。時折、叫びたくなるくらいの強い想いが溢れてきます。
■今回の村田千佳さんとの共演について。また大阪倶楽部への抱負などをお聞かせください。
川本:村田さんは芸大で勉強した後にウィーンで研鑽を積んだピアニストなので、当時の現場の空気もかくや、と思える様相を纏って演奏してくれる稀有な存在なのです。少しですがソロも弾いていただきますので お楽しみに!
(2017年2月20日 メールでの取材を元に構成しました/逢坂聖也:ぴあ)
(2017年2月24日更新)
Check