ホーム > インタビュー&レポート > 『踊る大捜査線』14年ぶりの最新作が上映中! 映画『踊る大捜査線 N.E.W. メトロポリスを駆け抜けろ!』 連続ドラマから監督を務める本広克行監督インタビュー
──本作は14年ぶりの新作ですが、連続ドラマから繋がっているように感じました。クランクインの時は、どのように感じられましたか?
織田さんと対峙すると、『踊る』に戻ってきたなという感覚がありました。僕の中では、青島イコール織田さんなので。織田さんが来ると、久しぶりにまたやるかという気持ちになりました。織田さんも周りをすごく見てくださったので、やりやすかったですね。僕はあまり役者さんに電話番号を教えることはないんですが、織田さんにはアイデアを思いついたらすぐに電話をかけてもらって。
──織田さんのアイデアも作品に活かされているんですね。
青島が電動キックボードに乗るシーンは、「ずっと走ってると大変だから、キックボードでスイスイ行くのをやってみたい」という織田さんのアイデアなんです。その後、スタッフが閉鎖された高速道路を見つけてくれて。じゃあ、高速をキックボードで走ってみようという話になったんですが、怒られるかもしれないから、一応チェックはしてもらいました(笑)。
──だから、あの新幹線と並走するシーンが撮影できたんですね。
あの高速道路を見に行ったら、新幹線が目の前にドーンって迫ってくるんですよ。このシーンが撮れたら、絶対に予告で使うだろうなと思っていたら、本当に使ってますよね(笑)。
──画としてすごく面白いですよね。
ふざけてますよね(笑)。映画ではそういうことをやりたいんです。
──本作の脚本作りはどのように進んだのでしょうか?
僕が、ひたすら青島が走るってどうでしょう?カメオ出演で今までのキャラクターがたくさん登するとか、と、アイデアを出しました。いつもは君塚さんの脚本に触ろうなんて全く思わないんですが、『室井慎次』の時は時間もなくて、雪国の撮影だったので。そうしたら、君塚さんが映画監督としては本広監督の方が俺の師匠なんだと言い出して。めちゃくちゃプレッシャーかけられてると思いましたが、完成した作品を観てくださったらすごく喜んでいて。その後で「俺は本広組の座付き作家をやるんだ。本広監督が言ったことを言った通りに書くから」と言ってくださって、今回、こんなに楽しいものができちゃいました(笑)。
──カメオ出演の方がたくさん登場するというお話がありましたが、イースターエッグのように至るところに散りばめられてますよね。私がグッときたのが、趣里さん演じる芝田ひばりさんの「中西さんって湾岸署にいらっしゃいましたよね?」という言葉でした。観終わった後で調べたら、小林すすむさんが演じていた中西係長だ!と思い出して。そういうこともこの映画の楽しみ方だと思いました。
あれは織田くんの芝居もいいんですよね。
──そうなんです!
趣里ちゃんが「中西さんって湾岸署にいましたよね?」って青島に聞くんですよ。その時に織田くんが「そう、いた」って言うんです。しかも、噛みしめるように言うんですよ。『踊る』の世界ではまだ生きてるんだな、と。撮影中に、こういう現象も『踊る』だとできるんだな、と実感しました。笑いがあって、ちょっとキュンとくるのがいいですよね。
──そういうところも『踊る』の魅力だと思いますが、本作では改めて、『踊る』の音楽の力を感じました。あの曲が流れたら身構えてしまうというか。
「Love Somebody」にはいろんなバージョンがあるんです。グロッケンバージョンやオルゴールバージョン、ギターバージョンとか。今まで作ってきた曲もありますし、久しぶりに音楽の松本(晃彦)さんが帰ってきてくれたので、すごくやりやすかったです。
──では、増えている曲もあるんですね。
めちゃくちゃ増えてます。曲を崩したり、昔の曲を今の感じに作り直したり。『踊る大捜査線 THE MOVIE2 レインボーブリッジを封鎖せよ!』の時に、室井さんが「捜査を立て直す」と言ったシーンの曲をアレンジし直した音楽をつけているシーンもあります。同じだと気づいてくださる人は相当、音に注意して観ている方だと思います。画から入る方や音から入る方など、いろんな映画の見方をする方がいらっしゃるので、全方面をくすぐるように意識しました。
──なるほど。確かに、今までの『踊る』の記憶を刺激されたような気がしました。
そう思って観てくださるのが、一番嬉しい見方かもしれません。本作は、もう一度復活しますという狼煙をあげる作品なので。今までのキャラクターと新しいキャラクター、そして、『踊る』の世界観と、今の東京をどう撮るかが重要だったので、情報量も多かったですが、撮っていて楽しかったです。昔のシーンや台詞を少しでも覚えてらっしゃると、「あれ?同じ台詞聞いたことある」と思っていただけると思います。
──過去の作品と似たシーンもありますよね。
いっぱいあります。今は配信で見る方が多いと思うので、この映画を観た後に配信で見ていただくと、同じ台詞や同じようなシーンに気づくと思います。

──それを見つけるのも本作の楽しみ方のひとつですよね。
でも、そればかりではダメなので、僕の好きな映画のオマージュやリミックスを入れたりして、今回は特に映画で遊んでいる感覚でした。のびのびと楽しいものを作ろうと思って作りました。
──初期の『踊る』の感覚で作ることができたんですね。
コメディーとして、皆さんを笑わせて泣かすという原点に回帰しました。『踊る大捜査線 THE MOVIE 湾岸署史上最悪の3日間!』もそうなんですよ。冷静に考えると、あの映画は寝てましたというギャグなんです。ああいうシーンを撮る時は集中力が高まるんです。泣いていた状態から一気に笑いに持っていくんですから。これは俺しかできないだろうな、と思いながらやっていました。
──せっかくの『踊る』の映画なんだから、という気持ちもありますよね。
大仰なコントをやってる感じがいいですよね。まさか、『踊る』がこんなに長く続くとは思ってなかったので。
──先ほど、監督のお好きな映画のオマージュやリミックスを入れたとおっしゃっていましたが、言える範囲でいくつか教えていただけますでしょうか。
そもそも、連続ドラマの織田くん演じる青島くんといかりや長介さん演じる和久さんの関係性は『セブン』のブラッド・ピットとモーガン・フリーマンの構造なんですよ。今回の映画にも『セブン』のオマージュは入ってます。
──連続ドラマから繋がっているんですね。
いろんな映画の要素を入れ込んでいるので、それも楽しいですね。映画をたくさん観ている人が観ると、パロディだと気づくと思います。だから、映画を観たおじさんたちがたくさん言いに来るんです。「あそこ『2001年宇宙の旅』だよね?」とか。
──『踊る大捜査線 THE MOVIE 湾岸署史上最悪の3日間!』で、煙突から色のついた煙があがるのも『天国と地獄』のオマージュでしたが、今回もそういう仕掛けがあるんですね。
今回もめちゃくちゃ入ってます。それだけで特集が組めるぐらいです。例えば、後半のセブンベアのアトラクションの中の光の演出は、スタンリー・キューブリックが『2001年宇宙の旅』でやっていた、過去に遡っていくシーンのオマージュです。それと、昨年の大阪・関西万博に行った時に、石黒浩先生の「いのちの未来」というパビリオンで似たようなものを見て、青島くんでやるなら、こういう感じかな?と思ったんです。もうひとりの自分が今の自分を見ているような。だから、実はやりたい放題なんですよ(笑)。
──あのシーンはグッときました。
あのシーンは、ぜひもう1度見てほしいんですが、青島くんが思い出したくない記憶の時は、逆回転してるんです。思い出したくないから、逆再生したんですが、あの辺りのことを本当に語りたくて語りたくて。
──もう1度観てみます。本作からの新しいキャストの中では、特に佐々木蔵之介さんの登場に驚きました。
青島の同期の役ですね。

──実は、過去の『踊る』に出てらっしゃったんですよね。
『踊る大捜査線 THE MOVIE2 レインボーブリッジを封鎖せよ!』 に出ていました。あの頃、僕と蔵之介さんはプライベートで演劇の仲間だったので、演劇が終わったら皆で飲みに行っていて。その繋がりで、ちょい役で出てもらいました。
──それが、ちゃんと繋がってきたのがすごいですよね。
蔵之介さんにはいつか出てもらいたいと願っていたので。タイミングが良かったです。
──しかも、織田さんと佐々木さんが同い年なんですよね。20年以上も経ってるのに、ちゃんと繋がってきたことが奇跡だと思います。
『踊る』には、そういう方がいっぱいいるんです。今回、迫田(孝也)くんを使えなかったので、次は迫田くんをいいところに持ってきて、「見事」だと言ってもらいたいですね。アイデアは尽きないんです。でも、それは『室井慎次』をやったからなんですよね。最初はなぜ『室井慎次』を復活させて、亡くなる話を作らなきゃいけないんだろう?と思ってたんです。そうしたら『踊る』が復活して。室井イズムを持った男の子たちが大人になって青島さんの下で働き出して、室井イズムが継承されて、室井と青島が叶えられなかった約束を、子どもたちが継いでくれたら完璧だなと考えるようになりました。
──なるほど。
そんなドラマ見たことないので、めちゃくちゃ面白いだろうなと思って。そういう作品を作りたいと思っています。

──それが、今の監督のモチベーションになってるんですね。
だから彼らには、「君たちが売れてくれないと、俺の夢の企画ができないから」と言っています(笑)。そうやって子どもたちに未来を託して、彼らが立派な青年になって戻ってきてくれた時に織田さんと芝居してもらって。これ、泣けますよね。
──泣けますね。
齋藤潤くんが演じた貴仁くんは東大に行って、室井さんを超えるようなキャリアになって帰ってきて。前山くうがとこうがの双子が演じた凜久は、町のお巡りさんになって。そうなったら、めちゃくちゃ面白いと思うんです。先が楽しみですね。
──本作の中で監督にとって感慨深かった、一番グッときたシーンというのはどこだったんでしょうか。
僕はサラリーマンでしたが、たまたま監督になって。青島さんは刑事になって、たまたま警視庁に行きましたよね。今回は特に、自分の立場と青島さんの立場を重ねていました。織田裕二さんが演じている青島俊作というのは作られたキャラクターじゃないですか。そこに自分たちを重ね合わせるのが、映画の見方なのかもしれないと思うこともありました。映画の中で青島さんが「警察官を辞めていく人がいて、いなくなっちゃった人もいる。怪我をして戻れない人もいる」と言うシーンがありましたよね。
──佐々木蔵之介さんと話していたところですね。
あの言葉がめちゃくちゃ刺さりましたね。時代がどんどん変わって、新しい世代にバトンを渡していくのが人間の性なんだろうなと思いました。
──あの言葉はきっと誰しもが共感できると思います。
天才が書かれた本ですから。人間は皆、同じ動きをしてるんですよ。環境によって左右される部分はありますが、自分で会社を作る人もいれば、雇われる人もいて、その中で人間関係に揉まれて、60歳ぐらいになったら、少しずつ仕事を渡していきますよね。刑事さんもディレクターも、皆同じことをしてるんです。一緒なんだと気づいた時に、すごく作りやすくなりました。
──ある意味、人間関係の縮図というか、どういう場所でも当てはまることですよね。
本作に登場する、白洲(迅)くん演じる美浦や、趣里ちゃん演じる芝田ひばりでいうと、僕らの時代は、新人類って言われてましたから。
──ありましたね(笑)。
あの頃、新人類はすごく叩かれましたが、今も同じことをやってるんですよ。

──白洲さんと趣里さんは新しいキャラクターですが、ちゃんと『踊る』にいるように感じました。
そこはめちゃくちゃ注意して見てました。趣里ちゃんの方が難しいはずなんですが、趣里ちゃんはお芝居がチャーミングなんです。筋の良さというか。白洲くんは白洲くんで、今っぽいカッコよさがあるんですよね。皆さんの周りにもきっと、すごく検索能力の高い部下っていると思うんです。これ、なんて書いてあるんだろう?と思っていたら、もう調べていたり。そういう人をやってもらえばいいと思って。新しく登場するキャストには、そういうことも伝えていました。
──白洲さんと趣里さん以外にも。
例えば、佐藤二朗さん演じる指方先生は、マルチタスクができない人。いろんな物をボロボロ落とすおじさんを二朗さんにお願いしたら、言った途端にやってくれますから。小銭をじゃらじゃら落とすんですよ(笑)。上手だなと思いながら見ていました。増田(貴久)くんが演じる勇気は、エリートで頭もいいけど、ちょっと変な日本語になってしまう。それも、帰国子女の方がよく悩んでいると聞いたことがあったので、それを伝えました。それぞれのいいところと悪いところを作っていったから、うまく馴染んだのかもしれないですね。
──今回は新しい登場人物が特に多かったですが、そういう作り方だったおかげで馴染んでいたんですね。
実は、君塚さんに言ったら、ちょっと難しいと言われたんですが、僕の中では『七人の侍』をイメージして、青島が7人の仲間を見つけていく話にしたかったんです。人によって数え方が違うんですが(笑)。映画を観終わった後に、皆がそういう話をしてると楽しいだろうなと思って。面白い映画って話したくなるじゃないですか。でも、結果的には長くなるから難しいということになったので、ぼやかしてます(笑)。
──(笑)。
『七人の侍』の7という数字に、セブンベア。
──7つの大罪もそうですし、映画の『セブン』も。
レインボーブリッジも七色ですから。7だらけなんです。
──そういうことを聞くとさらに、観終わった後は必ず話したくなるはずなんですよ。答え合わせをしたくなると思うので。公開されてから、本作のトリビアが明かされることはあるんでしょうか?
入場者プレゼントとして150万部配布する、映画オリジナルの小冊子にもたくさん書いていますし、パンフレットにも。パンフレットはムック本みたいになってますから。それを読むと、また観に行きたくなると思います。それも仕掛けのひとつです。何度も観てもらいたいので。検索してもらって、配信で過去の作品を見て、また観ていただけたら嬉しいですね。
──その中で唯一、謎に包まれたままなのは深津絵里さんが演じていた恩田すみれさんだと思います。ファンの方は皆、すみれさんのことが気になっていると思います。あの電話はすみれさんですよね?
青島くんが誰かに電話して繋がらない場面は、映画の文法で行くと、すみれからの電話なんです。というようなことを語り合ってもらいたいですね(笑)。『踊る』はスピンオフをたくさん作っているので、すみれのスピンオフは面白そうですよね。
──絶対、面白いと思います。ぜひ、作ってほしいです。楽しみにしています。
まだまだ、やりますよ(笑)。
取材・文/華崎陽子
(2026年9月29日更新)
▼TOHOシネマズ梅田ほか全国にて上映中
出演:織田裕二
趣里 白洲迅 佐々木蔵之介
増田貴久 野呂佳代 玉井詩織(ももいろクローバーZ) 藤吉夏鈴(櫻坂46) 齊藤なぎさ ・ 佐藤二朗
ユースケ・サンタマリア 真矢ミキ 水野美紀 甲本雅裕 寺島進
伊藤淳史 滝藤賢一 松重豊 松下洸平 ・ 斉藤暁 小野武彦 北村総一朗
脚本:君塚良一
監督:本広克行
プロデュース:亀山千広
主題歌:織田裕二「Love Somebody(CINEMA Version)」(ユニバーサル ミュージック)
【公式サイト】
https://odoru.com/
【ぴあアプリ】
https://lp.p.pia.jp/event/movie/394049/index.html
もとひろ・かつゆき●1965年、香川県生まれ。CM製作会社を経て、共同テレビジョン入社。深夜ドラマで監督デビューを果たし、「NIGHT HEAD」(1992)、「お金がない!」(94)などで注目される。1996年、『7月7日、晴れ』で劇場映画監督デビュー。自身が演出した人気ドラマの映画化作『踊る大捜査線 THE MOVIE』(98)が大ヒットを記録、その後も続編やスピンオフ作品『室井慎次 敗れざる者』(24)、『室井慎次 生き続ける者』(24)など全8作を手がける。主な監督作品に、『サマータイムマシン・ブルース』(05)、『亜人』(17)、『曇天に笑う』(18)など。