ホーム > インタビュー&レポート > 【太秦撮影所の誕生から100年!】 阪東妻三郎の『雄呂血<4K デジタル修復版>』を 活弁&伴奏つきのスペシャル上映 《第17回京都ヒストリカ国際映画祭》見どころ紹介
■ヒストリカスペシャル

上段左から、田村幸士さん、安田淳一監督、片岡一郎さん
下段左から、重森三果、滝本ひろ子さん
~阪東妻三郎さんの孫、田村幸士さんと『侍タイムトリッパー』の安田淳一監督が登壇、活弁&伴奏つきのスペシャル上映!~
今年のヒストリカスペシャルは、太秦のDNAが刻印された阪東妻三郎のアクションが炸裂する名作『雄呂血<4K デジタル修復版>』を片岡一郎さんによる活弁、重森三果さんによる唄と三味線、滝本ひろ子さんによる和笛、鳴り物と共にお届けする。
上映後には、阪東妻三郎さんの孫で俳優の田村幸士さん、『侍タイムトリッパー』の安田淳一監督をお迎えし、令和に〝阪妻"を蘇らせるスペシャルトークを開催する。
「チャンチャンは三味線、バラバラは太鼓の縁を叩く音で、そこから剣劇(けんげき)のことを『チャンバラ』と呼ぶようになったのですが、今回はその三味線と鳴り物の伴奏が入った弁士付き特別上映です。上映後は田村家を代表して、田村亮さんの息子である田村幸士さんにお越しいただきます。まさに"阪妻・カムズ・アライブ"をお楽しみください!」(高橋さん)
■ヒストリカ・ワールド

『UBU』
©2023 Uma Pedra no Sapato. Design Macedo Cannatà / Programming Bondhabits
~次の100年の歴史映画のヒントがここに!~
最新の世界各国の歴史映画4本を上映するヒストリカ・ワールド。今年も日本初上映作品を上映するほか、上映後の来日ゲストや専門家を招いてのトークやオンライントーク(予定)から、世界の作り手たちが歴史映画を通して表現していることを探求しよう。
『UBU』(ポルトガル)日本初上映
19世紀に書かれたアルフレッド・ジャリーの戯曲が原作の、現代世界を映しとったような悲喜劇。精緻に計算されたコンテの中で描いた独特の世界観と不思議な魅力のあるニュータイプの歴史映画。
「トランプ大統領を擬したような主人公は残虐非道ながら、どこか滑稽でもあり、シェイクスピアの『マクベス』をコメディー版にしたようなドラマです。本作が初長編のパウロ・アブレウ監督も来場予定です」(高橋さん)

『海を約束してくれた先生』
『海を約束してくれた先生』(スペイン)日本初上映
1935年スペインの小さな離村で、新任教師のアントニは生徒たちに「初めての海を見せてあげる」と約束するが果たされることはなかった。75年後、生徒の孫娘がかつての約束に隠された胸踊る物語と出会う。
「スペインでフランコ軍事独裁政権が権力を握っていた時代の悲劇を、孫の世代が紐解く歴史ドラマです」(高橋さん)

『マゼラン』 ©Luxbox
『マゼラン』(ポルトガル・スペイン・フランス・フィリピン・台湾)関西初上映
フィリピンの巨匠、ラヴ・ディアスが16世紀の名冒険家マゼランの旅の真実を明らかにする"ラブ・ディアス版大航海時代"。マゼラン役を務めるメキシコの名優、ガエル・ガルシア・ベルナールの成熟した演技も注目したい。
「ラヴ・ディアスの代名詞ともいえるワンカットの長回しの中、英雄譚というより、突き放した世界の中で、マゼラン自身の混迷が描かれます。フィリピン映画研究家の山國恭子さんをお招きしてのトークもお楽しみに!」(高橋さん)

『裏か表か?』 ©Ring Film, Cinema Inutile, Andromeda Film, Cinemaundici_USED
『裏か表か?』(イタリア・アメリカ)関西初上映
アメリカ・西部開拓時代でヒーローだったガンマンたち。20世紀に入ると活躍の場がなくなり、ヨーロッパ各地で「ワイルド・ウエスト・ショー」をするようになるが...。自由を求める女性とのロマンスやガン・アクションが入り混じる、アレッシオ・リゴ・デ・リーギ、マッテオ・ゾッピス共同監督作。
「今のアメリカインディペンデント映画のいい意味での緩さと西部劇がオーバーラップした独特な作品。『若草物語』にも通じるようなコンテンポラリーな匂いもします。両監督のオンライントークで裏話をたっぷりと伺う予定です」(高橋さん)
■ヒストリカ・フォーカス

『御法度』 ©1999松竹/角川書店/BS朝日/IMAGICA/衛星劇場
~今こそ探求したい"アンチ・カタルシス"時代劇~
日本の時代劇にも、映画が観客に解釈や感情を明確に提示するのではなく、観る者に言葉を選ばせるようなアンチ・カタルシス映画は数多い。世界がどんどん複雑になっていく今、改めてアンチ・カタルシスな時代劇にフォーカスし、豪華ゲストのトークとともに味わってみよう。
【上映作品紹介】
『仇討』 ©東映
●『仇討』トークゲスト:片山慎三さん(映画監督)
中村錦之助主演の今井正監督作。武士道のヒエラルキーの中で生ききれない侍の悲劇を描く。
『夜の鼓』
●『夜の鼓』トークゲスト:片山慎三さん(映画監督)
三国連太郎、有馬稲子、森雅之、奈良岡朋子共演の今井正監督作。参勤交代で夫が留守にしている間に妻が一夜の過ちを犯したことを打ち明けられて...。封建社会の下級武士が背負うしきたりや重圧を描き出す江戸版家庭崩壊ドラマ。
『はなれ瞽女おりん』
●『はなれ瞽女おりん』トークゲスト:横浜聡子さん(映画監督)
今年3月に逝去した篠田正浩監督の代表作。妻で俳優の岩下志麻が光のない世界に生きる瞽女(ごぜ)のおりんを熱演。原田芳雄演じる脱走兵との旅模様を描く。
「おりん役の岩下さんは、無邪気な天使のようで、優しく、オープンな女性らしさを見せてくれます」(高橋さん)

『それから』 ©東映
●『それから』トークゲスト:横浜聡子さん(映画監督)
森田芳光監督が松田優作を主演に迎え、夏目漱石の原作を見事に映画化した第59回キネマ旬報ベスト・テン第1位選出作。藤谷美和子、小林薫らが漱石ロマンを見事に体現。
『幕末残酷物語』 ©東映
●『幕末残酷物語』トークゲスト:佐々木敦さん(批評家)
伯父の敵討ちのため、沖田総司に頼み込んで新撰組に入隊した若侍を、それまで快活明朗な時代劇に出演していたスター、大川橋蔵がノーメイクで演じた加藤泰監督作。残酷なテロ集団の中での立ち回りに注目したい。
●『御法度』トークゲスト:佐々木敦さん(批評家)
新撰組を題材に大島渚監督が性にまつわる物語を描き、公開当時はセンセーショナルを巻き起こした異色の時代劇。新入隊した美男剣士を演じた松田龍平がホモセクシュアルな魅力を放つ。
■巨匠ロベルト・ロッセリーニの『神の道化師、フランチェスコ』を上映!
イタリアの新鋭と2024年度京都映画企画市 優秀映画企画作品

『神の道化師、フランチェスコ』 ©1950 RTI/Rizzoli
ボローニャ復元映画祭―チネテカ・ディ・ボローニャ提携企画では、ロベルト・ロッセリーニがアッシジの聖人フランチェスコと彼を慕う修道士たちを描いた『神の道化師、フランチェスコ』をデジタル・リマスター版で上映。ゲストによるトークショーを開催する。

『ルイージ・ブローリオの再打ち上げ』 Cultural Video Production INVR.SPACE GmbH
さらに、ヴェネチア国際映画祭の人材育成プログラムと提携したヴェネツィア・ビエンナーレ ビエンナーレ・カレッジ・シネマ連携企画では、ヴィンチェンツォ・カヴァッロ監督のVR短編作品『ルイージ・ブローリオの再打ち上げ』(京都文化博物館6F和室、無料)を上映。監督の来場も予定されている。

『引かれ者の小唄』 ©京都映画企画市2024 栗本慎介 島村隆
2024年度京都映画企画市 優秀映画企画作品として、栗本慎介監督による死刑囚を刑場まで公開しながら連行していく"市中引き回し"を題材にした『引かれ者の小唄』(パイロット版映像)の上映を行う。
■京都フィルムメーカーズラボで『宇宙からのメッセージ』
特別上映&樋口真嗣監督トーク

『宇宙からのメッセージ』 ©東映・東北新社
国内外の若手映像作家が、一流監督・映画人の指導を受けながら、東映、松竹の撮影所で短編時代劇製作を行う京都フィルムメーカーズラボ。そのプログラムの一環で行われるマスターズセッションに樋口真嗣監督が登場!東映京都撮影所で撮影された深作欣二監督のSF大作『宇宙からのメッセージ』の上映とアフタートークが開催される。

『尾かしら付き。』 © 佐原ミズ / コアミックス © 2023映画「尾かしら付き。」
「フィルメーカーズラボ」の時代劇ワークショップに参加経験がある監督の商業作品を紹介する「カムバックサーモンプロジェクト」では、真田幹也監督の『尾かしら付き。』が登場! 20~30代の女性を中心に支持を集める佐原ミズの同名漫画を映画化、2023年8月より全国公開された青春ドラマを、ヒストリカで凱旋上映する。
■学生主催企画も!
「ヒストリカ お座敷」でクリエイタートークに参加しよう!(参加無料)
12月6日(土)・7日(日)京都文化博物館6F和室を利用し、車座になってゲストやクリエイター、観客が交流する「ヒストリカ お座敷」も今年で3回目。トークエリア・展示エリアともに入場無料・事前申込不要で自由に参加できる。
3年連続の登壇となる片渕須直監督をはじめ、ベネチア国際映画祭オリゾンティ・コンペティション部門審査員特別賞を受賞した『LOST LAND/ロストランド』の藤元明緒監督や、京都映画賞の優秀スタッフ賞受賞者による企画も開催。初の試みとして、立命館大学映像学部との連携企画も予定されている。
さらに今年のヒストリカ お座敷で強調したいプログラムとして「ハリウッド流の原価管理を行なっているFilm Solutions株式会社とのセッションでは、製作資金が増やしやすい融資が主流となっている映画製作のフィルムファイナンスについて京都の行政、金融関係の皆さんとともに課題を共有する場にしたい」と高橋さん。
多彩な企画が行われるヒストリカやオンライン・トーク『夜のヒストリカ』も合わせて、歴史映画の新たな魅力に、ぜひ触れてみてほしい。
取材・文:江口由美
(2025年11月14日更新)
▼12月2日(火)~7日(日)
京都文化博物館(3Fフィルムシアター、6F和室)
公式サイト
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