ホーム > インタビュー&レポート > 藤本タツキによる青春漫画「ルックバック」を 是枝裕和監督が実写化した映画『ルックバック』 主人公のひとり・藤野の子ども時代を演じた 七瀬ふうりインタビュー
──本作が俳優デビュー作であり、映画デビュー作でもありますが、本作のオーディションはどのように進んだのでしょうか。
是枝監督の作品というだけで、どんな物語なのかもわからなかったので、「夏休みに何しましたか?」という質問に、最初に手を挙げてノリノリで答えていました。今思うと、その時に「いいね」と言ってくれたのが是枝監督だったんです。

──その段階で是枝監督が「いいね」と言ってくれていたんですね。
撮影が始まってからわかったんですが、助監督の方とプロデューサーの方が座っていて、プロデューサーの方の右隣りに是枝監督が座ることになっていたんですが、是枝監督は立って見ていたんです。だから、誰が監督なのかわからなくて。その方が是枝監督だということを知らなくて、誰なんだろうな?と思ってました。
──なるほど。では、藤野役に決まってから、あの人が是枝監督だったんだと気づかれたんですね。
あの人が監督だったんだ!という感じでした。
──オーディションの時に、藤野を演じることはあったのでしょうか。
次のオーディションの時は、台本を渡されて、その場で覚えて、いろんな人と藤野と京本の組み合わせを演じました。その時に、(出口)夏希ちゃんと(蒔田)彩珠ちゃんがいて、たまたま夏希ちゃんの映画を観たばっかりで、まだ芸能の仕事についてそんなに知らなかったから、映画の人じゃん!って思いました(笑)。
──つい最近、映画で観た人が目の前にいたらテンション上がりますよね。
いろんな人と演技する中で、(岡田)六花ちゃんとも藤野と京本を演じたんですが、六花ちゃんが一番やりやすかったです。藤野役に決まったと聞いた時はすごく嬉しかったです。

──藤野のキャラクターについては、どのように考えて演じてらっしゃったのでしょうか。
『ルックバック』の藤野の役だということはわかっていて、自分に自信があるキャラクターなんだろうな、とは思っていましたが、台本もなくて、アニメも原作も見てはいけないと言われていたので、どういうキャラクターなのかというのはよくわかってなかったです。撮影に入ってから、監督から口頭で台詞を言われて、その場で覚えて撮影していました。怒ってるとか喜んでるとか、藤野の心情を教えてくれて、わかりやすくアドバイスしてくれました。
──構えたり、考え込んだりすることなく撮影できたんですね。その方法は七瀬さんに合ってましたか?
私にはこの方法が合ってたと思います。漫画のことは覚えないといけなかったけど、それ以外では覚えることがそんなになかったので、やりやすかったです。
──漫画を描く練習も必要だったと思いますが、大変でしたか?
絵を描くことに興味があったので、楽しかったです。Gペンという、インクをつけて描くペンを初めて使った時は普通のペンと違って、強くやりすぎるとインクが変な感じに出てしまうので、力加減にテクニックが必要で。普通にまっすぐ描くのも難しかったので、すごく練習しました。最初の頃に描いた絵を今見ると、全然違うので、自分の成長を感じました。
──撮影中に、出口さんと蒔田さんの撮影を見ることはあったのでしょうか。
遠くからですが、撮影を見たことはありました。離れていたので、夏希ちゃんと彩珠ちゃんの声は聞こえないんですが、それでも声が聞こえてくるような気がして圧倒されました。

──完成作を観た時は、どのように感じられましたか。
撮影から時間が経っていたので、私ってこんな演技してたんだ、と思って、最初はびっくりしました。自分の声を聞くのはめちゃくちゃ恥ずかしくて、最初の方は顔を伏せて観てました(笑)。ちゃんと観始めてからは、撮影を思い出して感動しました。私が見た夏希ちゃんと彩珠ちゃんの撮影は、夕日のシーンだったんですが、すごく綺麗に映っていて、こんな風に撮られていたんだと驚きました。
──風景描写がすごく印象的でしたが、秋田県のにかほ市での撮影はいかがでしたか。
春夏秋冬、季節ごとに撮影したので、秋田には何度も行きましたが、自然豊かで空気も美味しくて、すごく綺麗で。秋田の皆さんもすごく優しくて、ご飯も美味しくて。特に、秋田由利牛が美味しかったです(笑)。一度、クランクアップした時は、長い間秋田で撮影していたので、秋田から離れなきゃいけないことが、すごく寂しかったです。また秋田に行きたいなと思っていたら、また秋田で撮ることになったので、嬉しかったですし、帰ってきたなと思うぐらい、最高の場所でした。
──池の白鳥や田んぼの中の道など、印象的な景色はたくさんありますが、特に印象に残ってる風景はありますか?
どこも良かったですが、やっぱり田んぼ道ですね。撮影することも多かったですし、あんなに田んぼが広がってる風景を見たことがなかったので。自然の豊かさを感じましたし、すごく思い出に残っています。
──野呂佳代さん演じるお母さんをはじめ、家族とのシーンはすごく仲が良さそうに見えました。
野呂(佳代)ちゃんや(佐々木)みゆちゃん、池田(良)さんとの共演もそうですし、家族のシーンの撮影はすごく楽しかったです。ひとりでの撮影や、六花ちゃんとのふたりでの撮影もいろいろな楽しさがありましたが、人数が多いので賑やかでした。皆さん、自然でアドリブが上手くて。映画の中だけの家族だけど、家族だという感覚がありました。お姉ちゃん役のみゆちゃんはすごく優しくて、本当のお姉ちゃんだと思っていました。野呂ちゃんは面白いから一緒にいて楽しくて。家族のシーンの撮影は幸せな時間でした。

──先ほど、是枝監督からアドバイスしてもらったとおっしゃっていましたが、是枝監督からもらった言葉で印象に残ってることや、大事にしておきたいと思った言葉は何だったのでしょうか。
撮影中は、私からむっちと呼んでほしいと言っていたんですが、是枝監督が「むっちの好きにしていいよ」と言ってくれたことがすごく印象に残っています。なにもかもが初めてだったのですが、その言葉ですごく楽に演技をすることができたので、撮影中もその言葉を思い出しながら演じていました。
──是枝監督の作品に参加したことは七瀬さんにとって素晴らしい経験だったと思いますが、つい先日『旅する練習』という作品に七瀬さんが出演すると発表されていました。『ルックバック』の経験が活かされたのではないでしょうか。
『ルックバック』の経験が活きたと思います。台本を覚えることも得意なので楽しかったです。長い台詞もありましたが、演技力も『ルックバック』の時よりも上がってると思うので、また違う面白さがありました。
──先日は、世界三大映画祭のひとつであるヴェネチア国際映画祭にも参加されていました。初めての映画でヴェネチア国際映画祭に参加するというのはなかなかない経験だと思いますが、どんな雰囲気でしたか?
私も行けると思ってなかったので、本当にまさかという感じでした。是枝監督たちと行くことができて、すごく嬉しかったです。日本の舞台挨拶では、皆さん遠慮して声を出すこともそんなにないと思うんですが、海外の方は監督の名前を叫んでいて、さすがだなと思いました(笑)。是枝監督は何度も映画祭に出てらっしゃるので、監督からは圧倒的なオーラを感じました。
取材・文/華崎陽子
(2026年9月30日更新)
▼大阪ステーションシティシネマほか全国にて上映中
出演:出口夏希 蒔田彩珠
七瀬ふうり 岡田六花
野呂佳代 池田良 佐々木みゆ 山田真歩
宮藤官九郎/菅田将暉
原作:藤本タツキ「ルックバック」(集英社ジャンプコミックス刊)
監督・脚本・編集:是枝裕和
【公式サイト】
https://k2pic.com/film/lb/
【ぴあアプリ】
https://lp.p.pia.jp/event/movie/453545/index.html
ななせ・ふうり●2014年1月7日生まれ、兵庫県出身。本作で俳優デビュー、映画初出演を果たす。公開待機作に『旅する練習』(2027年公開予定)がある。